今年最後に観る作品ということで、派手に笑って終わりたいと、この作品を選定しました。「キングスマン」シリーズは第1作しか見ていません。
本作はこの第1作の「前日譚」。世界最強のスパイ組織「キングスマン」はどのような経緯で生まれたかという話。シリーズを全く見ていなくて大丈夫です。
私には第1作より面白かったです!それは第1次世界大戦を下敷きにした物語で、笑やアクションだけでない、監督の大胆な?歴史に対する切り込みがあり、今の世界にもつながっていて、よくぞ作ったという感じをもったからです!
監督・原案・脚本・製作:言わずもがなのマシュー・ヴォーン、脚本:カール・ガイダシェク、撮影監督:ベン・デイヴィス。
出演者:レイフ・ファインズ、ハリス・ディキン、ジェマ・アータートン、ジャイモン・フンスー、リス・エバンス、トム・ホランダー、マッシュー・グード、他。
あらすじ:
平和を祈願する英国紳士オーランド・オックスフォード公は、1902年ボーア戦争視察に、妻エミリーと息子コンラッドを伴って南アフリカの英軍基地を訪れていた。悲惨な戦況を見て、陸軍元帥キッチナー(チャールズ・ダンス)に問いかけているとき、赤十字活動で同行していた妻が、息子が見ている中で、敵の銃弾で打たれた。妻は「あの子を守って!この世界から2度と戦争を見せないで欲しい」と言葉を残して亡くなった。オーランドはこの言葉を生きがいとして、戦争防止に奔走するようになっていった。
1914年6月、セルビアでオーストリア=ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公夫妻が暗殺され、これを契機としてヨーロッパは世界大戦へと突入していった。
オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、この世界大戦争を裏でひそかに操る闇の組織が存在していることに気づき、息子のコンラッド(ハリス・ディキン)に執事のポリー(ジェマ・アータートン)とボディーガードのショーラ(ジャイモン・フンスー)を加え、この組織を打倒し、戦争を止めるために奔走する・・・。
感想(ねたばれを含む):
第1次世界大戦時の世界情勢のなかから、この戦争を象徴するようエピソードを引張だし、事実を残しながらうまく加工してビランを作り出し、これと戦い早期戦争終焉を願うという、歴史を振り返りながら、笑えるという、うまい物語(脚本)になっています。
そのエピソードに精一杯の、多少オーバーではないかと思う程に(笑)、アクションを載せて観せてくれ、笑一杯で、年末年始作品になっています!
〇セルビアでオーストリア=ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公夫妻が暗殺事件;
息子コンラッドの19歳のお祝いにと、キングスマンでスーツを新調しているとことにキッチナー元帥がやってきて、フランツ・フェルディナント大公夫妻のセルビア訪問時の警護を依頼された。スーツを着るという儀式がないとこの物語は成立しない!
このころ、オーランドたちには知りようがなかったが、 闇組織の本拠は断崖絶壁の上にある羊牧場に置き、ボスは背中しか見せないので誰だかわからないが、メンバーにはロシアの怪僧ラスプーチン、セルビアの革命家プリンツィプ、高級娼婦マタ・ハリ、ドイツの奇術師ハヌッセン等がいた。(笑)ボスは「武器で世界を平和にする。俺は600年もの支配を潰す!」と連帯の印としての指輪を渡し、羊の首を飛ばして威勢をつけ、「俺の命に従え!」と激をとばした。
当日、オーランドは息子と大公夫妻の車に同乗していた。絵がとても美くしく、しっかり歴史が再現されたと思います。😊
市街パレード中、突然、爆発物を投げられるが、オーランドは傘でうまくこれを交わした。(笑)ところが演説を終え、道に迷って引き返しているところを(笑)、これでは闇のボスに責められると薬を飲もうとしているプリンツィプが見つけ、大公に拳銃をぶっ放した。こんな偶然があったのか?(笑)
帰りの列車の中でコンラッドは「戦争になるか?」と父に聞くと、イギリスのジョージ5世(トム・ホランダー)とドイツのヴィルヘイム皇帝(トム・ホランダー)、ロシアのニコライ2世(トム・ホランダー)は従弟同士だが仲が悪いから戦争になる」と話した。しかし、3人はよく似ていた!(笑)
〇世界大戦の開始
ヴィルヘイムは戦争を考え、ニコライ2世はラスプーティンから「戦争に介入するな!」と説かれていた。ジョージ2世は戦争する気はなかった。しかし、3国はお互いが宣戦布告をして戦闘状態に入った。
血の気多いコンラッドは兵隊を志願したがる。オーランドは自分の経験から「武器では何も解決できない」と止めた。ところがコンラッドがロシア皇帝の側近である従弟のユスポフ(アーロン・ヴォドヴォス)から「ラスプーティンが信じられないから来てくれ」という手紙をもらった。
そこでホーランドは息子を伴って、船でロシアに発った。ところが途中で謎の潜水艦に狙われ、沈没。キッチィナーの副官モートンが消えた!
コンラッドは「裏切りものがいる、逃げてはだめだ」と父オーランドを説いた。オーランドは「息子はここまで成長したか」と、書斎の回転本棚を回して、秘密の部屋で、ポリーとショーラが行っている作業を見せた。世界に張り巡らした刑務所や企業、市民から情報を集めて、戦争を分析していることを明かした。
ポリーがロシアの情報に、「ラスプーティンがセルビアの革命家プリンツィプと同じ指輪を着けている情報がある」と報告した。
〇ラスプーティンの暗殺:
オーランドは3人とともにロシアに飛び、ラスプーティンを毒殺することにした。豪華なパーティーを開催して、ラスプーティンを招き、毒ケーキを食べさせるというもの。(笑)
ラスプーティンは不治の病で苦しむニコライ2世の息子の病を治療することで、皇帝の取入っていた。この史実を生かしながら、いかにしてオーランドがラスプーティンを倒すか?誰もが描いたことのないユニークなものでした。(笑)
晩餐会にラスプーティンを招待。彼は美女を従えての参加。「皇帝に会わせてくれる人を紹介して欲しい」と依頼すると、別室で話そうと個室に。ここでラスプーティンはオーランドにズボンを取らせ、「南アフリカで受傷した傷を治してやる」と嘗め回す!(笑)なかなかケーキには手を出さない。挙句の果てに傷を冷やす必要があると、氷の張った野外プールにオーランドを沈める。もうたまらんと室外で様子を伺っていたコンラッドとショーラが剣でラスプーティンに斬りかかる。これにプールから上がったオーランドが加わり、チャイコフスキーの序曲「1812年」と「トロイカ」で盛り上げ、3人が斬って斬りまくり、最後はポリーが拳銃で決着をつけるというアクション。ちょっとやり過ぎではないかと思いましたが、笑った!(笑)
闇のボスがレーニンを組織に加え「ロシアを攻撃しろ!」と指示したが「力が欲しい」という。(笑)
ラスプーティンを打ち取ったことで、オーランドもコンラッドの力を認めるようになった。するとコンラッドは好きなようにさせて欲しいと兵役を希望する。しかし、オーランドが亡き妻と約束で認めることができない。ここでの親子の心情にはほろりとさせられます!反戦というのも大きなテーマです。
コンラッドは家を飛び出して軍隊に飛び込み、訓練が始まった。
〇西部戦線の悲劇:
第1次世界大戦を描くとすればこれは欠かせない。ここで戦争の無常をしっかり描き、オーランドがいかにコンラッドを愛し、彼のために何をしてやるかを描きます。
ポリーが集ってくる情報の中にドイツの外相ツインメルマンがメキシコに打電した「アメリカが参戦したら同盟を結ぼう」という電文を入手した。これを見たオーランドが「戦争は終わる!」と考え、キッチィナー元帥に「息子は帰ってくる!」と喜びを伝えていた。元帥は「その証拠はない!」と気を利かしてくれた。
ロンドンに返されるらしいと聞いたコンラッドは西部戦線に派兵されるリードに代わってもらった。
西部戦線に送られたコンラッドは、定期的に来る返される敵砲弾攻撃に、その戦場の厳しさを知った。ある夜、敵情偵察の兵士が敵に察知され追われ、陣前の泥ねいの中で救出を待つ状況に遭った。コンラッドは命じられて、この兵士を救出して背負い陣地に戻ったが、上官に名を聞かれ、リードと答えたところ、「お前はリードでない敵だ!」と射殺された!
砲弾で泥ねい化した戦場が生々しく描かれて、戦闘シーンは「1917命をかけた伝令」(2019)と同じで、手を抜くことなくしっかりと描かれていました。
訪ねてきたリードからコンラッドの戦死を伝えられたオーランドは「国のために戦争するというのは嘘だ」と悲しみ、生きる望みをも失いかけた。
闇のボスはマタ・ハリにアメリカを参戦させないように大統領ウイルソン(アーチー・リード)を堕とせ!」と指示した。
〇米国の参戦:
ジョージ国王がオーランドを訪ねてきて、「ロシアが手を引くし、ドイツの海上封鎖に困っている」と話し、コンラッドに対する殊勲十字章を渡して帰っていった。
これでもぼんやりしているオーランドに、ポリーが「コンラッドのように戦って!出来ないなら辞める」と言いだし、これでやっとオーランドが目を覚ました。
マタ・ハリがアメリカ大統領ウイルソンを困惑させているのではないかという噂が出てきた。ホーランドはアメリカ大使館を訪れ、ここに勤務しているマタ・ハリに会うとこにした。真っ赤なマフラーを見つけて、セルビアの革命家プリンツィプも持っていたと思い出し、マタ・ハリの首をこれで絞めた。マタ・ハリと大統領の濡れ場フィルムを入手し、これをウイルソン大統領に送り、これを見たウイルソンは即参戦を決めた。アメリカの参戦が遅れたことを、今になってなぜ持ち出すか?(笑)
このマフラーの布地をキングスマンで調べてもらうと、闇の羊牧場で生産されたものであることが分かった。
〇闇組織の襲撃:
闇の組織拠点の事前調査で、複葉機からホーランドが落下傘降下して奇襲し敵を拘束、これに地上からポリーとショーラが駆けつけるという作戦。第1次世界大戦では飛行機は欠かせない!
ホーランドの落下傘降下は絶壁に引っかかり、ここから崖上に上るまでの苦闘、さらに敵との格闘。さらにポリーとショーラが加わっての格闘、スリリングでハラハラドキドキ、とても面白く描かれます。さて闇のボスが誰か?覆面を剥がすとモートンでした。
なぜモートンなにか?彼は600年間、イギリス王に支配されてきたことに反感を持っていた。今なお紛争の種を持つ地。英国紳士としてのマシュー・ヴォーン監督のけじめだったんですかね!
ホーランドは「息子のせいで戦うことができた」とジョージ国王に報告。国王から感謝の言葉が贈られた。国王に「明日、キングスマン商会に来てください」と願いでた。
国王を迎え、キングスマン商会を買い取って、政府とは独立したより強固な「キングスマン情報機関」の設立を宣言した。
まとめ:
シリーズ作品とはちょっと違いましたが、とても面白かったです!反戦、英国紳士としての矜持はしっかり伝わりました!
父親と息子の泣ける物語でした。
監督は「キングスマン」をバカバカしいなどと毛嫌いする人でさえ、こん作を見ると「なんてことだ!」と認めたくないが、気に入ってもらえる作品だと語っていますが、その通りの作品だと思います。
最後にレイフ・ファインズにはご苦労様と言いたくなりますね!
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