映画って人生!

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「ブルージャスミン」(2014)好きな「ブルームーン」の歌詞を忘れた女性の生き様!

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監督がウッディ・アレン、第86回アカデミー賞ケイト・ブランシェットが主演女優賞を受賞した作品、WOWOW(吹替版)で観賞しました。

セレブな妻が夫の不倫に怒り、その腹いせに夫の不正事業を暴いたために夫が自殺、その地位・財産を失った。サンフランシスコに住む妹を頼り、美術デザイナーとして自立を志すなかで新しい伴侶を見つけるが、セレブ時代が忘れられず、嘘を重ねたことを見破られ、立ち上がれないはなし。(笑)

ウッディ・アレンはウイットに富んだ女性の見方を描いてくれますが今回はえらく辛辣で「こんな女くたばってしまえ!」と言わんばかりの結末。よほど耐えがたい記憶があるんですかね!よくセクハラで訴えられなかった!(笑)“男目線”で観ておくと女性選びに失敗しないと思います。(笑)

監督・脚本:ウッディ・アレン、撮影:ハビエル・アギーレサロベ。

出演者:ケイト・ブランシェットサリー・ホーキンスアレック・ボールドウィンピーター・サースガード、ルイス・C・K、ボビー・カナベイル、アンドリュース・ダイス・クレイ、マィケル・スタルバーク、タミー・プラン。


映画『ブルージャスミン』予告編

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、サンフランシスコ行きの機内。ジャネットことジャスミンケイト・ブランシェット)が隣の老婦人に「夫ハル(アレック・ボールドウィン)は“ブルームーン”が好きでセックスも上手かった!」と話しかける。驚く婦人。夫人が「あの人おかしい!」と驚く。ジャスミンに何があったかというシーンから始まります。

ジャスミンは大学時代に、投資家ハルに見初められ、人類学の学業を辞めて結婚。彼の名声でニューヨークの社交界にレビューしこれを唯一の誇りに生きていたが、夫が急死し、生活に行き詰まり、妹のジンジャー(サリー・ホーキンス)に身を寄せ人生をスタートさせようとサンフランシスコに向かっていた。

ジンジャーは前夫オーギー(アンドリュー・ダイス・クレイ)との間に二人の子をなしていた。今は大工職のチリ(ボビー・カナベイル)に結婚を迫られていた。

ジンジャーはチリに我慢してもらって、部屋を準備しジャスミンを受け入れた。

やってきたジャスミンは豪華なファッションでファーストクラスで来たと言いルイ・ヴィトンのスーツケース2個を持っていた。なんでこんなレディーがと驚くジンジャー。全く“経済観念”がない!

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シンジャーはかって20万ドルの宝くじが当たって、夫オーギーとニューヨークにジャスミンを訪ね、金の使い道を相談した際、ハルに投資を勧められ、これが失敗して全額を失った。それでも姉を庇うジンジャーに愛想つかしてオーギーは別れていった。ジャスミンとジンジャーふたりは里子の姉妹で、姉のジャスミンは憧れの姉であった。しかしジャスミンにはジンジャーを庇う考えはない。ふたりの容貌があまりにも違うのはこのせい。(笑)

チリが早くジャスミンを追い出そうと酒を持って仲間のエディ(マックス・カセラ)とご機嫌伺いにやってきた。ようこそ!とバーボンで乾杯しようとすると、ジャスミンはワインで応じる。“庶民感覚”が全くない!エディがジャスミンに何とか近づこうとするが、ジャスミンが不快感を露わにする。

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ジンジャーがこれからどうするの?と問えば、「大学時代やりたかった美術アドバイザー」になるという。お金ないのにどうやってと問えば、「テレワークで学んで免許取得する」という。「パソコン使えるの?」「使えない、スクールに通う」「そのお金は?」。ということでチリが探してくれた歯科医院の受付係として働きながらパソコン教室に通うことにした。

患者の都合に合わせて予約を準備することなど、やったことがないからまともにできない。それでも首にならない。それは医師フリッカーマイケル・スタールバーグ)に魂胆があった。(笑)  フリッカーが頃を見計らって「もういいだろう」と迫ってきた。男は女を見れば動物になる。(笑) これを拒否して歯科医院を辞めた。

パソコン教室で合コンに誘われ、ジャスミンはこれに賭けることにした。彼女の出来ることはこれしかない!一人では無理とジンジャーを誘った。

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ジャスミンが考えたように、国務省務めで将来下院議員になろうかという男ドワイト(ピーター・サースガード)に出会った。ジャスミンは「夫は死亡、子供はいない、インテリアコーディネーターをしている」と彼の気を引くようごまかした。ドワイドはジャスミンの話を信じて結婚の約束をした。彼女の美貌と会話のセンスの良さから決めたようだ。何でもっと内面を見ないの?「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(19)でこのバカバカしさを描いてくれます。

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一方のジンジャー。すこし歳とってるが、やさしい音響技術士だというアル(ルイス・C・K)に出会い、「チリより品がある」とすぐにホテルに駆け込むという状況。(笑) が、チリはジンジャーに復縁を迫ってくる。しかし、アルの居所に電話して彼は既婚者だと知る。

ジャスミンはドワイドと住むマンションを確認し、指輪を買おうと店に入るところで、オーギーに出会った。オーギーが「俺から奪った金をどうした!馬鹿旦那も逮捕され自殺した、全てはお前のせいだ!バカ息子がここに住んでいるぞ!」と怒鳴る。

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ジャスミンは夫ハルが若い秘書に熱を上げたことに嫉妬して、夫の闇商売を明かし、このことでハルは捕らわれ自殺していた。ジンジャーがニューヨークに出て来たときにあのふたりは怪しい!と忠告したとき、ジャスミンがちゃんと対応すればハルの浮気を封じれたのに、ジャスミンの自尊心が邪魔した。男女のことになるとジンジャーの方に才があると言える。(笑)

ドワイドは直ちにジャスミンを振った。

ジャスミンは息子ダニー(オールデン・エアエンライク)を頼っていくが「俺に関わってくれるな!あんたみたいな見栄っ張りな女は嫌だ!」と断れ、行き場を失った。

息子はハーバード大出の自慢息子だったがジャスミンが夫の不倫を激しく追及し、警察に突き出したことを知って家を出ていた。

ジャスミンがジンジャーのアパートに戻ると、ジンジャーはチリとの仲を元に戻し仲良くやっている。ジンジャーが「セレブの生活に戻れるならよかったね」と声を掛けるとジャスミンは本当のことが言えず、着のみ着のままで出て行き、ひとりベンチに座り「ブルームーン」を聞くが歌詞を忘れたと呟いた!

感想:

美人で自己中な女性の人生転落悲劇。知的美人のケイト・ブランシェットにこの役を演じさせたことで、外見がどんぴしゃりですから、こんな女性のバカバカしださが際立って伝わるという辛辣な女性の見方でした。最初から終わるまで、何一つまともなところのない女性でした。(笑)

大した努力もなく美人を鼻にかけて結婚してセレブな地位を得たら、それを失ったときにはパニックになるし間違ったこともするでしょうが、全く自分を反省することのないジャスミン、“ブルー”ジャスミンに驚きました。

取るに足らない女性の代表としてのジンジャーと対比しながらジャスミンの行動を描き、真っ当に生きるためには何が必要かをジンジャーの姿で描くという、この辛辣さがよかった。しかし、ここまで描くかというアレンの悪あがき!(笑)

アレンの皮肉に、全身で応えたケイト・ブランシェットの演技、セレブな女性から夫の浮気にマスカラで目を真っ黒にして泣き狂い、ラストは泥酔して虚ろな精神病者の表情。あたりまえです、アカデミー賞主演女優賞ですから。

ラストシーンで好きな曲「ブルームーン」を思い出し「歌詞を忘れた!」と呟きますが、なんでこの曲が好きなの?夫が好きだったから、これこそが大問題だった。どうしょうもない女に成り下がったジャスミンのこれから、どうなるんでしょうかね!(笑)

           ****

付記:ブルームーン(Blue Moon:和訳)

あなたは一人ぼっちで立っている私を見ていた

心に描く夢もなくて

愛する人もいない

ブルームーン

あなたは何のために私がそこにいるのかちゃんと分っていたのですね

あなたは私のお祈りが何を言ってたのか聞いていたのですね

私が誰かを本当に大切にしたいということ

 それから突然私の前に現れた

私がいつまでも抱きしめておきたいたった一人のひとが

私は誰かがささやくのを聞いた「どうか私を大事にして。」と

そしたら、お月さまが金色に変わっていた

 ブルームーン

今はもう一人じゃないんだ

心に描く夢もなくて

愛する人もいないような

(リピートの部分は省略)

Blue Moon (song):Wikipedia

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「花束みたいな恋をした」(2020)"終わりに、始まりがある"恋愛物語!

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とても評判がいい、このような作品を観る年頃ではないのですが、主演のふたりに誘われて観ることにしました!

偶然に出会った大学生の男女。映画や音楽、小説と好みが一致し最強の恋人同士だと思っていたが、社会に出て仕事を持つことで次第にすれ違いが出てきて、追い詰められていくふたりの5年間にわたる恋物語

年齢とか考えないで、ふたりの恋の行方にそんなこともあったなと感情移入でき、とても楽しめる作品でした。恐らく今の時代にぴったりで、それでいて時代を問わない、人を愛することや生きることの意味を知る作品だと思います。

恋愛の終わりから始まる物語、どうしてこんな結果になったのか、その結果を問うのではなく、この思い出を抱いて次に進んでいく物語。ということで前段、嫉妬するほどに美しい恋愛模様が、後段で社会に出て挫折するところが描かれ、とても愛おしくて切ないですが、リアルで筋が通った恋愛物語になっていて、恋愛教書と言っていいかもしれません!

何の変哲もない、あたりまえと言えばあたりまえの恋物語これをこんなに面白く見せてくれる坂元さんの脚本、凝りに凝ったセリフはさすがでした!

監督:土井裕泰、脚本:坂元裕二、撮影:鎌苅洋一、音楽:大友良英

出演:菅田将暉有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ押井守、PORIN、オダギリジョー戸田恵子岩松了小林薫、他。


映画『花束みたいな恋をした』140秒予告【2021年1月29日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ):

2020、冒頭でふたりがファミレスでイヤホーンで音楽を聴いている若いカップルを見ながら、自分たちの過去を振り返る物語になっています。

2015年冬、八谷絹(有村架純)21歳。振られて彼氏いない?今はミイラ展が最大の関心事。山音麦(菅田将暉)21歳、美術部。彼女とは別れた。最近調子が悪く燃え尽き症候群だが、ストリートビューイングに写し込まれたことを知って、何かいいことが起こるぞと興奮気味だ。

こんなふたりが終電に乗り遅れ、入ったカフェで一緒になった。そこに押井守が居ることに気付いた麦が「神がいる」と声を挙げ、それに共鳴した絹。これが切っ掛けで、この夜、居酒屋、カラオケそして麦のアパートへと場所を移しながら、本や映画、歌、食べ物の好みが同じだ!と燃え上がった!次はミイラ展に一緒にと約束して絹は帰って行った。

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二人が意気投合するセリフには当時の作家や小説名、バンド名や曲名といった話題が一杯で、これを理解できる人にはふたりの気持ちが読めて堪らないシーンでしょう。

ミイラ展を見て、ファミレスで小説の話をして、港で行きガスタンクを見て、誘電までには告白するぞとファミレスでねばり、やっと「付き合って下さい!」と言えたふたり。(笑) 交差点で信号待していてキスした。

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これから一週間、食事したり映画を観た。映画は「希望のかなた」で絹は感激の様子だったが、麦は居眠り!

三日続けて麦のアパートに泊まった。

四日目、絹はブログで知ったメイさんが亡くなったことをニュースで知り、彼女が「恋愛の終わりは始まり、成就は数パーセンで、切なさに苦しむしかない」と書いていたことを思い出していた。絹がこの話をするが「今始まったばかりだ」と気にかけなかった。

就活の季節がやってきたが、麦は自分の絵力を生かし自室のイラスト作業で凌いでいた。一方の絹は面接試験に出掛けるが、うまくいかず落ち込む。そんな絹を見て、多摩川が望めるマンションで暮らすことにした。毎日が一緒で、ふたりは川辺の散策をしながら焼きそばパン屋さんを見つけたりと、幸福感に包まれていた。

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2016年の元旦、初詣で猫を拾ってきて飼うことにした。女性が猫を飼うと危ないですね!(笑) ふたりは大学を卒業しフリーターになった。が、麦のイラストでは生活が苦しくなる。そこに絹の両親、(広告代理店経営)がやってきて、母親(戸田恵子)が「普通に働け!」と説教。父親(岩松了)は「ワンオク好きか?」と聞く。(笑)そして麦の父親(小林薫)が新潟から出てきて「花火家業を継げ!反対なら5万円の仕送りを止める」という。

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両家の親の言葉は麦の生活態度に決定的な影響を与えた。絹との今の生活を続けるにはどうしたらいいかと。麦は就職することに決めた。

12月に絹が簿記の資格を取って歯科医院に就職した。友達に誘われて合コンに参加もした。

2017年、麦はネット通販の会社に就職が決まった。帰宅が5時だから絵も描け、これで絹とずっと一緒に過ごせると思った。が、営業部の仕事はそんな生易しいものではなかった。競走意識で意地もある、毎日仕事を持ち帰り、休みのない生活が続く。絹の「絵を見に行こうか?」にも生返事で、言い訳ばかりの生活が続く。クリスマスに本屋さんに行っても、麦の読む本は変わった。

2018、あの焼きそばパン屋さんがつぶれたと知らせても麦は反応しなくなった。絹が「イベント会社に転職したい。楽しいから」と伝えると「仕事は遊びではない。そんな仕事をするやつは人を舐めている」と言い、突然、「結婚しよう!毎日好きなことが出来る」とプロポーズした。

絹はIT会社(社長:オダギリジョー)を訪ね、酔っぱらって愚痴を吐いた。絹は友人の死を一緒に悲しめなくなっている麦とは別れるべきと思ったが、いつ切り出すかが問題だった。

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2019、友人の結婚式にふたりで参加し、その後まだ乗ったことがないと観覧車に乗って楽しかった日々を思い出し、ファミレスに入った。

麦はこれまで一緒に生活したことに感謝して、良い思い出にすると言ったが、「結婚しよう!今日が楽しいから元に戻れる」と言い出す。そこに若いカップル(清原果耶、細田佳央太)がやってきて、ふたりがいつも座っていたテーブルについて、昔ふたりが交わしたような会話を始めた。やっと冒頭シーンに繋がりました。輝くようなカップを見て麦は泣いた!絹は外に出て泣いた。麦が追ってきて、そっと抱きしめた。

2020、麦に彼女ができ、偶然見つけた絹も彼氏と一緒だった。あのころのことは思い出として残っているが、新しい生活が始まっていた。麦はストリートビューイングに、絹と一緒の姿が写し込まれていることを知った!

感想:

どうしてふたりが瞬く間に恋に嵌ったの?ふたりの結びつきがポップカルチャーなものだけに強烈な共感を得たのではないでしょうか。好きという感情で、相手に合わせることもあるということ。社会に出て、生の生活に晒されたとき、その共感度が試される。

辛い社会生活に晒された麦には「イベント会社に就職したい」という麦の気持ちは“ちゃらちゃらした仕事に就く”としか見えなかった。絹の好きなことをしたい気持ち、どう生きたいかという願いを理解してやれず、楽しい思い出があれば昔のように暮らせると思ったところに大きなすれ違いが生じた。

この作品は後段の社会に揉まれて、その先をみる恋物語になっているところに価値があります。イベント会社社長(オダギリジョー)の「結婚という手もあったかな!それはそれで、しっかり寝なさい!」の言葉に、もうあの時代にバックは出来ないという大人の作品になっています。

 平凡な日々のなかに、それだけにリアル感がありますが、時代を取り込んだ、人の心の機微に触れる坂元さんの名セリフで綴られた作品。主人公と同年代の菅田さんと有村さんが、まるで主人公たちがそこにいるかのようにそのセリフを喋り佇んでくれ、「花束のような恋」の先に、何が大切なのかを思い出させてくれる一生ものの作品です。

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「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997)このタイトルにこの落ち。イタリア人にしてやられた!

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とても評判のいい作品、NHKプレミアムで一連の反ナチ作品として紹介されたひとつ。ユダヤ人迫害(ホロコースト)の悲劇を如何に伝承するか?こういうやり方があったかと楽しみました。

あらすじ:

イタリアノ田舎から親父を頼りに上京中に偶然出会った娘さんは小学校の先生だった。ホテル勤務をしながら、とても手が届かないと思った先生を手に入れる。なんと運のいい人生か?ふたりの間に可愛い男の子ができて小さいながらも本屋さんを経営。そこにナチ・ドイツ軍が進攻し、3人は強制収容所に収容される。父子と母は別に収容され、なんとしても母の元に返したい父親の採った手段は・・・というコメディ&ヒューマンエンターテイメントです。


La vita e bella - Life Is Beautiful (ライフ・イズ・ビューティフル)

前段はユーモアたっぷりに二人の出会いが、ファンタジーでコミカルに描かれます。後段、強制収容所に収容され、状況は一変。暗い生活のなかで、数々のナチの非業に耐え、収容所を出る日を夢見ながら過ごす家族の姿が描かれます。前後段のチェンジの切り替えが絶妙で、後段のナチの非業が強烈に浮かびあがります。

強制収容所での父親のドイツ語通訳のシーン、腹を抱えて笑いました。これ、チャップリンの「独裁者」を観る思いでした。父親の謎かけがこんな結末になるとは・・・!脚本の魔力です!

笑のなかにナチの行った虐殺を描写して、二度とこのような迫害があってはならないと戒める本作、何度も何度も繰り返さねばならないキャンペーンにこの手があったかと思わせる作品!見事でした。

ロベルト・ベニーニ監督のエンターテーナーとしての圧巻のパフォーマンスに驚かされました。ジョルジョ・カンタリーニの可愛さ。母親がロベルト・ベニーニの実の奥さんとは!

監督・脚本:ロベルト・ベニーニ、撮影:トニーノ・デリ・コリ、音楽:ニコラ・ピオバーニ。

出演者:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジョ・カンタリーニ、ジュスティーノ・ドゥラーノ、セルジョ・ビーニ・ブストリッチ、リディア・アルフォンシ、他。

本作は第51回カンヌ国際映画祭(1998年)で審査員グランプリを受賞。第71回米国アカデミー賞(1999年)で作品賞ほか7部門にノミネートされ、そのうち、主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞しています。

感想(ねたばれ含む):

テーマは「ライフ・イズ・ビューティフル」。人生には上手くいかないことが付き纏うが、やりようでいくらでも幸せになることを教えてくれます。美しい妻をどうやって手に入れた?二人の間に出来た子供を、最悪のナチの迫害から、知恵と笑いで守ることができることを示してくれます。愛する子供を天国で微笑んで見ているでしょう。“彼の短い人生は美しかった!”

「これは素朴な物語であるが語るのはむずかしい童話みたいで、切なくて驚きと幸せが詰まっている」で始まる、息子ジョズエの幼いころ父と強制収容所にいた記憶。ええっ!という出だしです!

1939年、イタリア。ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は友人フェルッチョ(セルジョ・ビーニ・ブストリッチ)と共に北部の田舎から山岳道をしゃれた車で叔父ジオを頼って、トスカーナ地方のアレッツォという小さな田舎町に目指していた。とても美しい風景です!

ブレーキが利かない。山岳道でブレーキのベーパーエアロック?修理中に屋根から落ちてきた美しいドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)。これが運命というものです。これをうまく生かすのがイタリア人。(笑)蜂に刺されたドーラの脚の傷口を吸って治療した。これが彼の運命を開くことになった。彼女を“お姫様”と呼ぶ。すったもんだがあって、二度目は盗んだ自転車でお姫様にぶち当たった。(笑)

グイドは叔父のレストランでボーイとして働くことに。料理の運び方やメニューの採り方はもうチャプリンを彷彿とさせます。ここで彼の特技はクイズ。ドイツ人医師レッシングに「白雪姫に7人の小人が遭遇する時間は?」と問題を出し、悩むレッシングに答えは「7”ミニ”ッツ」と明かしてすっかり虜にした。

客の視察官が姫・ドーラの学校を視察するという。あの姫は学校の先生。この繋がりも運命。レッシングに先立ち、視察官に化けて学校でドーラに挨拶し日曜日の歌劇観劇を聞き出す。そして、イタリア民族がいかに優れているか、裸になって具体的に体の特徴を示しながら熱弁を振るう。これにはドーラも驚くが、彼女の記憶に残ります。(笑)

そして歌劇鑑賞に劇場に潜り込むがドーラは2階席、隣の女性に愛嬌を振りまいた・・・。(笑)  婚約者ロドロフに置いてきぼりを喰わされ、雨で困ってるドーナを車で送ると、ドーナはしゃっくりばかり、そのうちに話が弾んで車が衝突!(笑)

ホテルでのドーラの婚約披露宴。披露宴開始前に、伯父が通勤用に使ってる馬がグリーンに塗られてユダヤ馬に注意”と嫌がらせが発覚。ユダヤに対する嫌がらせだが、グイドは差別なんぞ洗えばいいと気にしない。

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婚約者ロドロフは町の役人で美男子だが自己中な男で仕事の話ばかり。うんざりしているドーラ。グイドはテーブル下に潜り込んでドーラに近づく。こんなグイドにドーラがキスして「連れ出して!」。気づかないのは婚約者。落書きされた伯父の馬に乗って現れドーラをかっさらって、この場を自分とドーラの結婚式にしちゃった。(笑) これ反ユダヤ人に対する最大の皮肉!このシーン、映画「バード」(1988)でチャーリー・パーカーが使った手でしたね!

ドーラを連れて伯父の家に帰るが、鍵が見つからない。もたもたしているうちに彼女は隣の屋敷に入っていった。追ってグイドが入ると「ジョズエ」のというドーラの声。ふたりが出て来たときには、時が経て、息子のジョズエ(ジョルジョ・カンタリーニ)と一緒だった。うまい時の経過の描き方です!

人生にはいろいろと邪魔が入る!これにあつかましく挑み、ひっくり返せと教えてくれます。() イタリア流ですね。私のイタリア人の友人もこの典型でした!

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妻ドーラとジョズエを自転車に乗せて自分の作った本屋に出勤。これが幸せいっぱいのポスター写真です。妻が途中で仕事場に。

ジョズエは戦車遊びに夢中だった。ふたりでいるところにゲシュタポがやってきて、強制収容所行の列車に乗せられる。伯父も一緒だった。ジョズエは初めての列車の旅。「列車は座らない!やっと切符が買えたんだ!」と教えているところに、ふたりがいないことに氣づいたローラが追ってきて、「私も強制収容所に!」と列車に乗り込むが、別々の車両だった。

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強制収容所の中は数段のベット。すでに沢山のユダヤ人と一緒になった。怖がるジョズエに「ここにはここのゲームルールがあるんだ。人に見つかったり泣いたりして見つかったらゲームオーバー。だけど隠れ抜いたら点数がもらえるんだ、1000ポイント溜まったら戦車がもらえるよ!それで家に帰れる」と教えて毎日毎日このクイズに挑むことにした。絶望のなかでも夢を持てれば生きれることを教えてくれます。

そこにドイツに将校がやってきた。通訳がいない。グイドがかって出て将校の話を訳して伝える。「ゲームは全員参加だ。1000点取れば戦車が貰える、本物だ。得点はあの拡声器で流す。我々は悪役だから怒鳴る。怖がると原点だ!原点はます泣き出すやつだ!・・・」。 (笑)  役に立たないと女性と子供がガス室に送られていると聞いてドーラが心配する。

伯父と一緒に強制労働に駆り出されるが、戦車を作っていると誤魔化し、部屋に戻っては今日貰った点数をジョズエに話して励ました。

ジョズエは風呂に入れて勧められても、父親恋しさにグイドの、職場に来る。逃げ出していて、ジョズエは一命を取り留めた。親父はガス室で処刑された!こういう“悪夢の歴史的事実”を知らしめるよう作品は作られています。

ある日警備員をごまかして放送室に入り、女性ユダヤ人に向けて、自分たちは生きているとドーラにサインを送った。ドーラは処刑された人たちの衣類を整理する仕事をしていて、この放送でふたりが生きていると知って涙を流した。

グイドは健康診断で、もうちょいのところでガス室に送られるところで、ドイツ軍軍医となっていたレッシングに出会った。

ジョズエは人の体から石鹸やボタンを作っているという話を聞いてすっかり怯えて姿を見せなくなった。

レッシングに取り入りドイツ軍士官歓迎会のボーイにつけてもらった。友がなく寂しがるジョエズをここに連れてきて「ゲームだから誰とも話すな!」とドイツ人の子供たちに会せ、美味いものを食べさせ、クイズへの競争心を煽った。(笑)  レッシングから「デブで醜くて黄色でどこにいるかと聞くとココ ココと答える。歩きながらウンチをする。わたしは誰だ?」と謎を掛けて、これで困っているという。これは嫌味な謎かけですね!グイドは妻を励まそうと蓄音機で昔踊ったレコード曲を流したりもした。

監視が厳しくなり、ジョズエに「見つからなければ勝てる」と徹底的に隠れることを命じた。そんな時に終戦の前兆を知る。やつらは殺しにやってくるとグイドはジョズエをゴミ箱の中に隠し「誰もいなくなったらお前が一番だ!父がいなくても出ていい」と教えてドーラを探しに出た。ドイツ兵に追われてゴミ箱の前を通るとき、「ゲームだ!」とお道化た姿をジョエズに見せながら笑って消えてゆき、ジョズエの見えないところで射殺された。

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誰も居なくなって、ジョエズが道路に出ると本物の連合軍の戦車がやってきた。お父さんが言ったとおり一等賞で、戦車のプレゼントだったと喜んだ。この戦車に乗せてもらって行進中に母ドーラに出会って「僕一等賞だよ!」

「ドーラ生きろ!」と励ますグイド、自分の身を投げ出して息子ジョズエを救ったグイド。このタイトルにこの落ち、イタリア人にしてやられたという感じです!(笑)

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「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」(2019)ドンデン返しに、どんでん返し。犯人捜しだけのミステリーではない!

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犯人捜しが9人の中からだと、これは堪らないとWOWOW公開を待っていました。やっと公開されての観賞です。1回で理解するのはちょっと大変でした。(笑)

キャッチコピーは「あなたは、『この結末を“誤訳”する』」ですが、誤訳してなければよいがと思っています。(笑) 犯人捜しだけのミステリーではないぞ!でっかいテーマが隠されていました。

この作品を観る場合は作品のホームぺージに目を通しておくとよいと思います。キャラクターの名前がしっかり頭に入ると本当の面白さが分かると思いますから、9回は観る必要がある作品だと思います。(笑)

作品は世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をモチーフにした作品とのこと。

監督:「タイピスト」のレジス・ロワンサル。脚本:レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパン、撮影:ギヨーム・シフマン、音楽:三宅純。

出演者:

出版社社長:エリック・アングストロームランベール・ウィルソン

エリックの個人秘書:ローズマリー・ウエクス(サラ・ジロドー)

書店経営者:ジョルジュ・フォンティーヌ(パトリック・ボーショー)

英語の翻訳者:アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)

ロシア語翻訳者:カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ

デンマーク語翻訳者:エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)

スペイン語翻訳者:ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ

イタリア語翻訳者:ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)

ドイツ語翻訳者:イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)

中国語翻訳者:チェン・ヤオ(フレデリック・チョウ)

ポルトガル語翻訳者:テルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)

ギリシャ語翻訳者:コンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マヴロマタキス)


『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』予告編

あらすじ:

舞台はフランス。大ベストセラーミステリー三部作の完結編「デダリュス」(400ページ)を短期間で翻訳し世界同時発刊して大儲けしようと企んだ出版社社長が、9か国に堪能な翻訳者を、絶対に秘密がバレないようにと豪邸の地下シェルターに集め、厳重な監視のもとに翻訳作業を始めた。ところが20ページ翻訳したところで漏洩し、24時間以内に要求額が支払われない場合にはさらに100ページを公開するという脅迫メールが届く。

社長はたかを食って翻訳を止めて翻訳者9人への徹底的な私物検査、脅迫で自供を促している中で、自殺者、仲間割れが現れ、さらに200ページを公開するとのメールが入る。この状況で翻訳者のひとりが名乗り出た。お前は何者か?何のためにやったか?


『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』予告編

感想(ねたばれ含む):

冒頭、ロンドンにあるフォンティーヌ書店が火災で焼失するシーンから始まります。その原因は明かされない。アングストローム社長・エリックがフランクフルトのブックフェアで「デダリュス」完結編「死にたくない男の話」を12月に翻訳して3月に発刊すると派手に公表。これにより、翻訳者たちの招集が始まる。

 エレーヌは空港で小さい子供を夫に託して「小説を書いてくる!」とコペンハーゲンを出発。リスボンではテルマが「正業では食えないからパリで働く」と出立。ここでのテルマ:マリア役のレイチはゼンダーで、とてもチャーミングです。カテリーナ役オルガ・キュリレンコの優雅なファッションにも注目です!

ダリオには出版社から空港に出迎えが来ている。アレックスはパリ駅前のベンチで小説「デダリュス」を思い出しながら寝ていると出版社の車にピックアップされ、次々と9人の翻訳者がパリの大邸宅に集められた。秘書のローズマリーに導かれて警備員と厳重なセキュリティに守られた翻訳室に入った。

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いよいよ翻訳作業の開始。エリックの指示で作業が始まると、ケドリノスは部屋で作業したいと申し出るが不許可。ハビエルの作業が早い、テルマは翻訳に手を付けず悠々とタバコをふかし注意される、アレックスに至っては持ち込んだスケボで遊んでいる。チャンがその若さでなぜ参加とアレックスに問うと、一度インターとして参加していたという。

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翻訳者たちのどの行動にもテーマに絡むとても大切な情報が含まれていて、“キャラクターの描き方”がとてもうまいです。何度も見たくなります!

作業が始まって2か月後の状況に突然跳ぶ。

エリックが刑務所に面会にやってきて「お前の行動(漏洩)で大損害を被っている。この書物「デダリュス」の中に答えがある。君はどんな手を使ったか?」と問い詰める。犯人は翻訳者のひとり、姿を見せてくれません。これにはびっくり! ここで犯人は分かったという人がいるかも知れません。しかし、この物語はそんなに軽いものでなく、最後には頭をぶん殴られた感じになります。(笑)

ここからセルター内での翻訳者の行動と刑務所での犯人とエリックのやりとりを交差させながら、誰が?どうやって漏らしたか?その目的は?と探っていく展開になります。囚われの身が途中で逆転するという大どんでん返しがあるという、絶対に予測できない展開が面白です!

作業は朝9時からよる8時まで。稼業外はプールや映画、読書などで過ごす。

食事時にはアレックスやテルマの太々しい態度や翻訳文のヒロイン・レベッカの死因、主人公デダリュスの行動、これからの物語の進展が話題となる。デダリュスの物語が“事件に絡んでくる”から怖い。“デダリュス物語”の会話が延々と続き眠くなりますが、ここが我慢のしどころです。(笑)

エリックに呼ばれたエカテリーナ。隙を見て彼のバックから翻訳文を盗もうとするが失敗。彼女は熱烈な「デダリュス」フアン。先を知りたくてうずうずしている。そんな彼女をレベッカに似ていると小説発刊時のキャンペンガールに指名する。

こんなエカテリーナは夜、レベッカが溺死した心境を知ろうとプールの底に沈んで居るところに、危ないとアレックスが飛び込んでくる。アレックスは「“耐えがたい喪失と悲しみ”を描いた物語だと教えると、エカテリーナが「アングストロームはそんなこと知らずメディアに低俗なものを紹介をしている。金儲けのためなら何でもやる人だ」と非難する。こうして、翻訳者たちのあるべき姿が語られ、エリックの行う翻訳作業に疑念をもっていることがわかる。

クリスマスの夜、晩餐、ボーリングで盛り上がり、「デダリュス」の冒頭の一節をチャンが歌い始め、全員で唄ってはしゃいだ。

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そこにエリックの携帯に「デダリュス」の第3巻冒頭10ページが流出したというメールが入り、警備員はテルマを襲い、チャンに疑惑が掛かる。翻訳者たちの私物が徹底的に調べられる。遂にエリックが拳銃で脅して自白を促す。

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エレーヌのスーツケースからオランダ語で手書きの文章が発見された。エレーヌは「デダリュス」とは全く関係のない今自分が書いている小説の一部だと釈明したが、「あんたにその能力はない」と全員に前で罵った。「子育てで書けなかった小説が書ける、人をこれで喜ばせる」と考えて参加しただけにエレーナのショックは大きかった。

翻訳仲間の中でも誰だ?と疑心暗鬼になっていく。カテリーナがアレックスの翻訳にはエリックの翻訳本と違うところがあると疑念を持った。アレックスに「なぜ違うの?」と尋ねた。

実はアレックスは海賊版出版の罪で逮捕され、エリック翻訳が不適切とクレームをつけたことで、ふたりはロンドン警察でやりあっていた。アレックスが自分の翻訳の方が読者には受けているから次作では雇って欲しいと、第3巻の冒頭は予想して喋ると、これを聞いてエリックは彼を雇うことにしたのだった。「だからエリックは俺を犯人だと思っている」とカテリーナに語った。

エリックはローズマリーに「お前の文学への愛を証明しろ」とロンドンのアレックスの住み家捜査を命じた。ローズマリーはそこでパソコンと、アレックスとジョルジュが伊予に移っている写真を見つけた。

そこに「エリック時間切れだ!残りを救いたけれ8000万ユーロ払え!」とメールが入り、エリックは皆を裸にして検査するという行動に出る。これに仲間の中で犯人捜しが始まった。カテリーナの言動、レベッカファッションに疑念を抱いたダリオがお前だ!と襲い掛かり、これを止めに入った仲間と大乱闘になった。この騒動でエリックは照明と食事を断つという行動に出た。エレーナが自殺。皆が泣いた。

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刑務所でのアレックスとエリックのやりとり。

アレックスが「刑務所にいるのはあんだ!」と言えば、エリックは「あの出来事は正当防衛だった」という。アレックスは原作者オスカル・ブラックに会わせろとエリックに迫る。

なんだ!“犯人がエリック”になっている!エリックが犯人となりアレックスは面会に来ていた。このどんでん返しには驚きました。予測不能です。

アレックスが原稿漏出のトリックを喋る。

セルターに集まる前に、エレーネ、ダリオ、ケドリノスを覘く6人に、エリックの言いなりでない創作作品としての翻訳をすべきだと説いて、盗めるチャンスのある通勤電車のなかで原稿を盗むことを説き、彼らは実行した。そこにはもうひとつのトリックがあった。原稿のコピーにはアレックスが持っている原稿を使った。そして6人がこれを読んだ!

なんだ、これは!何を見せてくれていたんだ監督は?エリーナが亡くなるまでの行動は6人による共謀だったのか!

亡くなったエレーナへのエリックの非常な取り扱いに、翻訳者たちと警備員が怒り出し、翻訳者たちがそれぞれの“母国語で会話し連携”して反抗するので、もはやエリックは彼らを押さえることができなくなり、カテリーナ、アレックスを撃った。カテリーナは入院、アレックスは胸に入れていた「デダリュス」で難を逃れ、エリックは警備員に捕らわれ、警察に渡されたというわけ!

 

“アレックスこそが「デダリュス」の原作者オスカル・ブラックだった”。彼を小説家として育ててくれたのがジョルジュで、冒頭の火災はエリックがジョルジュを殺害して火を点けたものだった。

エリーナが亡くなるという突発事件以外は、アレックスによって仕組まれた恩師ジョルジュを殺したエリックへの復讐劇だった!ちょっとやり過ぎ感ありのどんでん返しでしたが、先の読めないうまい筋運びでした。

どんなトリックを使ってくるか、アクションは?怖いシーンは?と期待したが、これがない!大部がシェルター内での会話劇で眠くなる(笑)。ところが彼らが喋る感想が小説「デダリュス」のストーリーで、このストーリーを実行してエリーナを貶めたというアレックスのエリック復讐劇の“筋立て”が凄い!

エリックを貶めたのは、翻訳者を閉じ込め家畜のように扱い、翻訳者としての創作意欲を、さらに原作者の尊厳を無視したことへの抗議だった。大きなテーマのあるミステリーというところがすばらしかった。

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「ヤクザと家族 The Family」(2021)ヤクザ映画だがヤクザ映画ではない、法規制で消えていく「ヤクザ家族」の物語!

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「新聞記者」「宇宙でいちばんあかるい屋根」の藤井道人監督作であること、綾野剛さんの出演に期待して本作を鑑賞することにしました。期待したとおりの現代社会の矛盾を突き、愛に溢れた作品でした。そして圧巻の綾野さんの演技を観ることができ、大満足の作品でした。

父親の麻薬で家族が崩壊し自暴自棄に過ごしていた少年。地元のヤクザ親分に手を差し伸べられ、親分と父子の契りを結び「ヤクザ家族」の一員となり、好きな女性に出会った。こうしていっちょまえのヤクザになったが、1999年地域のヤクザ抗争に巻き込まれ、「ヤクザ家族」を守るため、自ら身替りとなり14年間の刑を終えて世間に戻ると、暴力団排除条例の施行で、「ヤクザ家族」は崩壊寸前、再会した彼女との生活も世間から排斥され、自分の居場所がないことを知る。平成生まれのヤクザに出会い、彼が選んだ生き様は・・・というヒューマンエンターテイメント作品です。

古いヤクザ気質の人情仁義に熱い親分、平成ヤクザとして生きた男、平成生まれで令和に生きるヤクザ。三代にわたるヤクザの生き様を家族という視点からとらえた情感豊かなドラマです。ヤクザ抗争アクションも、これまでに観た作品に劣らない、こんな撮り方があるのかという迫力あるものに仕上がっていて楽しめます!

見どころは家族になっていく過程が、“これが家族だ!”と納得が出来るよう丁寧に描かれています。それだけに後段の居場所のない男の寂しさ、人生において何が大切かを考えさせてくれます。

暴力団排除条例は彼を追い込んでいった。14年の刑を終え、ヤクザを辞めても普通の人にはなれなかった!彼だけでない、妻も娘も追い込まれる。ここで選んだ決断はヤクザらしい愛に満ちたものであったと泣けます。

彼らが救われることはないのか!もっとやさしい社会であって欲しいと願わずにはいられない作品でした。この視点は現在のコロナ禍でも見られ、今の時点で公開してくれたことに意義があります。

監督・脚本:藤井道人、撮影:今村圭佑、音楽:岩代太郎、編集:古川達馬。

出演者:綾野剛館ひろし尾野真千子磯村勇斗寺島しのぶ北村有起哉市原隼人岩松了豊原功補駿河太郎、他。


映画『ヤクザと家族 The Family』予告篇

あらすじ(ねたばれ):

1999年、白いノースフェースの上下に白いナイキのスニーカーに金髪のチンピラ山本賢治綾野剛)が麻薬常習犯だった父の葬儀に駆けつけとけると、そこで県警組織犯罪対策本部刑事大迫(岩松了)から「お前も父親のようになるか!」と悪態を浴びせられる。チンピラ仲間の細野(市原隼人)に呼び出され、仲間の大原(二宮竜太郎)を加えて、父親を薬漬けにした新興の経済ヤクザ・侠葉会の薬売人の車を襲って薬を奪い金に還元。山本のチンピラいでたちに圧倒されます。

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山本ら3人は馴染みの中華店で焼肉を食っていた。そこに地元のヤクザ柴咲組の親分・柴咲博(館ひろし)と若頭の中村(北村有起哉)が飯を喰いにやってきた。女将の木村花子(寺島しのぶ)の夫は柴咲組の元若頭で侠葉会に殺されていた。柴咲は気さくで組員の世話をよく見る親分だった。そこにチンピラが駆け込んできて柴咲に拳銃を向ける。咄嗟に山本が蹴りを入れこの危機を救って、そのまま店を出た。

恩義を感じた柴咲は配下に命じて山本を呼び出し、仲間に入らんかと誘った。薬は取り扱わないし、義理・人情のある男磨が出来ると誘ったが、山本は断った。

山本ら3人は薬を奪ったことで侠葉会に捕らわれ、徹底的に虐められ、香港へ売り飛ばすと港に着いたところで、山本のポケットから柴咲の名刺が侠葉会若頭の川山(駿河太郎)の目にとまり、柴咲組との取引に使われ、解放され柴咲の元に返された。ここでの柴咲の痛められ方、その傷の痛々しさ、絶望感がしっかり描かれ、柴咲に救ってもらったことへの恩義が伝わってきます。

 

柴咲は侠葉会との間で何があったかなど話さず、「よく頑張ったな!」とやさしい声で髪を撫でた!山本は泣いた!山本が俺の親父はこの人、何があっても守ると決めた瞬間だった。言葉でなくふたりの表情で読み取れ、親子になったという説得力のある描写で涙が出ます。

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山本は柴咲と親子の盃を交し、いっぱちのヤクザになった。

2005年、山本は背中に立派な彫り物を背負っていた。このころ侠葉会と柴咲組の戦争勃発が噂されるなかで、トラブル解消に駆けつけたクラブで侠葉会の若頭川山に出会った。川山が「時代遅れの老人は引退してくれ!取り残されるぞ!」と山本に吐いた言葉で、山本はビール瓶で川山の頭を殴った。これが引き金となって、対立が激化していった。それでも柴咲は山本を責めることはなく、まるで我が子のように接していた。

山本は川山を殴ったビール瓶の破片で怪我し、その手当てしたのがホステスの工藤由香(尾野真千子)だった。由香は学費稼でキャバレー務め、純粋で勝気で山本を寄せ付けなかった。由香も山本同様に両親を亡くして家族がなかった。しかし、由香は山本が真っすぐな男で、遊びでつき合っていないことを知り次第に心を開いていった。

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遂に柴咲の車が侠葉会により襲撃され、運転していた大原を失うという事態に陥った。同乗していた山本は負傷し、大原の死をまるで兄弟を失ったように悲しんだ。大原の葬儀に大迫刑事がやってきて柴咲に町の南部から手を引けという。柴咲は反対した。これを山本は聞いていた。大迫はこの地域に紛争が起きなければいい主義で侠葉会に肩入れしていた。

山本は拳銃を持って、女と寝ている侠葉会会長の加藤(豊原功補)を襲ったが、そこに兄貴の中村が現れ短刀で加藤を刺した。柴咲を支えられるのは兄貴だと山本は中村の短刀で何度も何度の加藤を刺した。

血飛沫を浴びた姿で由香のアパートに現れ、震えながら泣くという無様な姿を見せた!この姿を見た由香は山本の全てを受け入れた。柴咲は「親不孝者が!」と言いながらやさしく抱いて、警察に送り出した。

2019年、山本が中村の出迎えを受けて戻ってきた。しかし、柴咲組の事務所は閑古鳥が鳴く有様で、組員は辞めて行ったという。痩せ衰えた親分が「ごくろうさん!ごめんな!」と迎えてくれた。親分はガンを患っていた。

ヤクザの本義を守ってきた中村がヤクの売買で組を支え、薬使用者に堕ちていく。辞めた組員は密漁などの闇商売。細野は産廃事業所に職を得て家族を持っていた。山本を避けるような態度をとる。

暴力団排除条例が施行されたことで、携帯は持てない、銀行・保険証をもつまでに5年かかったという。家族は暴力員であったことがバレたら世間の非難に晒される。

愛子の中華店を訪ねると、昔面倒をみていた翼が昔の山本そっくりの金髪ヤクザになっていた。(笑) 愛子は昔のようにやさしく山本を迎えてくれた。

由香は市役所で働いていた。会うと、娘・綾(小宮山莉渚)がいると告げて、金を渡して「来ない!」でという。

山本は娘が居ることに驚き、ヤクサを辞め、細野のいる産廃事務所で働くことにして、由香の家に入れて貰った。

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翼のシノギはかっての山本らのやっていたものと変わらないが、“義理人情だけでは食えない。あんたたちとはやり方が違う”と侠葉会の誘いを断り、“開かれたヤクザ”を模索していた。こんな翼に大迫刑事が「親父と同じ目に遭うぞ!」と近ずく。翼が「俺は感謝している」と山本の写真を見せ、「あんたたちが町を壊した」と罵った。これに恨みを持った大迫が山本、細野の素性をネットに流し、2人が産廃場から追われ、由香も市役所を、娘綾は学校を辞めて家出。由香が「あなたは何故帰ってきたか」と山本に問うたが、何も答えず家を出た。

山本が中華店を訪ねた。翼が「父を殺したやつが分かった!親分が弱ってる」という。山本は「愛子さんを大切大事にしろ!」と翼に言い、親分の病床に駆けつけ柴咲に別れの挨拶をした。「愛子さん」に由香を重ねていた!

夜、山本は由香に電話したが不在なので留守電にメモを残した。「普通の自分になり、普通の生活をしたかった。それが傷つけた。綾を産んでくれてありがとう。愛している!」。

山本は、翼が復讐したいと漏らした相手を刺し、防波堤で海を見ているところを細野に「あんたが戻っていなければ・・」と刺され、「ごめんな!」の言葉を残し、海に落ち沈んだ。後日、翼と綾がこの防波堤を訪ね、花を手向けた!「あんたヤクザ?」「ヤクザなんて食っていけない!」「兄貴ってどんな人だった?」。

感想:

ヤクザ映画だがいわゆるヤクザ映画ではない、法規制で消えていく「ヤクザ家族」の物語りだった。

冒頭で海中に沈み山本の姿が、ラスト近くで大原に刺されて海に落ち沈む山本に繋がり、次に生まれてくるときは“ヤクザではない”という山本の強い想いが伝わってくる作品でした。この想いは令和のヤクザ・翼に、そして父の実像を知らない娘・綾に引き継がれるといううまい演出でした。山本の「普通の自分になり、普通に暮らし、家族を持ちたかった!」の言葉に泣けます。

海と煙突の見える街。遠方の山並みは駿河湾に落ちる伊豆の山並み。ロケ地が富士市、静岡清水区一帯?清水次郎長生誕の地、ナイスなロケ地選定でした!

時代が変化する度に出てくる煙突は富士市の製紙工場のもの? ここにしがみついてしか生きることが出来ないヤクザの宿命を表現しているようですが、ここはかって煙公害で苦しんだ地。いまではきれいな煙が流れています。ヤクザの移り変わりを暗示しているようで、翼がどのようなヤクザを目指すか、見ていたいですね。磯村勇斗さんの清々しい演技とともに!

綾野さんと館ひろしさんのヤクザ親子。持てるエネルギーを吐き出すやんちゃなチンピラから、ドスの利いた生気を漲らせ家を守るヤクザを経て、家を亡くし彷徨する山本へと変化する綾野さんの演技。そして、義理人情まるだしでだが、いざとなれば燃える狂気を秘め、時代を受け入れようとする枯れヤクザの館さんの演技。すばらしかった!時代に翻弄されながら、最後まで変わらなかったふたりの親子愛が堪らない

山本と由香の結びつきがとても丁寧に描かれ、家族を亡くしていた者同士の結ばれ方で、由香は山本がヤクザだからと聞いて“びくつく”女性ではなかった。ふたりの演技にその心情がよく表現されていた。

しかし、山本の素性がバレ、市役所を辞めさせられ娘を失ったことで、由香は「なぜ戻ってき来た?」と山本に言葉を投げたが返事がなく、「出て行って!」の言葉を発した。山本は何も言わずに家を出て行き、由香は家族を解消した。山本の由香への愛は透けて見えるが、言い出せなかった心情に泣けます。が、山本は弱すぎた!

映像が美しく迫力があった。前段のヤクザの抗争劇。激しい動きを捕えた迫力あるシーンが楽しめるよう画面をシネマスコープにして移動カメラを多用し、後段の消えゆくヤクザの姿を抒情的に描くためにビスタービジョンで撮る、またカメラアングルの面白いものが多見され、カメラマンの苦労が伺える映像でした。

強い法規制で一気に追い込めば、時流に乗れず、行き場を失う人が出てくる。基本的人権さえも奪ってしまう現況には、社会としてのやさしさが求められます。

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「海街diary」(2015)平凡なことの積み上げで家族の絆は作られている!

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是枝作品「空気人形」(2009)を観て、次にこの作品を選んでみました。空気人形でのテーマ“人と人の繋がり”がよく描かれた作品でした!

亡くなった父が駆け落ちした女性に産ませた娘・“すず”を引き取った幸田家の3姉妹が、一緒に暮らして本当の意味での姉妹に家族になっていく姿を、1年にわたる鎌倉の四季のなかで、姉たちの恋模様を絡めながら描いた、心温まるホームドラマ

原作は吉田秋生さんの同名人気コミック、未読です。小説では鎌倉という古風な町で暮す4姉妹のちょっと跳んだ恋愛模様が受けたのではないかと思うのですが?この映画では“すず”が少しずつ心を開いて本当の4姉妹になっていくところが見どころの作品になっています。

何気ない日々の中で、何気ない言葉で“すず”と3姉妹が次から次へと繋がっていくエピソード、とても古風な雰囲気のなかに、今の時代が描かれているという脚本・演出がすばらしい!

そして演じる4姉妹、綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずさんの個性を生かした演技が自然で美しく、いつまでもこの姉妹を見ていたい気持ちにしてくれます。是枝作品の中でも1、2位を争う作品でなはいでしょうか。

監督・脚本・編集:是枝、音楽:菅野よう子、撮影:瀧本幹也

出演者:綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すず加瀬亮池田貴史

坂口健太郎樹木希林リリー・フランキー風吹ジュン堤真一大竹しのぶ

第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作で、第39回日本アカデミー賞の最優秀作品賞や最優秀監督賞など4賞を獲得、特に日本の四季をしっかり撮ったとても美しい映像作品です。


海街diary予告篇

あらすじ:

冒頭シーン、香田家の次女佳乃(長澤まさみ)が恋人・藤井(坂口健太郎)とホテルで過ごして朝帰りするシーンはら始まる。なんとも長澤さんの肢体が艶めかしい。なんでこの作品にこのシーンが“何故必要なのか”は物語が進むにつれ、分かってきます。

朝食時、長女の幸(綾瀬はるか)は「自分は行けないから」と佳乃と三女の千佳(夏帆)に山形でおこなわれる駆け落ちした父の葬儀に参加するよう指示した。父には中学生の女の子と3度目の妻とその連れ子がいるらしい。

佳乃と千佳が山形の田舎駅に着くと、そこに娘の浅野すず(広瀬すず)が迎えにきていて「遠いところ、ご苦労さまです」と挨拶をする。緊張したこのたどたどしい挨拶に、すずがどんな生活をしていたかがよく出ています。瑞々しいすずちゃんの演技と監督の演技指導が垣間見られるシーンでした。ここからどんどん変化してゆくところが見どころです。宿まで、間道を足早に案内するすず。彼女がサッカー選手であることが、後に分かります。

葬儀が始まって、焼香のところで姉の幸が駆けつけます。何があったのか?(“大きな伏線”です)。出棺時の挨拶を誰にするか?義母が「すずにやって欲しい!」と言い出す。これに幸が「私がやります!」と名乗出たことで、義母が「自分がする」と言い出す。この微妙は行き違いが、すずを引き取るという幸の大きな決心になっていった。このときのすずちゃんの表情がとてもいい。

葬儀が終わっての帰り時、すずが「父の残した写真です」と鎌倉の花火大会写真を渡した。幸が「すずちゃん、一番好きな場所はどこか?」と聞くと、すずは足早に周囲のよく見渡せる丘に案内する。姉妹は「山が海なら鎌倉だ!」と魅入った。すずの走る姿に、すずの気持ちがよく出ていて、涙がでました。

電車がプラットホームを離れる瞬間に、幸が「すずちゃん、鎌倉に来て一緒に暮さない!」と声を掛けると、すずが「いきます!」と返事。この時の佳乃と千佳の表情変化が面白い。去っていく電車を追って、すずが大きく手を振りながらホームを駆けて見送った。

この作品のよさ、人が繋がる切っ掛けやその繋がり、感情表現、演出などのすばらしさを描きたいために、すこし詳しく書きました。

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すずが荷物と一緒に香田家にやってきた。部屋の準備は三女・千佳の担当。彼女は勤め先で憧れのスポーツ店長・浜田(池田貴史)を招いていた。

幸は天ぷらを食べさせたいと準備。着いたすずに「もうすずちゃんとは言わないよ、すず」と。すずは香田家の仏壇に挨拶した。香田家では毎朝、仏壇にお参りする。今では珍しいが、こういうケジメのついた生活はいいですね!

お昼は天ぷらそば。“食べ物で人が繋がっていく様”が、ここからしっかり描かれます!綾瀬さんが天ぷらを揚げるシーンがいい。

すずがサッカー選手だったことを知った浜田が地元の少年サッカーチームに入ることを勧めた。すずは転校してすぐに注目され、サッカー部に入った。

叔母の菊池美代(樹木希林)がやってきて、幸に「家庭を壊した人の子だか大変よ、これで嫁に行くのが遅れる!」と言って帰って行った。(笑)

すずはサッカーチームの練習に参加。千佳と浜田が見学して「なかなか素質が良いよ」と。その帰りに馴染みの海猫食堂に寄ると女将さんの宮下さん(風吹じゅん)が「よく似てるね!」と驚く。こうして人の繋がりがどんどんと広がっていく。ちなみに食べたのは天丼だった。(笑)

長女と次女というのはよく喧嘩をするもの。幸と佳乃、風呂の順番とか着ていくブラウスのことなど、どうでもいいことでよく衝突する。千佳は“渓流釣り“の練習をしながら我関せずと決め込んでいる。(笑) すずもふたりのあぶないやり取りにも慣れていく。(笑) 佳乃は「早く好きな子を作りなさい!世界が変わって見える」と幸への当て擦りのようにすずに教える。(笑)

千佳はすずにサッカーシューズをプレゼントし、うまくすずを利用して店長・浜田をサッカー練習に誘いデートを楽しんでいる。すずのうまいパスに、濱田が「あのふたりあれだよね?あれはあれだよ」と言えば「ああ、あれか」と千佳。(笑) 

地銀に勤務の佳乃。ある日。藤井が銀行窓口にやってきて、貯金通帳の全額引き出され、挙句の果てに携帯電話で「いい男を作れ!」と。(笑) 

看護師の幸は小児科医師の椎名(堤真一)と付き合っている。椎名のアパートを訪ね料理を作ってやる。椎名は妻が病弱で離婚は言い出せないようだ。幸には婦長から終末病棟勤務を考えて欲しいという申し出があり、考え倦んでいる。幸には“父親を看取れなかった”という想いがあるようで、このことがすずを引き取ったことにも絡み、物語が深みのある話になっているように思います。

幸が玄関先の南天を採って(南天は幸せを呼ぶ)、部屋に入るとすずが酔っぱらっている!佳乃が失恋の腹癒せに飲ませたらしい。(笑)すずが「洋子さん(義母)大嫌い!お父さんのバカ!」と喚く。(笑) 幸が「あんたそっくりだ!」と佳乃にいう。(笑) すずを寝かせて、3人ですすの顔を覘く。佳乃が「耳があんたにそっくり!」と幸に。(笑) すずと似ているところを探す、「すずは妹だ!」と結ばれていくところが微笑ましい。目覚めたすずに「季節になったら焼酎の作り方教えてあげる」と二階の窓から4人で梅の木を見た。

春が近づいてきて、すずはシラス漁に参加し、家に持ち帰りシラス丼にしてを食べる。障子を張り替える。すずは香田家や土地の人のなかにどんどん受け入れられていった。

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佳乃は「仕事で生きる!」と、転勤してきた坂下(加瀬亮)と融資担当の外勤となった。融資先の海猫食堂を訪ねると「母の遺産相続で店を閉めるかもしれない」と告げられ、先行が心配になった。店を出て都市銀行から転勤した坂下に「どうして地方銀行に?」と問うと「居場所はここでないことに気付いたから!」という。この言葉を佳乃はどう捉えたか!

春になって、すずにボーイフレンド(風太)が出来た。サッカー仲間と海猫食堂でシラストーストを食べた。すずには父と一緒に食べたシラストーストの記憶があるがお姉ちゃんたちには、まだ、言えない!これを風太に話すと、風太はすずの気持ちが嬉しくて、すずを自転車に乗せて桜のトンネルを走る。病院でお父さんと見た桜のことを思い出し、悩みから解放されたすずの顔がまぶしい。

梅雨になって香田家では梅酒を仕込む。すずはお婆ちゃんが仕込んだ梅酒を見て驚く。

夏、お婆ちゃんの法事。1回忌にも3回忌にも顔を見せなかった実母・佐々木都(大竹しのぶ)が来るという。幸は「関係ない!」というが、すずは「出てもいいのかな!」と悩んだ。

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当日、都はすずに何も言わなかったが、「家を処分したら!」と言い出したことで幸が「あんたは私たちを捨てて出て行った人」と反発、これに都が「お父さんが女作ったからよ」と衝突した。

すずは「お母さんが奥さんのいる人を好きになったのはよくない」と幸に謝った。幸は「すずを傷つけてごめん!誰のせいでもない」と。

翌日都が幸に謝り、一緒に先祖墓に参り、幸が作った梅酒を贈ることでふたりは仲直りができた。親子はどこかで繋がっているんですね!

千佳がお母さんの想い出と「ちくわカレー」を作ってすずと食べる。(笑)すずが「シラスをお父さんと食べたことがある」と告白すると「私はお父さんを知らない、これからも話を聞かせて!」という。「よく釣りに行った!」。これに千佳がにんまり、“似ている”やっと父との接点が見つかった!

海猫食堂の融資問題。二宮さんは店を閉めターミナル病棟に入ることになった。

幸は椎名から「先端医療を身に着けるためアメリカに行くが一緒にきてくれないか。妻とは別れる」と誘われた。幸は佳乃と千佳にこのことを明かすと佳乃が「離婚できないのは言い訳!お姉ちゃんはお父さんと同じで弱い駄目な人!」と貶す。すずが二階でこれを聞いていたが、幸がいなくなって、佳乃にお婆ちゃんの法事で幸に「奥さんのいる人を好きになったのはよくない」と話したことで相談した。

佳乃が幸の部屋にやってきて「傷つけて悪かった!すずは私と千佳で育てます!」と謝ると、幸はすでに答えを出していた。

幸は「ターミナルケアをやってみたい。すずに父親の最期を看取らせ可哀そうなことをした」と椎名の誘いを断った。

夏の花火大会。幸がすずに自分の浴衣を贈り、花火大会に行かせた。鈴は仲間と一緒に観光船で花火を見た。花火で真っ赤に浮かび船が美しかった!

帰り道で風太「自分はここに居ていいのかなと思う。仙台でも山形でそう思った、私がいると傷つく人がいる。それが苦しい」と明かした。帰ってきたすずを姉たちが浴衣姿で迎え、庭先で線香花火を楽しんだ。この映像が美しい!

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すずは幸に、幸好みに梅酒を調合。すっかり香田家の味に馴染んだようです。幸は江の島の見える台地にすずを誘い「山形で見た風景と同じでしょう」と。幸が「お父さんのバカ」と海に向かって叫べば、すずは「お母さんのバカ!」と叫び「もっと一緒に居たかった!」と泣いた。幸はすすをしっかり抱きしめた。

二宮さんが亡くなり、香田家の4姉妹が葬儀に参列し見送った。その帰り、片瀬海岸の砂浜を歩く姉妹。幸が「お父さんはダメな人だったが、やさしい人だった。こんなやさしい妹を残して!」と喋ったが、すずには聞こえなかった。

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感想:

だらだらと書いて「なんだ!」と思うのですが、これを書かないと語れない作品。(笑) というほどに平凡な毎日が愛しくなる話でした。

すずが姉たち、友だち、海猫食堂のおばちゃんを通して、本当に妹になっていく過程が、細かいエピソードを積み上げて描かれました。このエピソードの取り上げ方が、料理であったりお洒落であったり、風景や仏事であったりと普段気にしないもののなかから選ばれているのが素晴らしい。こんな平凡なことの積み上げで我々の絆は作られていることを教えてくれます。

会話がとても楽しい。セリフがとてもリアル。言葉が相手に繋がり、変化していく様が丁寧に描かれています。出演者の皆さんの演技も自然で、表情豊かで、よく心情が伝わる物語になっていました。

花火や桜、鎌倉の風景などとても美しく描かれ、これが登場人物の心情変化に取り入れられています。四姉妹が佇むシーンが圧巻でした。

葬儀に始まり、葬儀に終わるこの作品。人と人の繋がりを、生きている人だけでなく亡くなった人との繋がりを大切にした作品でした。しかし、冒頭の佳乃の露わな姿で「生きるための物語」になったと思います。

亡き父で繋がる姉妹の絆。三人より四人姉妹が最高ですね!

                             ****

「さんかく窓の外側は夜」(2020)SNSの言葉の暴力(呪い)を具象して社会警告!

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予告編が面白そうだったので、この作品にしました。凄腕の除霊師と霊が“視える”という青年がバディを組み、呪いの女に翻弄されながら、未解決の難事件に挑むというもの。

原作は人気少女漫画家ヤマシタトモコの同名コミックス。累計発行部数が130万部だという、未読です。

監督はCMディレクターとして活躍されている森アキ侑大さん。脚本は「プリンセストヨトミ」「本能寺ホテル」の相沢友子さん。撮影は「一度死んでみた」の近藤哲也さん。

出演者は岡田将生、志尊淳、平手友梨奈マキタスポーツ筒井道隆滝藤賢一さん、他です。

物語は後半、過去と現在が交差しながらにミステリアスに描かれ、ちょっと難解なってきますが、霊、除霊、呪いの映像化、死体処理なんぞでドキッとさせられ、面白い映像が楽しめます!

岡田、志尊、平手さんが演じる霊媒師、霊が見える男、呪い師が、今の社会の裏側で生きているリアル感はあり、3人が出会うことでそれぞれが背負ったトラウマを乗り越えていくところが爽やか!特にSNSの言葉の暴力(呪い)を具象して社会への大きな警告を与えたことは、CM監督としてみごとでした。


映画『さんかく窓の外側は夜』本予告(60秒)

あらすじ(ねたばれ):

作品を観ていない方は見ないでください!

冒頭、三角康介は子供のころから霊が見える力があったが、あるときトンネルの中に霊が見えたのに、そこに入っていく少年を怖くて救えなかったシーンが描かれます。

成長した三角(志尊淳)は書店に勤めていて、出勤途中の横断歩道で向こうに霊を見て怯える。本の整理をしていて、そこに除霊師の冷川理人(岡田将生)が現れ、三角の胸を押さえると先に霊が見える。冷川が三角を抱くようにしてみる“除霊スタイル”がBLだと言われ、大変な人気らしい!

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冷川は「怖くない、大丈夫だ。俺といれば!」と三角に助手になってくれと請うた。

殺人事件が発生。ふたりは刑事・半澤日路輝(滝藤賢一)に協力して池の中を捜索し事件解決に当たった。焼肉店で、除霊後に冷川は肉を食べる、冷川が除霊作業を生業としていることを明かし、契約書を取り交わした。このとき三角は腰に違和感を持った!

半澤から“ばらばら殺人事件”の捜査協力がもたらされた。犯人は3人の女性を殺したが、各遺体の一部が見つからない。合わせるとひとりの女性になるという。

三人で遺体のあったアパートを訪ね、冷川と三角が“除霊スタイル”で中に入ると、しゃがんでいる女性の霊を見た。冷川が手をかざして除霊に入と「車で女性を廃ビル連れてきて、風呂場でめった斬りにしうめく男の亡霊を見た。

非浦英莉可(平手友梨奈)が通行する女性(北川景子)に道を訪ねて、「お前は死ぬように産まれている」と呪いをかけ、その女性が車に跳ねられるという事故が起こった。

冷川ら3人が次の捜査場所、廃ビルに入る。ドアを開けると虫の大群に襲われた。かなりの殺人が行われたらしい。ふたりが除霊スタイルで捜索すると縫い合わされた一体の女性遺体とゆうれいが居た。しかし、遺体が腐ってない! 除霊すると「ヒウラエリカにだまされた・・」の声。三角は吐いた!

ふたりは焼肉を食いながら、三角が「ヒウラエリカって何者だ!」と聞くと、「あの幽霊は操られていた。つぎはぎ死体は呪いの藁人形で、穢れが必要だ。ヒウラは呪い師だ!穢れが必要なんだ!言霊が簡単に呪いになる、SNSがそうだ!こんなの扱ったら身体が持たん!」とヒウラを追う積りはないらしい。

事務所に半澤刑事がやってきて「なぜ助手になったか?」と尋ねられ、三角が「冷川に運命だと言われて!」と答え、「霊だけでなく呪いまで含めたら、幽霊より人間の方が怖いから、商売になるのと違うか?」と尋ねると、「ヒウラか?最近殺されたのが大勢いるんだ!変なんだ!」という。

大物政治家の日向利治に何らかの不利益をもたらす立場の9人の関係者が、わずか1年間に自殺や事故で死ぬという事件、半澤が追っていた。

冷川と三角は半澤と一緒に“大勢が消えた”という”雑居ビル”の捜索に向かった。冷川が半澤に呪いに掛からないようチョークで書いた三角形の辺を踏ませて、三角と中に入ったが、非浦の霊が立ちふさがり、「やっぱりいたか!」と事務所に戻ることにした。

事務所に戻った三角は寝入って「幼いころトンネルに霊がいるのを検知しながら、入っていく少年を助けなかった夢を見て涙を流すと、それを見た冷川がそっと抱いた。

これを見た半澤が公園のベンチに座っている三角に「非浦について調べたが、殺人と関係ある者はいなかった」と言い、「冷川に巻き込まれるな!飲まれるな!大変なことになるぞ」と注意して去った。

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気が付くと非浦が三角の隣に座り「あなたは誰かに縛られている」と一撃食らわして去った。

目が覚めた時、事務所のなかで、冷川が「簡単に人を入れてはいかん」と注意する。三角は腰に違和感があるので鏡で見ると、三角の紙が貼ってある。彼に聞くと「他人や霊が三角に入り込まないようにしている」という。

「非浦を放置しているのは金儲けか?あんたはどんな人間なんだ?」と聞き冷川に触ると、冷川は幼いころある宗教団体で“大掌様”と呼ばれ、カイドスコープを覘いている姿が見えた。「どんな人間?俺には分からん!」という冷川に、三角は「お世話になりました!」と除霊事務所を去って行った。

三角は警察署に半澤を訪ね、「事務所を辞めた」と告げた。すると半澤は15年前の宗教団体“掌光会”で起こった事件を語った。「教会の中に入ると血だらけだった。生き残ったのは大掌様と言われる少年だけだった。不思議な力を持っていたらしい。それが冷川だ。親は教育を受けさせず教団施設に隠した。善悪の判断が出来ない。記憶を無くしていた」と。

半澤は帰宅して、妻・冴子(桜井ユキ)に「宝くじ、当たると信じる?」と問われ、自分は人を信じないタイプだが、冷川が「信じる力が人を呪うのを見た。あなたは信じないでいて下さい」と言ったが「俺は信じる!」と言ったのを思い出していた。

宗教団体“神話の光”の礼拝で、非浦が教祖・石黒哲也(筒井道隆)を無視して立ち去ろうとするのを父親松男(マキタスポーツ)に咎められ、「何故?」と聞いて鼻血を流した。ボディガードの逆木(新納慎也)が「どうしました?」と尋ねるが、非浦は「何でもない」と答えた。

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半澤が”雑居ビル”を妻冴子の運転する車から見張っていた。非浦を見つけこれを追い「話を聞かせてくれ!」と尋問すると、「なぜ私の名を知っている?全部見えている!」と呪いを掛けるが半澤には効果ない。そこにやってきた冴子に賭けて、逆木の車で逃げた。

三角が半澤家を訪ねると、冷川が出てきて「家の中は呪いで危ない!」と言い、半澤の妻・冴子が目から血を流している。

「あんたは助ける気があるのか?」と言い争っているところに、逆木の車がやってきて冷川を連れ去ろうとする。「やめろ!」と叫んだところで三角は気を失った。

”雑居ビル”のなかで三角が目覚めた。そこに非浦が眠っている。「どうなっているんだ?」と冷川に聞くと「自家中毒だ!自家中毒とは呪いを掛けると必ず自分に跳ね返ってきて倒れることがある」という。

三角は冷川に非浦の除霊を頼んだ!除霊するなかで非浦の過去が分かった。非浦は幼いころ彼女を庇った母親が通り魔に刺殺され、怒りに震えた非浦が犯人を睨むと目から黒い血を流して倒れる。宗教団体「神話の光」で、非浦の父親が「石黒先生のためにその力を使いなさい」と言うが、「お父さん、何で?」と聞いていた。目から血を流している信者を見て黒川が「占いです!」というと、幼い冷川が手をかざすと治った。

目覚めた非浦に、三角は「半澤さんの奥さんの呪いを解いてくれ!」と頼むと、「もう貯金箱の力を使い果たして駄目!貯金箱とは石黒と非浦で作った呪い装置だ」という。

非浦が冷川に「さっきのあなたの記憶、石黒先生を知っているでしょう」と問うと「覚えてない」という。三角が「非浦の記憶にあなたがいる。ふたりはどんな関係なの?」と聞くと、冷川は「奇妙な男がいて、そいつが事件を起こしたが、もう関係ない。俺たちの仕事ではない」と逃げてしまう。「あなたの仕事だ!」という三角に、半澤は「もういい!どんなに心を砕いても救えないことがある」と論議を打ち切った。この言葉が冷川を動かす!

三角は自分のトラウマを思い出し、何としても冴子さんを救いたいと、非浦に「貯金箱を壊す」と告げた。すると非浦は「呪いを掛ける時、わざとヒウラエリカと名乗った。誰かが気付いてくれるかもしれないと思っていた。怖かった!貴方たちに会えてよかった!」と言い出し、「自分が金庫室に入り、箱の引き出しを開ける」という。これに三角も冷川も賛成。「冷川が?」と非浦は以外に思った。 

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病院で冴子に付き添っていた半澤に「雑居ビル付近で事件が多発している」という連絡を受けて“雑居ビル”に駆けつけると冷川が「あんたはそっちの人だから見ていてくれ!あとは任せてくれ!」という。半澤はこれを“信じて”、駆けつけるヤクザを止めることにした。

”雑居ビル”内の貯金箱部屋に入ると「死ね」等の呪いの言葉が書かれた沢山の糸のような物が絡んでくる。ここから3人の呪いとの闘いが始まり、

幼い冷川はカレイドスコープを覘くのが安らぎだったが、母の勧めで信者の病気を治していた。目から血を流す信者が現れ、石黒の「穢れを集めろ!」に従って、「呪ってやる!呪ってやる!」と教会施設内を走り回り、沢山の人が死んでいった。呪いを掛けた信者に母親が殺され、カレイドスコープを捨てて、「僕がやったんだ!母も僕が殺した!」と悲鳴を上げながら逃げた。

三角は「生存者がいる」の声が聴き、昔のトンネルの記憶が戻り、長い廊下を走って厨房を覘くと、そこに子供がいた。冷川だった。「子供の頃はこんな変な力はいらないと思っていたが、今ではこの力があるから出来ることもあると考えるようになった。冷川さんありがとう」と言うと、「俺を見つけてくれてありがとう」という冷川の言葉が返ってきた。

冷川と三角は手を繋いで倒れていた。三角が目覚め、次いで冷川が目覚め、眠っている非浦を見て手をかざすと目覚めた。病院では半澤の妻冴子が目覚めた。

すべてが元の日常に戻ったが、非浦の腕から出血する。非浦には償っても償え切れない罪の傷が残った!

感想:

前段はバディで挑む除霊作業をひやひやしながら観ていましたが、後段になると宗教団体が絡み、過去の事件に入り込んで呪いと戦い、3人がトラウマを克服して結ばれていくところは、少し難解でしたが、感動的でした。

特異な能力があるにも関わらずそれを使う勇気がない、穢れに支配される、支配されて呪う。まるでSNSの世界!貯金箱の呪いとの闘いでこれから解放されていくところが見どころでした!

岡田、志尊、平手さんはよくこんなキャラクターを演じたと感嘆です。特に平手さんのいっちゃってる表情、威圧する目力がよかったです。さらに滝藤さんの地味だがぶれない実直な演技がすばらしかった。

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