映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「窮鼠はチーズの夢を見る」(2019)

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この作品、ホモセクシュアルの愛の物語ということで、観るのを躊躇しました。(笑) が、もうそんな時代ではないということを実感させてくれました。「愛はなんだ」(2019)ホモセクシュアル版といったところ、観客もこの作品公開時と同じように若い女性で溢れ、ほとんど男性がいないという状況。(笑) 

大学時代に関係があった大伴と後輩の今ケ瀬。受け身の恋愛しかしらない大伴が7年ぶりに自分を想い続けていた今ケ瀬に出会って、猛烈なアタックを受け、この男を好きになり、受け入れるまでの恋模様。

性描写は「火口のふたり」(2019)を超えているのではないでしょうか?主演の大倉忠義さんと成田凌さんがみごとに演じており、「his」(2020)もこの種作品の話題作でしたが、遙かにこれを凌駕し、これほどしっかり描かれた作品はないのではと思っています。

テーマは「惚れるということはどういうことか?」男とか女とか関係ないその行き着く先をしっかり描いています。二人の恋愛ゲームがミステリアスでヒヤヒヤしながら楽しめ、ラストシーンに余韻があります。

原作は水城せとなさんの同名コミック。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」「ピンクとグレイ」の行定勲さん。ちょっと突き抜けた作品に挑戦でしたね!脚本:堀泉杏、撮影:今井孝博。

主演:大倉忠義成田凌。共演:吉田詩織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子。


映画「窮鼠はチーズの夢を見る」予告編(出演:大倉忠義 、成田凌)

あらすじ(ねたばれ):

貿易商社に勤める大伴恭一(大倉忠義)をつけるかって関係にあった探偵・今ケ瀬渉(成田浚)。大伴の妻・知佳子(咲妃みゆ)からの依頼で不倫を調査していた。

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オフィスで証拠写真を示すと、「なんとかごまかしてくれ!」と大伴は今ケ瀬を食事に誘い、その後ホテルで今ケ瀬のキスを受け、愛撫される。こういうきわどいシーンから物語に入っていく。大倉さんと成田さんの演技がとても美しいし、美しく撮ってあり、いつの間のかホモセクシュアルのセックスに対する拒否感はなくなるという、うまい導入だと思います。(笑) この段階では大伴は「舌はいかん!」と拒否姿勢。

今ケ瀬のレポートで知佳子は「あなたとは金で繋がっていた関係のように思う。あなたのために離婚したい」と言い出す。

大伴は「2年の結婚生活で、セックスもうまくいってなかった」とこれを受け入れ、ひとりになって生活を始めた。

そのアパートに今ケ瀬が転がり込んで来てふたりの生活が始まった。今ケ瀬が料理、洗濯し、開けっぴろげにセックスを要求してくる。大伴はちょっと乗れないという感じ。

このころ大伴には、女性社員・井出瑠璃子(小原徳子)が、プレゼンテーションの指導受けと称して、近づいてくる。

今ケ瀬が掃除中にテーブルに置かれた同窓会の案内状を見た。送り先は松井夏生となっていた。夜帰宅した大伴に参加の可否を聞くと参加しないという。今ケ瀬はこれを聞いてほっとし、大伴の耳かきをしてやる。(笑) しかし、大伴は夏生にあって口頭で返事した。

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今ケ瀬は不在時、瑠璃子が「会社では会えないから」とアパートを訪ねてきて、セックスして帰っていった。その夜、今ケ瀬は大伴の異変に気付き、大伴が寝たあと、彼の携帯を調べた。大伴が「仕事の関係だ」と嘘ついたが今ケ瀬にはこの嘘は通じなかった。「最低のやつだ!完璧な人を探す!」とアパートを出て行った。

大伴はひとりでケイタリングのめしを食べてみて、今ケ瀬に悪いことをしたと反省をし「帰って来い!」と電話した。

今ケ瀬が帰ってきてからしばらくふたりは恋人のように身体に触れながら楽しそうに過ごした。

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夏生と大伴がレストランで食事中。そこに今ケ瀬は彼の恋人高杉を連れて訪れた。今ケ瀬は学生時代に大伴を紹介してもらった夏生に挨拶した。大伴は高杉に興味を持った。大伴が嫉妬するなんてことはこれまでなかった!

酔っぱらって大伴を夏生がアパートに送ってきて、大伴が今ケ瀬と一緒に住んでいることを知り、帰っていった。

目が覚めた大伴は、いつもパンツ姿で椅子に座ってタバコを吸う今ケ瀬に「大学時代お前は俺を嫌っていたと思った!」と声を掛けた。今ケ瀬は口をきかなかった。今ケ瀬は夏生を強く意識しだした。 

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夏生にふたりはレストランに呼び出された。今ケ瀬は「引いてください!」と夏生に求めたが、「恭一、あんたは誰にでもついていくネズミ。どぶネズミにはならないように!」と念を押し、「私と今ケ瀬、どちらを連れて帰る?」と大伴に決を求めた。「普通の男にはお前は無理!」と夏生と消えた。

ホテルで大伴は夏生と寝た。大伴は「ああ言うしかなかった!やつを悲しませたくなかった」と言うと、「立たない言い訳にするな!」と夏生が帰って行った。

大伴がアパートに帰ると今ケ瀬がTVを見ていたが、なにも語ることなくふたりはベッドに。

ある日、大伴が専務の妾の娘・国村たまき(吉田詩織)に出会った。すぐに専務が亡くなり、悲しむたまきに同情するように付き合いが始まった。感の良い今ケ瀬はふたりの関係に気付き「将来を取り戻すために寝たいか?」と言う。「女とするのは駄目だ!」を聞いた大伴は「終わりにしよう」とふたりの関係を切った!

今ケ瀬は泣いて去った。高杉に「大伴は長く煮込みをするような女が向いている。お前はもっと情の深い男を探せ!」と慰められた。

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たまきは母親を大切にして、結婚願望の強い女性だった。料理や掃除は慣れておらず、セックスも今ケ瀬の方がいい。大伴はホモセクシュアルが集まるライブを訪ねたが、今ケ瀬のような男はいなかった。

今ケ瀬は大伴を諦められず監視していて、大伴に見つかって、ふたりが激しく抱き合った。このシーンは夢のように美しく撮られています。音響がまた凄い!

今ケ瀬が再度「たまきにバレないようにうまくやればいい」と申し出たが、大伴が「人生で大切なことは一杯ある、もうそういう歳ではない」と拒否した。今ケ瀬は灰皿を整理して、もう戻らないと消えた!

たまきは「私が側にいては駄目ですか?彼が帰って来たらおとなしく引きます!」と大伴に訴えた。大伴は今ケ瀬がいなくなって分かった!たまきに真実を語った。

感想:

大伴が関わる妻・知佳子から始まって、女性社員・出井瑠璃子、同窓生の夏生、専務の娘・國村たまきを通して、大伴と今ケ瀬のお互いを思う「想い」が変化していく様がスリリングで丁寧に描かれました。愛されることしか知らない大伴が、相手を想うようになり、何が最も大切なのかに気付いていく様。そして、今カ瀬の決してぶれることのない「特別な人」としての恋心。

その中で性愛をしっかり捉え、これも変化していく様が描いています。大倉さんと成田さんの演技に感嘆、何か賞をあげたいですね!

             ***

「ミッドウェイ」(2019)リアルな戦場描写で戦争の痛みを感じる作品!

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太平洋戦争のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマ。監督が「インデペンデンス・デイ」「ホワイトハウス・ダウン」のローランド・エメリッヒということで、楽しみにしていました。

日本の真珠湾奇襲。ハワイ西方で訓練中であった米空母エンタープライズパイロットが駆けつけ、その惨状を目にするところから物語が始まり、その後の日米海軍の戦略、作戦準備を経て、日米海軍の決戦ともいうべきミドウエイ海戦が時間単位で描かれます。

戦闘経過に沿って、史実を大切に、尺の都合でその深さには限度がありますが、丁寧に描かれています。特に日米どちらが善で、どちらが悪という視点ではなく、どういう戦略・目的で、いかに戦われたかに焦点を当てて描いています。

戦史だけの紹介ならドラマにならない!戦友や家族の絆や苦しみ・悩みを絡ませながら、近代の海戦がいかなるものであったかが浮き上がる、うまい演出であったと思います。

この作品のテーマは何か?今という時点で何を描きたかったのか、愛国心に多少疑問を持ちましたが、危機管理にあっての戦略の重要性、戦術ではカバーできないこと、そして情報の収集や分析、組織の在り方など、コロナウイルスの危機管理戦略はどうあるべきであったかと考えさせられます。

そして、描かれるのはCGを使っての圧倒的なリアルな戦場描写です。空母への離着陸の緊張感、敵艦への急降下爆撃時の恐怖感。矢のように飛んでくる銃弾のなかで戦う精神力など、軍人たちに敬意を表したくなるシーンが多く、戦場の痛みが感じ取れる描写がよかったです!

脚本:ウェス・トゥーク、撮影監督:ゴビー・バウムガルトナー、編集:アダム・ウルフ、音楽:トーマス・ワンカー&ハラルド・クローサー

出演者:エド・スクラインパトリック・ウィルソンルーク・エヴァンスアーロン・エッカート豊川悦司浅野忠信國村隼


映画『ミッドウェイ』予告編

あらすじ(ねたばれ):

1937年12月4日。エドウイン・トレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)が駐日大使館付き武官補として来日し、武官交流会で山本五十六豊川悦司)と会話を交わすシーンから始まる。

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これがこの物語の肝です。彼は日本文化・産業を知るエキスパートだった。山本は「日本は長期戦では勝てない!資源のないない国だから日本を追い詰めるなよ!」と注文していた。トレイトンは4年後、太平洋艦隊情報主任参謀の任に就いており、ミッドウエイ海戦の情報戦において山本サイドと競うことになる。こういうエキスパートが第一線の軍レベル参謀としているというのが凄い!(陸大出身だけでは戦争ができないことを示しています!)

1941年12月7日エンタープライズはハワイ170哩西方で訓練中。ディック・ベスト大尉(エド・スクライン)は母艦への着陸訓練中だった。ふらつきながら着艦するシーンはリアル感がたっぷり。

急遽「ハワイに飛べ!」とウイリアム・ハルゼー(テニス・ウエイド)から命令される。

真珠湾ではロイ・ヒューズ大尉がまさに旗艦アリゾナから下船寸前。そこに日本海軍機の奇襲攻撃。

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奇襲攻撃は、舐めるようにアリゾナに集中爆撃。炎上する真珠湾停泊艦船。血液が流れるアリゾナ甲板。燃えるアリゾナからハイラインで隣接艦に脱出する兵士。対空射撃。この惨状を描くなかでどのシーンにも苦しむ兵士が写し込んであるのがいい。

情報主任参謀のレイトン少佐は現場に駆け付け、惨状を確認し、予測し得なかった自分の責任を強く感じた。

ロイ・ヒューズ大尉の家族にはまったく空爆の影響はない!山本長官の「民間人を標的にするな!」の指示がよく守られていた。ハワイ急襲はうまい描写でした。この日本軍の奇襲に対する米国の怒り・罵声は、ほとんど描かれてない!

ディックはなすすべもなく爆弾を抱えたまま母艦に帰還。そしてハワイに戻り、アナポリス同期のヒューズの安否を尋ね、真っ黒こげの彼を発見した。同期生が集まり彼を送った。

山本長官はハワイの惨状を伝える米ニュースを見て、「眠った巨人を起こした。恐ろしい決断は避けられない!」と感じ、第2航空戦隊司令官山口多聞少将(浅野忠信)を伴って海軍本部に赴き、「米空母は健在だ!」「米海軍の止めを刺すことの必要性」を訴えた。

最高戦争会議で、東条から出された「南方での資源確保のため海軍はこれを支援すべし」が決定されたが、山本は「ミッドウエイ決戦を計画せよ!」と山口に指示した。

一方、米海軍は、太平洋艦隊司令長官にチェスター・ニミッツ大将が着任。この人事システムも凄い!

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ニミッツウディ・ハレルソン)はレイトン少佐を呼び「山本の動きを読め!」と指示した。この情報要求が凄い!彼は自国の戦略家マハーンをしっかり読んだ海洋国家としての戦略を心得た男だった。

レイトンは暗号解読の天才能力を有するジョセフ・ロシュフォード少佐(ブレナン・ブラウン)の助けを借りで、広大な情報収集分析室を運営。自分の山本五十六感と膨大な資料の中から山本の動きを追っていた。

1942年2月1日。エンタープライズのハルゼー中将に、「敵を騙す!マーシャル群島で暴れて、出来るだけ日本海軍に損害を与えろ!と指示した。デイックはこの作戦に参加し、新米パイロットを指導しながら、戦闘に参加し多大の戦果を上げた。ダグラスSBDドーントレスで空母から海面すれすれで飛び出し、日本軍ゼロ戦に追われると、ジェイムス・マレー(キーアン・ジョンソン)通信手に機関銃を撃たせて対応し、急降下での爆撃、スリリングな戦闘シーンでした。しかし、デイックのこの闘い方にマレーは怖れを抱くようになる。(笑) ディックは第6飛行中隊長を命じられた。

1942年4月18日。ディックがエンタープラズから見ると空母ホーネットにノースアメリカンB-52ミッセルが搭載されていた。ジミー・ドーリットル中佐アーロン・エッカート)が荒天の中、この編隊で東京、名古屋、神戸、新潟等日本縦断の都市爆撃に飛び立った。この飛び立つシーン、一瞬、波に消えたように沈み飛び立つ映像は鳥肌ものでした。ドーリットルは日本爆撃のあと、海上に不時着し中国浙江省に脱出した。米海軍はドーリットルの戦果を潜水艦ノーチラスで日本の放送を傍受していた。

ドーリットルの空爆で陛下が防空壕に入るという事態が生じ、山本の戦略に決定的な影響を与えた。米海軍をミドウエイで撃つ!

1942年5月8日、米海軍は珊瑚海海戦で空母レキシントンを失い、稼働空母はエンタープライズとホーネットだけとなった。

山本、山口はミッドウエイ決戦を図上演習で、その構想を固めていた。

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ニミッツはレイトン少佐に「日本の本当の狙いはなにか?」を問うた。レイトンは「ミッドウエイで数週間後!」と日本軍の作戦を予測した。決め手は作戦のコードネーム「AF」だった。

ニミッツの処置はすぐにエンタープライズを戻せ!そしてワシントンを説得せよというものだった。

1942年5月28日フォード映画監督が戦意高揚映画を撮るとミッドウエイ島にカメラを設置した。日本軍がここに来るという情報に絶対的な確信を持っていた。(笑) 爆撃機偵察機をミッドウエイ島に配備し作戦準備を促進していた。

ディックは激しい条件下の離着艦訓練を部下に課して死傷者を出し苦しんでいた。妻のアン(マイティ・ムーア)が「部下はあなたを信じています」と優しく寄り添っていた。

空母ヨークタウン真珠湾で修理中であったが「72時間で完成させよ」とニミッツが厳命した。

レイトンのこの時点での予測は「6月4日0700ミッドウエイ島175哩に日本海軍進出」というものであった。

6月4日午前6時40分。日本軍のミッドウエイ島攻撃。フォード監督がこれを撮影。撃たれて負傷した。

午前7時10分日本海軍第1機動艦隊への米軍航空攻撃が始まる。山口少将が「素人だな!」というほどに、米軍機は艦船に近づけない。

第1航空艦隊司令長官南雲忠一中将(國村隼)のもとに「敵空母発見」の報が入る。このとき空母搭載機はミッドウエイ島爆撃のための爆弾を抱えていた。南雲は「まさか?」と表情を曇らせた。彼はミッドウエイ島を奪取した段階で米海軍は出くると決め付けていた!

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デイックは片翼を海水面に浸しながらエンタープライズを離れて敵空母に向かった。第2航空戦隊(山口少将)と米潜水艦ノーチラスの水雷作戦が始まった。

午前9時38分エンタープライズの第6雷撃隊が戦闘加入して米軍に有利に戦況が変わり出す! 9時55分ホーネットから雷撃隊が出撃。

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この状況に山口少将は南雲中将に「(装備の変更を辞めて爆弾のままで)そのままで戦闘機を発進させられたし!」と意見具申したが、南雲は「俺に何をやらせるか!」と無視した。これが日米航空決戦戦に決定的な影響を与えた!

空母が次々と火災。パイロットは帰る母艦がない!

午後4時30分。戦艦大和の山本長官のもとに「加賀、赤城、蒼龍が大火災!」の報が入る。山本は「米軍の罠に嵌った!現実を受け入れよう」と戦場離脱を命じた。その後、山口少将は「責任を取る」と部下に退艦を命じ、命を飛龍とともにした。

最後に:

米軍の動きが主体で、日本はこれに合わせるように描かれ、日本軍の多くは描かれない。それでも要領よくまとめられ、豊川、國村、浅野さんの雰囲気のある演技で、日本海軍の考えはよく表現されていました。

 ミッドウエイの戦略目標は米海軍の撃滅と同島の占領だった。これが空戦に決定的な影響を与えた。戦略目標は単純明快でなければならない。これを戦術でカバーすることは出来なかった。

 山口多聞少将が乗員を退却させ、自らは飛龍とともに沈み、最後の爆撃に出掛けたディックが生きて帰還するシーンで終わる“ミッドウエイ”海戦物語。「勝者も、敗者も、海に全てを捧げた」物語でした。

捕虜となった米軍パイロットを錨とともに海に落とすシーンは、本当にこんなことがあったのかといただけない。

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「グリンチ」(2018)サンタさんへのお願いは何にしようかな?

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WOWOWシネマで初公開、「SING/シング」(2016)のイルミネーション・エンターテインメント作品ということで観賞しました。

原作は1957年発表のドクター・スースの名作絵本「いじわるグリンチのクリスマス」。すでにTVアニメ、実写版(2000)があり、今作で3度目の映像作品です。もうストーリーに文句は付けようがない。では歌の良さと3Dアニメの面白さはあったが、テーマが見えにくかった。さて、本作、3Dアニメ化するとどうなるか?

 

監督はヤーロウ・チェイニースコット・モシャー、脚本はマイケル・レシュー、音楽はダニー・エルフマン

声の出演者:ベネディクト・カンバーバッチラシダ・ジョーンズ、キーナン・トンプソン、キャメロン・シーリー、アンジェラ・ランズベリーファレル・ウィリアムス

幼児のころの惨めな記憶を引きずって孤独に生きてきたグリンチ。年一度の大騒ぎのクリスマスが大嫌いでクリスマスを盗みたい。シングルマザーのお母さんを楽にしてあげたいシイディ・ルーはサンタさんにあることをお願いしたい。さてどちらの願いが叶ったでしょうか。そしてグリンチは・・。

クリスマスは何をする日でしょうか?日本人には耳が痛い!これをばっちり教えてくれます。(笑)

小さな子供たちの感想を聞きたい。きっと面白かった!と声を上げて笑うのではないでしょうか?イルミネーション・エンターテインメントの狙いはこれでしょう。


『グリンチ』予告編 (2018年)

あらすじ(ねたばれ):

夢でも空想でもない、クリスマスに湧くフー村。デコレーションが飾られた商店街の風景、子供たちが雪合戦やステートを楽しむ風景。「これが3D!」と言わんばかりの美しさです。

しかし、グリンチベネディクト・カンバーバッチ)はクリスマスが大嫌いで、相棒の犬マックスと村里を離れた切り立った峰にある洞穴で暮らしている。マックスが朝食を準備、食事が終われば身支度して好きなパイプオルガンを楽しむ。飽きるとマックス相手にチェス。犬には負けられないとイカサマは当たり前(笑)。ところでグリンチは人間なんですかね。(笑)

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この一連のグリンチの行動を愉快に見せてくれます。絶対に子供さんたちに受けるでしょう。

食材が亡くなってると気付き、スノーボートで村に買い物に出かける。見どころはスノーボートのスピード感

村では夜の仕事を終えたシングルマザーのドナ(ラシダ・ジョーンズ)が3階建のバスに乗って、乗るや否やコックリコックリで家路を急いていた。

グリンチは雪ダルマの首を落としたり、村人に挨拶もせず、楽隊に追われ、店ではお客に悪戯をするという、嫌われ者グリンチです。これを子供たちに真似されると困りますね。お母さんたちはどう説明するか?(笑)

グリンチは村一番のノー天気野郎のブリクルバウム(キーナン・トンプソン)に出会い、「今年のクリスマスはいつもの3倍の規模になる!」と聞かされる。

家に戻ったドナは双子の赤ちゃんに食事を準備。この準備がすざましい。(笑)

長女のシンディ(キャメロン・シーリー)がサンタさんに手紙を出すとスノーボートで郵便局に出掛ける。

シンディとグリンチが村でぶち当たった! シンディはサンタさんへの手紙を失った。困っているシンディにグリンチは「直接会って頼め!」と言い放った。これがシンディの心を動かした!「サンタさんに会いたい!」。

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グリンチがパイプオルガンを弾いているとき、洞穴の上空を山から切り出した大きな樅ノ木をドローンで運んでいるブリクルバウムに出会った。「あのツリーの点灯はさせん!」。

グリンチは自分が発明したカタパルトで空を飛び出し、沢山の村人が集まって今か今かと待っているツリーの点火式典に参加。運悪く点火ボタンの上に落ちた!ツリーの点火で一気に盛り上がるクリスマスへの期待。もう耐えられない!「村のクリスマスを盗む」ことに決めた。

なぜグリンチは洞穴に住み孤独で嫌がらせをする人になったのか?幼いころ、父母と別れ孤児院で育ち、人の幸せを見るのが嫌いになった。これだけで、子供たちが彼の気持ちが理解できるでしょうか?

そのころシンディが仲間のグルーパートを「自分たちの冒険小屋」に誘って、サンタ捕獲作戦を練ったが、いい案がでない。母ドナから借りたボーリング玉をどう使うか、子供の冒険心を刺激する描写が楽しい!

仲間をイルミネーションのテーマパークに集めてサンタ捕獲案を練ろうとして、子供の夜遊びは駄目!と時間切れ。次の日、シンディの家に集まることになった。うつくしいイルミネーションのテーマパークを見てください!

一方のグリンチはサンタになって、クリスマスのデコレーションやプレゼントを盗み出すというもの。

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先ずはトナカの捕獲の旅にでた。トナカイの大群に出会ったが逃げられ、太ったトナカイ・フレッドを掴まえた。そしてブリクルバウムの屋上に飾ってあるソリを盗んだ。

いよいよクリスマスイブ。シンディは皆で考えたサンタ捕獲罠を仕掛けて眠った。

グリンチは夜になって、村の家に片っ端から入って、デコレーションやプレゼントを盗みだした。最後の家がシンディの家だった。グリンチは罠にはまり、シンディに捕らわれた。「プレゼントを持ってくるから!」と放たれたが、「私のママを助けて欲しい」というシンディの願いに、グリンチは戸惑った!

クリスマスの朝、沢山のかっぱらったものを1000mのクランピット山に隠したが、村の様子を望遠鏡で覘くと、誰も困っていない。

朝、シンディが「サンタさんが何ももってこなかった」と母ドナに「サンタさんを罠に掛けたから!」と謝ると、「盗られたのは物だけ。クリスマスはあります。最高の贈り物を貰ったわ!」とドナはシンディに感謝した。

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これを見たグリンチの心は温かく開かれていくのだった。盗んだものは皆さんに戻した。シンディから晩餐会に呼ばれ、「クりスマスは大嫌いだった。本当に嫌いなのは孤独だ。シンディの優しさが私を変えました!」ともう大感激でした。

感想:

子供向けの作りになっているので、大人がとやかく言うのは筋違いではないかもしれませんが、キャッチコピーが示すように「このあと、どんどんひねくれる。」「この冬、とんでもないものが盗まれる。」と34D、IMAXで描くキャラクターの動きを楽しむカラフルで綺麗でファンタスティック作品になっていたように思います。子供目線なら満点でしょう!

孤独でひねくれたおじさん(53歳)が「人の愛に目覚める」という子供向けアニメに驚きでした。(笑) 

                ***

吹込版:

グリンチ大泉洋

ドナ:杏

ブリクルバウム:秋山竜次

シンディ・ルー:横溝菜帆

ナレーター:宮野真守

「人数の町」(2019)

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気になるタイトルに、主演が中村倫也さん共演に石橋静河さんということで観ることにしました。

監督はCMやMVで活躍の荒木伸二さん、映画監督レビュー。第1回木下グループ新人監督賞・準グランプリに選ばれたオリジナル・ストーリーです。

借金取りに追われる青年が、数合わせに協力すれば楽に暮らせると連れてこられた“人数の町”。仕事は単純で、食べることやセックスに不自由なく、しっかり監視されて暴力もなく快適な生活だと思ったが、新たに入ってきた女性を愛することで彼の生き方が問われるという、ミステリアスな社会派作品。

どこかに存在した、存在する、存在するであろう町。今の政治状況をパロっているようで、SNS社会の怖さを訴えていて、“怖い、気持ちの悪い!作品でした。

ストーリーや映画手法に未熟さが散見されますが、監督初作品にこの作品で臨んだ荒木さんの心意気に期待したいと思います。

撮影:四宮英寿、編集:長瀬万里。主演:中村倫也、共演;石橋静河、立花恵理、山中聡


中村倫也が主演!映画『人数の町』予告編

あらすじ(ねたばれ):

蒼山哲也(中村倫也)は借金取りから暴力を受けているときに人数の町の管理人(チューター)のボス:ポール(山中聰)に助けられ、数合わせに利用される人(チュード)として、収容施設に連れてこられた。チューターは黄色いつなぎを着ている。

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首に逃走防止のチップを埋められ、チュード共通のパーカーを着せられる。部屋は個室が与えられ、そこにはチュードが安心して暮らせる仕組み(バイブル)が備えられていた。

チュードは常にチュードとしての魂を維持するため、雑念が出て来ないようプールで身体を洗い清める。ここは男女交際の場でもある。彼らはメモ用紙を持っていて部屋番号を交換することでセックスを約束する。蒼山は宮野真白(川村沙也)からメモを貰った。

プールでモデルのような美しい末永緑(立花恵理)に出会った。彼女は」とても人気のある女性で次々とメモを受け取る。ここの生活を満喫しているようだった。

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食堂は回転ずしシステム。アナウンスされる“称賛!”“デスリタイム!”に会わせてSNSのメールにナイスを入れると料理が出てくる仕組み。バンバン、ナイスを押す。何に賛同しているかなど関係ない、数だけあればよいのだ。(笑) これブロッグの評価順位に似ていますね。(笑) ここで黒田茂(草野イニ)に出会う。

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施設はフェンスで囲まれている。このフェンスが安っぽい。(笑) 簡単に外に出れるのではないかと、蒼山、黒川が挑んだが、首もチップが作動して頭が割れると思うほどの大音響が入って来る。脱出は無理かも?

セックスは自由。子供は託児所で預かり、親と過ごすことはない。結婚は禁止。

部屋には避妊具が完備されている。

緑は夫の暴力に耐えられず刺し殺し、モモという娘を連れてこの施設に入所。たまに託児所でモモを覘き見するぐらいで、大らかなセックス生活を楽しんでいる。

チューターとチュードのセックスは禁止されているが、どうやらこれは守られていないらしい。

数でこなす仕事、選挙。チューターのジョージ(植村宏司)が大量に票を、市民に化けて金で手に入れ、バスで投票会場にチュードたちに送り込み、投票させる。こんな仕組みはいまでもやられている。転んだ人を助けたら、金を握らされたという例は一杯ある。(笑) 野外で行動する際は、バスの中にいるチューター・ジョン(橋野淳平)の持つ発信装置(キャンセラー)でチュードの首についているチップが操作される仕組みで監視されている。

新規開店のハンバーグ店に客として並び、うまそうに食って写メをSNSで流す。(笑) まだまだある。新薬開発のモルモット、駅前での死の抗議デモなどしっかり紹介してくれます。

ある日、突然にチュードの多くがいなくなり、蒼山らは町の清掃作業に駆り出される。これが怖い! あたらしいチュードたちがやってきた。

村木紅子(石橋静河はTVでテロ事件ニュースを見て、その中に妹に似た人を見つけ、チューターに導かれこの施設に探しにやってきた。こんな仕事もやっている。首にチップを付けて、パーカーを着て食堂に行くと、そこで妹・緑に会うことが出来た。しかし、緑は戻らないという。紅子はモモだけは連れて帰りたいと思っていたところで、プールで蒼山に出会った。蒼山は紅子に惹かれた!

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蒼山はここで生活ことを勧めたが、紅子の硬いモモを連れて町に戻るという固い意思に従うことにして、3人でこの施設を脱出。うまく脱出は出来たが、ポールに掴まり、「紅子を愛している。みんなで一緒に暮らしたい」とポールの支配を拒否したが、紅子が妊娠し、生活は苦しい。遂に、蒼山はポールの支配下で、黄色いつなぎを着ることにした!

感想:

物語の背景となる政治体制。思想も姿も見えない「数」という統治者、現在社会はこの道を辿っているように思え、この設定は上手いと思いました。

この統治者のもとにあっての人間の尊厳、自由を問うた作品。数さえあれば統治できるシステム、「人数の町」。人はいくら欲望が満たされても、アイデンティティーを失っては生きていけない!

蒼山と紅子が施設を脱出してその後は・・・と思っているところにこの結末。どんでん返しとも思える結末に唖然としました。決して楽して自由が得られることなどないが、この可能性は高いかもしれない。これが怖い! 

演出で経過時間を紅子の妊娠、子供の成長で表現されたが、分かり難かった。

蒼山哲也の紅子への愛が彼の行動を“決定的”にしたが、これを訴える表現が乏しい。そろそろ、石橋静河さんは演技上での大きな転換期に差し掛かっていると思います。

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「宇宙でいちばんあかるい屋根」(2020)

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本作が清原果耶ちゃんの映画初主演作品。さらに「新聞記者」(2019)の藤井道人監督が描く思春期の少女の成長物語に興味をもって、観ることにしました。

監督がこんなファンタジーで、ピュアな物語を作るのか!清原果那ちゃんの持てる全ての佇まいがスクリーンに溢れ、短期間によくぞここまで成長したなと感動しました!

 人の暖かさに直接触れて成長する思春期の少女の物語、人を誹謗中傷するSNS世界にあって、清涼の一服。藤井監督と清原果那ちゃんにふさわしい作品だと思います。

 高校受験を控えた夏休み。心配ごとを多く抱えてもやもやしていた少女が、不思議な老婆に出会う。少女は老婆に励まされ、家族や恋人など人の繋がりの奇跡を確信し、幸せとはないか、愛することの大切さ、自分のやりたいことを見つけていくというファンタジーストーリー。

 原作は野中ともの同名小説。監督・脚本:藤井道人、撮影:上野千歳、美術:部谷京子、音楽:大間々昴、主題歌Cocco歌清原果那。

主演:清原果那。共演:桃井かおり伊藤健太郎水野美紀、坂井真紀、吉岡秀隆


映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』本予告 9月4日全国公開

 あらすじ(ねたばれ)

物語は2005年夏のある夜、中学3年生の大石つばめ(清原果那)が、習字学習を終えて、教室の屋上で、自宅の隣にすむ大学生朝倉亨(伊藤健太郎)に誕生日のカードを書いているシーンから始まります。

教室から帰って朝倉家の郵便受けに投函して、朝起きて郵便受けを確認しようとすると、亨に見つかってしまう。慌てて家に逃げ込むつばめ。(笑)

 つばめは2歳のとき生母・ひばり(水野美紀)と別れ、母親の顔を知らない。父・敏雄(吉岡秀隆)は後妻に麻子(坂井真紀)を迎え、現在大きなお腹を抱えている。つばめの悩みは新しい子が生まれると自分は可愛がってもらえないのではということ。もうひとつ、隣の亨に自分の好きだという気持ちを伝えること。

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 大学生の亨には悩みがある。姉のいずみ(清水くるみ)がヤンキーの森島(笠松将)と付き合っており、姉は幸せになれないというもの。彼はバンジョーを弾き、バンド活動をしている。庭にはホウズキの実がなっていた。

 登校すると友達から「これみて!」と掲示版(SNS)を見せられる。元カレの笹川誠(醍醐虎沙郎)のいたずら投稿。げんなりのつばめ。

 学校が終わっての習字教室。つばめは字を書くことが大好きで今日は「後悔」という字を力強く書いた。牛山先生(中山崇)が「悔やんだ割りには元気がある」と褒める。字の練習が終わって屋上に出ると、そこにキックボードがあり、これで遊んでいると変な衣装で得体の知れない老婆が「キックボード教えろ!」と話しかけてきた。乗れるようになったお婆ちゃん。水溜まりに写る姿は、宇宙からやってきたお婆ちゃんに見えた! 自ら「星空に遊ぶお婆ちゃん、“星ばあ”だ」と名乗った。桃井かおりさんの星ばあの姿は幻想的でとてもおもしろい!

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歳とったら何でもできる!というから、つばめは「亨に書いたレターが恥ずかしいから回収して!」と頼んだ!

 次の日の習字教室で、つばめは「変化」という字を書いた。この字を見た牛山先生は墨絵を見せて「やってみないか!山上先生の絵は見たよね!」と勧めた。つばめは「家族と相談します」と即答を避けた。

 屋上に上がると星ばあが亨に出した誕生日カードを回収してくれていて、「前に進め!時間をもっと気持ちよく使え!直接言え!」とコメントした。「直接言え!」が今の時代特に大切だと思います。

 バンドの練習を終えて帰る亨に出会った。「誕生日おめでとうございます!」と挨拶すると「ありがとう!」と返ってきた。つばめが大感激した。

 つばめはこれで元気が出てきて、山上ひばりの水墨画集と東京での個展チケットを手に入れた。

 夜、屋上で星ばあに頼まれていちゃ野菜を渡した。うまそうに食べながら「いろんな屋根があるが、屋根をみればどんな人がいるか分かる。自分がどんな屋根の下に住んでいうのか、“自分を知ること”が大切だ!」と言う。つばめは「どんな屋根の家に生まれたのか?2歳のときお母さんは自分を捨てて出て行ったから」と聞いた。

 つばめは「その前に私の頼みを聞いて欲しい」という星ばあの願いにつき合うことにした。

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ふたりは海岸で貝を拾い、婆ちゃんにお土産店で海坊主のマスコットを買ってもらい、水族館でクラゲを見て、「このクラゲを見たかった!クラゲになって空を、何も考えないで、飛んでみたい!」という。これにつばめは「くらげになっても面白くない。生まれてくる子のお姉ちゃんになれるかどうか?私とは血が繋がってない!」と応えた。星ばあは「夫婦は元々血の繋がりはない。あんたが繋げばいいんだ!」と教えた。この問題はよく聞く「家族の問題」ですが、答えが極めて明確です!「ホウズキの実でも、ふたりで育てれば繋がるんだ!」という。こういう話がすばらしい。この作品には心打つ言葉が沢山あります。

 クラゲが泳ぐ水槽シーンはまるで宇宙を覘いていてようで、人間という不思議、生命を覘いている気持ちになれます!

 星ばあは「孫に会せてもらったが、こんな可愛いものはない!空を飛べたら手を繋いで空を飛びたい!と水族館に来たわけを話した。

 つばめは意を決して、山上ひばりの個展を観にいった。“三羽のツバメ”の絵を魅入っていると女性(産みの母・ひばり)が「気に入った?これは10年前に描いたの。疲れて屋根に止まっているところ」と説明してくれた。(つばめを置いて家を出たころの絵?)

「若い人が観にきてくれたお礼に」とこの絵葉書を貰った。「ママ!」と駆け寄る女の子を見て、つばめは「お母さんは幸せなんだ!」と思ったが、複雑な気持ちだった。

雨の降る中、びしょぬれになりながら、泣いて家に戻った。つばめはひとりでないことに気付け!とリュックに付けた星ばあがくれた海坊主が揺れていた。この細かい描写が良い! 母と父が雨で濡れた身体を拭いてくれた。

つばめは三羽のつばめの絵葉書を見せて、「新しい子ができたら、私なんかどうでもいいんでしょう!」と父母に迫った!

つばめは泣きながら、ベッドのなかで、クラゲに掴まって自分が育った家の屋根を探す夢を見ていた。

 このころ、隣の大学生・亨は姉のいずみに暴力を振るった森島をバイクで追い駆けていて、交差点を渡る男(誠)を見て、これを避け横転、脚を骨折という重傷を負った。

つばめは隣家のホオズキを目にして、星ばあと亨の病院に急いだ。病室に入ると亨が「来てくれたの!ありがとう!」と喜び、姉いずみの問題で泣き言を漏らした。このことがつばめには嬉しかった。亨の人としての優しさに触れ、「やさしかった!」と星ばあの胸で泣いた。そして、亨の弱いところが見え、これを助けることの喜びを知った!

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 夏休み。家族は旅行に行ったが、つばめは亨のリハビリにつき合い、亨の回復に合わせ、ふたりで星なあの孫捜しをすることにした。星ばあの記憶“一軒家のえんじ色の屋根”。

 つばめは母麻子に生まれる赤ちゃんにと、靴下をプレゼントし「私が姉として面倒します」と伝えた。母が泣いて喜んでくれた。

 星ばあの孫捜しに、亨がバイクで転倒した際病院に通報した誠が加わった。誠から「見つかった!」というので、“星ばあ”とつばめが見に行くと、誠が中に入って行った。付いていくとキックボードがあった。星ばあはクラゲが泳ぐように踊って去っていった!

 夏休みが終わって、つばめは誠にファミレスに誘われ、「引っ越すことになった。このお婆ちゃんが会いに来て次の日に死んだらしい」と家族写真を見せた。そこに“星ばあ”が映っていた!つばめは涙が止まらなかった!

糸電話で星ばあに「会えましたか!」と伝えた。返事はつばめには聞こえた!

 感想:

桃井さん演じる“星ばあ”は幽霊か?実物か?とてもうまい演出で、ファミレスでのつばめと誠の会話が絶妙でした!これがこの物語の質の高さを示しています。さらに、年寄りを大切にする物語ということで、高評価したいです!(笑)

 キックボード、手紙、クラゲ、ホオズキ、墨絵、糸電話などの伏線を繋いで次々と奇跡のように人が結ばれていく物語。この物語に差し込まれる墨絵が、物語の進展に応し、つばめ27歳にしての個展に展示された墨絵であることが明らかになる。うまい話運びに唸ります。作品に気品があります!そして、作品テーマのひとつ、なりたい自分、血の繋がり、さらに生命の不思議を描いているとは!

 行動しなさい、自分を知りなさい、人を愛しなさいと極めて明確に行動基準を示し、ひとつひとつに挑戦して、自分の居場所、なりたい自分を作っていくという、この年頃の少年少女に必要な行動基準を示す。これを桃井かおりさんという謎めいた稀有の女優さんと清楚で芯のある美しい清原果那さんという、ふたりが持つキャラクターで描かれ、とても楽しく見ることが出来ます!

 作品の大きなテーマのひとつ、血の繋がたない家族の問題。答えが単純明快で舌を巻きました。つばめが「わたしは放っておかれる!」と母親に楯突いたが、“星ばあ”の孫探しや亨の姉を思う優しさから、同じ屋根の下で暮らせる幸せに気付き、母に謝るシーン、坂井さんの熱演がすばらしかった。しかし、その後で父敏雄から母麻子がつばめを産みの母ひばりに渡さなかった経緯を聞かされ、麻子の母としての在り方、人としてのすばらしさに感動します。

 清原さんはドラマ「朝がきた」(2015)で、銀行家の娘宮﨑あおいさんが大坂の富豪に嫁ぎ際の次女役でTV初参加。宮埼さんの演技を観て育ったといいます。そしてドラマ「蛍草 奈々の剣」(2019)では、主演となり葉室麟描く武士の娘を見事に演じてみせました。そして今回の作品を観て、すばらしい成長だと思いました。これからが楽しみです。

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「オペラ座の怪人」(2004)“忍ぶ恋”という結末に泣いた!

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全世界で大ヒットのミュージカル「オペラ座の怪人」の映画化。ミュージカルは苦手で観ませんが、大ヒットということで、NHKBSプレミアムで観賞。

音楽が素晴らしく、ミュージカル部分が普通の会話のように耳に入って来て、映画だからこそ描けるスケール感がある壮大な恋の物語を楽しみました。“忍ぶ恋”(「武士道」)という結末に泣けます! 

19世紀のパリ、オペラ座。幼いころの顔の傷で闇を背負い、その地下に棲む謎の怪人ファンタム。音楽の天才的才能を持つ彼は寄宿生のクリスティーヌに惹かれ、姿を隠して歌を指導し、彼女をプリマにまで育てるが、クリスティーヌの幼な友達ラウル子爵が現れたことで、ファントム、クリスティーヌ、ラウルの恋の行方は?

監督はジョエル・シューマカー。原作:ガストン・ルルー、脚本:ジョエル・シューマカーアンドリュー・ロイド・ウェバー、撮影:ジョン・マシソン、美術:アンソニー・プラット、編集:テリー・ローリングス、音楽:アンドリュー・ロイド・ウェバー

出演はジェラルド・バトラーエミー・ロッサムパトリック・ウィルソンミランダ・リチャードソン、ミニー・ドライヴァー、シアラン・ハインズ、サイモン・キャロウ、ジェニファー・エリソン。


映画「オペラ座の怪人」日本版劇場予告

あらすじ(ねたばれ):

1919年パリ、今や廃墟と化したオペラ座で、かつての栄華を偲ぶ品々がオークションにかけられていた。 そこに、老紳士ラウル・シャニュイ子爵( パトリック・ウィルソン)と年老いたバレエ教師マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)がやってきて、地下で発見されたという振り子のオルゴールをジリーが20フランで指したが、ラウルが30フランで競り落とした。

次に、衝撃的な事件に登場したシャンデリアが競りに掛けられ、このシャンデエリアに関わる物語が始まる。

モノトーンで描かれる1919年からカラーで描かれる1870年のパリ、オペラ座の新作オペラハンニバルのリハーサル風景への変化、この演出がすばらしい!

そこに新支配人フィルマン(シアラン・ハインズ)とアンドレ(サイモン・キャロウ)が、そして新しくパトロンとなったラウル子爵が到着。踊り子のクリスティーヌ(エミー・ロッサム)は幼馴染みのラウルと気付いたが、支配人たちが「美人だ!」というクリスティーヌにラウルは気付かなかった。

突然、天井からたれものが落ちてきて、プリマのカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)が「よくある事故!二度とこの種の事故が無くならないと歌わない!」と舞台を去ってしまった。

ピンチヒッターに押されたのがクリスティーヌ。素晴らしい歌声で唄い出して、一気に本番ステージに移る。この歌声にラウルが「クリスティーヌか?」と気付いた。

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ステージが終わって、親友の踊り子メグ・ジリー(ジェニファー・エリソン)が「完璧!何故?」とやってきた。「いつも夢の中にいる音楽の天子が守ってくれている」と応えた。楽屋にはファントムからの一輪のバラが届けられていた。

ラウルが食事に誘って馬車を呼びに行った隙に、突然灯が消えて、ファントム(ジェラルド・バトラー)が現れ、「俺が天子だ!」とクルスティーヌを誘い、オペラ座の地下を流れる運河を舟で彼の隠し部屋、ロウソクの灯で浮き上がる豪華な部屋に連れてきた。そこにはクリスティーヌそっくりの等身大の蝋人形があった。「もう逃げられないぞ!」と身体に触れられ、気を失って、赤いベットに運ばれた。目覚めたクリスティーヌがファントムの仮面の下の顔を見たとき、激しく彼が怒った!

クリスティーヌがいなくなって楽屋は大騒ぎ。裏方のジョセフが「怪人が現れて首にロープを捲くぞ!」と脅す。次のステージで彼がこの罠にはまるとは!

支配人たちが騒いでいるとき、ファントムから「クリスティーヌは無事だ!カルロッタは歌手生命が終わった、クルスティーヌが後を継ぐ!5番席を開けておけ!」という手紙が舞い込んできた。クルスティーヌは無事、戻されていた。

これに反発するのがカルロッタ。「クリスティーヌはパトロンと寝た!」というスキャンダルを流し、これに支配人たちも動かされ、カルロッタがプリマとして幕が開いた。

5番席に現れたファントムは汚い手を使った。カルロッタが喉を癒すために使ったスプレーに薬を入れて彼女の喉を潰した。突然声の出なくなったカルロッタに代わって、クルスティーヌの代役が告げられ、しばらくの間バレーで繋いでいるとき、裏方のジョセフが首にロープを掛けられ天井から舞台に落下!劇場内が大混乱に陥った。

雪の降る屋上に出たクリスティーヌは追って来たラウルに「ファントムの音楽はすばらしいが、目は悲しみに満ちていた」と怖さを口にした。ラウルは「闇の世界は忘れろ!僕がついている」と励ます。これをファントムが見ていた。クリスティーヌは「匿って、そして抱いて!ひとつの愛にひとつの人生」とラウルにキスした。

ファントムは「音楽を与えたがこんな仕返しか!平気で裏切る!」と悔しがった。

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仮面舞踏会(マスカレード)。マスカレードの曲で艶やかに踊り狂う!そのなかに婚約したクリスティーヌとラウルが踊っていた。そこにファントムが仮面で現れ「ドンファンの勝利」」という脚本を書いた。稽古に入る前に注意しておくと、クリスティーヌに「もっと学べ!誇りがあるなら我が師のもとに戻れ!」と語って、クリスティーヌとラウルの婚約の印をもぎ取った。そして消えていった。

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ラウルはマダム・ジリーからファントムが何者かを聞いた。サーカス団にいて醜い顔を見世物にする少年だった。叩く男を殺し逃げる彼の姿に哀れみに感じたジリーがオペラ座の地下に匿って、ここで育ち、天才的な建築家、デザイナー、作曲家、魔術師になったという。

その夜、雪の降る中、クリスティーヌは起き出して、馬車を呼び父親が眠る墓地に急いだ!抜け出したクリスティーヌをラウルが馬で追った。

クリスティーヌは「父は音楽の天才を送ると言ったが、それは幸せの世界を砕くものだった」と父に別れを言うためにやって来たのだった。墓の中からやさしい声で「私の導きが必要だ!」という優しい言葉に、クリスティーヌの閉ざされていた心が燃え上がったところに、ラウルが駆けつけ「それは父でない!」と斬りかかる。ファンタムだった。クルスティーヌは刺し殺そうとするラウルにファントムの命乞いをした。ここでのラウルとファントムのアクションも見どころです!

 ドンファンの勝利」上演時、クリスティーヌが歌えば必ずファントムは現れる。そこで彼をポリスに渡すというラウルの計画。

 クリスティーヌは「声を与えてくれた恩人を裏切れるだろうか?」と悩んで舞台に立った。ファントムが現れ、まるでふたりは恋人のように歌った。クリスティーヌが「ひとつの愛、ひとつの人生。いつも側にいて私を抱いて!」と歌って、ファントムの仮面を採った。ファントムだった。一斉にポリスが駆け出す。ファントムはあらかじめ準備していたようにシャンゼリアを吊るす索を切った。

落下するシャンゼリアで劇場が大火事に!ファントムがクリスティーヌを連れて、運河を舟で渡り、隠れ家に戻った。追うポリスたち。

 ラウルはジリーからファントムの居場所を聞いて追うが、運河に落ちで流されながら隠れ家に辿りついた。

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ファントムは「運命を受け入れろ!」とクリスティーヌに結婚指輪を渡した。クリスティーヌは「私には恐怖はない。ゆがんでいるのはあなたの顔ではなく、魂よ!あなたはひとりぼっちではない!」とキスした。クリスティーヌの愛の言葉がファンタムの心を闇から解き放った!

 やってきたラウルをロープで縛りあげていて、いつでも殺せる状態であったが、ファントムは「私を忘れろ!」とクリスティーヌをラウルに渡し、いずれかに去っていった。

 感想:

とても豪華なオペラ座を背景に繰り広げられるミステリアスでドキドキする愛のドラマ。これが堪らない!「ドンファンの勝利」のオペラの中でつぶやくふたりの愛の言葉。オペラなのか現実なのか?戸惑うクリスティーヌの行動。

 過去と現在を繋ぐ愛の物語。年老いたラウルが亡き妻クリスティーヌの墓に、オークションで手に入れたファントムの形見である振り子のオルゴールを手向けると、そこに一輪の赤いバラと指輪があることに気付いた。ファントムはクリスティーヌと別れたあとも、彼女を慕い続けていた。また、ラウルもクリスティーヌの気持ち知っていた。

「ひとつの愛にひとつの人生」。しかし、クリスティーヌはふたりの男性を愛していた。三人の愛に、いずれをとっても泣かされます!しかしファントムの「忍び恋」がベスト。

 豪華で華やかなオペラの舞台演出。まるでオペラを観ているようでした。楽屋の踊り子たち、アイロンかけ、食事の準備、楽譜の準備等、その舞台裏を丁寧に見せてくれるのも楽しい。ちらっと見せる踊り子たちの妖艶な姿が色っぽい!まるでドガの踊り子だった。

 ファントムがクリスティーヌを運河を舟で渡り秘密部屋に誘うシーンや、雪の中父の墓場を訪ねるシーンなどはミステリアスで、この時代の雰囲気が楽しめます。

 ジェラルド・バトラーエミー・ロッサムパトリック・ウィルソンの演技。感情がよく出ていて、歌の意味がよく伝わりよかったと思います。歌が上手いかどうかは分かりません!(笑)

観てない方はぜひ観ることをお勧めします。(皆さん観ていますよね!)

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「幸せへのまわり道」(2019)原題:A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD

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トム・ハンクスが第92回アカデミー賞助演男優賞を獲得した作品。ということで観ることにしました。

強面の若き雑誌記者ロイド・ボーゲルがアメリカの国民的子ども番組の司会者フレッド・ロジャース(1928~2003)との交流を通して、人間的な成長を遂げていく。フレッド・ロジャーズってどんな人物だったの?というヒューマンドラマ。

フレッド・ロジャースの言葉から出てくるご近所さんへの寛容さ。この言葉に癒され、自己改革に成功するロイド・ボーゲル。ロジャーズはどうしてこの寛容さを手にいれたか?誰しも怒りで自分を見失うことはあるが、鍛錬でこうなるという結末。怒りの相手に感謝の気持ちを持って1分間の瞑想をしてみようと思わせてくれる作品です。

邦題はフレッド・ロジャースがいかにしてこんな人物になったか。一方、原題はロジャーズと関われば心安らかに過ごせるという意味でしょうか?

監督はマリエル・ヘラー、女性監督です。原作:トム・ジュノー、脚本:ミカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハープスター、撮影:ジョディ・リー・ライプス。

出演者:トム・ハンクス、マシュー・リス、スーザン・ケレチ・ワトソン、クリス・クーパーらです。


トム・ハンクス主演の感動作『幸せへのまわり道』予告編

あらすじ(ねたばれ):

フレッド・ロジャーズ(トム・ハンクス)が人気番組「Mister Rogers' Neighborhood」のスタジオ入り。「私とご近所さんになりませんか?」と歌いながら、お馴染みの赤いセーターにシューズを履くところから物語は始まる。

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この穏やかなロジャーズ、トム・ハンクスが役に嵌っています!その吐く言葉“感情は言葉”、感情をコントロールすることで良いご近所関係が築ける」というのに含蓄があって、とても良い感じで物語に入っていけます!

色々なご近所さんのなかで、ロイド・ボーゲン(マシュー・リス)さんの話をしましょう。顔に傷のあるロイドさん、「許すということは不思議なことに愛しているほどに許すことが辛い!」。これも“いける”言葉です。

ロイドが姉ロレインの結婚式に妻のアンドレア(スーザン・ケレチ・ワトソン)と参加。そこで子供のころ母を置いて出て行った、今でも憎んでいる父ジュリー(クリス・クーパー)に出会った。ジュリーのスピーチは歌でやるという型破り!妻は「自分たちの結婚式でも、唄って欲しかった!」という。こんな父ジュリーの行動にロイドは怒り心頭、殴り合いとなり顔に傷を負った。ジュリー役のクリス・クーパーが恰好良いんですよ!親子、どこかロイドに似ている!

ロイドが働く出版社の編集部。部長のエレンから「ヒロー特集をやるので、ミスター・ロジャーズのインタビュー記事、400語でやって!」と命じられた。ロイドが嫌だったが、ロジャーズ以外ロイドのインタビューを受け入れなかったという。嫌われ者ロイドです!

妻はこの仕事を「ロジャーズのフアンよ!」ととても喜んだ!

ロイドはロジャーズのスタジオを訪れた。子供番組の収録が終わって、剣を振り回す子供をなだめているところだった。実にうまく子供に剣を収めさせる!(笑) 次にキャンプ用テントの展張シーンの撮影。ひとりでうまくテントが展張できず、「撮り直そう」という監督に、「そのまま使おう!」と場を和やかに収めてしまう。ロイドは「こいつ何者だ!」と思った。

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ロイドが「有名人としてのインタビューです」とテーマを話すが、「有名人なんてことば?何をするかが問題だ!番組で子供と向き合うことだ!」と全くコメンせず、逆に質問のしっぱなしで、どちらがインタビュアーか分からない。(笑) 実はロジャーズはロイドのことを調べ上げていて、悩めるロイドに興味があった!このロジャーズこそが、彼の本性だった。

インタビューを切り上げて、ロジャーズは次の収録に入る。“シュシュ”と香りをスプレーする女性。ロジャーズが操る指人形のダニエル君が「ちょっとお嬢さん、僕スカンクのダニエル・・・」(笑)  日本にはない、ロジャーズの番組の魅力を描いています。

ロイドは社に帰って、エレンに「企画を降りたい!」と申し出たが、エレンが拒否。エレンはロイドの変化を望んでいた?

ロイドは自宅アパートに戻り、ロジャースの出演ビデオを観て研究した。妻とベッドで寝ているところに突然ロジャーズからの電話! 妻が出ると「赤ちゃんがいるのに(ロイドを)寄こしてくれてありがとう」という。ロイドに代わると「話しの続きをしよう。ニューヨークだ」と伝えてきた。

ロイドがニューヨークのスタジオを訪ねると、演奏を楽しむ老人たちを収録していた。マネージャーから「ロジャーズは君みたいな人が好きなんだよ!君の記事は全部読んだ。“人情がない!”」と言われる。

スタジオから外に出ると沢山の人に温かく迎えられている。「彼はこういう人たちに守られている。14前に引き抜いたんだけど、聖人と暮らす気分よ あれは訓練の賜物!短気な人なの!」とスタジオの女性マネージャーが明かした。

ふたりで地下鉄に乗ると、乗客から「私とご近所さんになりませんか?」と番組のテーマソングが歌われる。

ロジャーズのアパートで取材。ダニエル君を取り出しておちゃめたっぷりに、亡くなった母の想い出などロイドの心の中を探ってくる。そして、自らの息子たちとの確執があったことを「完璧な親はいない」と明かし、「今は息子たちを誇りに思っている」と話した。しかし、ロイドはこの話を受け入れることができず、怒ってアパートを後にした。

ロイドが自宅アパートに帰ると、父親ジュリーが連れ合い・ドロシーと連れて来ていた。ジュリーが「車中で2泊、疲れた!」と言い、これにロイドが「出ていけ!」とふたりの喧嘩が始まり、シュリーが意識を失くして倒れた。

病院に担ぎこんだが、手術は必要ないという。ロイドは「ピツバーグに取材に行く」と言い出す。妻のアンロレイは「今は行くべきでない!」と止めたが、「君は子供が出来たら仕事は二の次にする!違うか!」と言い捨てて出て行った。

ロイドは駅で、バスに乗り込むロジャーズを見つけ、同乗して彼の撮影セットにやってきた。

番組の撮影が始まると、ロイドから「今日のゲストだ!」と呼ばれ「病院がテーマ」とステージに上げられた。「病院は病気を治すところだ。何時から怒っている?何を怒っている」とダニエル君が聞いて来る。ロイドはどこかで気を失ったらしく病床の母やピアノを弾く父親の夢を見た。

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次の日、ロイドはロジャーズお勧めのカフェにいた。「君は壊れていないよ!信念の人だ!お父さんの影響だ!」と言い、「目をつぶって、自分を養ってくれた人に感謝しよう」と1分間の瞑想を始めた。カフェの御客の皆さんが一斉にこれに習っていた。

映画ではここで1分間、瞑想することになります。こんな映画初めてだ!

ロイドは急いでアパートに戻り、妻アンドレアに父を放って出て行ったことを詫びた!「自分の感情にどう立ち向かうべきかが分かった。自分は怖くなると怒りに訴える」と泣いて詫びた!

そして、父の家に向かい、父を介護しながら、インタビューのレビューを書いた。

目覚めた父ジュリーは、ロイドの態度に驚き「悪かった!」と詫びた。

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ロジャーズはロイドの書いたレビューに、謝意のためにロイドとジュリーを訪ねた。そしてジュリーにそっと囁いた! 何を囁いたか?

 感想:

「Mister Rogers' Neighborhood」のスタジオがすばらしい!スタジオとフレッド・ロジャーズの振舞いを見ているだけで、とてもファンタジーな雰囲気で心温まります。

このようなフレッド・ロジャーズが出来上がるのは、磨かれた話術や歌やダンス、何よりもゲストひとりひとりを知り尽くす努力と大切に尽くす気苦労など、彼のステージ上では見えない努力の積み上げであることが分かります。

 直線では見つけることが出来ない、回り道だからこそ見つかる人生の大切なもの。フレッド・ロジャーズの番組がヒットしないわけがない!

 ロイドはロジャーズの人柄に引きつけられ、自分の心を開くことが出来た。その心をストレートに受け入れてくれる妻がいた。

 ロジャーズはロイドの物語を終わり、ステージを降りて、気分がすぐれないようで、ピアノに向かい激しく鍵盤を叩いた!ロジャースも普通の人なんです!こうやって、彼なりの感情コントロールをやっているんです!

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