映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「名探偵コナン 緋色の弾丸」(2021)時速1,000kmの“真空超電導リニア”を狙撃するという“時代への挑戦”

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コナンアニメ祭り、劇場版第24作です。オリンピックに因んだ作品、就中時速1000kmで走る真空超電磁リニアのアクションを見てやろうと参加。ストーリーもアクションも、何よりもコナンとこれを取り巻くキャラクターたちが元気で活躍する様は楽しかったです。でも、いきなり赤井ファミリーが大きく絡む物語にはびっくりでした。オートバイの後ろに乗ってる金髪の女の子が母親なんて想像も出来ない、“お母さん”というのを聞いてびっくりでした。(笑)

原作は言わずもがなの青山剛昌さん。監督は前作「紺青の拳」の永岡智佳さん。とても“愛“のある作品になっていました。脚本は第22作「ゼロの執行人」の櫻井武春さん、この作品を観ておくとよりコナンに寄り添えますよ!。CG監督:松倉大樹さん、音楽:大野克夫さん、主題歌:東京事変「永遠の不在証明」。名古屋が背景となる物語です。美しい名古屋でした!

あらすじ:

4年に1度のスポーツの祭典“WSG -ワールド・スポーツ・ゲームス-”。その東京開催を目前に控えた日本では、開会式に合わせて最高時速1,000kmを誇る“真空超電導リニア”が開通すると発表され、注目を集めていた。

そんな中、大会のスポンサーパーティーに集まった有名企業の要人たちのなかで鈴木財閥の会長が拉致される事件が発生。少年探偵団の活躍で会長を救出できたが、他にも同種事件が起きている。真相を探るコナンは、15年前にアメリカのボストンで起きたWSG連続拉致事件との関連性を見出した。次に拉致されるのは自動車メーカー社長のジョン・ボイドだと考えていた。

その裏ではFBI捜査官で敏腕スナイパーの赤井秀一FBIの面々とこの事件を監視していることを知った。この赤井の動きにバイクを乗り回す女子高校生探偵の世良真澄が目を光らせていた。

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新名古屋駅から芝浜会場まで走るリニアの試乗券を鈴木園子から工面してもらったコナン、毛利蘭灰原哀は健康診断をして試乗に備えるべく名古屋国際空港に集まっていた。実は、毛利小五郎は密かにジョン・ボイドから警護を依頼されここに居た。コナンは赤井からボストンのWSG連続拉致事件犯人の妻と娘が日本にいることを知らされた。

WSGの会長アラン・マケンジーも到着しリニア試乗が盛り上がる。盛り上げるのは日本WSG協会広報の白鳩舞子、リニアの開発チーフエングニア井上治、客席担当の石岡エリーらスタッフ。

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健康診断が始まりアランの診断が始まったときにいきなり発煙が発生して爆発?という異変が発生。実はヘリウムガスによるクエンチ事故だった。コナン、蘭、灰原は昏睡状態に陥った。病院を監視していた赤井が病院から出てくる赤い車をマスタングで追う。さらにそれに気付いた世良とその母メアリーがバイクで追う。眠りから覚めたコナンがスケボで追った。

倉庫に追い詰めて確認するとジョンだった。そのときアラン会長が居ないと小五郎から知らせが入る。

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コナン、赤井、世良がアランを追って新名古屋駅に。ところがリニアは無乗車で走ることになったという。コナンは赤井に「万一の時が来てしまったみたいだ。」と連絡し、出発寸前にコナンと世良がリニアに乗り込んだ。果たしてアラン会長が乗せられているのか?そしてその犯人は?さらに赤井一家の活躍は?

赤井はリニアが狙える場所でスナイパーに銀の弾丸を込めた。

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ここからは劇場で観てください!

感想(ねたばれ):

大音響とカーとリニアのアクションで、肝心のコナンの謎解きがどうなっていたのか?と言えるほどのテンポのよさと展開でした。(笑)

冒頭で、ボストンでの事件の結末。路上で男がハーモニカ演奏するなか、手錠をはめられて逃げる男が、女性の「私が許さない!」の声の中、無人のメトロに辿りついたところで撃たれるというシーンで始まり、FBI女性の1発が日本での真空超電磁リニアー事件の引き金であったという、とてもうまい結末でした。

ボストンでのWSG連続拉致事件の詳細が逐次明かされ、これが東京WSGにどう絡んでくるかが謎解きの柱になっていてとてもミステリアスだった。3人の拉致者の中で行方不明のひとりと犯人として撃たれた男に繋がりがあったとは?最後に“司法取引“を持ち出すところでは、詳しくは書きませんが、唖然とさせられ、最期まで謎を楽しませてくれました。

これに応えるようなコナンの正義。コナンは健康診断時のクエンチ事故で犯人に殺意はないと睨みこれを最後まで突き通した。アランに拳銃を向ける犯人に「上を狙え!」とアラン刺殺を制し、緋色の弾丸で倒れた犯人のために救急車準備を指示するコナン、FBIのように犯人と見れば銃を向けるのではなく、捕まえて警察に渡し法で裁いてやるという正義。人としての優しさが溢れていました。今回の事件目的は15年前とは異なる!

コナンは犯人の目的は、誰が標的になっているか、アナン会長はリニアに乗ったか、誰が犯人か、どう対処すべきかといくつもの謎解き(状況判断)をしましたが、いずれもこちらが推測する余裕がなかったと言うべきか、ラストまでコナンの本心を掴めなかったのが悔しい。

しかし、キャラクターの面白さやアクションはとても楽しめました。キャラクターではコナンと蘭の関係がうんと近づき微笑ましい光景は見られました。TVを見ながらの小五郎、蘭、コナン三人の朝食で、リニアーのニュースが出たとたんに小五郎がみそ汁をこぼし、これに反応する蘭、コナンが何とも言えない家庭的でアニメを越えていましたね!蘭が名古屋に来るのを必死に止めるコナンの電話。“俺の気持ちが分かってない!”。

ラストシーン、暴走リニアから出てきたコナン。「よく生きていたな?」と問われ「蘭に誘導するよう頼んでいた!」。“ええ~”でした。(笑)

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少年探偵団にも活躍の場があって子供たちへの配慮がなされていました。犯人追跡劇では同じ薬を飲んだ灰原哀との協力関係、「困ったときは灰原頼み」が微笑ましかった。世良とのリニア内での協力もよかったですね! 今回はなんといっても赤井一家の微笑ましい関係です。

タイトルのあと、コナンのいつもの縮んだわけの後に、赤井家についてコナンから簡単な紹介があります。FBIの赤井秀一は大学生で俺の家に身を縮めている、妹のオートバイ好きの世良真澄に少女メアリーは母親で俺と同じ薬を飲んでいる。もう一人の兄羽田秀吉はプロの棋士で現在タイトルの六冠保持者。説明不足でしたね!お互いは家族だと分かってない。分かってなくてもしっかり協力して事件にあたるところが、ジョンの行方を追って倉庫で出会い兄妹の喧嘩が始まるという、やはり家族だなと暖かくて面白い。また、羽田と警視庁警官の宮本由美との恋模様がユーモアを添えてくれます。犯人とのカーチェイスを羽田が地図上の駒で家族やFBIを動かして追い詰めて5手目で御用!とするうまいキャラクターの生かし方だったですね!

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真空超電磁リニア内の犯人を赤井がスナイパーで撃つという発想。緋色の弾丸とはよく考えましたね。何で当たるか説明がありましたがよく分からなかった。(笑)でもいい時に良い具合に当たりましたね!(笑)その後の犯人の行動も、この時速1000kmの中で見事でした。(笑)

アクションといえば病院でのクエンチ事故、このあとの謎の赤い車を追うマスタングの赤井とオートバイの世良さらにスケボのコナンの追走劇。リニア暴走時、車体の下に潜り先頭車両に移動するコナンの勇気でパラシュートとエアバックの開傘による暴走停止。これですかね!蛇行しながら宙に浮いて走るリニアの3D映像はアニメでしか描かれない圧巻でした。常に“時代に挑戦”、これが作品を長続きする秘訣とこれからを楽しみにしています。

                                   ****

声優:江戸川コナン高山みなみ)、毛利小五郎小山力也)、工藤新一(山口勝平)、毛利蘭(山崎和佳奈)、阿笠博士緒方賢一灰原哀林原めぐみ)、鈴木園子(松井菜桜子)、赤井秀一池田秀一)、世良真純日高のり子)、羽田秀吉(森川智之)、メアリー(田中敦子)、宮本由美(杉本ゆう

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「仔鹿物語」(1946)野生動物にどう向かい合うべきか!

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フロリダ北部の森林地帯で暮らす一家を主人公に、自然の猛威、隣家との確執を交えながら、ひとり息子の少年と子鹿の触れ合いを描く成長譚、テクニカラー色彩映画作品です。

原作はピューリッツァ賞を受けたマージョリー・キーナン・ローリングスの自動文学小説。

監督:クラレンス・ブラウン、脚本:ポール・オスボーン、撮影:チャールズ・ロシャー、レナード・スミス、アーサー・E・アーリング。音楽:ハーバート・ストザート

出演者:グレゴリー・ペックジェーン・ワイマン、クロード・ジャーマン・ジュニア、チル・ウィルスス、マーガレット・ウイチャリー、ヘンリー・テラヴァー、フォレスト・タッカー、他。

仔鹿を可愛がる作品という予想と全く違う結末!という感想を耳にしますが、70年経って、こんなに野生動物に対する感覚が変わっていることに驚きました。野生動物は野生でしか生きられない。人間の役割が問われる作品で、この作品は今観るべき作品だと思います!

当時の日本の状況を思うと、自然の中で熊との格闘、小鹿との駆けっこなどテクニカラーでどうやって撮ったのかと、驚きました。日本で最初の長編カラー作品は「カルメン故郷に帰る」(1951)でした。

 

あらすじ:

開拓民への感謝で始まるこの物語、

1878フロリダ州北部ショージ湖から入植し原野を切り開いたばかりの開拓村。このカラー作品、日本では’49’ですが、美しさにびっくりしたでしょう。

ここで一家を構えるバックスター家。父親ペニー(グレゴリー・ペック)と母親オリー(ジェーン・ワイマン)、息子ジョディー(クロード・ジャーマン・ジュニア)の三人暮らし。ジョディーは動物たちと遊ぶのが大好きな子だった。

夫婦はこれまでに3人の子供を亡くしており、ペニーはジョディーに甘い父親だったが、一方のオリーはジョディーが野生の動物に接するのを嫌がっていた。

ある日、子牛が襲われたことでペニーが熊撃ちに。オリーは反対したが、行きたがるジョディーと犬3匹を連れて出かけた。熊と犬の争いが凄い!どうやって撮ったのか?

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銃の暴発で熊を仕留められず、隣人フォレスター家の息子レム(フォレスト・タッカー)と交渉して新銃を手に入れた。

再び畑が合わされ豚が襲われ、熊撃ちに出かけた。ところが途中でペニーがガラガラ蛇に噛まれ、応急処置として雌鹿を撃ってその心臓で毒気を抜き、ジョディーを医者に走らせた。ジョディーの活躍でペニーは助かった。雌鹿には小鹿いて「可哀そう」とジョディーは飼いたがる。オリーは大反対だったが、ペニーは雌鹿の心臓で助かったのだからと家で小鹿を飼うことにした。小鹿の名前は尾っぽが旗に似てるとフラッグに決まった。

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一人っ子のジョディーは毎日がフラッグとの生活。自分でミルクを与え、一緒に野山を蹴気巡って、とても元気で活発な子に育っていった。

そんなときに大きなハリケーンに見舞われ、畑のものが全部失われた。「人間は徹底的に打ちのめされると立ち上がる力を失う、やり直す気力も失ったと思いがちだ。でも違う、残されたものが少しでもそれに感謝しよう!」と立ち上がったバックスター家。

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種を撒く季節が来た。ジョディーも父と一緒に田を耕し、種を植えた。

やっと芽が出てきたときにフラッグが食べてしまった。オリーは激怒した。ペニーとジョディーは枯れ木で柵を作ることにした。そしてオリーを喜ばせるために森林を切り開き綿花を作ってお金を貯め井戸を作ろうと木の伐採作業に取り掛かって、ペニーが腰を痛め臥せってしまった。

トウモロコシ芽が出て来たがフラッグが食べてしまった。ペニーは「野生動物はダメだ」と厳重に注意したが、ジョディーが自分の脚に括りつけてでも畑を守ると言い張った。身体を動かせないペニーは「ジョディーがもう一度種を蒔き、高い塀を作るなら」とフラッグを飼うことを許した。

動けなくなったペニーは高い塀を作ってもう一度種を撒くことを条件に、ジョディーがブラックを飼うことを許した。

ジョディーはひとりで田を耕し、トウモロコシの種を蒔いた。雨の中でもひとりで懸命に廃材を組んで塀を完成させた。ひとりで働くジョディーにオリーも見かねて手伝った。オリーはジョディーの力を認めた。

子供にこんなこと出来ないと今の人は言うでしょう。違いますね!終戦時の日本の子供たちはもっと働いていました!

再び芽が出てきた。しかし、フラッグはもっと成長していて、楽にその塀を越えて、芽の出たトウモロコシを食べてしまった。母はフラッグを野生に戻しなさいと言うが、ジョディーが出来なかった。

ペニーは撃って処分しろと命じた。しかし、ジョディーはフラッグを森に連れて行って逃がすことにしたが、フラッグが逃げなかった。

代わりにオリーは銃を持ち出して戻ってきたフラッグを撃ったが傷を負わせるも死なせるには至らなかった。ペニーはジョディーに「楽にしてやれ!」とフラッグを処分するよう命じた。ジョディーは母オリーを罵ってフラッグを撃った。泣いた!

ジョディーはその悲しみに耐えられず家出。森の中を彷徨し疲れて川舟で眠り、その舟が大河に流され、船長オリヴァー(ジェフ・ヨーク)の汽船に助けられた。

家に戻ってきたジョディーは何よりも父母が大切だということが分かるジョディーになっていた。ペニーは「飢餓の怖さが分かったか!熊の怖さより怖い。人生はすばらしいものだが厳しい。孤独を紛らわすために鹿と楽しく過ごさせてやりたかったが、人はみな孤独だ。孤独に打ちのめされた時には前に進むしかない。耐えなければならない!」「これからの人生、外に出ていくかここに残って母のために井戸を掘るか?」と問うた。「ここに残る!」とジョディー。オリーも疲れて帰ったジョディーを優しく抱いた。

感想:

ストーリーの分かりやすさ、印象的なエピソード。そして分かりやすいテーマ。感想はこれに尽きます。😊

野生動物をどう扱うかというテーマ。

野生の動物をどう扱うか?可愛い、遊び友達、しかし穀物や家畜を荒らす、ハリケーンという自然に自分たちも食べるものがなくなる。可愛い、孤独を癒すためではどうにもならない、どうするのが良いかと判断を迫るようを丁寧に描いている。

父母のジョディーに対する愛情がそれぞれ違った形で描かれ、これがまたよかった。

ペニーはフラッグを飼うなら柵を作れ、それでもだめなら自分で処分しなさいと“責任を求める”「失敗させて教える」。オリーはフラッグを飼うことに反対ばかりでしたが、先の結果が分かっていての反対。子供にとって“厳しい人は嫌い”ですが、その人の言うことを考えてみなさいと教えている。これが分かるようになって一人前の男の子! 母親の愛情は深い!

1880年代の農業。日本の敗戦直後の農作業にほぼ同じでした!農業には大家族の必要性。大家族のフォレスター家。家族内の諍いが絶えない。(笑)実はこれが家族の絆になっている。

船長オリヴァー(ジェフ・ヨーク)に憧れるエピソードも、この時代ならではの憧れの人だった。だがジョディは父母の辿った道を選んだ!これも感動でした。

レムとオリヴァーの喧嘩にオリヴァーに助っ人するペニーとジョディー。 (笑) こういうのが懐かしいですね!

熊と犬たちの格闘。熊は実物?よく出来ていました!このカメラの動きが凄い! すばらしい作品でした。

          *****

「ハルカの陶」(2019)備前焼の温かさを知るものがたり!

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岡山県備前市で陶芸に情熱を燃やす人々を描いた人間ドラマ。故郷が舞台の作品ということで、WOWOW放送で観賞しました。備前焼日本六古窯のひとつと言われますが、岡山にいながらほとんど知識がない状態でした。(*ノωノ)

備前焼とは、

釉薬を一切使わず「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わいや、「窯変」によって生み出される“一つとして同じものがない模様”が特徴。現在は茶器・酒器・皿などが多く生産されて、「使い込むほどに味が出る」と言われ、派手さはないが飽きがこないのが特色と言われています。自分の所持品が世界でひとつというのが魅力ですね!

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監督・脚本:末次成人、原作:ディスク・ふらい、撮影:Yohei Tateishi、主題歌:サボテン高水春菜。

出演者:奈緒平山浩行村上淳笹野高史、村上真希、長谷川景、他。

あらすじ:

東京で毎日を淡々と過ごしていたOLの小山ハルカ(奈緒)は、デパートの展示で出会った備前焼の大皿に強く惹かれ、備前市へやって来る。意気揚々と大皿の作者を訪ねた彼女の前に現れたのは、頑固でぶっきらぼうな職人気質の若竹修(平山浩行)だった。勢いのままに弟子入りを志願するハルカだったが、相手にしてもらえず、見かねた人間国宝の陶人・榊(笹野高史)の計らいにより、どうにか修行見習いの身となる。

気鋭の作家として陶芸と向き合う修には、亡き父・晋(村上淳)との約束があった。ハルカは地元の人に溶け込み、焼物修行を通して、作家の心を開いていく。

テーマは備前焼の良さ、「温かみ!」を描いたもので、すばらしい脚本になっています。

のんびりした風景と岡山弁が醸し出す雰囲気を楽しんでください。みなさんの岡山弁のしっかりしていましたが、もうすこしなめらかかもしれませんね!

奈緒ちゃんの演技、備前焼の心を掴むという演技はおそらく難しかったと思います。しかし、最後には、この物語のハルカのように、成長した女優さんになりましね。😊

感想:

備前焼の特徴を伏線として、師匠と弟子の成長を描くドラマですが、これがよく噛み合って、感動的なドラマになっていました。

備前焼の特徴、製作過程の基本的なものが描かれますが、焼物に最も大切なのが土と火と人間性で、求められる人間性とは何かを描いています。「上を敬う」、「人を愛する」「辛抱」、そして「未知への挑戦」が大切だと教えてくれます。

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何故ハルカが備前焼に魅せられて、備前町の工房を訪ね弟子入りしたか。

 特に夢もなく何かに一生懸命になった覚えがないハルカが、「現代備前焼展」で見た備前大皿に温かいものを感じ、作家の若竹修に会って、不愛想で相手にはしてもらえないし諦めようとするが、榊に出会って1200°で焼物をする男の意思と情熱を聞かされ、引っ返して、ひたすらロクロを廻す修の姿に魅せられる。甘っちょろい気持ちでは人は会ってくれない!

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そんな修にも問題があった。修が認めたわけではないがなんとなく弟子になったハルカ。本当の才能を見極めてから面倒を見るというのがこの世界では当たり前で、修が何かを教えることなどない。仕事の厳しさを知るというよいエピソードです。

ハルカが修を知ろうと隠し部屋を覘き見したことで弟子としての関係を解かれる。この時にも救ってくれたのが榊。榊は修に陶人として何かが欠けているということを感じていた。修の父親は陶人で窯の焼き入れ作業で過労死していた。

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榊は「備前焼が窯の器。作家は使うことをイメージしてドクロに向かう。お前はなんでひとりで向かう膳では使うことのない大皿を展示に出した?大皿に呼ばれたあの娘に関わることで親父・晋の背中に近づける!」とハルカを追い出したことを責めた。「人と人の繋がり、人の優しさを知れ!これが作品に出る!」ということだった。

これでハルカは修から正式に弟子をして認められて、土練りを任される。しかし「やり直し!」と使ってはもらえない。

土練りは2-3年寝かせていた粘土を均一の硬度にし、空気を抜くために土を練ること。手のひらで練ると粘土の形が菊の花びらのようになるので「菊練り」と言われる。

ハルカは農家のお婆ちゃんの畑仕事を手伝って、長時間作業するときの身体の使い方を覚え、これで土を練って、やっと修に認められていく。今の若い人にはこういう根気のいる仕事は出来ないかもしれませんね。「土練り3年、ロクロ6年」と言われるから、まだまだ土練りが続きます。

 10月の陶器市14万人も集まるフアンへのサービス市。

打ち上げ会が大いに盛り上がるが、修はこれに加わらず、陶器市に刺激されたように新作を模索していた。修は徹夜で3枚の大皿を作り上げて眠ってしまった。修の働きっぷりを見たハルカは沢山の豆皿を手作り上げて、これまた眠ってしまった。

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榊はこの状態を見て「良い弟子になった!自分の皿は残らんでも大皿に乗せて焼けば“ぼたもち”として残せる“他を生かす”ということ」とふたりにエールを贈った。陶器は作家ひとりの作業で、出来ているのではない!

大皿の“ぼたもち“という模様は、焼くときに豆皿などをのせてその痕跡が灰にならず発色するために”ぼたもち”になぞらえている。

秋になっていよいよ窯入れ。ふたりの力が試される時がやってきた。失敗すると数千万円の損失が出るという。いやそれ以上に作家の評価に関わること。

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修は眠らずに窯を監視して、ついに倒れ入院してしまった。応援に榊の娘・松崎陽子(村上真希)らが駆けつけたが、「近くで俺を見て来たお前に任せる。失敗しても次へ何かが残る。備前焼はこうやって1000年やってきた!」とハルカに「灰がゴマに代わる1700°に上げるか?」の判断を任せた。

皆が「トックリを残しで全部やられるかもしれん」と反対する中で、ハルカは1700°上げる案を採った。

窯で焼くことがこんなに繊細で厳しい作業だったんだと知りました。ハルカは修の側にいて、彼の生き方や性格をよく知っていたから、“挑戦”を選んだんですね! ラストにふさわしいエピソードでした。

作品のなかで沢山の備前焼に出会いますが、水ようかんと備前焼セット、缶ビールが生ビールになるというジョキーがお気に入りです。😊

焼物は毎日手に触れ、人との関係が希薄になっていくSNS社会の中では感じられない、人の暖かみが感じられます。😊

この種地方発ドラマとしてとても出来のよいドラマになっていて、やはり備前焼きの凄さによるものでしょう。

岡山の風土を紹介してくれるのも、久しぶりに見て、こんなに美しい、すばらしいところに住んでいるんだという気持ちにしてくれました。

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「BLUE/ブルー」(2020)試合に負けても、やり続ければ人生の負けではない!

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吉田恵輔監督作品は人生の応援歌だと思っていますので、楽しみにしておりました。

人一倍ボクシングに情熱を注ぎながらもなかなか報われない、というか一度も勝ったことのない男のボクシング人生を描くというもの。

まさに監督にうってつけの作品だと思いました。😊「馬車馬とビッグマウス」(2013)に近い作品ですが、こちらはボクシング歴30年の監督自らが、体験を活かして書き下ろした脚本です。

BLueはボクシングでの青コーナー、挑戦者席。この席が、実は人生のブルー席であったという物語。「ボクシングに負け続けても、やり続ければ人生のブルー席になる」という応援歌になっています。私にとっては自分を育ててくれた先輩たちを思い出して感謝し、後輩たちにエールを送りたくなる、とても感動的な作品でした。

試合に負け続ける主人公の日常を描く前段、穏やかで親切、自分の近くにあるジムの物語のようで、ちょっと入会したくなるようなボクシング風景。しかし、後段になって後楽園ホールでのボクシングシーンになると、殴り合うのではなく、人生を賭けた本物のボクシングを見せてくれます。😊

監督・脚本・殺陣指導吉田恵輔撮影:志田貫之、ボクシング指導:松浦信一郎、音楽:かみむら周平主題歌:竹原ピストル「きーぷ うおーきんぐ!!」。

出演者:松山ケンイチ木村文乃柄本時生、守谷周徒、吉永アユリ竹原ピストル、よこやまよしひろ、東出昌大、他。

 あらすじ(ねたばれ):

大牧ボクシングジム。瓜田信人(松山ケンイチ)は一度も試合に勝ったことのない選手、それでいてトレーナーを兼務。ボクシング好きで理論家。基本が出来ていても弱いとジムの後輩たちからは軽んじられている。

瓜田の勧めでボクシングを始めた小川一樹(東出昌大)は瓜田の高校時代の後輩、抜群のボクシングセンスと才能の持ち主で日本チャンピオンを目指している。瓜田は小川のスパーリング相手に立ち技術的なコメントはするし、酒は慎めと私生活にも口を挟む。小川は瓜田の試合に付き添って「今度は勝て!」と靴紐を結ぶ仲です。

ゲームセンターで働く楢崎剛(柄本時生)が、彼女の多恵(吉永アユリ)に「俺はボクサーだぞ」と恰好いいところを見せたと、なんとも不純な目的でジムを訪ねてきます。(笑)

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楢崎を見た瓜田は「やってみるか」と気さくに声を掛け、縄跳びから教え始めます

監督のボクシング体験、ボクシングの面白さを伝えるように楢崎のボクサーとしての成長が描かれます。楢崎のキャラが面白いですから、笑いながらボクシングドラマを楽しめます!

瓜田は美容院に行き、小川の彼女・天野千佳(木村文乃)に整髪してもらいながら「あいつ病院で診てもらえ!」と勧める。千佳と瓜田は幼友達、千佳の勧めで瓜田はボクサーになった経緯があります。小川、瓜田、千佳の三角関係はボクシングの試合のようにさっぱりしたもの。(笑)瓜田が小川の才能を知って譲った?(笑)

小川は病院で脳を検査してもらうと「最悪の場合、痴呆症」と診断が下された。瓜田は小川の異変に気付いていた。小川は千佳に「ボクシングを辞めない」と伝えた。

大牧ジムにはもうひとり特異な練習生、赤に髪を染めた洞口(守谷周徒)がいた。練習嫌いだかめっぽうプライドが高く、新入りの楢崎が気になる。

会長(よこやまよしひろ)から小川に対戦相手が「石橋拓」、瓜田には「その前座だ」と告げられ、小川と瓜田の練習が開始された。瓜田はトレーナーを兼務しており毎日夜遅くまでジムで過ごし、シャドーボクシングをしながらアパートに帰ってひとりで飯を食べる。

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一方、小川はアルバイトで車での配達業務をやっていたが、配達ミスの連発。

瓜田は小川の減量につき合って「タイトル戦で引退するか?」と聞くが返事はなかった。

瓜田は1回でノックアウトされ、千佳と一緒に小川の試合を見るんですが、千佳がお茶を買ってきたところで試合はカット(笑) 映像では見せてくれない、小川が勝に決まっている、後段のタイトル戦に取って置いたようです。この演出はよかったと思います!負けた瓜田が千佳に見せる明るさ、一体これはなんなんだ!しかし、洞口から「あいつは逃げている!精神的に弱い」と、小川から「また負けると思っていたか!」と批判される。

小川はアルバイトでミスが出る、自転車で転ぶ、物忘れが激しい。千佳がしっかり支えているが心配になり、喫茶店に瓜田を呼び出し「引退を勧めて欲しい」と相談する。瓜田は「出来ない!日本タイトルだよ、あいつの夢だ!」と断った。

洞口が楢崎にスパーリングを持ち掛けた。楢崎はびびって断る。会長の許可で始めた。洞口に「打って来い!」と挑発されるが楢崎は1発も打てなかった。楢崎は悔しさでベンチに横になって泣く。これに瓜田が「よかった!」と励ます。楢崎は起き上がって周りの選手たちの練習を見て、「やったるぞ!」と決意。ボクシングでは1発喰らうことで強くなる。「気にするな!」という瓜田の指導も上手かった。これを契機に楢崎は瓜田の指導で腕を上げ、プロテストに合格。一方の洞口は我流ボクシングで基本ができていないと不合格になった。

瓜田が大坂の試合で負け、夜行バスお帰りに小川に電話。千佳に代わるの返事。この悔しさ!バカにするな!だったでしょうね。

口はプロテスト不合格に不満で、「勝てない瓜田の指導のせいだ」と罵る。遂に楢崎がこれに耐えられずスパーリング対決となった。楢崎が圧倒的に試合を進め、終了後洞口が倒れて痙攣をおこし、緊急手術を受けるという大牧ジムにとって大変なことになった。楢崎は泣いて謝った!洞口は笑ってこれを受け入れた。

ここでも瓜田は楢崎に「頑張ってやれ!大丈夫だ!」と声を掛け、この言葉で楢崎は救われボクシングを続けることになった。

ボクシングでの基礎訓練が如何に大切であるかということ、試合の厳しさを教えられます。監督はこのエピソードをどうしても取り上げたかったんだと思います。小川が脳に異常をきたしていることが如何に危ないか。

小川のタイトルマッチ戦相手が決まった。瓜田、楢崎も前座で出場が決まった。瓜田の相手はこれがレビュー戦だという笹崎。

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その夜、瓜田は小川のアパートを訪ね、ふたりで戦術を練った。小川が「この試合が終わったら千佳と結婚する」と宣言した。

小川は新しいアパートに引っ越しすることにした。瓜田は引っ越しで怪我した千佳に包帯を飽きながら「千佳が勧めてくれたボクシングで俺の人生は変わった、俺の恩人だ」と伝えた。

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小川の公開スパーリングは「良い選手だ!」ととても好評だった。

楢崎は一緒に住んでいるお婆ちゃんがスーパーで万引して捕まり、これを引き取っての帰り、婆ちゃんに「俺は明後日プロレビュー、勝ちてえ!」と話しかけていた。(笑)

試合当日、

先ずは瓜田。ここから試合をちゃんと撮ってくれます!相手はレビュー戦とは言え、元キックボクシング選手でキャリアーがあった。瓜田を挑発し、時間稼ぎで試合を引っ張るという最悪の試合展開。4回ノックアウトされて試合は終わった。控室に戻り相手が「もっといい相手を見つけてくれ!」と抗議しているのを楢崎が見ていた。

次いで楢崎。緊張していてトイレが気になる楢崎、1回でノックアウトされた。(笑)

小川のタイトルマッチ戦。瓜田はリングサイドで声を掛けることにしていた。「距離を取れ!」「アッパーで責めろ」と声援するが打たれっぱなし。千佳が泣き出す!次第に夜研究したとおりの小川の試合運びになってきて、小川のノックアウトでゴング。

インタビューで勝因を聞かれ「阿沼の分析です」と相手の選手の名前で回答。彼の頭は混乱していた。(笑)

戦勝祝い。「なんでヘラヘラ笑って試合に負けて、そんな人にアドバイスされても」という瓜田批判が出たが、これを千佳が止めた。早々に会を引き上げての帰り、瓜田は「お前が敗ければとずーと願っていた」と小川と千佳に突然告げた。小川は「分かった!」と答えると、「じゃ!」と振り向くことなく瓜田は去って行った。小川はこれに深く頭を垂れた。

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瓜田はこの夜から、ジムに現れることはなかった。ジムには小川のチャンピオンベルト姿の写真が掲げられた。小川は千佳と結婚式を挙げた。そこに瓜田の姿はなかった。

次の試合に向けて小川と楢崎のトレーニングが始まった。楢崎は瓜田を倒したキックボクサー上がりの笹崎を対戦相手に選んだ。ゲームセンターの多恵と縁を切り(切られて(笑))「おれにはこれしかない!」とサウンドバックを叩く。まるで瓜田そっくりになってきた!(笑)

小川が吐血するのを見て、千佳が「もう止めたら」と勧めるが「止められん」と意地を張る。

小川と楢崎は蕎麦を食いながら、「ボクシングバカだった」と瓜田を偲んだ。楢崎が自分のために書き留めていた小川のノートに見せた。「あの人は本当に強い人だった。試合で返せよ!最後の主役だから!」と小川。

試合の当日、瓜田は2階席で試合を見ていた。千佳は試合を見に来なかった。楢崎は瓜田に教わった通りに「コンパクトに早いパンチ」で自分のボクシングをして判定勝ちした。

 小川は壮烈な撃ち合いで目を傷めるが、相手のパンチが有効打と判定された。試合が再開され、小川が我武者羅な反撃に出たがドクターストップがかかった。「出来る!」と小川が食い下がったが受け入れられなかった。瓜田はうつむいたままだった。見てられない戦いぶりだった。

 小川は仕事もやめて、シャドーボクシングとランニングの毎日。楢崎に出会って「もしかして!」「うるせえ!」とふたりでランニング。

瓜田は魚市場で働いていた。休憩時間に、シャドーボクシングで軽快にステップを踏んでいた。これからが人生スタートだ!

 感想:

この作品の肝は小川がチャンピオン戦で勝利したあとの瓜田との別れのシーン。

瓜田は積年の小川に対する嫉妬をぶつけた。長い間の彼の苦しみ、忍耐は想像を絶するものでしょう。しかし、瓜田にとっては小川がチャンピオンになることが彼の夢となっていったのも確か。こうして彼の夢が達成でき心置きなくボクシングから身を引くことができたのではないでしょうか。

 瓜田のボクシングを通して身に着けた抱擁力と忍耐力に、人物の大きさを感じます。目に見える形で結果が求められるボクシング選手としては何の成果も得られなかったかもしれないが、目には見えない長きにわたる辛抱と努力はボクシングの世界を越えた、人生で大切なものを手に入れたと思います。松山さんの達観した笑顔がすばらしかった。あの笑顔です。この青春は決して無駄になることなく次の人生で花開くでしょう。

 小川は瓜田との別れに深々と頭を垂れたこと。そして瓜田を失ってのタイトル保持戦での無残な敗戦。人生を才能と技能、己ひとりだけでは乗り切れないことを知って、人の痛みのわかる人になるでしょう。

 楢崎はいい加減な気持ちでボクシングを始めたが、瓜田に出会い、試合を積むごとに成長して、瓜田そっくりになってきました。持ち前の明るさと素直さ、練習好きで、小川を越えられるかが楽しみです。これが瓜田の大きな功績です。主題歌に「もはや足跡を残したいわけじゃない」とありますが、しっかりした足跡が残っていました!

 ボクシング好きという監督だからのエピソード満杯で面白く見せてくれました。そして松山さん、柄本さん、東出さんのボクシング演技、大変だったろうと推察します。とても力の入ったすばらしい演技でした。

           *****

主題歌

「ミスティック・リバー」(2003)登場人物全員の運命の行く末に泣いた!

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クリント・イーストウッド監督作品ということで、WOWOWで初観賞です。原作は全米でベストセラーとなったデニス・ルヘインの同名のミステリー小説、未読です。タイトルはマサチューセッツ州を流れる実在の川だそうで。

第76回アカデミー賞で作品賞を始めとした6部門にノミネートされ、ショーン・ペンが主演男優賞、ティム・ロビンス助演男優賞をそれぞれ獲得しています。

幼いころある事件で疎遠になった三人の男。1つの殺人事件を通して25年振りに再会した彼らの運命を描くというサスペンス・ドラマ。キャッチコピーは「もうひとつのスタンド・バイ・ミーをみるために、あなたは大人になった」。

サスペンス・ドラマですが、25年後の三人がどう変化していたかという視点で描かれたドラマになっていて、深い感動を味わうことができます。

監督・音楽:クリント・イーストウッド、脚本:ブライアン・ヘルゲランド、撮影:トム・スターン、編集:ジョエル・コックス

出演者 ショーン・ペンティム・ロビンスケビン・ベーコンマーシャ・ゲイ・ハーデンローラ・リニーローレンス・フィッシュバーン。 

あらすじ(ねたばれ):

11歳のころの出来事。ジミー、ショーン、デイブの仲良しの三人。いつも野球だが今日はジミーの言い出しでホッケー遊び。キーパーのデイブにジミーとショーンが玉を打ち込んでいたが、デイブが力一杯打ち返してボールが排水溝に入ってしまった。これまたジミーを言い出しでホッケーを止めて、車を盗んでドライブしようと駐車場に急ぐが、工事が終わったばかりのコンクリート道に出会い、このコンクリートに落書きをしようと各自の名前を書き始めた。シミー、次いでショーン、最後にデイブの番だったが、DIまで書いたところで、「悪戯するな!」と警察バッチを着けた男に止められ名前と住所を聞かれた。「家族に連絡するから乗れ!」と言われ、デイブが乗ったところで車が発進した。デイブはこの男ともうひとりの男に性的暴行を受け4日後に戻ってきた。

この事件が彼らのその後に生き方に、そして25年後の事件にどう関わってきたか。

25年後、

デイブティム・ロビンス)は妻セレステマーシャ・ゲイ・ハーデン)と結婚し長男マイケルが生まれ、この子と野球するのが楽しみだが、レイプのPTDSで浮かぬ表情。仕事は妻の親父さんの不動産業で生活していた。

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ジミーショーン・ペン)はやはりそうかというように悪の世界に走ったが、ある事件で足を洗って今は雑貨店「コテージ・マーケット」を経営。先妻マリータとの間で出来た娘キティーと再婚の妻アナベスとの間にできたふたりの娘と生活をしていた。

ショーンケヴィン・ベーコン)はデイブが誘拐されたことに触発されたのか刑事となり相当な腕利き刑事になっていたが、妊娠した妻ローレンスが突然姿を消したことを気にしていた。相棒の刑事パワード(ローレンス・フィッシュバーン)から「クリントンのように浮気をしろ!」と冷やかされていた。イーストウッド共和党支持者?(笑)

事件当日、

ジミーの娘ケイティが、朝、「イブとダイアンに会ってくる」とジミーにキスして「god bye!」とうれしそうに出て行った。ジミーは「明日はふたりの妹の初聖体祭だから帰ってくるように」と言い含めて送り出した。

ケイティが車に乗ると、後部座席にブレンダンが乗っていた。このときのカメラは車の中からケイティを捕えていたから(通常こんな撮り方はしない)、ブレンダンは待ちきれないで待っていたという感じだった。ケイティは「お父さんに見つかったら殺されるよ!明日約束どうり会う!」と言って別れた。

その夜、デイブがバーで飲んでいると、3人の娘が入って来て、カウンターの上に乗って歌い出す。飲み仲間が「ジミーの娘だ!」というに「よく知っている」と頷いた。

午前3時、まだ夜が明けないころデイブが血を浴び、手と腹に傷を負って帰ってきた。「暴漢にナイフで襲われ格闘して受傷した。ナイフを取り上げ強く刺したので相手は死んでいるかもしれない。警察には届けるな!」という。妻はこの言葉を信じ、彼を慰め必死に治療した。

翌日、警察へ「車に血痕、ペン公園横の道路に車両」と電話があり「名前は?」と聞くと「女性・・・」で切れた。この事件をショーンとパワードが担当することになり現場に跳んだ。

後に判明するのですが、ショーンは腕利きであるにも関わらず、この電話の意味をしっかり解読できていなかった。おそらく妻との関係が響いていた。彼にとっての大きな転機となる事件かも知れない。

ジミーは朝までに帰って来なかったケイティを訝りながら、ふたり娘の聖体祭を終えて、通行止めで騒がしい事故現場に娘の車を発見。ケイティが刺され銃殺されたことをショーンから聞かされた。

ジミーの嘆きは異常だった。ショーン・ペンアカデミー賞ものの嘆き演技でした!「25年前の事件がなかったら絶対に一緒になれなかった妻との間に出来た子だ!出ていくときの目が忘れられない」と泣き崩れた。色々聞きたがるパワードに「16年前強盗で2年喰らい、産まれたときは刑務所にいて、出所してすぐに妻を亡くした。これが犯人逮捕に繋がるのか!」と怒りを見せた。(ジミーは妻マリータの死を契機に悪業から足を洗った。だからケイティは大切な妻の忘れ形見だった)。ショーンはパワードの質問を遮ったが、パワーズはふたりが幼なじみということで慎重な態度を取っていた。

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ジミーは「警察より先に犯人を見つけて殺す!」と誓った。

ショーンはケイティが一緒にいたというデイブに会い、ケイティの車にメキシコ市地図が残されていたことから一緒に行く相手は誰かと聞き出し、ブレンダンと知った。

ブレンダンの家族を訪ねた。ブレンダンはケイティの死に「やってない!結婚するつもりだった。もう二度と会えない」と泣き崩れた。ブレンダンをウソ発見器にかけたが、証言に嘘はなかった。弟レイは何も喋らず手話で会話している。母親は事件に無関心だった。刑事が帰ったあと、弟レイは「母親が忘れろ!と言っている」と兄に伝えた。

ジミーは毎日を放心したようにベランダで過ごす。これをデイブが「あの時以来だな!」と尋ね慰めた。そして、ジミーの妻アナベスはデイブの妻セレステと姉妹関係であり、セレステもよくシミー邸を訪ね泊まって、アネベルやジミーを労わっていた。

ショーンたち刑事。息子をスクールまで送るデイブを掴まえて「ケイティが踊っていたバーで飲んでいたか!」と確認し「いつ店を出て、何時家に着いたか?」と聞く。デイブが「午後11ごろ出て、15分ぐらいで家に帰った」と答えた。しかし、パワーズがデイブの包帯に気付き質問。デイブは「ゴミ処理機で誤ってつけた傷だ」と答えたが、パワーズはこの回答に疑いを持った。しかし、これ以上の質問をショーンを止めた。

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ショーンとパワードはジミーを家に尋ねるとデイブの妻セレステがいた。事件当日デイブが帰宅時間を確認すると、「寝ていた!」と言う。

ジミーにブレンダは犯人でないと明かして、何故嫌うのかを聞いた。「父親はレイといい、むかつくやつだった。口の利けないガキを妊娠中の女房を捨てて逃げた。そんな家の者に討ちの娘とは付会わせん!」と。

拳銃の鑑定結果が知らされ、拳銃は38口径で82‘年ニューハンプシャーで盗まれたものだった。事件記録からこの銃でバーに強盗に入った男のものであることが判明。バーの主人の証言で「レイ・ハリス」のものだった。

デイブは妻セレステに幼いころの誘拐事件に遭った話をして「誰も助けに来なかった。ショーンは友達ではない。俺はあの時穴倉で死んだ。吸吸血鬼と同じだ。それが身体に入ると出て行かない!」と血走った眼つきで告白した。セレステは恐怖を感じ、今なお犯人が見つからないのは夫デイブが犯人ではないのか?と疑いを持ち、悩み、息子マイケルと一緒にデイブとの距離を置くようになっていった。

デイブの車が盗難に遭って川原に放置され、パワードが調べると車のトランクにデイブとは異なる血痕があると再びデイブを招致して尋問した。デイブの「車は盗難に遭ったんだぞ。盗んだやつに聞け!」という言い分に、パワードが引いた。ショーンは別室で話を聞いていた。これを知ったデイブはショーンをなじった。

ジミーは犯人捜しを依頼していたサベッジ兄弟から「デイブが警察に引っ張られて聞かれている。やつがケイティをやったのは間違いない」と告げられた。セレステが「夫が犯人だ!」と泣きながらジミーに告げた。ジミーは泣くセレステをしっかり抱きしめた。(セレステはもはや耐える限界だった。ジミーを信用して夫を託し、息子マイケルを助けたかった)。

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ショーンとパワーズはブレンダンがケイティ殺害に絡んでいると、昔レイ・ハリスの事件を扱った刑事のところに話を聞きにいった。「レイ・ハリスは大泥棒だ。6万ドル盗んで捕まったがシミーを売って逃げた。ジミーは“決して真犯人の名を口にせず”、検察は困って彼を懲役2年の罪にした。ジミーが出所して2か月後レイは姿を消した」という。

ショーンとパワードはブレンダンを呼び尋問した。「6歳の時に別れた父親のことを知っているか?拳銃を持っているか?」を問うと、「拳銃は持っていない。父親は生きていると思う。ブルックリンから毎月500ドル送金してくれているから」と答えた。ブレンダンは「僕を逮捕するのか?」と聞き、帰っていった。

パワードは「レイが送金した総金額は9万ドルになる。レイは生きているのかあるいは誰かが送金しているのか?」と言う。ジョーンはケイティの事件を知らせてきた電話テープを聞き直した。「女性?・・・」とは通報者のことか殺されたケイティのことか?通報者は何者か?と考えた。(拳銃を手にでき、ケイティを知っている子供の声だと断定した)

ブレンダンは刑事がひつこく聞くから、父が天井裏に隠した拳銃を調べると、ケースのみで拳銃が亡くなっていた。ここにあることを知っているのは弟のレイだけだ。(彼はレイが何をしでかしたかを知った!)

ジミーはサベッジ兄弟を使ってデイブを呼び出し、酒を飲ませて酔わせ、そこにジミーが現れ、「レイはよく面倒を見てくれたが俺をチクった。だから殺した。俺はいいやつか?ケイティを殺したと大声で叫べば警察送りで許す!」と激しく責めたが、「やってない。殺したのは車で子供を犯したやつだ!トランクの中に入れた」の一点張りだった。しかし、ジミーの激しい責めに堪え切れず「やった!」と言った。ジミーが「何故やった?」と問うと「青春の夢だ!お前が車に乗っていたら」と答えた。デイブはジミーに命を委ねた!ジミーは、(デイブの復讐だと判断)、ケイティが殺された同じやり方で、デイブを刺し拳銃で撃った。

同じころショーンとパワードがブレンダンの家を訪ねた。ブレンダンがレイの友人ジョンに拳銃で脅されていた。ショーンが「拳銃を離せ!犯人は逮捕してやる」と飛び込んで拳銃を取り上げた。(ブレンダンがケイティと一緒になると、自分を可愛がってくれた兄がいなくなると、レイがジョンと組んで、ケイティを脅そうとして、謝って発砲したものだった)

25年前に落書きしたコンクリートに座っているジミーのところに、ショーンが「ケイティ殺しの犯人を逮捕した。レイの息子とその友人のジョンだ、自白した!」「セレステからデイブが消えたと電話があった。バーの裏から死体が見つかった。子供性愛者だ」と伝えた。

ジミーはちょっと意外だという顔を見せて{遅かったが、ありがとう!}と礼を言ってウイスキーをラッパ飲みする。ショーンは「セレステにも毎月金を贈るか?」と声を掛けた。(ショーンは事件の全てを掌握していた)「あの時みんなで車に乗っていたらと夢みるよ!」とジミーが言うと「俺たちは11歳の少年で穴倉の中で逃げたらどうなるかと思っていた!」とショーンが応えた。

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ショーンが「デイブといつ会った?」と聞くと、あの日デイブが連れ去られた方に歩きながら「25年前のあの日だ!」と答え、ウイスキーをガブ飲みながら去っていった。(ジミーを失ったことを悲しんでいた!)

町の祭りパレードの日。ジミーは妻アナベスにデイブを殺したことを告げ悔やんだ。アナベスは「どんなことがあってもあなたたちを守ってくれるお父さんだと教えている」と娘たちを守る父親であって欲しいと伝えた。「セレステからデイブを心配して電話があった。自分の主人を疑って人に言うなんて!パパは王様。王様はどんなに難しかってもする。それが大切だ」と言い添えた。

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パレード見物にジミー一家が現れ、ジミーは満面の笑顔だった。この顔をセレステが見て、パレード車上のマイケルに声援を送っていた。ショーンは妻ローレンと生まれたばかりの子供と笑顔でパレードを見ていた。ジミーを見て、指で拳銃を向けるサインを送った。ジミーがおどけた表情でサインを返してきた。

感想:

観終わった当座。作品の迫力と、登場人物全員の運命の行く末に感動して、感想が書けなかった。

幼いころの事件から25年後、ジミーの娘が何者かに刺殺された事件の発生。事件当夜酒場で飲んで、血まみれで帰ってきたデイブ。当初主役はかって受けた性暴力に苦しむデイブとこれを追うショーン刑事のクライムサスペンスかと思っていたら、ストーリーが進むにつれて主役に踊りでたジミーの闇の深さ。もうクライムサスペンスであることを忘れて彼のキャラクターに引き込まれました。これをトム・スターンのカメラが薄暗い闇の中で追い廻す。ジミーがデイブを刺す現場とショーン刑事がブレイダンの部屋に飛び込むシーンがダブって描かれるシーン。事件の結末が劇的な暗と明で描かれ興奮を抑えきれなかった。見事な作品でした。

結果が分かって善悪をつけるなら誰でもできる。しかし分からないとき人がどう生きるか?を問うた作品だと思いました。時計の針は逆に回らない!

ラストのパレードで見せる家族の表情で描く運命。事件を忘れたように晴れやかな表情のジミー一家。戻ってきた妻アナベスと幼い子を守りながら生きて行こうとする刑事ショーン。ジミーを見つけて送ったショーン刑事の指サインにおどけて腕を拡げて送り返したサイン。「自首する!」か「もう放っといてくれ!」か? ジミーを見つけて寂しそうな表情で息子マイケルに駆け寄り声援するセレステ

ジミーは昔から親分肌で、気短で悪童だったが情に熱い、自分の言い分を通す男だった。あの出来事を忘れる男でないし、デイブを助けなかったことを悔いていた。しかし、彼にはそれを超える娘ケイディと元妻マリータへの溢れるばかりの愛があった。デイブが犯人でなければ殺さなかった。やってしまってどう生きるか?これからの生き方は妻のアナベスの言葉がしっかりフォローしていて、このままでデイブに謝罪する日々を過ごすか、監獄の中で謝罪するか、自分で結論を出すでしょう。監獄の中での謝罪することがどれほどの意味があるのかと思うのですが、・・・。

ショーンはあの出来事で、デイブへの謝罪の気持で刑事という仕事を選び懸命に努力してきた。働き過ぎが妻との意思疎通を欠き、大切なものを失う悲しみを知った。デイブとジミーが犯罪者であろうがなかろうが彼らを守ろうとしてきた。真犯人を挙げるのが遅すぎたと“あのミス”を後悔しているでしょう。人の生き方をわきまえた、いい刑事になっていくでしょう。

セレステあの状態ではデイブに殺されるかもしれないと思ったでしょう。悩んで、悩んでデイブの運命をジミーに委ねた。しかし、デイブが居なくなるとショーンを頼った。愛があったんです!バカなことをしたんです!しかし彼女にはこうするしかなかった。これからはやったことを後悔しながら自分のしたことの罪を償うようにしっかりマイケルを育てるでしょう。

デイブは静かで愚直なほどに人を信じる男だった。最後までそうだったが最後に「替わって欲しかったという夢!」。彼は“人の言うなりになる”という弱い人だった。これでは彼のPTDSは治癒しない。悲しいが、これが運命だった。

滔々と流れるミスティック・リバー。汚い水もきれいな水も一緒に流れていて、いろいろなやつらがそれぞれの正義で一生懸命に生きている人間世界そのもの。その世界で「自分らしい正義で生きてみろ!」と訴えているような、監督がこれまでに描いた人生を集大成した作品だと感じました。

幼いころの忘れられない傷を背負って、25年後に再び事件で出会うとこになった彼らは、いずれも昔の傷を忘れていなかった。傷は癒されるかと思ったが再びデイブが隠れるという“同じ運命”を辿ってしまった。人間ってひどい悲しい運命を背負っていると思いました。しかしこれを生き抜くには、「自分の人生、自分できめろ!」です。

                                  *****

「ホムンクルス」(2021)俺は何を見ているんだ・・と脳に刺激を受けました!

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原作は山本英夫さんの同名カルト漫画。山本さんを全く存じあげない。監督が「呪怨」シリーズの清水崇さん。これまた存じあげない。主演が綾野剛さんで共演に成田凌内野聖陽岸井ゆきのさんという布陣。もうキャストで観ることにしました。結果は「自分の脳は大丈夫か!」と思える作品でした!😊

過去の記憶も感情も失い、社会から孤立して車上生活を送る主人公。謎の研修医による「脳を活性化する」という手術実験につき合うことになる。手術で他人の深層心理が異形のイメージが見え、それぞれが抱えるトラウマであることが分かった。彼の指摘でトラウマが癒されて行く様を知り、自らの失った記憶と向き合うことになる。そこで見た記憶は・・・、そして研修医はなにものか。

監督:清水崇、脚本:内藤瑛亮、松久育記、撮影:福本淳。

出演者:綾野剛成田凌内野聖陽岸井ゆきの石井杏奈、伊藤茄那、他。

あらすじ(ねたばれ):作品未観賞の方は見ないでください!)

ホームレスの名越満(綾野剛)が車上生活。とはいえ飯はホテルで美味い物を食べ、洗面所を使う。ホームレスたちのところには顔を出すだけ。仲間は「こいつ記憶喪失だ」と言い、「ノマド」のような生きることへの真剣さが見られない。(笑)なんでこうなったかは分からないので、物語は浅くなります!しかし、綾野さんのフィルモグラフィーで分かるように、この役は適任でした。

名越が今では見ることができない中古のマツダキャロルで出掛けようとして、ダッシュボードから“キー”が飛び出る。これを元に収めているところに、「額に穴をあけ、40%の脳の力を引っ張りだしたらどうなる、あなたでなければならない。実験は1週間です」と言い寄る脳外科医師の伊藤学(成田浚)。この男に記憶のない名越は不信感を持ちながら70万円の謝礼に惹かれて引き受けた。

伊藤は銀髪、鼻にリングで化粧という奇抜なファッション。成田さんは「窮鼠はチーズの夢を見る」(2019)で見せてくれたものよりう~んと美しく謎深い。なんでこんな風体になったかは明かされない!ふたりの関係がどうなるのかな?と思ったのですが、・・。とにかくこの物語におけるふたりの演技は見所でした。

1日目、名越に対するドリルで穴をあけるトレパネーション手術。異様な音。いやなシーンでした。伊藤の部屋がそれらしき雰囲気だった。

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2日目。「左目に集中して物を見ろ!」という伊藤の指示に従って、新宿歌舞伎町を闊歩。すれ違う人が異形に見える(ホムンクルス現象で「心の歪み」だという)。下半身がグルグル回る女性、全身が木になっている女性、体が半分ずつで手をつなぐ男たち、頭が豆電球の女性、全身サングラスを纏ったヤクザなど。こいつらがどんな心の歪み(トラウマ)も持っているかを映像から読み取るところが面白い。大笑いです!ロボット姿のヤクザの親分(内野聖陽)に絡まれ指をチョン斬られそうになる。ロボットは何を意味する?

3日目、女性キャッチ店で女性を見て、客がつかない1775番号の女高生石井杏奈)を喫茶店に誘い、伊藤が口説く。これを名越が左目で観察。伊藤が透明になった。女高生は左足首に傷はあり、その足が消えた。伊藤が水柱になり泡が立っている。女性は帰ってしまい、伊藤は「逃げられた」という。

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目に見える映像は脳で意味のある感情に変換された像であるというのがこの作品の面白さです。これ、解読できましたか?(笑) 

名越はキャロルの中で伊藤が女性から取り上げた携帯の中味を見た。名越の左目には色々な文字に見えた!「あなたとひとつになると形が変わる。はやくひとつになりた~い」と。(笑)

そこにヤクザの子分が迎えに来て、親分の部屋を訪ねた。親分が名越の指を切り落とそうとするが腕が動かない!名越にはそこにあったオモチャのロボットからすべてが読めた。「親分は子供のころカマで子供の指を切り落とした記憶がトラウマになっている」と指摘すると、親分は泣いて「ヤクザを辞める」と言い出す。このエピソードはあまりにも子供っぽい!内野さんが可哀そうでした。(笑)

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夜、キャロルに「携帯、見たでしょう!返して!」と1775番がやってきた。左目で見ると砂になり、物を言い、股を開き絡んでくる。砂は何を意味するか。名越は虚構と現実の間を行ったり来たりしながた犯した。このシーンはとてもエロッぽくて、話も映像も面白い。PG12は軽すぎます。(笑)彼女は処女だった。母親は駆けつけてきた。「車を汚しやがって!」と女を追い出した。(笑)

4日目、名越は報告に伊藤の勤務する病院を訪ねた。待合室で自分の腕がロボットに見えた。そして前にいる女性(岸井ゆきの)が透明になった。名越は何が起きたか?と驚いた。

伊藤は「あなたは女性を救った、快挙です。あなたは相手と同じ悩みを持っているから惹かれる。ホムンクルスは貴方自身だ」と言い、彼が集めたホムンクルス女性の映像を見せた。名越はその映像の中のある女に「今どうしている」と聞くと伊藤は「自殺した!」と言う。名越は「知っていたのか。もう化け物と心中する気はない!」と激しく抗議した。伊藤は「代わりに自分のホムンクルスを見てくれ!」という。これが伊藤の研究目的だった。

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名越はキャロルに戻って洗濯ものを整理しながら奈々子の思い出を探した。ここから名越の“自分探し”が始まった“

彼は車上生活の前はホームレスに値段をつけていたから損保社員?キャバレーで奈々子を見初め名刺を渡すと「空っぽ!」と言われた。去っていく彼女を追って捕まえ、キャロの中にいたことを思い出した。

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5日目、名越はキャロルの中から、出てくる女性を左目で見ると顔に目鼻がない“能面”だった。「奈々子!」と呼びかけても「記憶がない!誰ですか?」という。名越は自分の観賞植物も朽ちたマンションに連れてきた。赤い服のこと、一緒に暮していたことを話すが全く反応がない。「私が奈々子?」と言い出す始末。

このころ伊藤がいくら電話をしても名越が出ない。伊藤が焦って腕に文字を書くと?、金魚が跳ねる記憶が出てきた。彼は狂っているのか?いきなりこんな映像が出てきて意味が分からなかった。

6日目、名越は朝、目覚め奈々子を見て「おかしい」と“あのキー”で奈々子のマンションに入ると赤い服と写真があった。

自宅マンションに戻ると伊藤から、電話が掛かってきた。「“あの子”にトレパネーションやったろう」と問うと「そうだ!」という。名越は「もう記憶が戻ったからこの仕事辞める」というと「それ幻!思い込みだ。彼女は実験できなかった。あんたはホムンクルスも見えず、彼女も見えずあんたの心が歪んでいるだけ!」と伊藤が言い返してきた。

名越が混乱しているところに伊藤が訪ねて来て、奈々子を見て「チヒロさん」という。

「こんな馬鹿な!」と名越は伊藤の実験室に入り、自分でトレパネーション手術をして、“円形階段”を駆け上ってマンションに戻り、チヒロを見た。能面でなくちゃんとした顔に見える。「奈々子か?」と聞くと「違う!」と言い「私が奈々子さんを殺した」という。チヒロ(岸井ゆきの)は夜間女性を跳ね、大量の出血で亡くなったことを思い出していた。

名越が「奈々子、奈々子!」とチヒロを揺すると“能面”になってきた。クラブで会った時、「空っぽ」と言ったことを思い出しながら、ベランダで金環日食を見ると二つの空っぽが重なって円環となり、チヒロを掴まえていた。「奈々子落ち着け!」というのに「私は死んでも泣かない。変わらない!」と奈々子がアパートを走り出て交通事故に遭ったことを思い出した。チヒロも事故のことを思い出していた。

名越が「奈々子を捕まえようとしていた。謝りたい!君の名は?」と問うと「チヒロです」と泣き崩れた。チヒロの髪を撫でてベッドに寝かせた。名越は現実と虚構を行き来していたが、現実に戻っていた。

チヒロ役の岸井ゆきのさんがとても美しく撮ってあって大満足でした。しかし、演技をさせねば勿体無い!

別室で名越と伊藤が対峙。伊藤が「加害者の彼女を探し出す名越さんの気持ちは私の虚構、傷の舐め合いです」という。名越は「舐め合っているけどいいの。なんでむきになる。なんで俺を否定する!お前は水で出来ている透明人間で、興奮すると泡がでる」と伊藤のトラウマ映像を話すと「違う!それは親父だ!」と否定。金魚が飛び出した!

名越が「親父さんはこの金魚とお前のどちらを可愛がった?目がない、見えない、見てくれない」と伊藤を煽った。伊藤は子供のころ父親に愛されず、父親の飼育する金魚鉢を壊したことを思い出していた。

「名越さん、しっかり俺を見てください!」と懇願する伊藤に、名越は「ホムンクルスは消えた!」と伊藤を抱いて慰め、去って行った。

7日目、伊藤が自分の額にトレパネーション手術を施した。伊藤の負け、言いようのない微笑みの成田さん。うまい演技でした。

名越はキャロルにチヒロを乗せて、菜の花の一本道を走りだした。チャップリンの「殺人狂時代」のラストシーンだった。(笑)そしてトレパネーションのドリルの音!

感想:

サイコ・ミステリーと言われるが、そんな感じがあまりしなかった。

前段、絵の発想や色彩がおもしろかったが、後半はキャッチコピーのとおり「俺は何を見ているんだ」という、よくストーリーが分からなかった。私自身が名越になって大混乱でした。もっと分かるように描いた方が怖くなると思うのですが・・。脳は小宇宙。分からないことだらけ。自分の脳を覘いてみたくなります!

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「国家が破産する日」(2018)

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1997年に韓国で起こった通貨危機IMF経済危機)の裏側を描いた社会派ドラマ。韓国では性懲りもなく今日また経済危機が騒がれており、これを戒めるため「国民よ賢くなれ!」と訴えた作品です。WOWOW初放送で観ました。

韓国銀行の通貨対策チーム長が打ち出す金融危機対策に関係金融官僚がどう反応し、国の金融危機対策ができたか。経済状況が読めない中小企業主とこの状況にひと儲けしようと企む金融ブローカーの生き様を絡ませ、再び訪れようしている金融危機に国家、国民は何をなすべきかを問う作品です。

日本ではおそらくこの作品を観る人は少ないでしょうが、韓国では多くに国民が観たという。その理由が分かるような作品でした。

経済音痴の自分には分からないと思っていましたが、お芝居で分かりやすく見せてくれますので、我が国も同じような問題を抱えているところがあるし、絶対にIMFに頼ってはならないと思いました。

監督:チェ・グクヒ、脚本:オム・ソンミン、撮影:チェ・チャンミン

出演:キム・ヘス、ユ・アイン、ホ・ジュノ、チョ・ウジン、バンサン・カッセル、他。


映画『国家が破産する日』予告編

あらすじ(ねたばれ):

1977年12月22日、100億ドル輸出の日、輸出により産業の国際競争力をと謳い、ソウル市と住宅公社は2万990世帯の庶民向け住宅建設を発表し’88年のオリンピック大会を経て、鉄鋼、自動車、半導体、造船などの産業が成長し、国民所得は1万ドル時代に入り、遂にOECD加盟国となった。韓国経済はこのまま発展し続けると思っていた。囁かれる経済危機説に分けわからんという状況であった。

1997年11月5日 アメリモルガンスタンレー:東アジア部は「投資家はすぐに韓国を離れろ!」という警告を発した。

11月15日韓国銀行は1ドル792ウォン、外貨準備高156億ドルで来年の経済成長率は7%と予測していた。国民は一人当たりの所得は1万ドル、85%以上が中間層と浮かれていた。

 韓国銀行通貨政策チーム長のハン・シヒョン(キム・ヘス)は総裁に呼び出され国別短期借入金推移データーを見て、「何でこんなデーターを早く見せない!」と叱責された。シヒョンは注意喚起していたのに部長が受け付けなかったと不満。すぐに経済首席、関係幹部による協議の必要性を訴えた。

シヒョンは部下に命じて、外貨準備額の推移、ロールオーバーの動向などの通貨危機情報を整理し通貨危機レポートを持って、総裁とともに大統領府経済首席の元に急いだ。首席によって政府対策チームメンバーとして財務局次官、金融室長が集められた。

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政務局次長ハク・デトン(チョ・ウジン)は部屋でパターの練習中。(笑)シヒョンは「諸外国は韓国政府の危機管理能力を疑問視しています。8月から外国資本が撤退を始め、ウォンが下落。1ドル800ウォンを死守するためには週に20億ドル必要です」と状況説明した。次官は「分かっている、仕方がない」と返事。「10月末のロールオーバー率は86.5%で、外国投資家はこのことを知っています。11月3には多くの投資家が返済延期を拒否、11月15日現在の外貨準備高は158億ドル、実質90億ドル以下で政府が我が国の輸出入を保証できなくなり“国家破産”です。あと一週間しかありません」と国家の危機を訴えた。

大統領へ状況報告に伺うが、秘書から「大統領は今ご機嫌斜め」を聞いて、首席が後にしようと言うが、シヒョンは報告すべきだと勧めた。

金詠三大統領は報告を受けて「ドルが足らないならドルを買え!経済基盤はしっかりしているから心配ない。宴が終わったというわけか」と楽観的だった。

大統領報告を終え、政府対策チームは「国民に危機を知らすべきか否か?」について論議した。

シヒョンは「国民は知る権利があり、経営判断をしようとする人への注意喚起です。事態の軟着陸です」と主張したが、次長の「混乱するだけ!君が責任を取れ!次期統領選で不利だ!」の一言で、国民には知らせないことに決まった。シヒョンは首席に「情報を公開すべきです。中小企業を救うべきです」と訴えたが受け入れられなかった。

このころ高麗総合金融の社員ユン・ションハク(ユ・アイン)は政府発表の各種経済指標を検討し町の声を聞いて景気異変を感じ、上司にバカ扱いされたが、「国が破綻する。先に逃げたやつの方が生存率が高い!」と会社を辞めて投資会社を立ち上げ、「今年中に国の与信がなくなる」と逆張り投資で投資家を募っていた。「政府は無知、だからその無能に投資する」と煽った。(笑)「1ドルは2000ウォンになる。株とウォンが暴落したら4倍儲かる」と説いた。

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町工場で食器製造経営者のガブス(ホ・ジュノ)はミドパ百貨店からの食器納入が決まり喜んでいた。材料業者のことを考えると嫌だったが、百貨店の手形決済に応じた。ニュースは「韓国の経済危機説は経済副総理が否定。経済は回復しつつある」と報じており、心配ないと判断した。

11月18日、1ドル843ウォン外貨準備高103億ドル。ソロスのファンドが韓国の返済延期を拒んだというニュース。シヒョンは上層部を動かすには短期不良債権の調査が必要があると部下とともに現場に出た。ヘボン製鉄の融資額と理由を聞くが真面な答えがない。会計責任者は銀行監督局からの天下りだった。「融資を手配したのは大統領の息子だよ!」という有様。(笑)最近の国会答弁を思い出します。(笑)

このころ首席が金融室長を「ハーバードの先輩で入閣は堅い」とある人物に会せていた。この人物と次官がイルソングループ会長の息子パク・テヨンと会って、「会長の後を継ぐべきでは?良い情報がある会長に伝えればお喜びになる、もうすぐ國が破産して世の中が変わります」と伝えた。

ニュース:「外国投資家が次々に株を売り株価が暴落。1ドル900ウォン外貨準備額80億ドル。為替市場が開始5分で取引を中止」「ミドパ百貨店の経営状態が悪化!」

ガブスが慌てて手形発行ノンバンクに駆けつけたが、すでに多くの債権者が駆けつけて担当部長を責めていた。部長は姿を消した。

ニュース:「ミドパは3100億ウォン、ノンバンクに2150億ウォンの負債。不渡りに影響が広がる見込み」

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シヒョンは200社以上が倒産すると予測していた。低金利債権がノンバンクに売り戻されており、ノンバンクが潰れれば連鎖して銀行が負当たりを出す可能性があるとみていた。ウォール街では韓国の破産が話題になっていた。

ションハクはこの状況を見て「これで人生が変わる、社会的地位や環境を変えねば!」とさらに大きな勝負に出ることにした。町では自殺者が出始めた。

この危機を乗り切る策として次官が「IMF国際通貨基金)に頼るしかない」と言い出した。シヒョンは「韓国経済に介入し主権を握られる。構造改革と外貨準備高の問題は切り離すべきだ」と反対した。次官が「政治による支援が必要だ!構造改革とは切り離せない」という。「日本やアメリカから100億ドルつづ借りて外債を返済する手がある。その後は政府の資産を担保に海外で資産担保証券を発行してもらう」案を出したが、次長が「そんなことで解決できない!女は感情で動く!」と反対。次官は「この機会を逃してはならない、労働者の連中はデモばかりしている、今韓国が変わるときだ」と考えていた。会議の結論は経済首席が「IMFには頼らない、日本にスワップをお願いする」と下した。

ガプスは不当たり手形を掴まされて材料業者のチョン社長に支払いが出来ず、従業員に給与も支払えないところまで追い込まれ自宅を担保に入れる決心をしていた。

一方ションハクは15%下がったところでマンションを買い漁り、政府はIMFに賭けると考えていた。国は大企業や財閥が生き残れる金融支援を要請し、この事態になったのは国民の浪費によると言うだろうと読んでいた。

ションハクの予想通り「国民の外国製品志向が続いている」「海外旅行で浪費している」と報道され始めた。

 1ドル1076ウォン、外貨準備高51億ドル。突然の内閣改造で経済首席が交代し、新任首席キム・チャンスは国家破産を避けるためIMFに支援を要請すると宣言し、協議は非公開と決まった。国民には知らされない!

1120日第1回非公式会議がヒルトンホテルで始まった。IMF専務理事(パンアン・カッセル)はいきなり合意を崩さない合意書が欲しいと言い出した。シヒョンは内容が分からないのにおかしいと反対したが、首席が引き受けた。1ドル1103ウォン外貨準備高35億ドルだった。

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11月21日首席は「IMF勧告を受け入れ200億ドルの金融支援を要請することになった」と記者発表し、政府とIMF側は支援額と条件交渉に入った。が、一方的にIMFの考えを押し付けるもので、アメリカ政府の意思によるものだった。

金融機関11社を直ちに営業停止。金融支援を受け次第政策金利を現在の12.5%から30%に上げること。資本市場を開放することとして外国人の投資額限度を7%から50%に引き上げる。韓国の金融機関を合併しうる法と制度を整備すること。外国の証券会社と債権市場への投資拡大を許可すること。そして外国資本による敵対的買収を許可すること。

これに、シヒョンは「IMFの設立目的に反する。経済の自主性を侵害すべきでない」と抗議したが次長が引き留めようとする。そこに韓国の信用格付けBマイナスという情報が伝えられ、IMF専務理事が「韓国の紙幣は紙くずだ」とシヒョンの申し立てを退けた。

休憩時間に首席は「やり方が強引だ!」と漏らすと、次長は「大企業と中小企業の共存は不可能、国が守れるのは大企業だけだ。総合金融会社を介した大企業の手形取引は免責にしたら」とイルソングループ社長の息子パク・テヨンを呼び「我々にはこの問題は好都合だ。この時間が必要だった!」と伝えた。

11月22日の第3会議で労働市場改革が持ち出され、大量の解雇が発生することに、雇用形態の多様化ということで非正規雇用や間接雇用が取り入れられることになった。

シヒョンは「何故支援条件として大量の解雇を指示するのか、何故資本市場の解放を求めるのか。アメリカがこの協議を利用して利益をうるためではないのか。何故大量解雇が必要なのか」とIMF専務理事に抗議した。「協議を止めてください」と首席に訴え、次官に「出ていけ!」と追われた。

シヒョンは「モラトリアム宣言で国の破産を認めて国を救う」と、記者会見で「貧しい者はさらに貧しく、富める者はさらに富む。解雇が容易になり、非正規雇用が増え、失業者が増える。これがIMFの作る世の中です」と協議実態を明かした。しかし、新聞には首席の「IMFの金融支援が妥協した。550億ドルの支援と引き換えにわか国の経済はIMFの管理下に入る」という発表が載った。

ガプスは百貨店の不当たり手形、マンション投資の失敗、屋敷の担保、従業員・材料業チャン社長への不払い、部下の自死で自らも自殺を試みたが思いとどまり、妹のシヒョンに「ひとつだけ頼みがある。融資銀行を紹介してくれ!」と泣いて頼んだが、シヒョンはなす術がなく泣いた! 彼女は「IMF交渉の記録」を上梓して、銀行を去った。投資家ションハクは投資の大成功で、投資会社の代表になった。

1997年12月3日、韓国側がIMF合意案に署名、IMFによる管理体制が始まった。翌年の韓国失業者は1300万人を越え、自殺者が42%増加した。国民が国を救おうとして4か月で集めた金は22億ドル、この金は企業債務の返済に使われた。

20年後、危機は再び巡って繰り返される!

ションハクは特別公演で、一晩の講演料が1000万ウォンの投資会社代表。「再び危機は機会だ」と狙っている。

ガプスは息子に店を譲り、「優しい人だけじゃなくて誰も信じるな!自分だけが頼りだ」と言い聞かせている。

ベスト金融投資会社のCEOパク・テヨンに「金融の締め付けがきつい」とかっての次官や金融室長が集まっている。

金融資本監視センターのCEOとなっているシヒョンのところに企画財務部の第2次官が訪れ、「今年中に世帯負債が爆発する可能性がある」と対策チームへの協力を申し出た。シヒョンは「危機は繰り返す!危機を回避するためには絶えず疑い考えること。目を開いて世界を見ること。私は二度負けたくない!」とチームで働くことを約束した。

感想:

見せ場はIMF協議の場で、ここで何が協議され、その後の韓国の経済、労働市場がどうなったかを知るためにすこし長いネタバレになりました。

一方的にIMFから押し付けられ、意見さえ言えない政府関係者。反対するのは韓国銀行の通貨対策チーム長だけという情けなさ、誇張でしょうが。自分の保身を図る官僚・政治家たち。いかに政府が体たらくで、実は彼らの目的は大企業の育成と雇用形態の変革という国民に大変な苦を強いる構造改革であったという結末。大企業優先の政・官・財の癒着構造。いつか来た道を振り返るようで、清々しいキム・ヘスの熱血女性対策チーム長の演技を観ることになりました。こんな作品を作る韓国映画も凄い!

これをいかに打開するかという未来に向けてのメッセージ、韓国民はどう受け止めているのでしょうか。

IMF協議に絡めるように描かれる投資家ションハクと町工場経営者ガプスの行動。ションハクの行動は万に一つの事例で、ガプスの行動に自分を重ねて観ることになりました。もう二度とこんな目に遭いたくないと思っても、経済資料を読み解く力はなく、ガプスの言う「優しい人だけじゃなくて誰も信じるな!自分だけが頼りだ」くらいのことしか出来ないと思います。政府を信頼し、政府が情報開示をしっかりしてくれることを望むばかりです。

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