映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「宮本から君へ」(2019)「こう愛し、こう生きるべし!」、「こう生きてきたか?」と問われる作品。

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原作が新井英樹さんの同名人気漫画。テレビでドラマ化されたようですが未見、漫画も未読です。しかし「愛しのアイリーン」(2018)を観ているので、新井作品は楽しみに、もうひとつ池松壮亮さんと蒼井優さん出演作というのも見逃せない。というわけで観て参りました。

 

 “愛する”とはこういうことだと、きれいな言葉なんぞくそ喰らえとばかりに、生身の愛を求める血と涙の物語。感動を通り越し、「こう愛し、こう生きるべし!」、「こう生きてきたか?」と問われる作品でした。
原作は、バブル時代に世相に抗うように作られた作品のようですが、ぬるま湯に浸かった、今の時代にこそ求められる作品ではないでしょうか。

この作品は、池松さんと蒼井さんなくしては語れない。共鳴しあうふたりの演技は、必見です!これまでの演技をはるかに超えています。

監督は「ディストラクションベイビーズ」の真利子哲也さん。共演に井浦新・一ノ瀬ワタル・松山ケンイチピエール瀧・佐藤二郎・古舘寛治さんらが出演。

作品案内ですが、
見てくれの悪い、金もコネもない、情熱だけで突っ走る営業マン・宮本(池松)が、元彼・裕二(井浦)から責められる中野靖子(蒼井)に「この女、俺が守る」と引き取り、恋に落ちる。ところが、営業で世話になっている部長真淵(ピエール・滝)の息子・拓馬(一ノ瀬)が靖子にしでかした不祥事に、宮本はどう対処するか・・。という展開です。
                *
TVドラマの続きを描いた物語。ここでは宮本の営業マンぶりは一切描かれてないで、宮本と靖子の愛の物語が焦点です。
そして、TVでは通常用いられない、過去、現在が輻輳し、なぜふたりがこうなったと、観る者を物語に引き込む演出がなされて、ちょっと混乱しますが、これがまた斬新でいい。

新井作品らしく、恋の物語で終わるのではなく、相手の人生に責任を持てと、家族の物語まで描くラストシーンがいい。そして、エンデイングで「宮本から」、アフタークレジットで「君へ」のタイトル。この趣向に、生きるエネルギーを貰ったようです!

****(ねたばれ)
冒頭で、宮本が歯が3本折れた血まみれの顔を激しく叩いて泣く、叩いて泣くシーンから始まり、出勤した宮本を同僚の島田(柄本時生)が労わり、部長には「顔とうした」と気合をかけられ、営業勤務にでかける宮本。 宮本はなぜ怪我をしたのか?
宮本は靖子を家族に紹介し、両親に結婚することを報告するが、靖子が妊娠していることを話さなかった。靖子の父母に結婚の認めてもらいに行き、靖子が父親に金を無心する。

なにが宮本にあったのか。

会社の先輩である新保(松山ケンイチ)の仕事なかまである靖子と恋に落ちた宮本が、靖子の自宅で食事に呼ばれるが、そこに靖子の元彼・裕二が現れ、靖子が裕二を拒むために宮本と寝たことを伝える。怒った裕二が靖子に手を出し、これを止めるために宮本は「この女、俺が守る」と言い放った。

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この言葉に挑発されたように靖子が「無理していってくれたと思うが、私は信じたい」と宮本を求め、ここでの絡みが、とてもいい。身体だけでの関係では、真の夫婦にはなれんぞと説くために、この激しい絡みが生きている。思い切った蒼井さんの挑戦演技でした。

ある日、営業先で気に入られたラグビー仲間の真淵部長と大野部長(佐藤二郎)に誘われ、靖子を連れて飲み会に参加した宮本は、勧められるままに一升瓶を
飲み干して泥酔してしまう。 見かねた大野が、車で送らようと呼びつけたのが、ラグビーで鍛え上げられて巨漢の拓馬だった。

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拓馬は靖子のアパートに宮本を運びベットに寝せて、靖子に襲い掛かった。終わったあと、包丁を持って拓馬を追うが見つからず、戻って寝ている宮本を見て泣く靖子。

何があったか、宮本が翌朝起きて、公園で靖子に会うまで知らなかった。靖子に「あんたが憎い。あんたが喋る男だからこうなった。いびきかいて寝ていた、許せん」と罵られた宮本、しかし、喋るだけ喋って寝込む靖子を見た宮本は、靖子を諦めるどころか、こいつのためにと闘志を燃やす。この心意気に泣かされます。
物も言わなくなったふたり。靖子はひとりで料理してご飯を食べれば、宮本は電気窯を被るようにして口いっぱいに飯を押し込み、泣きながら「ゴミにされたのは俺だ!」と真淵親子に復讐を誓う。これを見て「殺してよ、宮本!」と笑う靖子。蒼井さんはスッピンで、池松さんが阿保口を開けて食べ泣く、ふたりの熱の入った演技でした。(笑)

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宮本はラグビー場の練習で、やってくる拓馬を待つ。拓馬は靖子のことなどなかったように「靖子さんいいよね」と言い、拓馬が殴りかかったが、逆に殴られ血まみれになり、3本の歯が折れた。それでも宮本の心は折れなかった!

靖子が受診すると、懐妊していることを知られた。靖子はこのことを裕二に伝え、その胸で泣いた。

宮本は、この事件は自分の責任があると手紙を残して家を出た。靖子はお腹を抑えて泣いた。

宮本は営業の仕事をしながら、拓馬を倒すために身体を鍛えていた。そこに裕二がやってきて、「生まれる子供は俺とお前のどちらかの子だ。堕すための金を出した」と言い、拓馬から慰謝料を取ろうと勧めたが、宮本は、堕胎を拒否し、裕二をぶん殴った。なんの心の救いにもならん慰謝料も拒否する。

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拓馬を説得中に怪我して入院中の真淵部長と大野。宮本を呼んで手打ちをしようと謀るが、宮本は「そんな甘い親子でどうする。俺はこれから親になるのだ」と拒否する。甘いなれ合いの親子、社会のやり方に一歩も引かない宮本。

宮本は、靖子の勤務室を訪ね、結婚を申し込んだ。靖子が嫌だと断り、「私はひとりで子供を育てる。私は母親です」と社員一同に宣言する。靖子も、しっかり自分のやってきたことを見直し、成長していた。

夜、宮本は拓馬の住むマンションを訪ね決闘を申し込む。拒否する拓馬を朝起きてゴミ出しするのを待って挑んだ。マンション8階踊り場での決闘、どう見ても宮本が不利で、指を3本折られるが、宮本には隠し業があった。(笑) 

宮本は、血だらけの拓馬を自転車に乗せ、靖子のアパート前に連れてきた。
出てきた靖子に「やった!やった!結婚してくれ!」という。「誰が連れて来いと言った、バカタレ!」と靖子。「すべてが敵だった。お前もだ。しかし、俺は勝った!」と笑う。生きる上で、何よりも正義を通すことが、如何に大切かを教えてくれます。宮本は大きく成長した。
「子供は俺の子だ。幸せにしてやる。俺の人生は薔薇色だと信じている」という宮本に靖子が泣いた。この蒼井さんの泣き顔がすばらしいです。全てに責任を持つ男に生き方がいい。
               
池松さんと蒼井さんの演技に笑って、泣きました。そして、沢山エネルギーを貰いました!
                                                ****


映画『宮本から君へ』本予告

「アド・アストラ」(2019) ブラッド・ビットのための映画

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主演がブラッド・ビット、近未来の宇宙物語ということで、近未来の宇宙ステーションやスペース・シャトル、月や火星での活動を見ようと出かけました。ところが、とんでもない、心に大きな傷を抱える息子が、傷を埋めるために16年前に宇宙の彼方に消えた親父を探すという息子と消えた親父の心理を読ませる物語でした。( ^)o(^ ) 

監督は「エヴァの告白」「ロスト・シティZ 失われた黄金都市」のジェームズ・グレイ。共演はトミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラードナルド・サザーランド

あらすじ:
地球外生命体の探求に人生をささげ、宇宙で活躍する父・クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)の姿を見て育ったロイ・マクプライド少佐(ブラッド・ビット)は、自身も宇宙で働く仕事を選ぶ。しかし、その父は地球外生命体の探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となってしまう。
時が流れ、エリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。さらに、尊敬する父が太陽系を滅ぼしかねない「リマ計画」にかかわっているという。危険な実験を抱えたまま姿を消した父を捜すため、ロイも宇宙へと旅立つが……。(映画COM)
              *
海王星に行くということ自体がアクシデントかもしれませんが、いわゆる宇宙物に出てくる大きなアクシデントはなく、必ず父親に会いたいと変化していくブラッド・ビットの表情変化を楽しむことになります。
ラストシーン近くで、父親が宇宙の彼方に消え、これを見送る宇宙ヘルメットのなかのビットの顔は、こんなビットの顔をしりません、忘れられないものとなりました。

資源盗賊の出現、動物飼育の失敗談、磁気嵐対応、船内での栄養俸給などのエピソード、作品の本筋にはほとんど関係ないですが、近未来の宇宙活動というリアルさを楽しみました。

撮影監督が「インターステラー」のホイテ・ヴァン・ホイテマで、映像はとても美しいです。が、既視感ありでもっと面白くしてほしかった。

***(ねたばれ)
冒頭、ロイが「大切なのは集中すること。決して気にしない」と呪文を唱え(笑)、“心理テスト”を受けて、宇宙に出発。この心理テストがいまのロイを作り上げている。この心理テストが苦にならないよう成長する物語です。

大気圏外で宇宙アンテナを整備中、突然の“サージ“(電気嵐)で同僚がぶっ飛ばされ「退避!」の指令にもかかわらず、電源スウィッチに飛びつき、切って危険防止。しかし、足場を失い地表めがけて落下。激しく回転しながら、見ているこちらの目が回る、冷静に対応してパラシュートを開き、着地に成功。落下中に見えた地球が美しかった。宇宙服もずいぶん改善され、冷却装置が付いている。

とりあえず病院で身体検査。医者から「自滅的傾向がある」と奥さんに伝えておけといわれる。ロイは家庭のことなど、勤務中、考えることなく、頭の中は任務だけの男。身に危険が及ぶ仕事につく人は、こういう人が多い!

ロイはこの行動で、アメリカ宇宙軍の上官から呼び出され、「リマ計画」の指揮官である父親が海王星付近で生きていて、サージは何かの物質が反応して起きており、太陽系全体を危険に陥れると告げられる。16年間父親に会っていないロイの気持を確認され、「火星に行き、そこから父親にメッセージを送れ。父親の発見は、君にかかっている」と命令された。

火星でメッセージを父に送った以降の行動について、何も示されないのが気になります。ロイは父が「必ず見つける。愛している」と言って出て行った父の言葉を思い出し、「他に選択岐はない」とこれを引き受けた。

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ロイは父親の友人であるブルイット大佐(ドラルド・サザーランド)とともに行動することになっている。ロイが「監視ですか?」と聞くと「親父さんは姿を隠しているのかもしれない」という。大佐の役割がよく分からない。ロイは妻イヴ(リヴ・タイラー)への「行かない!」というメールを削除した。妻とは心が離れてしまっていた。

月への移動はロケットタイプのシャトル。登場前に心理テスト。飛行はほとんど振動がなく快適になっている。

月に到着。空港は立派に整備されている。ここから火星行きロケット基地まで地下鉄、車両を乗り継ぐ。グレーの無彩色な殺風景な景観。車両で基地に移動中、突然、無法者に重火器で襲われる。資源を巡る闘いが繰り広げられており、そのせいだという。この領域に入るなということなのかな。銃撃戦というのは穏やかでない。でも、月でこのスピードで走り、銃撃戦ができることを知った。

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この銃撃戦で、大佐が体調を崩し、一緒に行けないとメモリーを渡し、「宇宙軍は君を信用してない」と忠告する。ロイがこの忠告をどう受け取ったか?

ロイは火星行のロケット・ケフェウス号に搭乗。気分安定剤が配られる。無重力のなかで口に入れる動作が面白い。ロイは大佐のメモリーを読む。「リマ計画は宇宙軍のもの。息子の接触も断るだろう」とあった。ロイは父に何が起こっているんだと懐疑心を抱く。

突然、遭難信号が入る。遭難船を誰が点検するか?乗員がびびっているのでロイがこの役割を買ってでた。船長のタナーと二人で漂流船内に入ると、なんと動物飼育実験船だった。タナーが襲われ亡くなり、宇宙葬でおくった。

船長に副操縦手が就いた。ロイが「火星に行かねばならんのだ」と訴えた。ロイは任務をやり遂げたいだけだと言いながら、父への怒りを感じる。母は捨てられ、自分は人との関係が築けない男になり、これからどう物事に向かうのかと不安を抱き、心理テストを要求した。

サージに襲われ、ロケットが自動モードで飛翔できなくなり、ロイが操縦手を買って出て、手動で火星に着陸した。ロイの心理状況は正常なようだ。

火星に到着。火星は赤くただれていた。出迎えた基地責任者ヘレン・ラントス(ルース・ネッガ)の案内で、地下にある隔離室で宇宙軍幹部に会う。ヘレンが、通りがかりのケフェウス号の乗員が「サージに酔った」というのを聞いて、いやな表情を見せた。

ロイは宇宙軍が作った文面をそのまま読み、父にメッセージを送った。何も反応がない。
ロイは「父は嵌められているのではないか?自由になりたかったのでは」と父を思い泣いた。

次のメッセージでは、自分の言葉で「会いたい!あなたのおかげでこの仕事につけた」と送った。幹部たちが協議し「これ以上続けるおは不適切」とロイの任務を中止した。本当に父からの返答はなかったのか?
幹部から任務終了を告げられ、地球帰還の心理テストが不合格となり、治療室に入れられる。

ヘレンがやってきて、「ケフェウス号が5時間後、海王星に向けて発つ」と告げ、「あなたを知っている。お互いリマ計画の犠牲者よ、私も父を失った」と言い、父・クリフォードのメッセージ(映像)を見せる。いつのメッセージは?
そこには「心理テストで地球に帰れなくなった者たちに船を乗っ取られた。この者たちは亡くなった。宇宙の深部へ行く、この任務を永遠にやる」とあった。ヘレンは「宇宙を守るために、クリフォードは英雄にされている」という。

ロイは「船に乗せてくれ」とヘレンに頼んだ。ヘレンは、「ロケットに乗るかどうかは自分で決めて!」と言い、車でケフェウス号の発射基地までロイを送り届けた。ヘレンは何を望んでいたか?

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ロイはロケットエンジン部から船内に潜り込む。が、乗員に見つかり格闘、ロイに殺し気はなかったが、乗員全員が亡くなった。

ロイは海王星への旅を続けるため、宇宙軍に追尾されないよう通信を切り、孤独な旅をつづけた。ケフェウス号の行き先は、父の居場所を掴んだ宇宙軍がセットしていた。

なんども妻の「あなたはいつも居ない。私たちはなんなの?」というメールを見た。お腹に注射針を刺して、栄養補給する。これには驚きです。

かくして、ロイはリマ計画宇宙船にたどり着き、父と対峙した。父が「ロイか?メルトダウンを止めるんだ!」と叫ぶ。ロイは宇宙船に爆薬を仕掛けた。
ロイは一緒に地球に帰るよう説得するが、「生物が見つかっていない。探すのが任務だ。地球に居場所はない」と帰還を拒否。それでもロイは父に宇宙服を着せ、お互いを命綱で結び船外にでたが、途中で父が「ロイ、放せ!」と命綱を切って、宇宙に消えた。父に愛はあった!これが父の生き方だった。ロイは泣いた!!

ロイはもう父を追わなかった。ケフェウス号を探し、これで地球に帰還した。

ロイは、父親の生き様を目の当たりにし、これまで父を追っかけてきた生き方を改め、愛情ある、人とつながりをもった人、他の人と親しくなる人を目指すことを誓った。 
                 
無表情のロイが人間になっていく、ブラッド・ビットのための映画でした。結構ミステリアスな物語で、筋が読めないところがあり困りました。(笑)
                                                   ***


映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開

「愛しのアイリーン」(2018)

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吉田恵輔監督作品、当地では上映されず、WOWOWでやっと観ることができました。
国際結婚という社会問題を取り上げ、夫婦、親子、家族の絆、さらに愛とは何かと、強烈な暴力と性描写で、あるべき姿を問う作品でした。暗い話のようでユーモアたっぷりに描かれ、これまでの監督作品のなかで、最高傑作だと思います。

原作は新井英樹さんの同名コミック。新井さん作品では、間もなく「宮本から君へ」の公開が控えています。
監督・脚本は吉田恵輔さん。主演は安田顕さん、共演はフィリピン人女優のナッツ・シトイ・木野花伊勢谷友介さんらが出演。

あらすじ:
42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男(安田顕)が、寒村では縁に恵まれず、父親・源蔵(品川徹)の惚けも激しくなり、それではと2週間フィリピンに出向き、嫁アイリーン(ナッツ・シトイ)を調達して連れ帰ると父親の葬式の真っ最中だった。
母親ツル(木野花)は、近隣の人はアイリーンを受け入れられるのか、本当にアイリーンは岩男を愛せるか、さらにアイリーンを食い物にしようとするヤクザ(伊勢谷友介)の動き・・・。日本の社会はアイリーンを受け入れることができるのか?

****(ねたばれ)
岩男は、4人目の子として産まれた。上の3人子が死産、死後まもなく亡くなったことで、母ツルは岩男を溺愛して育てた。これも岩男の婚期が遅れた理由です。
パチンコ店の従業員として勤務。そこで働く愛子(河井青葉)に声を掛けられ、好意をもつが、受け入れられなかった。そこで、フィリピン女性との結婚ツアーに参加して、アイリーンと出会う。見合いのあと、彼女の家族(母子家庭)に会い、家族が如何にアイリーンを可愛がり、彼女が得るであろうお金の仕送りを期待していることを知る。
アイリーンは、無垢な子、家族のために結婚と思っていて、結婚して将来どうなるかなど考えたこともいない。初夜も、岩男を寄せ付けない。(笑)

こんなアイリーンを連れ戻った岩男。アイリーンは「はなよめ」と挨拶する程度で、日本語も話せず、日本の作法にも馴染めておらず、ツルは猟銃を持ち出して、帰れと脅すありさま。(笑) 

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岩男はアイリーンとしばらくホテル生活。アイリーンは友達マリーン(ディオンヌ・モンサント)がいるバーに出入りするようになる。
彼女から辞書を借りで、尊敬します、だいすき、すばらしい・・と美しい日本語を勉強しはじめる。とても前向きな可愛い子です。

日本の夏祭り、洗濯のやりかた、と日本の文化や習慣に少しづつ馴染んでいく。この姿を目にして、岩男はアイリーンに愛情を抱くようになっていく。お金はわずかでも与えるようにしていた。

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しかし、ツルは受け入れることはできない。仲人(左時枝)がもってきた真嶋琴美(桜まゆみ)との縁談話に乗る。
琴美は、結婚したら義母を大切にすると言い、掃除洗濯のよくでき日本のお嫁さんイメージに合致する子。
ここで、琴美とアイリーンのどちらが良いか?と観る人に問うところがいい。アイリーンがよいと思いましたね。

アイリーンがバーに出入りするなかで、ヤクザの塩崎(伊勢谷友介)に出会いホステスになることを勧められる。
塩崎は「ただ働きをさせられているだけで、結婚では金が取れない、安い性奴隷になるな!日本の社会はそういう社会なんだ」と説く。アイリーンは「お金と結婚は別もの。幸せな結婚をする」と、きれいな言葉で返すところがいい。

塩崎はツルに、岩男は300万円を使ってあの女を買った。これからも金がかかり、国際結婚は大変なんだと吹き込み、一緒にあの女を追い出そうと提案する。

ツルは銃でアイリーンを脅し、塩崎が車にアイリーンを乗せて逃走。

これを知った岩男はふたりの車を負い、通行止めで停車した塩崎の車に追いつき、ふたりは激しくもみ合い、岩男が猟銃で潮騒を射殺した。
岩男とアイリーンで塩崎を埋葬し、岩男が、「逃げて幸せになれ」と財布とキャッシュカードを与えてたが、アイリーンは「私が岩男を守る」と動かなかった。

岩男とアイリーンが激しく交わるシーンが続くが、真に結婚したふたりの関係を浮き彫りにするいいシーンだった。これを覘き見たツルは激しく嫉妬する

ヤクザが岩男を疑い、車に自宅に、「人殺し」の落書きをされるようになる。ときを同じして、岩男はアイリーンを避け、愛子と交わるようになりる。酔っぱらって帰って、金をばらまいても、アイリーンは受け取らなくなっていた。

岩男がマリーンと交わり、帰りに、木の幹に「アイリーン」の文字を掘り、青酸カリを飲んで自殺した(遺体の黒さ)。
岩男はアイリーンの将来を考え、金を与え、交わることを避け、フィリピンに返そうとしての覚悟の死だった。
アイリーンとツルは必至で、岩男を探した。アイリーンが見つけ、ツルに問い詰められ死を明かすと、ツルは生きる気力を無くして寝込んだ。

ツルは死を選び、アイリーンに背負われて、雪山に入り篭ろうとする。アイリーンは「お義母さん生きて」と泣き叫ぶが、ツルは聞き入れない。
アイリーンが、お腹に子がいるとつぶやくと、ツルは家に戻ると言い、自分が苦しみながら、皆にガンバレガンバレと励まされて岩男を産んだことを思い出し、家族になってアイリーンの背中で亡くなった。
                
ここでの言葉を発することができない狂った木野花さんと泣きながら生きることを勧めるナッツ・シトイの演技は、ことばにならないぐらいにすばらしかった。なにか賞をあげたいですね!!
最後になりましたが、安田顕が無気力から、アイリーンと出会い生気を取り戻し、最後に狂ってしまう、これもすばらしい演技でした。

献身こそが真の愛。愛に国境という境界はない。すばらしい作品でした。
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『愛しのアイリーン』予告

“いだてん”第36回「前畑がんばれ」上白石萌歌さんが前畑さんに!!

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ロサンゼルスオリンピックの雪辱を期す前畑秀子上白石萌歌)は、経験したことがないプレッシャーと戦う。日本国中から必勝を期待する電報がベルリンに押し寄せ前畑を追い詰める。レースを目前にアナウンサー河西三省トータス松本)が体調を崩すが、田畑(阿部サダオ)は前畑勝利を実況すると約束した河西の降板を断固拒否する。そして迎える決勝。ヒトラーも観戦する会場に響くドイツ代表への大声援。オリンピック史に残る大一番が始まる。
感想:
「前畑、ガンバレ」の話は知っていた。国民の過度な期待に前畑さんが窮地に追い込まれていた、相手がドイツ選手であったこと、ヒトラーが観戦するなかでの戦いであったことを知り、よくぞ勝った!勝ったんだと、改めて前畑さんの苦悩やそれから解放された喜びが分かりました。
放送を担当した河西アナ役・トータス松本さんの気迫のこもった演技で、当時のラジオを気行っている感覚でした。「ひとりで泳いでいるのではない」という気持ちが彼女のストレスを吹っ飛ばし、楽しんで泳げた! 上白石萌歌が前畑さんに見えました!!

気になるのは、前畑さんにやぶれた相手選手・ゲネンゲルのその後。悲劇でなくてよかった。のちに、前畑さんと再会し50メートルを一緒に泳いだことそして前畑さんの死に涙したという記事に、スポーツで結ばれた友情に感動しました。

東京オリンピックの準備を始めた治五郎。パンフレット通りのオリンピックでよかったのに、軍人や貴族などまず国家を考える人たちを組織メンバーに加えたことで収拾がつかなくなる。
軍閥の抬頭を思うと、“ヒトラーのようにやれ”ということになるでしょう。こんなオリンピックに意義がないことはベルリンオリンピックを見て明らか。「止める」という決断こそ、求められるべきかもしれません。

***
4年前、ロサンゼルス大会の女子200m平泳ぎでわずか十分の一秒差で金メダルを逸した前畑秀子は、これで花嫁修業をするつもりだったが、永田東京市長イッセー尾形)に皆の前で責められ、引退を撤回してベルリンを目指し、1日2万メートを泳ぐという過酷な練習を続けていた。
ロサンゼルスで共に戦った松澤初穂(木竜麻生)をコーチに、世界記録を三度も更新しながら、前畑はプレッシャーに苦しんでいた。

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1936年8月1日、ベルリンオリンピックが開幕。前畑は眠れない。
ベルリン大会で前畑の最大のライバルは、ドイツの“マルタ”・ゲネンゲル選手(マルテ・オームントゥ)だった。大会前の記録会でゲネンデルが3分2秒7の世界記録を出せば、3日後には前畑がその記録を十分の一秒縮めた。迎えた予選では前畑が世界記録を大幅に更新する3分1秒9で1位通過した。それでも予選のあと、前畑は初穂に弱音を吐いた。
そこに政治が男子選手をどなる「どうなってるんだ!遊佐!新井!これじゃ頼みの綱は前畑だけか!」。これを前畑に聞かれたと「予選通過おめでとう。記録なんか全然気にしないでもいいから」と猫なで声を掛けた。

翌日の準決勝も前畑は1位で通過したが、タイムは3分3秒に落とした。一方、ゲネンゲルは3分2秒8と調子を上げてきた。

東京の四三(中村勘九郎)たち。新聞で前畑のスランプを知って「ツライトキハ オシナバガ ヨカ」と励ましの電報を打った。

決勝前夜、宿舎の前畑の部屋に、初穂と小島一枝(佐々木ありさ)が東京から送られてきた傳保を読み上げた。「セカイイチメザセ」から「ケッコンシテクダサイ」というものまであった。

実況放送を担当する河西アナ(トータス・松本)が風邪でダウン。これを知った政治はロサンゼルスの約束を果たせと河西に迫り、河西は放送すると約束した。

前畑は「ロサンゼルスでは、お守りを飲んだね」と4年前の想いでを語り、彼女たちが去っていくと、前畑の前に亡くなった両親の姿が現れた。「頑張れって言われても、なんか、言いなりや。私の4年間、誰かの言いなり?がんばれの他になにかないの?」と問うと、「秀子が生まれてよかった。母ちゃんには人生で一番とかった。秀子は母ちゃんの金メダルや。明日は皆で泳ぐんや」という母の声が聞こえた。前畑は「女学校に行かせてもろうて、ありがとうございます。どうか明日は、勝たせてください」とお願いをした。

翌日の決勝直前、前畑は控室で電報や手紙、お守りを握って「軽く泳がせてください。どうぞ後押ししてください」と祈った。
政治とヤーコブ(サンディー海)がやってきて「前畑なにやってる!」と見ると、前畑が手紙を飲み「これでうちは一人ではない。日本中の人と泳ぐんだ」と呟いた。

一方、隣の控室ではゲネンゲルがヒトラー(ダニエル・シュースター)じきじきの激励を受けていた。これを見た政治はラトゥールが言った「ヒトラーに感謝しておけ」を思い出した。帰りかけたヒトラーに政治は「ヒトラーさん東京にあれしてもらって、ダンケシェーン」と挨拶すると、握手をしてくれた。(笑)

勝戦。観客席にヒトラーが現れ、「マルタ」コールが起きる。7人の選手がコースについた。放送席では河西がマイクに向かっていた。

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号砲とともに選手たちが飛び込んだ。最初のターンではイギリスのストレーが1位、前畑が2位、ゲネンゲルが3位。あがその後、ストレーが後れはじめ、前畑とゲネンゲルの一騎打ちとなった。
前畑がんばれ前畑がんばれ!」観客は総立ち、河西は机の上に立ち上がり「がんばれ!がんばれ!」と応援。その声はラジオを通して日本に伝えられた。

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トータスさんの「前畑ガンバレ」は、実況にそっくり、よく頑張りました。
政治が、うるさい、うるさい。(笑)

四三やハリマヤ、そして日本中の人々が「前畑、ガンバレ」と応援した。

前畑がプールの壁にタッチして水から顔をあげると、ゲネンゲルがこちらを見ていた。そのとき、政治が「勝ったあ・・・」と。観客席から「マエハタ」の大歓声が起こっていた。
前畑が勝った。ゲネンゲルが駆け寄って「また、一緒に泳ぎましょう」と挨拶し、笑った。ヒトラーが、拍手をして、去っていった。ゲネンゲルが寂しそうに見送った。

表彰式、日章旗が掲揚された。前畑は壇上で泣いた。記録3分3秒6.ロサンゼルスの記録を3秒も縮めた。

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熱狂のうちにベルリン大会は閉幕した。競技場の掲示版に「1940 SEE YOU TOKIO」と表示された。

通訳のヤコーブが政治に挨拶に」やってきた。「前畑さん、よくがんばったと伝えて欲しい」という。「東京においで」と誘うと「無理です、さようなら」と去って行った。

いよいよ4年後の東京オリンピックだ。治五郎が開催都市が引き継ぐ五輪旗を受け取った。このとき副島は「嘉納治五郎の様子がおかしい、豪放磊落な治五郎はどこにいってしまったか」と感じていた。

治五郎が東京に戻った。四三が小松(仲野太賀)を連れて挨拶に伺うが、とくに話もしないで「聖火ランナー頼む!」と言って部屋に篭ってしまう。相当な悩みを抱え込んだようだ

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早々に、治五郎はオリンピック組織委員会の組織化に着手した。その人選は体協や東京市にとどまらず、軍人、政治家、貴族ら、各界の大物が顔を揃えた。
しかし、委員たちの意思は統一されず競技場すら決まらない、それぞれが勝手に主張するばかり。陸軍次官梅津美治郎が「お祭り騒ぎでは困る。質実剛健、日本流にやって欲しい」と発言。
治五郎は「オリンピックは国家的大事業です。日本の文化や精神を世界の人に理解してもらう」と発言。

副島は委員会での治五郎の発言にも危険なものを感じていた。治五郎の発言はヒトラープロパガンダの一環であったベルリンオリンピック」に繋がっている。さらに、「世界はドイツに魅了され、日本はドイツと同盟を結ぶに至った。嘉納さんはそのつもりがなくても挙国一致路線では必ずベルリンの模倣になる」と政治に語った。通訳のヤーコブが閉会式の翌日に自殺したと付け加えた。

政治は東京オリンピックと日本の行く末を思い、政治の不安は膨らんでいく。

政治はバー「ローズ」を訪ね、マダム・マリー(薬師丸ひろ子)に「東京でやれるのかな?日本はどこに向かっているのか、占ってくれ!」。

社に戻ると河野(桐谷健太)が来ていた。「オリンピックは軍のものではない。次の国会でオリンピック反対論をぶち上げる」と言い、去って行った。

そんな折、追い打ちをかけるようなニュースが届いた。昭和12(1937)年7月7日、北京郊外の盧溝橋で日本軍と中国軍の衝突が起きた。両国は戦争に突入していく。
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「アイネクライネナハトムジーク」(2019) “普通でいい、あなたに会えてよかった”

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「愛がなんだ」の今泉力哉監督作品ということで観ました。この作品は恋愛指南書としてとても評判が良かったですが、本作も前作同様、「出会いとは」をテーマに結婚生活の秘訣を説いてくれ、ユーモアたっぷりで、テンポよく描かれ、とても楽しめる作品でした。

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 原作は「アヒルと鴨のコインロッカー」などの映画作品で知られる伊坂幸太郎さんの同名連作短編集。伊坂さんにとっては初めての恋愛小説です。脚本は伊坂原作を多く手掛けてきた鈴木謙一さん、それだけに、井坂作品の疾走感や伏線の張り方の面白さ、印象的なセリフがあります。

主演は三浦春馬多部未華子さん。共演は矢本悠馬森絵梨佳恒松祐里・荻原利久・貫地谷しほり原田泰造さんらです。

仙台市を舞台に、いろいろな出会いで結婚した4組のカップルが、10年後、どのようなカップルになっていたか。“出会い”は幸せな結婚にどう関係あるのかを描く結婚指南書です。

10年後には、このカップルから生まれた子供たちのカップルをも加え、6カップルになるという登場人物の多い群像劇。これが、いくつかの伏線を介して見事に繋がり、出会いの奇跡と幸せな結婚の関係を解き明かしてくれます。( ^)o(^ )

10年後と区切りをつけたのは、前作「愛がなんだ」と同様、前半でいろいろな出会いを描き、後半で「何気ない日々の生活が、いろんな奇跡につながる」というテーマへの答えをしっかり描くという、とても分かりやすい編集になっています。

伏線のひとつが仙台駅前の大型ビジョンを望む“ペデストリアンデッキ”、もう一つがここでの弾き語り、“ストリートミュージシャン”です。仙台という街の空気感、斎藤和義さんの音楽、現地オールロケが、人と人の繋がりを爽やかに暖かくしてくれたように思います。

三浦さんが、ちょっと掴みどころのない男を演じるなど、キャステイングが面白い。特に後半、夫婦役の濱田マリさんと柳憂怜さんなんぞ、こんな夫婦にどんな出会いがあったと笑えます!

****(ねたばれ)
佐藤(三浦春馬)と本間紗季(多部未華子)の出会い:
佐藤の会社の上司・藤間(原田泰造)が、嫁が実家に帰ったと落ち込んで欠勤、そのためひとりで仙台駅前の大型ビジョンを望むペデストリアンデッキで街頭アンケートを行っていた。大型ビジョンにはヘビー級ボクシングの世界チャンピオン戦が映し出されていた。ウィンストン小野(成田瑛基)が相手の黒人選手に挑んでいた。近くでストリートミュージシャンの弾き語りに耳を傾けていた本間紗季が近付いてきたので、アンケートをお願いすると、「立ってるのは大変ですね。仕事欄は無職でもいいですか?」と声を掛けて応じてくれた。その手の甲に「“シャンプー”」と書いてあった。紗季のキラキラ感に佐藤は舞い上がった! このふたりの美男美女の出会いは奇跡でしょう。(笑)

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ここに出てくる、“ボクシング”が大きな伏線に加わります。

佐藤には大学時代からの親友・織田一真矢本悠馬)がいる。彼を訪ねると「お前、彼女ができたか?出会いはなんでいい。あとでこの人に会ってよかったと思えることだ」という。織田には美人妻・由美とふたりの子供がいる。いつ訪ねてもエロ本をほっぽり出し、子供と遊んでいる、一見その系の人に見える料理人。(笑) 

織田と妻・由美(森絵梨佳)の出会い:
大学時代、織田はある女性に会うことになっていたが、会ったのが由美。逢瀬を重ね、由美が妊娠した。躊躇することなく織田は大学を辞め、居酒屋で働き、家族を養う決心をした。口癖が「出会いなんてどうでもいい、・・・」だった。
由美は同級生・美奈子(貫地谷しほり)といまでも親しく付き合っている。

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美奈子と小野の出会い:

美奈子は美容師。常連客・板橋香澄(MEGUMI)から「良い男がいるから付き合ってみないか」と言われ、その気はないと答えたが、後日電話で「姉の板橋から聞きました・・」と電話があった。しかし、この電話の声にときめきを感じお付き合いをすることにするとなんとボクシング選手の小野だった。小野はチャンピオンになって、美奈子にプロポーズ。

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こんな調子で次から、次へと人の環が大きくなっていきます。

美奈子と小野は織田家族を訪ね、そこで佐藤に会い、織田と佐藤にサインの“色紙”を渡す。これが伏線になります。さらに、公園で出会った、同級生に虐められる視聴力障害少年に小野が、力をつけろ!と“枯れ木”を折って見せるシーンも伏線になります。

藤間夫妻の出会い:
妻と子供が家から出て行ったと言い、本人は使った鋏を置きっぱなしにするなど些細なことが溜り積もって妻を不機嫌にしたのが原因だという。大人しい、気弱そうな人。出会いは、妻が落としたサイフを拾ったこと。いまでは、出会えたのが彼女でよかったと思っているという。藤間の妻は姿を見せず、観るものの想像に任せています。佐藤は子供さんにと、藤間に小野のサイン色紙を渡した。

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佐藤と織田が同級生の結婚式に参加する日、織田のタイトル防衛戦の日だった。会場には、藤間が娘さんと一緒に観戦していた。
披露宴が終わり、夜帰宅途中に渋滞に巻き込まれ、いらいらしているところで、警備員として誘導灯を振る紗季に出会った。佐藤は、まさに、奇跡の再会だと結婚式での引き出物“シャンプー”を渡し、ふたりで微笑んだ。

一方、ウィンストン小野が試合に敗れ、チャンピオンベルトを失った。

それから10年。
いきなり、ファミレスで食事する久留米家の会話から物語が始まります。夫・邦彦(柳憂怜)、妻マリ子(濱田マリ)、息子・和人(荻原利久)。この演出に、まずは驚きでした!
邦彦はウエイトレスが持ってきた料理が、注文したものと間違っていても、文句を言わず食べる人。これに「ペコペコする親父が嫌だ!」と怒る和人。「お父さんは、昔はお前と同じだった。偉そうにするな!」と母親が叱る。どんな出会いでこのふたりは夫婦になったのか、観る人に任されます。これが面白いところ!

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和人は織田の長女・美緒(恒松祐里)と同級生。

ここからは、織田と妻・由美(森絵梨佳)のその後は、美緒を通して語られる。
また、美奈子と小野のその後は、小野のTVインタビューを見て知ることになります。さらに、藤間夫妻については、藤間からの電話だけ。

佐藤と紗季のその後に焦点を合わせ、物語は展開されます。すばらしい脚本・演出です!

美緒はだらしない父親が大嫌い。ところが自転車トラブルの解決には、和人を呼び出す。理由があっち系で強そうだかだという。(笑) 
美緒は美しい母親がこんな男と結婚しているのが分からないというが、母親が父親に信頼するのを見て、父親の良さを知っている。
一方、和人も弱弱しい父親だと批判するが、父親のやり方を真似て、美緒がファミレスのアルバイトで客に絡まれているところを救う。(笑) 和人も美緒同様に、両親を見て、家族のよさを知っている。

佐藤と紗季。
佐藤は、同棲している紗季に、結婚指輪を渡し結婚したいと言いそびれている。こんな佐藤に嫌気が差して、紗季は家を出た。ふたりの関係は、佐藤のしゃべり方や気力のない風体から察することが出来ます。なぜ奇跡が起こらなかったのか。そうではない、奇跡を起こす努力をしなかったのです。

佐藤はシャンプーを買いにスパーに出かけ、美緒に会い、織田の家族の話を聞き、「出会いはなんでもいい。あとで、・・」と自慢げに話した織田を思い出す。
小野が妻やフアンのために、チャンピオン戦に再挑戦するというニュースを目にする。
藤間は電話で、サイフは妻がわざと落としたんだと、伝えてきた。これで藤間夫婦の今が分かります。

小野がチャンピオン戦に再挑戦する日。ストリートミュージシャンの歌が流れるなかで、佐藤がバスに乗る紗季を見る。バスを追っかけて、追っかけて仙台の街を走る。井坂作品ですから走る!(笑)
枯れ木を踏んでパッキンという音に紗季が振り向いた。バスが走り去ったので、
佐藤が戻ろうとすると、知覚障害のある子供が倒れており介抱しているところに紗季が現れた。
「あのとき紗季に会えてよかったと伝えたかった」と話し、紗季をバスに案内し笑顔で見送った。

小野もほとんどノックダウンされるところで、力をつけろとエールを送ったあの少年に助けられ、敗れはしたが、いい試合だった。
                *
和人が、仙台駅前の大型ビジョンを望むペデストリアンデッキで、ストリートミュージシャンの弾き語りに耳を傾けているところに美緒が近付いてくるというラストシーン、人の輪が未来に繋がっていく愛の物語、みごとでした!
                
過去は変えられない。しかし、未来は自分の努力でいかようにも変えられる。努力しだいで幸せになれる。「普通でいい、あなたに会えてよかった」という環境をつくりなさいと教えてくれています。すばらしい!!
                                                   ****


【公式】『アイネクライネナハトムジーク』9.20(金)公開/本予告

「わが母の記」(2012)いつになっても子を思う母の愛、見とれなかった息子の無念!

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井上靖の自伝的小説「わが母の記」3部作の映画化。監督は原田正人さん。
昭和39年を舞台に、幼少期に母に育てられなかったことに葛藤を抱き距離をとって暮らす小説家伊上洪作が、家族に支えられながら、記憶が薄れていく母・八重と母子の絆を確めるというもの。

「老い」はどのように母を変え、それを見つめる家族がどのように変わっていくのか、心温まる家族の絆が丁寧に描かれています。原田監督にはめずらしく会話がゆっくりで、情感たっぷりで、小津作品の雰囲気があります。(笑)

伊吹洪作を役所広司さん、老いて消えゆく記憶をたどる母親・八重を今は亡き名優樹木希林さん。三姉妹には三女・琴子、長女・志賀子、次女・紀子をそれぞれ宮崎あおい美村里江・菊池菊池亜希子さん、他に南果歩キムラ緑子三浦貴大さんらが出演です。

希林さんの惚けばあちゃんの演技役所さんと紡ぐ母と息子の絆。宮﨑さんのあどけない制服姿の女学生から成人した女性までの歳を重ねる演技がすばらしいです。
四季を通じての、伊豆や湯ヶ島、沼津のほか、東京・世田谷の井上靖邸などの風景が、富貴晴美さんの音楽と相まって物語に風格を添えています。

****(ねたばれ)
冒頭、主人公・洪作(役所広司)の回想シーン。雨のなかで佇む親子。洪作が幼くして母・八重(内田也哉子)からお守りを渡され、土蔵のおばあちゃんに預けられるシーンから物語が始まります。
1959秋、
父・隼人(三国連太郎)の見舞いに伊豆湯ヶ島の実家を訪れた洪作は、妹・志賀子(キムラ緑子)と食事しながら、「土砂ぶりの日、僕だけが棄てられたようなものだよ」と母・八重の思い出を語る。
父親に「(小説が)よく売れている。50万部で家族総出の仕事だ」と帰りの挨拶をすると、父がしっかり手を握り返してくる。小津作品を観ているようで、細かい演出がなされています。
わさびを洗う母・八重に「また来る」と挨拶してバス停に、母が追っかけわさびを届けに来る。母親の心使いが伝わってきます。秋の伊豆の風景がとてもうつくしく、日本の秋の美しさに癒されます。

東京世田谷の自宅に帰ると、家族総出で出版本の検印作業中。そこに三女琴子(宮﨑あおい)の姿はない。妻・美津(赤間麻里子)が「琴子は、小説に書かれることを嫌がって抵抗している」と言う。「家族のために書いてるんだよ!」と洪作。家族のなかでの絶対的権力保持者。(笑)
しばらくして祖父が亡くなった。
琴子が祖母・八重に「父(洪作)はどんな人だった」と聞くと、「小説を読めばわかる」と言い「探す子、地球は・・・」と呟く。宮崎さんの制服姿がよく合っています!

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1960夏の伊上家。
トランプに興じる琴子たち三姉妹。おばあちゃんの“しんばさん”(祖父の弟)のはなしで盛り上がる。
そこに、洪作が運転手兼書生として瀬川(三浦貴大)を連れて帰宅。
早速、八重が洪作をつかまえて「“洪作さん”に話しておきたいことがある」と“しんばさん”のはなしを持ち出す。洪作は「しんばさんは70年前に死んだ人、おばあちゃんには夫であるおじいちゃんの話は出てこないのか!」と嘆く。

おばあちゃんの頭は少しずつ壊れてきている。希林さんの惚けっぷりがおもしろい! 
1963年、伊豆伊東
ホテルで家族をあげてのおばあちゃんの誕生パーテイー。うつくしく成長した3姉妹、次女紀子はハワイの大学院に進みたいと言い、長女郁子( ミムラさん)は結婚が決まった。

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郁子が「おばあちゃんの記憶は10才で止まっているが、香典の心配をしている」と父・洪作に。「香典帳を持ってきているか。(笑)自分の亭主を忘れているのに。まだ許していないが相手が記憶をなくしたのでは仕方がない」と表面は強面だが、心のなかでは老いていく母親のために泣いていた。

1966年、おばあちゃんの面倒を見ている洪作の妹・志賀子さんが、旦那さんが車両事故で寝込み面倒がみれなくなり、洪作が引き取ることになった。
みんなはあまり乗り気でないので、琴子が軽井沢で面倒を見ることになった。琴子は瀬川と一緒におばあちゃんを伊豆に迎えにいくと、おばあちゃんは瀬川を見て「アメリカさん」と呼ぶ(一つ年下の叔父のこと)。もう人の見わけがつかなくなっていた。

父洪作と琴子
軽井沢別荘に久しぶりに父がやって来ると琴子が居ない。瀬川に聞くと大学の学友とテニスだという。洪作が琴子を見付け出し、二人でバーに入り、ボーイフレンドか、紹介する気があるか」と問うと「今日のことを書くの。おばあちゃんも小説の題材」と酔っぱらって「お父さんがおばあちゃんをそう見ているのが分った、作家ですか、息子ですか。おばあちゃんを恨んでいる。うらんだカナリアは・・」と歌い、洪作をなじった。ここでの酔っぱらった宮﨑さんの演技は面白い。

別荘に帰って来ると、八重がいない。洪作と瀬川と琴子の三人で手分けし必死に探すと、神社でローソクに火をつけて回る八重を発見。雨が降り出し、濡れた八重を介抱する父を見て、琴子の父に対する気持ちに大きく変化した。洪作も琴子も八重に振り回されながら、ふたりは親子の絆を深めていた。

八重の最期の記憶
三本の連載締切日、編集の人が集まっているときに、おばあちゃんが、「そこで毎日書き物をしていた人が亡くなって3日です」と言い、「大勢な人がきました。あなたにはいつか一度話しておきます。もう二度と話すことないと思うので」と言う。
洪作が「一緒に住んでる人のこと?」と問うと「私の息子を盗んだ人です」。
「おばあちゃんは息子の気持ちも考えず、放置したんですよね」。すると「雨がやんだ・・地球の、海峡。おかあさんと渡る海峡・・」と幼い頃洪作が書いた詩を諳んじる。洪作は大粒の涙を流し、あわてて洗面所に駆け込む。このシーンに毎回泣かされます。

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八重の徘徊。
次女紀子のハワイ大学入学を見届けようと、洪作夫婦と洪作の二番目の妹桑子(南果歩さん)が旅客船でハワイに旅立つ日、琴子はおばあちゃんと一緒に残ることになった。出航前に、海を見ていた妻・美津が「お義母さんは海を怖がっていた。あなたのことが心配だったようでした」という。

琴子は、八重がいなくなっていることに気付き、洪作に蓮格した。洪作は、琴子の知らせで、ただちに下船し、母は沼津御用邸のある海岸に急いだ。ここは洪作が子供の頃水泳訓練をした海。

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朝の海、洪作が待っていると、おばあちゃんと琴子がやって来る。洪作は迷惑をかけたと琴子に感謝し、おんぶして「昔は飛び込み台が沖にあって、あそこまで泳いだ」と八重に話かけながら海岸を歩いた。八重には洪作を死なせてはならないという母親の本能しか残っていなかった。

八重の最期。
洪作が宴会から帰宅すると、ひさしぶりに琴子が来ていた。この夜は、時計の音がやけに大きい。琴子は、この静けさに、おばあちゃんを思い出し、「皆が救済されたということ」と言う。
そこに、突然志賀子さんから電話が・・。しばらくして「いまおばあちゃん、息を引き取りました」に、洪作は「心から感謝している、おふくろも喜んでいる。最後まで見取ってもらったんだから。長い年月、ご苦労さまでした」と泣いた。
               
洪作は「急に姨捨のはなしが浮かんだ。足元がふらついている、捨てようとおもっても適当な場所がみつからない。おおふくろが怒るんだ。私一人のために探してくれたって罪にはなりますまい」と独り言ちた。母親の最後を看取れなかったことを詫びる洪作のこの言葉が、いつになっても思い出されます。母親の最後だけは看取ってあげたかったと!! 
                                               ****


『わが母の記』予告編

「愛がなんだ」(2019)恋と愛の違いがわからない。恋愛の指南書。

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監督は今泉力哉さんで、本日から「アイネクライネナハトムジーク」が公開されます。

恋と愛の違いがわからない。どこかで気づくだろうと思っていたところ、最後までわからない。恋愛の指南書です。脚本、演出、そして出演者の演技がすばらしく、彼らの恋愛ごっこに引き込まれます。

主演が岸井さんで、“あてがき”ではないのかというほどにすばらしい演技を見せてくれ、すっかり虜になりました。
そして「イケメンの彼なら好きになっても仕方がないな!」と思った相手の男が成田凌さん。この男、「こんなバカタレか」というどうしようもない男をうまく演じてくれます。

共演は、深川麻衣・若葉達也・江口のりこさんらです。

あらすじ:
猫背でひょろひょろのマモちゃんに出会い、恋に落ちた瞬間、テルコの世界はマモちゃん一色。会社の電話は取らないのに、マモちゃんからの携帯に連絡が入ると秒でとり、呼び出されると残業もせずにさっさと退社。どこにいようと電話一本で駆けつけ、平日の朝いきなり「動物園に行こう」と言われると会社を休む。ついに会社を首になっても、これ幸いとマモちゃんの家に押しかけ彼の下着を洗い、タンスを整理、鍋料理を作るバカ。(笑)

ついにマモから「鬱陶しい」と避けられる。失意のテルコが再就職の仕事に初出勤中にマモちゃんから電話が入り、仕事をほっぽりだし駆けつけると、マモちゃんの新しい彼女・しのぶさん(江口のりこ)に会うことに。こうしてマモちゃん、しのぶさんとマモの三角関係が続く。テルコはマモちゃんに翻弄されながらも、マモが忘れられない。しかし、ある日マモがやってきて、「別れたい」という。これにテルコが下したマモちゃんへの想いは・・・。

****(ねたばれ)
マモちゃん、実は頭が痛いと嘘をつき、テルコを呼び寄せご飯を作らせ、バスの掃除が終わると、「そろそろ帰ってくれ」という自己中な男なんです。テルコがこんな男のどこに惚れたか?友達の結婚式の二次会で声を掛けてくれたイケメンだったから。

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ここまでくるとこいつバカではないかと思うのですが、岸井さんの自然な流れの演技で消えてしまいます。(笑)他人事として見ているからこう思うわけで、恋に落ちた本人は、こんなもんかもしれませんね!

テルコは困ったことがあると唯一相談できる友達・葉子のところにでかける。葉子には仲原青(若葉達也)という写真家の恋人がいる。葉子は自由奔放に生き、仲原を振り回す。一方、仲原は振り回されてもひたすらに葉子に尽くすタイプ。仲原役の若葉さんのやさしさが、演技がすばらしい、世の女性の圧倒的な支持をうけているようです。

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マモちゃんが恋しているのはしのぶさん。一見がさつで全く人に気を使わないテルコとは正反対の性格。マモがどこに惚れたんですかね。しかし江口さんのしゃきしゃきした演技に納得させられます。

この5人のラブゲーム、傍観者として“なにやってんだ”と、経験者には“それ辛かったよ”“よくあるある”と思わせるようなセリフ、演出、映像でリアルにみせてくれます

テルコは、久しぶりにマモちゃんから呼び出しがあり、すみれさんも加わったバーで飲んでの帰り、マモちゃんはテルコの家に泊まりベッドを共にする。マモちゃんのあそこが役立たず、ここでのふたりの会話が絶品です!マモちゃんのわるいことを全部知っても別れられない。(笑)

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しのぶさんの計画で、しのぶさん、マモちゃん、テルコに仲原の4人で河口湖の別荘に旅行。葉子が無断欠席したことで、しのぶさんの怒りのほこ先が仲原に向かい、「仲原はなんで葉子にふりまわされるの?」とデイスる。しのぶさんもよく言うよ。(笑) これを聞くマモちゃん、テルコ。

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ここから、それぞれのその後が語られます。

仲原は「葉子をダメにしているのは自分だ」と言い「葉子と別れる」という。これを聞いたテルコは葉子を訪ね「仲原のことをどう思っているか」と問う、「あんたこそなにしに」。「寂しくなることはあるか」に「ある」という。

マモちゃんがテルコのところに来て「テルコに会うのをやめる。テルコといると甘えが出てダメになるから」という。テルコは「そういわないで発展的なことをしよう」と言って別れた。

葉子は、「ネット検索で見つかったから」と仲原の写真展を訪ねていた。

一方、テルコはかってマモちゃんと動物園に行ったとき「俺は32歳になったら動物園の飼育員になる」といったことを思い出し、動物園飼育員になって「私はいまだ田中守(マモちゃん)になれない。愛がなんだ・・」と頑張っている。(笑)
               
劇場が、ほとんどが若い女性で、満杯でした。恋は盲目といわれますが、この作品でとてもよい疑似体験をしたでしょうね!

ラストシーン、テルコが何かに触れている。カメラが引かれて、それが象でした。“群盲象を評す”という秀逸なエンデイングでした!!
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『愛がなんだ』Homecomings主題歌「Cakes」入り予告編