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「ブレット・トレイン」(2022)ウエスタン風「マリアピートル」だが、デビッド・リーチらしくとても面白い!

原作は伊坂幸太郎さんの大べストセラー小説「マリアピートル」。公開に先立ちNHK「ニュースウオッチ9」で本作主演のブラッド・ピットが「日本のコンテンツのさらなる可能性がある」と語っているのを聞いて興味を持ち、鑑賞することにしました。

https://www.nhk.jp/p/nw9/ts/V94JP16WGN/blog/bl/pKzjVzogRK/bp/pmR4Pnlv83/

原作は未読ですので、原作とは比較はできませんが、映画としてどう楽しめるかなと挑んでみました。

監督:デッドプール2」「ワイルドスピード/スーパーコンボ」のデビッド・リーチ、脚本:ザック・オルケウィッツ、撮影:ジョナサン・セラ、美術:デビッド・ショイネマン、衣装:セーラ・イブリン、編集:エリザベット・ロナルズドッティル、音楽:ドミニク・ルイス。

出演者ブラッド・ピットジョーイ・キングアーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之マイケル・シャノン、バッド・バニー、ザジー・ビーツ、ローガン・ラーマン福原かれんサンドラ・ブロック、他。

物語は

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デス(マイケル・シャノン)が待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していくクライムアクション。

伊坂作品は複雑な展開を見せながらすべてが繋がって結末を迎えるところにカタルシスがあるらしい。確かにありました!しかし、どこまで正確にストーリーを捕らえきれたか?(笑)

テーマは「運命!」登場人物の好運、不運が絶妙なプロットで語られ、運命とは何かを感じさせてくれる作品でした。

ワイルドスピードの監督、真田広之さん出演ということで、“らしい”結末でした。(笑)


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

病院のベッドに眠る息子ワタルを見守るキムラ(アンドリュー・小路)。TVでは動物園のヘビが盗まれたというニュースが流れていた。

キムラの父エルダー(真田広之)が花を持って見舞に訪れ、「肝心なときにお前はいなかった」と父親としての責任を叱責して出ていった(どこへ)。

不運につき纏われるレディバグ。マリア(サンドラ・ブロック)から「コードネームはレディバ。ブリーフケースを盗む!」の連絡に「やる気十分だ!天道虫は、好運を呼ぶ!」と東京駅に走る。木村も東京駅に向かっていて、レディバグにぶつかったが、互いに気付くことはなかった。

レディバグは駅のコインボックスから睡眠薬や火薬など必要なものを取り出すが、拳銃はいらないだろうと持たなかった。

超高速列車“ゆかり号”に乗り込み、車掌から「ひと駅だな!」とチケット点検を受けて、すぐにブリーフケースの捜索開始。すぐあとをキムラが乗車してきた。キムラは「すいません」と女生徒(プリンス:ジョーイ・キング)の隣席に座るといきなりスタンガンで睡眠状態に。

レディバグはレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)とタンジュリン“タンジュリン”(アーロン・テイラー=ジョンソン)の席を通って車両後部の荷物ラックを調べると容易にブリーフケーを見つけ、これで楽勝と思った。

レモンとタンジュリンの会話、何人殺したか?15人か16人かと現場回想シーンが入る。16番目はリーチ監督だった。(笑)ふたりの関係は分るが、結構長いこのエピソードのどこを見るのか分からなかった。(笑)

レディバグが席に着くと、隣のレモンから「ホクイラズヌか?ビビるよ!」と声を掛けられた。(笑)レディバグは「楽勝だ、見つかった!」とマリアに連絡した。

タンジュリンが「ブリーフケースは?」とレモンに聞く。すると前席の男(サン:ローガン・ラーマン)が「お前らの命は親父しだいだぞ!」と声を掛ける。そこに「それで仕事は終わりだ!」と電話が入った。タンジュリンが「ブリーフケースがない!」と言い出す。

レディバグはケースを持って車両の出口位置に立っていた。ドアーが開くといきなり白い服の男(ウルフ:バッド・バニー)が立ち塞がる。・・・

キムラが目を覚まし「女王か?」と聞くと「あんたキムラ?私はプリンス」。

そこに病院から「息子の名は?」と携帯に電話が入った。「ワタルよ」とプリンスが答えた。電話のトリックも凄いよ。

レモンがこの仕事の意義をタンジュリンに語る。「雇主はロシア人で日本のヤクザ組に入り、親分を追い出して組を仕切る“白い死神”。決してしくじらないから俺たち二人は選ばれた」と。こんなエピソードがランダムに入ってきて、この席にいる3人とブリーフケースの関係が明らかにされるという展開。タンジュリンが「さすがだ!お前はきかんしゃトーマスだ」と感心する。(笑)

キムラが「あんたの雇い主は白い死神か?」とプリンスに聞くと「白いブリーフケース預けて分かったの!」という。「どうやって彼を殺すんだ!」と聞くと「定刻で列車は走っている」という。キムラは列車の外を見ながら・・・。

レモンとタンジュリンがケースを取り戻そうと探し始めた。サンが「プラン変更だ!」と呟いた。

突然という感じで、ウルフとは何者か?のエピソードが入って来る。小さい頃から腕っぷしが強くヤクザに入って頭角を現したが、結婚式に毒を盛られ部下を失い、落ち目になったというエピソード。これを謀ったのがレディバグ?よく分からない。(笑)

品川駅、

ウルフが電車に乗ってきた。電車内でウルフとレディバグの格闘が始まったウルフは自分が投げたナイフが、レディバグが防護に使うブリーフケースに跳ね返されて、これが胸に刺さり亡くなった。これが運命ということ。(笑)

レディバグはウルフに眼鏡を掛けさせ酔っぱらいに見せて食堂車の席に座らせ、隣でビスケットを食べながら、次の停車駅を待っていた。

横浜駅

レディバグはブリーフケースを持って降りようとすると、レモンがドアーの側で見張っていた。こいつにヨハネスブルグで撃たれた男だと思い出して逃げた。また降りるチャンスを失った。不運だ!そのときモモもん人形にぶち当たり、ブリーフケースを持ち去られた。

モモもんを追ったが、前の車両に逃げ込まれドアーが開かない。マリアに「下車できず・・・」と報告した。マリアから「メキシコの結婚式よ、死神」と知らせてきた。その先で、タンジュリンが携帯で「息子とブリーフケーは必ず守る」と報告していた。タンジュリンが捜索に出て行った。

レディバグは食堂車にいるレモンに近づき「ヨハネスブルグのこと覚えているか」と切り出すと「知らない!」という。(笑)レモンが「ブリーフケーを盗んで逃げる計画はディーゼルお前だ!」という。(笑)ふたりは殴り合うが隣の婦人に止められた。(笑)やってきたパーサー(福原かれん)からお茶を買って、眠り薬を入れてレモンに渡した。写真を撮ってマリアに報告した。「双子?」とマリア。

席に戻り眠っている男の顔を見て死神の息子だと分かり、マリアに報告した。毒ヘビが近づいてくるので逃げた!

タンジュリンはレモンが食堂車で眠っているのを見て席に戻り、サンの服を剥ぐと毒ヘビが出てきた。サンは亡くなっていた

プリンスはキムラをトイレに誘う。キムラが銃を突きつけると「天敵!空気読んで!」と。そこにエルダーからキムラに「なぜワタルをひとりにした。隣に誰がいる?」と電話が入った。プリンスは「鍵開けて!」とブリーフケースを置いて出て行った。

タンジュリンがレモンの席に来て「何やっていた」!と喧嘩が始まった。タンジュリンの携帯に「次の駅で息子とケースを持って降りろ!」と連絡が入った。

静岡駅

タンジュリンがレディバグにケースを持たせ、車の中からレモンが死体のサンの手を振ることにして、ホームに立った。これで灘を逃れた。(笑)

タンジュリンが席に戻るとレモンが「例の男がいるぞ!」と話すと「先ず撃て!それで相手が分かる」と注意した。

キムラがブリーフケースの鍵を開けることに成功。出てきたのがドル束だった。プリンスがやってきて、「死神は3回も札束に触った」とブリーフケースに爆薬を仕掛けた。キムラは「俺にやらせるのか?」と聞いた。(笑)

トイレの中に毒ヘビが近づく。プリンスが「同じ毒が使われる!いつまでトイレに入っているの、出なさい!」。「ホーネットがこれで殺すのか、俺は楽ちんだ!」とキムラ。

レディバグがトイレのドアーを開けると、そこにタンジュリンが立っていた。(笑)掴み合っていると、タンジュリンに「降りろ、ふたりを殺す」とメールが来た。

名古屋駅

レディバグがレモンの代わりになって、タンジュリンとケースを持ったレディバグがホームに降りた!列車発射の瞬間に飛び乗って灘を逃れた。(笑)車内でケースが開くと大人のおもちゃだった。(笑)

レディバグとタンジュリンの戦い続く。遂にレディバグがタンジュリンを車外に蹴りだした。

レモンがキムラとプリンスを見つけて拳銃を向けた。レモンの感でキムラを撃った。レモンとプリンスはキムラを引きずってトイレに隠した。(笑)この後、レモンはプリンスに3発撃ち込まれた。

蹴りだされたタンジュリンが必死に列車にすがり、運転席のウインドウを割って車内に戻ってきた。(笑)バックに流れる曲が「時には父のいない子は・・・」。笑った!

列車の中。モモもんが近づいてくる。縫いぐるみを取ると乗務員姿のホーネットだった。レディバグがホーネットに注射器で襲われたレディバグがこの注射器をもぎ取って逆にホーネットを刺した!さあどちらが倒れるか?30秒後にホーネットが亡くなった。レディバグは血清を打っていた。(笑)マリアに報告すると「任務完成は目前よ!」と伝えてきた。

車内に戻ったタンジュリンはレモンの亡骸に泣いた。死神に「ここにきて自分でやれ!」とメールした。死神から「京都で待っている!全車、俺の貸し切りだ」と返事してきた。そこにプリンスが現れ、タンジュリンを撃った。居合わせたレディバグはプリンスから「敵は同じよ!」とブリーフケースを託された。

米原駅

エルダーがホームにいた。プリンスが「降りない」と言い張るので、レディバグは「俺は運が悪い」と降りるのを止めて、プリンスに付き添った。毒ヘビがレディバグに巻き付く。トイレに入って便器に押し込んだ。(笑)

エルダーがプリンスのバッグから携帯を取り出して見た。非通知の文章!

お前がワタルをビルから突き落とし、監視させていた男を斬ったのか?」とプリンスに迫った。プリンスは「彼は役に立たない!」と答えた。そきに「息子は生きている」と携帯に電文が入ってきた。これを聞いてプリンスがバッグを持って逃げていった。エルダーが「みんなあの子に利用されただけだ。追うな!運命が決める。俺は妻を殺された白い死神が狙っている」と言い放って、「お前のものだ、もって行け!」とレディバグにブリーフケースを渡した。キムラを探すとトイレの中にいた。キムラは手帳が弾を受け止めていて、無事だった。(笑)

レモンが目を覚ました。3発の銃弾は防弾チョッキが受け止めていた。(笑)

京都駅

ホームには死神(マイケル・シャノン)とその配下。列車が着くと「娘!」と死神がプリンスに近づいてきた。レディバグがブリーフケースを持って降りた。プリンスが「本当の自分になる!」と死神に拳銃を向けた。

死神は「人生に偶然はない!反抗するやつは全員殺す!だから全員集めて殺す!妻殺しのカーバーも」と言い放ち、ブリーフケースを開けた!爆発!!激しい斬り合いになった。

レモンがきかんしゃトーマスになって(笑)列車を発進させた!(逆行)(笑)下り超高速列車と正面衝突!列車がそのまま京都の町になだれ込んだ。(笑)途中でレモンは鉄橋上から川に脱出した

エルダーと死神が一騎打ち!エルダーが切り裂いた。そこにプリンスが駆け付け「父の後を継ぐ!」と宣言。すると猛烈スピードのトラックが突っ込みプリンスは亡くなった。エルダーは「天道虫だ!」と叫んだ!(笑)トラックの運転手は誰だ?

闘いが終って、マリアが現場にやってきた。マリアが「これは教育よ、腹痛のカーバー(ライアン・レイノルズ)の代役だったの」と言う。これも運命か!(笑)

感想

面白くて止らない、「ブレット・トレイン」風感想になりました。(笑)

沢山のキャラクターが登場し、巧みに伏線を貼り、過去のエピソードを挟みながら展開する物語、どう繋がってくるのかと頭がおかしくなるほどに混乱してきます。(笑)

高速鉄道車内の「ブリーフケースを盗んで運ぶだけ」の任務が、次々とレディバグに不幸が襲いかかり、下車駅が先送りにされる。停車駅ごとに、章を区切るように、物語は整理され、米原駅でエルダーが乗り込んでくるあたりから一気に“すべての伏線が繋がり”京都の大乱闘に繋がるという展開。混乱したストーリーだっただけに、爽快な結末でした。この映画の醍醐味でしょう。

この面白さ「ナイブズ ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」(2019)に匹敵しますね!(笑)

ハリウッドで作ってよかった。伊坂作品がすごいことになりますよ!

キャストが多いということで、キャラクターに切れが要求されますが、とてもうまく作られていました。すぐ覚えられる!(笑)前段ブラッド・ピット、後段真田広之、そしてブライアン・タイリー・ヘンリーで締めた。全編にわたってミステリアスだったジョーイ・キング。みなさんの演技がみごとだった。カメオ出演も面白かった。が、サンドラ・ブロックのナレーション&ちょい見せ役は裏切られたという感じ。(笑)

会話劇というのもこの作品の特徴気の利いたセリフに笑いました。特にレモンとタンシュリンのずっこけバディ。ブライアン・タイリー・ヘンリーの「きかんしゃトーマス」のキャラクターをぶち込んだ演技が楽しませてくれました!キャラクターに合わせた音楽というのがユニーク。

リーチ監督作だけにアクションはすばらしい。しかし、列車の衝突などCGシーンは予算不足のようでしたが。(笑)

何度も死にそこね最後に笑ったレモン。一番順調だと思ったプリンスの最後。いくつもの登場人物の運命を見せてくれました。いつも不運だというレディバグが見出した運命論、「向かわざるを得ないもの」。「不運も見方によっては幸運に思える」が自然に受け入れらます。しかし、正しいことをしていれば必ず報われると信じたいですね!

原作をそのまま受け入れ、日本のユニークさを前面に出そうとした作品はたしてそれがうまく出たかどうか。原作者の伊坂さんが「とにかく面白かった」と認めていらっしゃる。権利を日本人に渡さなかったのはスケール感にあったのだろうと推察。

おかしなところがあるというより、日本人の運命論に始まって、風景、風俗など日本をこういう風に見るのかと楽しみました。芸者と寿司シーンがなくて、ポップで水洗便器シーンがやたら出てくるなと笑いました。新幹線としないで日本高速鉄道としたところに妙味があったように見受けました。なにはともあれ日本のコンテンツが世界に発信されたことを喜びたいと思います。

             *****

「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」(2021)Venom: Let There Be Carnage

マーベルコミックのダークヒーロー、ヴェノムの活躍を描いたトム・ハーディ主演作「ヴェノム」の続編。「ヴェノムのルックスがちょっと」ということで避けていましたが、このシリーズもマルチバースの世界に繋がっていくとなると観ないわけにはいかない。ということで、WOWOWで鑑賞しました。

こんな面白いキャラクターがいたのかと、ルックスではないと、毛嫌いしたことを反省しています。(笑)

監督:アンディ・サーキス脚本:トム・ハーディ、ケリー・マーセル、原作:デイビッド・ミッチェリニー、トッド・マクファーレン「ヴェノム」、音楽:マルコ・ベルトラミ

出演者:トム・ハーディミシェル・ウィリアムズナオミ・ハリス、リード・スコット、スティーヴン・グレアムウディ・ハレルソン、他。


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あらすじ

1996年。カルフォルニアにある聖エステマ短正施設。大量殺戮者のキャサディ(ウディ・ハレルソン)と強力な音波発生能力保持者のファランシスナオミ・ハリス)が収容さえ、恋仲になって行った。

フランシスはより強力な防音壁のあるレイヴィクロスト収容所に移されることになり、ふたりは別れを惜しんだ。フランシスは護送中に音波発声で逃走を企てたが、同乗のサンフランシスコ市警の刑事マリガン(スティーヴン・グレアム)に撃たれ、病院に送られた。キャサディは死刑囚としてサン・クエンティン刑務所に送られた。

マリガン刑事が記者のエディ(トム・ハーディ)にキャサディの取材を打診するとエディが断ろうとする。ゲノムはエディをトイレに誘い「スクープが取れる!」と会うことを勧めた。隣のトイレに女性がいた。(笑)この作品はこんな調子で、寝ながら観てもいいように、コミカルに描かれています

キャサディに会うと「シリアルキラーの全てを書いてくれ!」と殺害現場の状況を話し始める。ゲノムは「誰がこんなものを読むか!」と独房に書かれた絵図を暗記した。

アパートに戻って、エディが書き始めると、ペンが自然に動き、壁の絵図が写し出された(ゲノムの記憶)。これにより大量の遺体が発見され、キャサディの死刑が確定した。そしてエディは花形記者としてもて囃されることになった。

エディから「人は食べない」という厳しい条件を示されたゲノム。食べ物はチョコレートと小さな脳の鶏のみ。(笑)ゲノムはこれに音を上げ始めた。そんなときにエディの元恋人アンから「会いたい!」と電話が入る。

クラブでアンに会うと、ご丁寧にも、「ダンと結婚する!あなたはエイリアンと一緒で付き合いきれない」というエディには辛い知らせだった。それでもエディは怒らない(笑)アンは「ゲノムによろしく!」と出ていった。

ゲノムは「済まない!」と侘び、食事を作るなどしてエディの心を癒すことに努めた。そこに監獄のキャサディから「死を見届けてくれ!」と手紙が届いた。ゲノムは「会う必要ない」と止めたが、エディは「書きたい」と会うことにした。

エディは「プロとしての話しを聞かせろ!」と話しかけるが、キャサディはエディの母や父との関係を挙げ罵倒する。これに怒ったエディがキャサディに掴みかかろうとして逆にキャサディに捕まり指をかまれた。その血を嘗めたキャサディは「ちょっと味がおかしい!」と呟いた。(笑)

エディはもうキャサディの話を掛けないことに焦りゲノムに「食べることだけで余計なことをするな!」と突っかかる。ゲノムは「俺の力で名が知れるようになったのに!」と反抗。激しい言い合い、エディのオートバイを壊してアパートを出た。よくある夫婦の痴話げんか!(笑)

キャサディの死刑が執行され体内に死に至る液体が注入されている中、この液体がキャサディの血液に反応して、カーネリッジとして覚醒した。刑務所内を暴れまくって脱走し、スーパーに忍び込んでパソコンを借用し、ファランシスの居場所を突き詰めた。

このころゲノムは人に寄生しようとするが自分に会わない。仮想パーティーに参加すると「ぶっとんでいて恰好良い!ジャパニーズか?」と声を掛けられる。(笑)マイクを握ってエディへの恨み節を喋った。(笑)ゲノムのシンビオートには相性があるらしい。

キャサディはレイブンクロフト研究所を襲いファランシスを救出し、火をつけて逃走した。

マリガン刑事はキャサディの脱獄を知って、エディを署に拘置して尋問を受けた。エディは「この重要ネタ、ここでは喋れない!」とアンを呼んでゲノムの捜索を依頼した。アンは「腹が減ったゲノムは・・」とチュンの店を訪ねると、そこにゲノムがいた。「あのバカを助けて!」と叫ぶとゲノムが走り出した。(笑)

脱出に成功したエディはゲノムに謝った!協力してくれたアンにキスしようとしたら、ダンに睨まれた。(笑)

キャサディはフランシスに「プレイス大聖堂で結婚式を挙げ、そこにゲノムを引き寄せて力を奪う」計画を明かした。ファランシスがアンとダンを襲い、アンを誘拐して連れ出し、ダンにゲノムが大教会に来るようメッセージを渡した

プレイス大聖堂。キャサディはフランシスが結婚式を挙げていた。そこにゲノムが入ってきた。これを追ってマリガン刑事も。

キャサディがカーネリッジに変身してゲノムに挑み大格闘が始まった。ファランシスが大音声でマリガンに挑む。

ファランシスの大音声にカーネリッジが「(力が出せない)マリガンは殺していいが、音声を抑えろ!」と注文した。「ふたりの連携はよくない!」と見破ったゲノムがカーネリッジを捕らえ、振り回す。

一方、キャサディは「俺が大量殺戮者になったわけを書かない!」とエディに襲い掛かる。逃げるエディ。

ファランシスがマリガンを捕らえ首を締めあげているところに、カーネリッジの触手が伸びてファランシスを二階から下に叩き落し、捕らえていたアンを連れて大聖堂の塔の先端に逃げ、ここにゲノムを誘い決戦を挑んできた。ゲノムはアンを救出してエディに渡したが、窮地に陥った。アンを連れ出すカーネリッジの姿に嫉妬したファランシスがカーネリッジに大音声を吹きかけた。これで塔が崩壊、塔の大鐘が落下してファランシスはその下敷きになり亡くなった。

墜落したカーネリッジからシンビオートが逃げ出しキャサディを追う。これをヴェノムが捕まえ飲み込んで「うま味が足りない!」と呟いた。(笑)キャサディがエディの友情にすがったが、許さなかった。

アンから「警察が来る前に逃げたら!」と勧められ、ゲノムが「俺が逃げればそれですむ」と言うが、エディは「ドン・キホーテサンチョ・パンサだ、気が合わなくても最後には合う」とゲノムと一緒に逃げた。(笑)

感想

エディとヴェノムの関係が、ちょっとした感情のすれ違いで危機に陥ったが、クレタス・キャサディ / カーネイジとの闘いを経て、強い絆へと進化する物語でした。このシリーズ、これで終るわけはない。本作の位置づけは次作への期待。その相手はピーター・パーカー/スパイダーマン。ヴェノムはどう強くなったかを押さえておく必要がありますね!

どこにでもあるパートナーの痴話喧嘩。ふたりの関係がコミカルに描かれ、社会性のないおバカ映画のように言われますが、「孤独が大きな社会問題」と言われる今日、独り者にとってヴェノムは最高のパートナーではないでしょうか。(笑)トム・ハーディが笑わせてくれます。

ラスト10分間のプレイス大聖堂でのアクション。シナリオもしっかりしていて楽しめました。カーネリッジの造形に驚きました!

"Venom: Let There Be Carnage"、ゲノムは大量殺戮能力を手にしました。どうこの力を発揮するか?次作が楽しみになりますね(笑)

キャサディはファランシスの大音声を確認しないで惚れたんですね!(笑)これがキャサディの敗因でした。(笑)

エディとヴェノムが勝利したのは「愛するということは全てを受け入れること」とふたりの関係を締め括ってくれました。

90分という尺の物語、コミカルでスピーディーな展開、観ておくべき作品ではないでしょうか!

                 ***

「NOPE/ノープ」(2022)難しいことを考えないで、最高傑作のUFO映画を楽しむ!

アメリカの田舎で牧場を営む兄妹が、父の死に関わる謎の飛行物体の正体を探す中で、次々と不可解な現象に巻き込まれていく恐怖の顛末をミステリアスかつスリリングに描き出すSFスリラー

ゲット・アウト」(2017)「アス」(2019)のョーダン・ピール監督作。ホラー/スリラージャンルに人種や社会の問題を描き込むという、私にとって灘作、3作目にして大作に挑むという監督の意気を見ようと楽しみにしていました。1回目観て、これちょっと作風が違うのかなと2回目を観ての感想です。(笑)

ピール監督作品と構えないで観て、楽しめる作品でした宇宙生物との壮大な遭遇物語で、ストーリーも面白く、深みのある映像に、忘れられない作品になりました。監督の人種とか格差視点なんど忘れて、観て楽しんだ方がいい!兄妹愛に泣かされ、何故“この愛”を監督は描かねばならなかったのかと。

監督・脚本:ジョーダン・ピール撮影に「TENETテネットなどクリストファー・ノーラン監督のカメラマン:ホイテ・ヴァン・ホイテマが参画。衣装デザイン:アレックス・ボーヴェアード、編集:ニコラス・モンスール、音楽:マイケル・エイブルズ。

出演者:主演は「ゲット・アウト」のダニエム・カルーヤと「バスラーズ」のキキ・パーマー、共演に「ミナリ」のスティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンコットキース・デヴィッド、他。

物語は

ロサンジエムス郊外にあるヘイウッド家の牧場では、映画やテレビのために馬の調教を行っていた。しかし半年前に父が亡くなり、息子のOJ(ダニエム・カルーヤ)と娘エメラルド“エム”(キキ・パーマー)が継いでからは苦しかった経営がさらに悪化していた。そこで元子役のリッキー・“ジュープ”・パク(スティーヴン・ユァン)が経営するテーマパークに馬を売り、急場をしのごうとする兄妹。しかしリッキーからの牧場を買い取りたいという申し出には、家業を守りたいOJがためらいを見せる。そんな中、OJから父の死の際に体験した不可解な出来事を打ち明けられたエムは、決定的証拠を捉えたバズり動画の撮影を思いつく。やがて起こる奇怪現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の序章に過ぎなかった。果たして彼らは・・・。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

タイトルの前にふたつのシーンの紹介がある。ひとつは、TVのコメディ番組「コメディの誕生日」収録中で起こった事件。映像のないセリフのやり取りと笑声、そのあとコーディが動かなくなった女性の周りをうろつく映像シーン。やたら女性のヒールが立っているのが気になる。(笑)

ここで「私はお前に忌まわしい汚物をぶつけ、卑劣な扱いをし、見せ物にする(旧約聖書ナホム書より)」という字幕が示される。猿は東洋人ということで、「有色人種の復讐」がテーマであることを示唆しています。

もうひとつがDJの父親が“なにかの異変”で命を落とすシーン。隆盛時のヘイウッド牧場、父親との関係、跡を継ぐと決めたOJとここで働くことを嫌かって街に出たエム。

物語はOJとエムに兄妹がUFOを映像に収めるべく奔走する物語を主軸に「コーディ家に帰る」に名子役ジュープの名で出演していたリッキーのトラウマが絡むものとなっている。物語はOJの父が亡くなって半年後から始まる。

ハリウッドのCM撮影スタジオ。馬・ラッキーと女優とのCM撮影。OJが調教師として初登場。しかし、実直で口少ない彼には自己紹介も馬の紹介もうまく出来ない。遅れてやってきた妹のエムが流暢に牧場の由来を語る。「先祖は1887年黒人騎手として映画を撮った」と映像で示し、「名前はないが写真が残されている由緒ある牧場だ」と訴えた。この喋りが、脚本、歌手、女優を目指して家を出たが芽がでない鬱憤を晴らすようだった。(笑)キキ・パーマーの演技はこの1発で決まりでした!

ところが、女優との撮影時、フラッシュに驚いたラッキーが後ろ脚を蹴り、女優が驚き、OJとエム、ラッキーは解雇された。「馬の後ろには立つな!」と教えていても、この様だ!

馬とチンパンジーが絡むことで、人と動物の関係もテーマになる。

 OJはラッキーを売りにリッキーのテーマパーク「ジュピター・パーク」と尋ねた。エムは井戸を覗くと写真が出てくるプリクラがあることを知った。

リッキーはコーディ事件以来、人気を失い、パークを運営。パーク内に「コーディ家に帰る」のコーナーを設け有料で稼いでいた。リッキーはラッキーを買い、次のアトラクションを練っていた。リッキーが「牧場を売れ」というが、OJには売った馬を買い戻し、牧場を続けたいと考えていた。

ヘイウッド牧場。夕日が沈むころ、放牧していた馬・ゴーストが突然駆け出した。OJが走り出ると、異様な雲、異様な音、瞬間的にUFOを見た。そのとき、一時停電が生じた。リッキーのパークから「1時間後には、あなた方は別人となってこの場を離れる。僕と家族は・・」の声が聞こえた。

雲、闇の牧場の中での異常現象をスペクタクルに見せてくれます。撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマの腕の見せ場でした!

OJがエムに「父の死はUFOが関係しているのでは?」と話すと、「映像をオプラに持ち込めば5~10万ドルにはなる」という。

ふたりは早速電気店を訪れ、店員エンジエム(ブランドン・ペレア)の案内で監視カメラを購入し、設置も依頼した。

「リモートにするか」と聞かれ、これは断った。カメラを設置しているこころにリッキーがやってきて「新作ショーだ」と“星との遭遇”パンフレットを渡して帰った。

その夜、リッキーから贈られた“星の遭遇“のマスコット人形“ジュープちゃん”を見ていると、馬のいない厩舎の電灯が点灯した。OJが点検にいくと真っ暗な中に影がある。人の動く気配!捕まえぶん殴ると、宇宙人に変装したリッキーの子供たちだった。恐怖心を煽るように丁寧に作られたこのシーンに、やられたという感じ。「シャイニング」のオマージュ?

OJは子供に「なめるな!行く」と伝えた。

翌日、OJが馬場に出るとクローバーが突然暴れて走り出す。大音響、大きな雲が出現、竜巻の発生、停電。この状況を、リモートを断ったにも関わらず、エンジエムが見ていて、エムに異変を連絡してきた。(笑)エムがOJに注意を促す。OJは何ものかにに追われ、小屋で逃げ込んだ。監視カメラにカマキリが張り付いて、この事態を観測できなかった。(笑)

エンジエムはUAP(未確認航空現象)に興味を持っていて、OJにリモート協力を断られたが、内密でやっていたというわけ。彼がリモートしていたことで動かない雲の存在が明らかになった。この件で彼の役割が評価され一緒に行動することになった。

エムはハリウッドのスタジオで会った引退間近の神格化されつつあるカメラマン・アントレス(マイケル・ウィンコットに電話し協力を求めた。彼は「不可能を可能にするかもしれない」とエムの申し出を評価して電話を切った。

リッキーは“星との遭遇”ショーに当たり、コーディ事件(1988)を思い出していた。プレゼントの箱が開けられ風船が出て弾ける音。コーディが女性をいたぶる様を、ジュープは机の下に身を隠し見ていた。血まみれのコーディが近づいてきて自分とハイタッチしたあと撃たれた。撃った男が出てきて女性を起こし「もう一度リハーサルよ」の声。

リッキーはこのショーで、過去の栄光を取り戻したと考えていた。

“星との遭遇”ショーの開始。リッキーは家族、観客席のコーディに攻撃された女性を紹介して、「私と家族は絶対的な光景を目撃しました。あなた方も今日、目撃するでしょう。スクールバス2台分の大きさ、馬を食べる」と紹介し、檻に隠していた宇宙人への餌ラッキーを晒した!そのときリッキーは空に異変を感じた。

「席を立つな!」、空を見る観客たちの叫び声。なにが起こったか?

牧場にいたOJは落ちていた“星との遭遇”ショーのパンフレットを見て、ジュピター・パークに何があったかとやってきた。会場のスピーカーから「またお越しください」の声が流れていた。そこで見たものは散らかっているゴミ、誰もいない観客席。そしてラッキーだった。何が起こったか?そこにUFOが襲ってきた。小屋に逃げ込んだが、よく覚えてない。目覚めたときは夜、雨だった。エンジエムに携帯電話するが出ない。次にエムに「船じゃない!」と知らせ、トレーラーにラッキーを乗せて牧場に向かった。

エムは家の中で轟音、窓に流れる赤い雨に、何が起こったかと恐怖に陥った。そこに異変を知ったエンジエムが駆け付け、部屋にナイフを持って入ってきた。ふたりが大混乱。「サイコ」のオマージュ?

牧場に戻るOJ。豪雨と防風、轟音で車のエンジン停止。そこに爪のようなものが車のウインドウを破る。血の雨が降る。ジュピター・パークの看板などガラクタが大量に降って来る。雨・風が弱くなり、爪は木馬の脚だった。この恐怖!どう表現するか!

朝になって、家に戻ったOJはエムとエンジエムをエンジエムの車に乗せ、街のダイナーに逃げ込んだ。エムは「止める1」という。OJはこれまでに経験したことを考えた。「ラッキーをトレーラーに載せて、あいつを見ないで逃げた。ラッキーがCM撮影時フラッシュが目に入って暴れた。“星との遭遇”ショーでラッキーが生きているのは“やつ“を見なかった」。OJは「目を見なければ喰われない!時間を止めてはだめだ!」と言い、撮影を主張した。

ニュースが「ジュピター・パークで天候異変によるものか、事変があったらしい」と報じた。

このニュースを見たアントレスがヘイウッド牧場にやってきて、「相手は動物だ欠点はある!ガラクタを喰わせ弱らせる、やってみよう!」と準備に入った。OJはこの生き物に“Gジャケット”という名をつけた。Gジャケットはエムが初めて受け取る馬でOJが父親に叱責されながら調教した馬の名。この名のつけ方がいい、泣かされますね!(笑)

OJはラッキーを走らせGジャケットを引き寄せる。アントレスがフィルムで手回しカメラで撮る。エンジエムはアントレスの助手、エムはモニターで監視。Gジャケットの接近を探知するための風船(スカイダンサー)の設置。それぞれの役割を決めて、機材準備し、配置に着いた。

朝、いよいよ撮影開始。エムが大音響で作戦開始の音楽を流した。スカイダンサーに異変を発見したエムが撮影ポイントを示す。それをアントレが追う。フルムの交換をエンジエムが援助する。そこにオートバイで「(ゴシップサイト)TMZの記者だ」という男がやってきた。

「パークで何があった!」と走り去った。障害物に引っかかって横転。これを追うOJ。「(危ないから)やめろ!」とエム、そこにGジャケットが姿を見せた。巨大なクラゲ?(笑)アントレは撮った!しかし、エンジエムが確認するが返事がない。OJはGジャケットに追われ小屋に退避。Gジャケットがアントレとエンジエムを飲み込んだ。「ジョーズ」のオマージュだ?

エムにGジャケットが襲い掛かる。エムは部屋を出て走った。エムを救出するため、OJはラッキーに乗り風船を曳かせて、Gジャケットを追った。これは西部劇で砂漠を走るシーン。音楽もカントリーミュージックになっている(笑)。

エムは記者のオートバイの位置に来て彼を探すが見つからない。彼のオートバイでジュピター・パークへ、Gジャケットを見ないで、走った。これを追うGジャケット。「北北西に進路を取れ」のオマージュシーン?

Gジャケットはいろいろな姿に変化した。まるで“エバンゲリオン“の使徒のようだった。(笑)

エムはGジャケットをジュピターパークに誘導し、パールのマスコット風船“ジュープちゃん”を空に揚げてGジャケットに食わせ、井戸のプリクラカメラでGジャケットを撮った。何度も挑戦するが撮れない。Gジャケットが“ジュープちゃん”を飲み込んで爆発して落下。取材に訪れていたTV記者が「動揺を隠せない!未確認物体が上空で破裂しました」と報じていた。電気が使えるようになり、パークの放送が「楽しかったらまた来てね!」と告げていた。

エムがパークの出口を見ると、そこにラッキーに騎乗したOJの姿があった。エメラルドの顔に笑顔が戻った。そのとき、井戸のプリクラカメラが天空で爆発直後の映像を排出した!

まとめ

次第に明かされていく詳細なUFOの生態。ミステリアスで、最期にはホラー化していく。笑いもある。音響が凄い!すばらしい映像表現力でした。ジュピター・パークで行われた“星との遭遇”ショーの惨事、それを見てOJがヘイウッド牧場に戻るシーン、エムとエンジエムの恐怖体験を含めて、とんでもない恐怖体験の描写でした!恐怖描写の一級作品です!

GジャケットとOJ、エムの牧場でのチェイス・アクション、面白かった。なんといってもGジャケットの風体、その変化の面白さ

スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」「E.T」「ジョーズ」を軸に、「西部劇」、ヒチコック作品、「エヴァンゲリオン」など名作映画をなぞりなから、圧倒的なエンターテインメント“UFO”物語になっています。映画界における黒人監督としての意地を見る思いでした!

ジョーダン・ピール作品といえば、人種や社会の問題を描き込んだ作品ということになり、本作の視点は?

冒頭の「有色人種の復讐」という視点はOJ、エム、リッキーが有色人種であるがゆえの浮かばれない人生物語になっており、作品を通じての視点となり、応援したい気持ちで観ました。

誰も見たことないものを見る/見せることが異様に肥大化した社会の視点で描かれていると言われるが、これはよく分からなかった。

OJとエムが“最悪の奇跡”に出会い、事態の悪化に伴いお互いを気遣い、ラストではエムはバズリ動画のことなど忘れてOJの無事を喜ぶというふたりの絆。これこそがSNS情報社会の中でもっとも大切なことだと思う。

監督はコロナの中でどう映画を楽しんでもらうかを考えて、「現実を忘れるきっかけになればいい」と作った作品だという。映画愛に溢れた本作、むつかしいことなど考えないで観たらいいと思います。

              *****

「子供はわかってあげない」(2021)タイトルが?で心配したが、爆笑もので、乙女の“ひと夏”の青春物語、夏に観るべき作品だった!

「戦争?原爆?」と予備知識なしで、タイトルで観ることにしました。(笑) 監督が沖田さん、どんな物語なるのかと興味がありました。なんと爆笑もので、乙女の“ひと夏”の成長物語、夏に観るべき作品と感動しました!

監督:横道世之介」の沖田修一原作:田島列島脚本:ふじきみつ彦 沖田修一撮影:芦澤明子編集:佐藤、崇音、楽:牛尾憲輔

出演者上白石萌歌細田佳央太、千葉雄大古舘寛治斉藤由貴豊川悦司、湯川ひな、中島琴音、他。


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あらすじ(ねたばれ:注意):

冒頭、TVアニメ「魔法左官少女バッファローコテコ」を観て、泣いて、笑い踊る高校3年生の水泳部員・朔田美波(上白石萌歌)と父の清(古舘寛治)。どこかおかしい!(笑)TVが終ると弟と鬼ごっこ。「やめなさい!」と台所から顔を見せる母の由紀(斎藤由貴)。とても仲のいい家族、ここに秘密があった!

水泳部の練習風景。美波が泳ぐ。気持ちよさそうに泳いでいる。(笑)コーチの「試合には勝てないから健康管理に専念せよ!」と部長は「気を引き締めて!お疲れ様!」の言葉で終った練習。これもどこかおかしい(笑)。

立ち入り禁止になっている屋上に誰かいる?走って!走って!屋上に上がるとそこに書道部の門司昭平(細田佳央太)が大きなキャンパスに文字を書いていた。お互いが紹介し合う会話は「魔法左官少女バッファローコテコ」語さっぱり分からないが、笑った!美波が「ここが出入り禁止、なのに何故鍵もっているの」と聞くと「兄からもらった」という。兄って何者? (笑)

美波が門司の屋敷を訪ねると大豪邸!家に入ると門司が書道塾の講師をやっていた。部屋に通された美波は何気なく床の間に置かれた書箱を開けるとお札があった。自分の誕生日に送られえてきたお札と同じもの。門司に聞くと「祖父が頼まれて書いた信教宗教の札だ!」という。美波には産みの父がいた。美波が「その教祖を知りたい」と頼むと「兄が探偵だから頼みに行こう」ということになった。

美波は門司とその兄・明太(千葉雄大)に会いに行った。古本屋で働いていた。なんとトランスジェンダーだった。「探し者の名は藁谷」とお願いすると「犬猫を探す探偵だがやってみる」という(笑)。

水泳大会。門司と明太が応援に来ていた。美波は泳いだが予選漏落ち。美波は緊張すると笑いが出ると笑いながら泳いだ。(笑)これで美波の高校生活は終わり?コーチは「人生で頑張れ!」と言い、部長は「お疲れ様!」と。(笑)

明太が門司にパンフレットを渡して帰っていった。(笑)そこには「教祖は谷光海で前教祖が藁谷友充」とあった。なんで明太は自分で説明しないで帰った!

美波は友達のミヤジ(湯川ひな)に父親のことを話すと「解脱されるよ!それやばいよ!」という。(笑)美波も怖くなった!

美波は門司に相談に行った。門司は子供たちに「本当にうまい字は半紙を出る!」と教えていた。(笑)美波は字を練習した。アニメから「左官」という字を書いたが(笑)、門司が「会いに行くのはやばい!暗殺かも、逃げろよ!」というから「暗殺」の文字を書いた。「父がいるし(教祖を)お父さんと呼ぶのか?」と心配すると門司が「親子丼があるが親子には見えない。が、親子に見える」と元気づけた。(笑)

母には水泳の合宿にいくと嘘ついて、父は不要なんだけど父が入るというから、母と父の写真を撮って、教祖を訪ねた。(笑)

父を明太と訪ねると「私、藁谷友充(豊川悦司)です」と几帳面な挨拶。そこにじんこちゃん(中島琴音)という女の子いた。父が「孫だ!」という。じんこの母(兵藤公美)がやってきて「私に似ている」という。まさか・・。(笑)明太には帰ってもらった。

父とは自己紹介から始まって、家族のこと、好きな食べ物、趣味など話すうちに父と娘になっていった。「夏虫の愛」という菓子をバリバリと音を出しながら食ってから一気にふたりの距離が近づく!(笑)

父は「若いころは人の脳の中が見えたが次第に見えなくなり教祖を辞めさせられた」と言い、今では指圧師として働いていた。

当初、ふたりの会話はどこか変で、美波が殺されるんではないかとスリリングで、おかしみがあった。(笑)

父は「教えられたものは、教えられる!」と「じんこに水泳を教えてろ!」というので教え始めると、「自分にも教えろ!」と言い出す。3人で海に浸かった。

1泊が2泊3泊となり、水泳合宿中のミヤジが美波に電話するが通じない。心配して明太に電話すると、明太は「美波がいない!」と門司に伝えた。(笑)

門司は美波が習字で書いた「暗殺」の文字を見て、“やばい“と美波が訪ねた海に行った。美しい海だった。しかし、海に美波はいない。泣いて砂浜に「朔田美波」と書いた。するとぽっかり海から美波が浮かび上がった!(笑)

美波は門司を連れて父の家に戻ると、父は庭に展張したテントの中にいた。これ、父の気配りだった(笑)。美波がシャワーを使っている間に父が門司に酒を飲め!飲め!と勧め始めた。門司が「(美波に)似ている!」と言うから藁谷は門司を気にいって「もじ」と字を書いた。(笑)

父は「この男好きか?」と聞いて、「お前なら大丈夫だ。お母さんと向こうのお父さんがしっかり育ててくれているから感謝している。誰を好きになっても美波がそんな風になってよかった。カレー食べるか?」と聞いた。(笑)

次の日、美波と門司が帰っていくのを父が見送ったが、美波が振り向かなかった。(笑)

ソファーで寝そべっている美波に父・清が「取り貯めたトラコのビデオ観るか?」と聞くと「いい、お父さん、呼んでみただけ、後で観る」と答えた。父は大好きなプラモデルを楽しんでいた。お父さんも美波に気を使っていたわけだ!

美波が母に父に会いにいったことを話すと、「お父さん元気だった!」と聞いた。嘘ついたことを謝ると「お札が送られてきたとき何も聞かなかった。美波なりに家族を守ろうと思ったのではない」と言い「会い行っていい」ということになった。

美波が学校での水泳練習に参加していた。終わって、誰もいなくなったプールサイドを掃除していて、水で「もじくん」と文字を書いて屋上を見ると誰かいる。上がっていくと字を書く門司だった。美波が正座すると門司も正座した。美波から「好きだ!」と告白した。このシーンに笑い。

感想

タイトルの意味が観終わって分かるという作品冒頭、TVアニメ「魔法左官少女バッファローコテコ」を観ながら踊る父娘のシーンにはじまり、殺されると思っていた実父に会い、この父とこれ以上ないという美しい海で泳いで、夏の終わりにこれまで呼ばなかった父を“お父さん”と呼ぶまでの経緯、タイトルはそういう意味だったの!という作品でした。

この結末にくるまでの話が、出てくる人が皆な“どこか変”で、きっと作品の中で語られる“優れた字は半紙を出る”という言葉どおり普通の人とは一味違った人たちで、笑っている内に、実はとてつもない親子の愛の物語で、その愛に預かってすばらしい恋をするという物語でした。沖田監督の最高傑作ではないでしょうか!

上白石萌歌さんと細田佳央太さんの、真面目な高校生なのにどこかおかしい会話。これを自然な形で演じるお二人の演技がとてもよかった!豊川悦司さんと古舘寛治さんもどこかいつものおふたりではなかった!(笑)こういう人を見ていると世の中楽しくなりますね!蘊蓄に富んだ会話も忘れられない!面白かった!

千葉雄大さんのトランスジェンダー。この兄をこよなく愛する弟という設定、今の時代、こんな設定あたりまえというのがよかった。千葉さんも演技がまたよかった!

プール、海の映像が美しい。空撮で撮った浜辺の映像が、夏らしく、すばらしかった。

これまで夏の定番は「避暑地の出来事」(1959)にしていましたが、これからはこちらに変えます!(笑)

               ****

「夏の日の恋」


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「となりのトトロ」(1988)家族って!ご近所って!田舎って!いいな!!

金ローで「となりのトトロ」2年ぶり18回目の放送。「こんなに話題になるアニメ「トトロって何だ!」と恥かしながら、初めて観ました。(笑) とてつもない感動ものでした。

サツキとメイの姉妹と森に住む不思議な生き物・トトロの交流を描く物語。

天空の城ラピュタ」に次ぐジプリ2作品目。当時の世相はバブル経済と公害に苦しむでした。監督にはこれが胸にあったんでしょうか、昭和30年代前半の日本を舞台にしたファンタジー作品となりました。

監督・原作・脚本宮崎駿音楽:久石譲主題歌:井上あずみ「さんぽ」「となりのトトロ」。

声優:日高のり子(サツキ)、坂本千夏(メイ)、糸井重里(お父さん)、島本須美(お母さん)、北林谷栄(おばあちゃん)、高木均(トトロ)、雨笠利幸(カンタ)、龍田直樹(ネコバス)、他。


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あらすじ:

入院中の母のため、考古学者の父とともに、田舎の一軒家へ引っ越してきたサツキ(12歳)とメイ(4歳)。近所の少年カンタに「お化け屋敷」と呼ばれたその家には、不思議な生き物が住んでいた。真っ黒クロスケと呼ばれ、絶対に姿を見せない!ここから父とサツキ、メイの三人の田舎暮らしがはじまった。

サツキが学校に行くと、メイはひとりぼっち。元気よくメイは外に出て、木のトンネルをくぐってその奥に。大木があって、それに登ると空洞があり、滑り落ちた。なんとそこに大きな眠っているものがいた。顔に触っても“むにゃむにゃ”!

メイはトトロの上で眠った。

サツキは学校から帰るとメイがいない。メイの帽子を辿って探し出すと、眠っているメイを見つけた。メイが「絵本に載っていたトロロに会った!」というが見つからない。父が迎えに来て、「この森の主に会った、いつも会えるとはかぎらないぞ」と教えた。神社を訪ねると大きなクスの木があり、側に古い祠があった。メイはこの木だという。お父さんは「昔は人と木は仲がよかったんだ、この木が気にいってここに来た」と言った。

父が大学に出かけた日。メイはおばあちゃんに預けられたが、サツキに会いたいと言い出し、おばあちゃんと学校にやってきた。メイはサツキと一緒の机でトトロの絵を描いた。

その帰り、雨が降り出し、地蔵堂で雨宿り。そこに同級生のカンタが通り様、恥かしそうに傘を置いて行った。ふたりはこの傘で「カンタはやさしいね!」と家に帰った。

雨が止まない。父をバスストップまで傘を持って迎えにでた。バスが来たが父は乗っていなかった。父が帰るまで待つことにした。あたりが暗くなって、メイが眠りだした。サツキがおんぶして父の帰りを待った。そこにトトロがやってきたので傘を貸してあげた。

トトロは嬉しそうだった。ネコバスがやってきた。トトロが「お礼に!」と小袋を渡して乗って行ってしまった。

バスがきた。父が降りてきた。ふたりは父にネコバスとトトロが出たと話した。

トトロがくれた小袋には木の実が入っていた。ふたりは庭にこれを撒いて、芽が出るのを楽しみにしていた。病院の母に手紙を書いて知らせた。父が「芽が出るのは、トトロなら知っているかも」と言った。

蚊帳の中でふたりは眠った。父は講義のための調べもの。サツキが外を見るとトトロ親子が木の実の畑にいた。サツキとメイは起き出し、トトロ親子と一緒に木の実を撒いた畑で「早く大きくなれ!」と祈った。芽が出てどんどん大きな木になって行った。トトロはこまを回し、サツキとメイを肩に載せ、コマの上に乗って回転力で空に舞った!父は木の上でサツキとメイがオカリナを吹く音を聞いていた。

朝起きて畑に出てみると、木の実から芽が出ていた。「夢だけど、夢ではなかった!」とふたりは大喜び。

ふたりはおばあちゃんの畑でトウモロコシ採りを手伝っていた「美味しい野菜をお母さんに食べさせたい」と話していると、病院から「レンラクコウ」の電報が届いた。サツキは「母に何かあるのか」と心配になった。

サツキはおばあちゃんの本家の電話で父に知らせた。父が病院に電話し、退院が少し伸びることが分かった。

サツキが心配するメイにこのことを話すと「お母ちゃんに会いたい!」と泣き出し、「我慢しなさい!そのうち帰ってくるの!」と強くたしなめると「お姉ちゃんのバカ!」と激しく泣いた!この泣き声は胸に響きましたね!

家に戻るとおばあちゃんが家事手伝いにとやってきた。サツキは「お母さんが心配だ!」と泣いた。それをメイが見ていた。

メイはトウモロコシを持って走っていた。おばあちゃんが「メイが見つからない」と言い出す。

サツキはメイにきつく当たったので心配になった。皆でメイを探しだす。サツキは「メイは病院に向かった」と走りだすが、見つからない。そこにカンタがやってきて「父ちゃんたちが探している、俺が七国山(病院)に行ってやる、池でメイの靴が見つかった!」と走り出した。カンタの自転車の乗り方、これが懐かしい!こういう乗り方は今では見ることはできない!(笑)

どんどんあたりが暗くなる。サツキは村総出で池の中を探している現場でおばあちゃんに会った。しかし、おばあちゃんの差し出した靴はメイのものではなかった。サツキは木のトンネルを通って、大きな木に登り、通洞に落ちでトトロに会った。

トトロはネコバスを呼んでくれ、ネコバスがメイのところに連れて行ってくれた。そこは地蔵堂だった。メイが泣いてサツキに抱き着いてきた。ネコバスが「病院まで連れていってあげる」というのでふたりでネコバスに乗って病院へ。ふたりが大きな木の上から母の病室を見て安堵していた。

父は病院で母に会っていた。母が「あの子たちに心配させた、無理をさせた。退院したらうんと楽させてあげる」と喋っていた。父が「こんなところにトウモロコシがある」と母に見せた、トウモロコシには“おかあさんへ”と書かれていた。母が「あの子たちの笑声が聞こえた!」と言った。

ふたりはネコバスと別れ、探しにやってきたおばあちゃんとカンタと一緒に家に向かった。

感想

宮崎監督が昭和30年代の物語で語りたかったこと。家族やご近所との強い絆。人と自然とのかかわり方だった。“となり“の意味が分かった。

どこの村でも神社を大切にしました。そこには大木がありました。お祭りが村の唯一の楽しみで、これが村の絆を強くしていた。ここで遊んでそのまま寝る子もいました。こうして子供たちは育ちました。

当時、まだまだ戦後で、戦争で親を失った子が大勢いましたが、みんなうまく育っていきました。だれが育てたか?トトロが育てたんです!今、はっきりそれが分かりました。トトロの正体が見えました。これをトトロというメタファーにするなんて、やっぱ監督は天才だと思いました!このラストシーンに泣いた!

病院に届けられたトウモロコシ、“おかあさんへ”のサインがあった。誰がとどけたのでしょうか?お母さんは大喜びでした!このマジックが凄い!

サツキとメイ姉妹に何度も泣かされます!こんな濃い姉妹の関係。メイがサツキの教室を訪ねてお姉ちゃんと一緒に授業を聞く!当時、こんな子がいました!今では考えもつかない、こうやってみんなで助け合って過ごしたことを思い出します。メイがいなくなって必死に探すサツキ。地蔵堂でサツキに抱きついて泣くメイ。場所が地蔵堂というのがいい。地蔵の小さな堂にもよく世話になりました。(笑)こんな思い出がどんどん出てくる作品でした。

オート三輪車と未舗装の道路!今では田んぼのあぜ道も舗装です!これではカエルも育たない!(笑)風に吹かれてお父さんが帽子を押さえるシーン、小さな動作が丁寧に描かれ、リアル感のある動画になっていますね!これもすばらしい。雨と水溜まりが美しかった!

緑一杯の田舎風景を堪能しました。これが消えていくことを憂いています!

声優さんの演技が圧巻、特にメイの坂本千夏さん、「お姉ちゃんのバカ!」と泣く声が忘れられない!

テーマソングが圧巻です!各シーンの感情をうまく表現する音楽の使い方がすばらしい。

子供の映画のようで大人が見ても楽しめる、宮崎映画の最高傑作だと思います!来年も楽しみにしています。

              *****

「天空の城ラピュタ」(1986)監督の飛行機好きとアクションで、冒険に辛抱強く挑めと!

宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」(1984)につぐ作品で、スタジオジブリ制作映画の第1作品目とのこと。

「金曜ロードSHOW!」で放映されたもの。18回目の放映でありながら視聴率は12.6%という高い値。世代を引ついで観られる作品。ところがまだ観ていない!(笑)この作品は監督45歳のときの作品で、監督と同世代の私には劇場ではとてもアニメなど見てられない状況でした。(笑)

監督作品を劇場で観たのは風立ちぬ(2013)でした。この作品は主人公がゼロ戦設計者で高名な堀越二郎さん、そして陸96式重爆撃機設計で知られる本庄季郎さんが出てくる話で、お二人は恩師になりますので、劇場に駆けつけました。(笑)この後に観たのが孫に借りた「千と千尋の神隠し」(2001)でした。(笑)

本作は宮崎監督が小学校時代に考えていた架空の作品を骨子とした初のアニメオリジナル作品とのこと。戦争直後生まれの監督には絵本も少なく、遊び道具もなかった。そんなわけで読んだ本から物語を作って遊んだだろうと推察。そんななかの一作でしょうか。空想豊かに描かれていますね!

タイトル「ラピュタ」は、スウィフトのガリヴァー旅行」記」に登場する、空を飛ぶ島にある王国「ラピュタ王国」からとったものという。

当時「ガリヴァー旅行記」「宝島」「トムソーヤの冒険」などがよく読まれた本だったと記憶しています。本作にも取り入れられているように思うのですが。


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物語は、

700年前に存在したという天空に浮ぶラピュタ王国。国王の子孫だという少女シータ。特務機関(情報部)の諜報員ムスカ大佐に連れ出され、飛行船で移動中、海賊ドーラ一家に襲われ船外に逃れ地球に軟着陸したところを、鉱夫の少年パズーに救われる。が、ムスカ大佐とモウロ将軍の政府軍、さらにドーラ一族に追われ鉱山坑内に逃げ込んだ。

いきなりシータの乗る飛行船、これを追う海賊船やオーニソプターと想像上の各種航空機が登場します。この発想の原点は後の「風立ちぬ」で詳しく描いてくれますが、発想の豊かさに圧倒されました。飛行機好きという監督の趣味が十分に生かされた話になっていました。(笑)

ふたりは坑内でボム老人に会い、シータが着けているペンダントの石が(ラピュタに存在する)飛行を可能にする魔法の石だと知った。そこにムスカ大佐が現れ、二人は捕まり軍の要塞へと連行された。パズーは牢屋に幽閉され、そこでラピュタで作られたというロボットを見せられて、ラピュタの存在は本当だと信じ、父が見たというラピュタを訪ねたいと思った。シータはムスカ大佐からラピュタ王の末裔であると告げられ、魔法の石を持つことは平和を乱すと、魔法の石とパズーの命を交換することを提案され、シータがこれに応じた。

パズーは解放されたがドーラ一家に捕まり、自分が解放されたのはシータの方便太と知り、ドーラ一家とともに要塞に向かい、覚醒したロボットが暴れる中でシータ救出した。しかし、ムスカ大佐らは魔法の石に誘導され、ラピュタに向け出発してしまった。

パズーとシータはドーラの飛行船に乗せてもらい、ムスカ大佐のあとを追った。モウロ将軍指揮の軍と戦いながら、荒れる空を克服してラピュタ城に辿りついた。しかし、先着のムスカ大佐はラピュタの王になり世界を支配しようと、モウロ将軍の政府軍を撃退しドーラ一家を排斥しようとする。

シータは油断したムスカ大佐から魔法の石を奪い返し、パズーと力を合わせて呪文“パルス!”と唱え、石の魔力を発動してムスカ大佐に挑んだ。その力でムスカ大佐は吹っ飛び、ラピュタは再び宇宙へと離れていった。ラピュタ城から脱出したふたりは、ドーラ一賊の艦船に辿り着き地球に帰還した。

感想:

パズーとシーラが助け合って、世界支配を目指すムスカ大佐の野望を阻止するという、少年少女向けのボーイ・ミーツ・ガール作品でわかり易く、微笑ましい。メッセージは「冒険に挑み、苦労してやり遂げろ!」ではないでしょうか。監督の経験から出たものでしょうか。

哲学的な表現は、横文字で語るという片鱗はあるものの、ほとんど見つからない。

ふたりがムスカ大佐やモウロ将軍の軍隊に追われ逃亡するチェイスは、鉄道、川、渓谷などを使ったハラハラドキドキの映像が見事でした。

ここに出てくるキャラクターはこれからの作品に繋がれていくでしょうから、やはり見ておくべき作品ではないでしょうか。

             *****

「ハウ」(2022)天才犬、弱者救済に走る!

「犬とはなにか?」。犬の映画ならこの監督という犬童一心さんの作品。というわけで観てまいりました。

作品の主人公は1歳のゴールデンドゥードルの保護犬ハウ。こいつが天才的な演技をするんです。(笑)だから物語にリアリティがあるの?と疑念が出てくるかもしれませんね。

3年野良をした捨て犬を拾って7年一緒に生活していて、バカな犬なんですが、こいつと生活した体験から“犬とはこういうもんだ”と思えましたから大丈夫です。(笑)おそらくこの作品を見たら犬を飼いたくなる!そんな人にあてたメッセージの映画です。

監督:いぬのえいが」(2006 )の犬童一心原作・脚本:「ナミヤ雑貨店の軌跡」の斎藤ひろし、撮影:「湯を沸かすほどの熱い愛」の池内義浩音楽:上野耕路主題歌:「味方」GReeeeN

出演者:田中圭池田エライザ野間口徹渡辺真起子、長澤樹、モトーラ世理奈石橋蓮司宮本信子ら、石田ゆり子がナレーションを担当。

物語は

市役所職員の赤西民夫(田中圭)は、上司からの勧めにより飼い主に捨てられて保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことになる。民夫は人懐っこいこの犬をハウと名付け、民夫とハウは次第に絆を深めていく。そんなある日、突然ハウが姿を消す。必死にハウを捜す民夫だったが、ハウは遠く離れた青森の地にいた。偶然のアクシデントが重なり、青森まで運ばれてしまったハウは、大好きな民夫の声を追い求め、そこから民夫の待つ横浜まで798キロの道のりを目指す。

ハウは民夫を探して走る道中で、悩みや孤独、悲しみを抱えた人たちに会う。果たして、長い旅路を経てハウと民をは再会することができるのか。

ラストシーンで民夫が下す決断をどう評価するか、面白い作品になっています。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意)

冒頭で、民夫は結婚式場を予約していたが、相手の女性に「元彼が戻ってきた!」と袖にされるという、気弱な青年。慰めにと課長の鍋島に家に呼ばれて、保護犬の世話をしている奥さん(渡辺真起子)から「貴方なら気持ちが分かるから大丈夫!」と保護犬を世話され、民夫がこれを引き受けた。(笑)民夫がこんな軽い気持ちで引き受けていいのか?と気になりますね。これがテーマです。

ところがこの犬はわんわんと吠えない。ハウハウと吠える。(笑)なんと前の飼い主が声帯を手術したからだという。ということで“ハウ”という名をつけた。(笑)一目見ただけでハウは可愛い!感情がある犬ですね!人の言うことが全部わかるようにハウハウと吠えるんです!

もうこの日からハウを風呂場で洗って、ソファーに座らせ、食事、屋外に連れ出し、散に首輪を解いての玉遊び。毎日がハウのためにあるような生活。SNSでハウとの生活をアップロード。すると“サビネコ”さんが“いいね“してくる。

田中さんとハウの相性が抜群にいい。田中さんのちょっと弱気という性格もよく出て、ハウとの相性がとてもいい。おそらくこの映像を見たら「犬を飼いたい!」と思うでしょう!(笑)

そんなある日、広場で野球をする少年たちを見ていて眠くなり寝てしまった。目を覚ますとハウも少年たちもいない。

民夫はセルター(保護施設)の人々や同僚の足立桃子(池田エライザ)の助けを借りて必死に探すが見つからない。TVで江の島の観光ニュースを見て、ハウに似た犬がいると飛び出すこともあった。遂に、交通事故で焼却処分されたと聞かされる。仕事にも身が入らない、家に戻るとハウの幻を見る。

SNSでハウの死を伝えた。すると“サビネコ”から「ご冥福をお祈りします」とメールがきた。

実は、ハウは下北半島の尻尾崎灯台が見える海辺にいた。ハウは民夫を思い出し走りだした。東北大災害の跡地を南下するという、ちょっと見てみたい気持ちにさせてくれます。

あるところでは水をかけられて追われ、雨の日には野宿、あたりまえか(笑)、犬はなんとしてでも食べていくから凄い!ハウは雄犬だからよかった。(笑)

ここからはハウの旅と民夫のハウを思う気持ちが交互に描かれます。

 民夫は慰めのため「別の犬、買ったら!」と言われて腹が立つ!これは犬を飼ったことのない人の言葉、絶対に云ってはならない言葉です。課長から「悪かった!」と謝られ、「リードをしっかり握っていなかった自分の責任です!」と自分の不注意を責めていた。ここでは犬を飼うという責任が問われています。これは人生における責任の取り方の問題なんです!犬が病気になったとき嫌というほど自分を攻めるでしょう。捨てるなんていうのは問題外です!

ハウは茨城久慈の線路に寝そべっている女性に出会い、{こんな人を知っている}と顔をぺろぺろと嘗めた。{こんな人を知っている}がポイントですが、こういうことはありますね!

女生徒は福島の双葉町から避難してきた麻衣で、学校で原発の子と揶揄され喧嘩して登校できなくなっていた。ハウは学校に行かないで無人駅でドーナツを食べ、ホームで踊る麻衣につき合って、食べて、踊った。じゃれたんですね!すばらしいハウの演技でした!これで麻衣の心が解けて“いじめ”という問題に立ち向かいうようになった。「喧嘩の種をよく食べる!」という犬の役割を果たしました。(笑)

このころの民夫は市役所で戸籍謄本を取りにきた老人に対応していた。この老人が「亡くなった妻の名がない」と文句を言う。が、老人は「すいませんでした」と謝って帰っていった。民夫は「役所のデーターは死を意識してない」とこの話を桃子に聞かせた。このセリフは刺さりましたね!民夫は、ハウを亡くして、死というものの重みに対峙するようになっていた。人として一回り大きくなったかもしれませんね!

ハウは栃木県さくら市で、ショッピングセンターから追われて、鉄の扉で閉じられた商店街(シャッター商店街)に逃げ込んだ。セキネ傘屋の女将さん・志津(宮本信子)と出会った。

志津は旦那さん(石橋蓮司)を亡くし、ひとり寂しく商売をやっていた。だからハウの来訪をことの他喜んだ。夜はハウの脚(手)に手を合わせ、旦那さんの夢を見るというありさ。次の朝、ハウは民夫を思い出し去って行ったが、志津は旦那さんに会えたように元気をなった。年寄にとって犬は癒しになりますね!

民夫は久しぶりにハウがいなくなった公演を訪ね、そこにハウの幻に会ったが「最近はハウのこと、忘れることがある」と謝った。民夫はハウの死を乗り越え、セルターの仕事を手伝っていた。

ハウは桐生市の聖クララ修道院に、シスターたちの好意で、世話になっていた。ハウが脚を悪くしてここに辿りついたのだが、ハウがびっこをひくとは思わなかった。(笑)

ハウはここでハウの声帯手術をして捨てた元の飼い主・森下めぐみ(モトーラ世理奈に出会った。世理奈はとても後悔していたが、ハウはなにもなかったように世理奈に会った。世理奈の心は次第に溶かされていった。

世理奈は夫トシと夫婦仲がいいときにハウを飼うことにしたが、トシの仕事が行き詰まり、世理奈に暴力を振るうとうになり、これにハウが激しく吠えた。トシは世理奈に声帯手術を命じた。世理奈はこれを実行したが居たたまれずセルターに預けたというもの。

修道院のお祭りの日ここに世理奈がいると引き取りにやってきたトシがこれを断る修道院に刃物を持って暴れ、世理奈がトシの元に帰ることで事件を収めた。

世理奈が連れ去られると思ったハウはふたりが乗った車を追った。猛スピードで走るトシの車が横転、火災が発生。このときハウは車に下敷きになっていたトシを引張だす。トシが「俺を助けてくれたのか?」と声を上げた。ここでのハウの行動は“無償の愛”。犬は何故愛されるか?これが本作で描きかった大きなテーマでしょう。

民夫は居酒屋で桃子の悩みを聞いていた。「愛猫が亡くなって忘れられない!」と泣く。民夫は「きっと忘れられる!」と励ましていた。店を出て、別れる際に桃子が携帯の猫を見せ、「よろしく!」と手を挙げて去って行った。なんと「サビネコ」と書いてあって、民夫は驚いた。

このシーンでのエライザさんの涙と爽やかに去って行く演技は、「ふたりで生きて行こう」という、ちょっと感動ものでしたね!

民夫は戸建て家を売り払って、ちいちゃなアパートに引っ越し、桃子と食事しようと川辺を歩いていてハウの声を聴いた。振り向くとハウが飛びついてきた。ハウにはリードがつけられており、追って来た少年が「ふん!」と呼び、そこに母親が駆け付けてきた。母親が「家を買って、住んでいたらこの犬がやってきたの」と話した。民夫は「リードをしっかり離さないように」と少年に渡した。民夫はそっと泣いた。

まとめ

民夫の決心をどう受け取りましたか?いろいろ考えさせられますね!「飼うなら責任の持てる飼い方」が説かれていたように思います。

ハウの無償の愛、弱者の救済になっていて、これには泣かされますね!これに飼い主の民夫も答えなければなりませんね!民夫が立派に成長しました。ハウから多くのことを学びましたね!

ストーリーはハウが青森から戻ってくる行動が主体で、ちょっと冗長で、突っ込みどころもありますが、すべて、何度も言いますが、ハウの熱演で帳消しです。(笑)表情があって、民夫のことをよく理解しているようでした。

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