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映画「イチケイのカラス」(2023)セリフで語る裁判劇、真の法律家はどうあるべきかを問う作品

 

TVドラマは観ないのでどうしようかなと思ったのですが、背景が岡山ということで観ることにしました。ところがどっこい!セリフがすばらしい。今でも雨に濡れ置きざりにされた赤い自転車が忘れられない!

講談社「モーニング」で連載された浅見理都さんの同名コミックを原作に、2021年4月期にフジテレビ系列月曜9時枠にて放送された連続ドラマ「イチケイのカラス」のその後を描いたもの。原作未読で、ドラマも未観です!

連続ドラマの面白さが凝縮されたものになっていたのではないでしょうか?そんな感じがしました。

監督:「コンフィデンスマンJP」シリーズの田中亮、脚本:プラチナデータ」「絶対零度」シリーズの浜田秀哉、撮影:ドライブ・マイ・カー (2021)の四宮秀俊、編集:河村信二、音楽:服部隆之主題歌:Superfly。

出演者:竹野内豊黒木華をはじめ、小日向文世、山崎育三郎、桜井ユキ水谷果穂らがTVから続投するほか、斎藤工向井理柄本時生西野七瀬らが出演。豪華キャストが集結しています。

物語は

入間みちお(竹野内豊が東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称・イチケイ)を去ってから2年が過ぎた。岡山県瀬戸内の長閑な町・日尾美町に異動した彼は、史上最年少の防衛大臣・鵜城(向井理に対する傷害事件を担当することに。

みちおは事件の背後にイージス艦の衝突事故が関係していることに気づくが、航海内容は全て国家機密のため調査は難航する。

一方、イチケイでみちおと共に数々の事件を裁いた坂間千鶴(黒木華は、裁判官の他職経験制度により、弁護士として働き始める。偶然にもみちおの隣町に配属された坂間は、人権派弁護士の月本信吾(斎藤工と組んで小さな事件にも全力で取り組んでいく。そんなある日、町を支える地元大企業シキハマに、ある疑惑が持ち上がる。

全くTVドラマを知らなくてよいと思います。前段でキャラクターの面白さが手際よく描かれ、この作品特有のコミカルな雰囲気に入れ、後半に進み、ミステリアスで上手く伏線が繋がるクライム映画を観るようで、その中で法律とは何であるか、裁判官と弁護士はどうあるべきかを、上手く見せてくれます恋物語も準備されていて、ちょっと泣けます!

予告編がよく作られていて、しっかりこれを観ておくと、騙されたという結末に驚かされます。(笑)

TVドラマの映画化ということで、セリフで語る映画になっていて、「めんどくさい」というところがあります。また、ふざけた演技と笑はTVドラマ用であまり関心したものではないが、私は二度裁判沙汰を経験していて、そのセリフに、現実はもっと酷いぞと、云い得て妙と笑えます。

背景が岡山なのに岡山弁が一切出てこない。風景もちょっとおかしい!(笑)コロナ禍で苦労して作った作品であることが伺われますが、ラストの法廷シーン、こんな裁判長見たことないという、見ごたえのあるシーンでした。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

冒頭、入間は窓から降る雨の中に想い出の赤い自転車を見て、法衣を羽織り法廷に向かった。健康被害裁判の結審日だった。

赤い自転車は健康被害を調査していて殺害された弁護士が使ったもの。この裁判を象徴されるもので、このシーンは秀逸なものでした。思い出して、ぐっとくるものがあります。

坂間は裁判官となって10年間のうちに2年間別の仕事を経験することが義務つけられていて、キャリアー8年目に、ここ日尾美町にやってきて法律事務所を開いた。熱血弁護士として活躍、すっかり町の人の中に溶け込んでいた。今は大桃コロリン事件の弁護を引き受けていた。大桃コロリン事件とはトラックの積み荷、桃を形作ったモニュメントが転げ落ちて、これを避けた後続車が事故ったというもの。

相手は後続車の運転手・トメ婆ちゃんは避けられたと主張するが、トメさんは全く責任はないと頑張り、弁護士を月本に変えるという。(笑)坂間が月本に会ってみると、環境汚染を扱う人権弁護士で「弁護士と裁判官の違いを知っているか」と問うてくる。「走りまわって働くのが弁護士、暖かい部屋で働くのが裁判官!」と言われ、この言葉に惹かれて月本の活動につき合うようになった。

第1回傷害事件裁判

被告・島谷加奈子の「夫は事故に巻き込まれた」という主張に、井出検察官(山崎育三郎)が「海難事故調査によればGPSが破損していた、被告の言い分は認められない」と発言。入間裁判長は「傷害事件には関係ない!」とにやりと笑い、職権発動した。そして被告に「真実を知れば罪にお付き合いしますね」と念押しをした。

入間の職権発動は裁判官仲間では有名らしい。(笑)が、入間裁判長を補佐する土井(柄本時生)や赤城(西野七瀬)は「できるの?」と不安がる。

月本と坂間は、大手のシキハマ工場の環境汚染を調べ始めた。社員の退職、入院患者が増えているが、工場長(木島昌宏)はこれを否定する。

月本は坂間を見張り立てて、工場の立入禁止地域に潜り込み工場排水を採取した。監視員に発見され、坂間が法律違反だというが(笑えない)、赤い自転車を盗んで、ふたり乗りで、逃げた。このとき後ろに乗っていた坂間は月本の背中にもたれ暖かいものを感じていた!

入間は釣りのため日尾美漁港に出向いた。ここで鵜城防衛大臣が視察に来ていた。入間は「航海記録をなぜ公表しない」と聞くと、「それを説明していたら防衛はできない!」と言う。「大臣として何のために、何をなすか、人生の分岐点ですよ」と言葉を返した。これが理由で入間はこの傷害裁判から外された。入間の釣りは職権発動の一環で、ある情報を収集のためだった

月本と坂間はシキハマ工場に、排水が基準値以上に汚染されていると抗議にやってきた。抗議が終ると会社の顧問弁護士・三田村(尾上菊之助)が「適正である」と会社に調査結果を発表。従業員はこれを支持した。これに坂間は激しく抗議したが、月本は抗議しない。坂間は月本の行動に違和感を持った。

ある日、坂間は月本が会社から金を受け取る現場を目撃した。坂間が「弁護士の名に恥じる」と激しく抗議した。月本は「お前、俺に惚れているだろう。貰っておけ!」と金を差し出した。このことでふたりは袂を分かつことになり、坂間は月本の本心を見抜くことができなかった。淡い恋が終った!

坂間はひとりでこの難問に取り組むと決心したところに、町民の松原さんから汚染水で苦しむ息子の健康被害訴訟の弁護を依頼された。

健康被害裁判が始まった。この裁判の担当裁判長は入間だった。入間とはかって共に仕事をした仲だがこれまでとは違った立場で、法廷で対峙することになった。

坂間はシキハマ顧問弁護士・三田村(尾上菊五郎)と激しく対立した。入間は「民事だから職権発動しない」と言い、“真実”を明らかにするため土壌汚染の調査を提案した。

坂間は工場の隣接地の土壌を採取作業中、釣りに出かける入間に出会った。入間は密かに坂間のことを心配していた。さらに、傷害事件のことを考えていた。

彼は釣りで漁船に乗り漁師に接して衝突事件を目撃した話を聞く。さらに付近の無人島を調べることだった。

松原さんが「裁判が怖くなった」と言い出し、坂間の大家でありシキハマの産業医である小早川悦子(吉田羊)から「シキハマには逆らえないと」と注意された。

夜、坂間が帰宅すると坂間の住むアパートが燃えていた。情聴取で警察署にいるとそこで月本に会った。月本から「お前のやっていることは自己満足だ。危ないから手を引け!法律は不完全だ。結果でどうにでも変えられる」と注意された。寝るところもないだろうから俺のところに泊まれと誘われたが「真実を見ないで、それで怖くなるの」と断った。

入間のところに泊めてもらい「自分の正義を押し付け過ぎているのかな、よく分からなくなった」といつもの坂間に似合わない弱音を吐いた。入間は「悩め!悩め!悩め抜く!それしか答えようがない」と示唆した。

月本が裁判所に入間を訪ねてきた。月本は「坂間がひとりで苦しんでいる。早く裁判で結果を出すように」と裁判の再開を促すものだった。この際、月本はシキハマの従業員と町民が楽しそうに映っている数枚の写真を入間に渡した。そこに、健康被害なしという記事が出ることが伝えられた。

入間は月本が何故この写真を渡したのかと考え始めた。坂間は土壌採取を続けていた。

雨の降る夜、月本が何者かに刺され、亡くなった

入間と坂間は月本の遺体安置所を訪ね、彼の死を悼んだ。坂間は泣いて悔やんだ。入間はあの写真のことがやたらと想い出された。

無人島を調査して帰った入間に、坂間が「汚染した土を搬出していた」と報告すると「そういうことか」と、こともなげに言った。

入間と坂間は漁港の車庫内の車に汚染土壌が付着していないか調べていた。採取した土壌を分析班に任せることにした。

入間は鵜城大臣にまたまた出会った。(笑)入間は「傷害事件の裁判官を降ろされた、何か隠したいことがあるのですか。島が汚染されたと目撃証言ですよ」と話した。

坂間が親しくしていた和菓子屋の息子・植木(八木勇征)が月本殺害容疑で逮捕された。

第4回健康被害が再開された

入間は参考人で招致した島谷加奈子に「真実を知ったらあなたは罪を認めるか」と糺し、無人島のカメラで撮った衝突時の映像を見せ、「運搬船が汚染水を運んでいて、その容器が破損して漏れた気体を、夫である秀彰が吸って意識不明で操縦不能だった。原因は環境汚染だ」と伝えた。佳菜子は「夫はここの出身なのに何でそんなことして!」と泣いた。

坂間が「被害者が町から出ている。シキハマからの圧力ではないでしょうか」と問うた。

入間はもうひとりの参考人産業医の小早川悦子に、「工場に汚染水で苦しむ人は居ないか」と聞いた。悦子は無言を貫こうとしたが、「フッ化ガスの使用が禁止され、シキハマが倒産に追い込まれる状況で、この町はシキハマなしでは生きていけないと、有害ガスの使用を認め、これを隠蔽してきた。法律は規制するが、私たちを守ってくれない」と証言した。

入間は裁判長席から町民のいる傍聴席の前に立ち「この事件は首謀者なき犯罪だ」「法律は万王ではない、しかし、あるから自分を守ることができます。町は病んでいる。どんなに苦しくてもこれを受け入れることです。壊れたところからやるしかない」と説き、「被害者に1000万円の賠償と汚染水の撤去」を勧告した。聴衆の町民は泣いた!

裁判が終わって、入間は「法律は教えだ、これが無いと生きて行けない。真実を知っても何も解決しない」と坂間に語った!

入間は鵜城大臣に会い「何を守ろうとしたのですか」と問うた。大臣は「艦艇には開発中の対韓ミサイルが搭載されていた。これが公になると開発が遅れ、防衛戦力に大きな問題が出る。国防上、公開できなかった」と役目がそうさせたと答え、地元出身の国会議員として「地元に尽くす」と大臣を辞職した。

 入間は坂間に月本が真実を掴み悦子に自首を勧めていたこと、悦子が汚染水で病んでいること、トメばあちゃんも松原さんも月本が紹介した裁判案件だったこと、さらに月本の最期の言葉は「赤い自転車は返した!」だと伝えた。坂間は泣いた!

そして「法律は社会の約束だが、全ては守れない。こぼれる人が生まれる。これが出た時、彼らのために真摯に向かい会えるかが真の法律家だ」と説いた。

まとめ

坂間が弁護する健康被害裁判と入間が裁く傷害事件裁判が、月本の綿密な調査や入間の職権発動、坂間の熱血弁護で、両裁判に環境汚染物質が関わっていたことで解決するという、いろいろなエピソードが上手く繋がった裁判劇でした

なかでも月本が最期まで粘り強く産業医の悦子を説いて、住民自らで解決させたかった努力。そして坂間を最後まで守りたかった想いに泣けます。詳しくは描かれないが、余韻があって、泣けるドラマになっていました。脚本が上手い!

傷害事件の結審で入間が町民に説くシーン。法律の限界を示し、町民の生き方を示す入間裁判長、竹野内さんの説得力ある話し方が圧巻でした。これに傍聴者の上手い演技で印象に残るシーンでした。

              ****

「神は見返りを求める」(2021)狂った恋愛模様に、Youtubeの闇を見た。

 

吉田恵輔監督のオリジナル脚本作。見逃がしていました!岸井ゆきのさん主演ということで、WOWOWで観ました

Youtuberを巡る恋愛劇。Youtubeなど分からないものが岸井ゆきのさん見たさに観て書いたコメント、読み飛ばしてください!

監督・脚本吉田恵輔撮影:志田貴之、編集:田巻源太、音楽:佐藤望主題歌:空白ごっこ

出演者:ムロツヨシ岸井ゆきの若葉竜也吉村界人、淡梨、柳俊太郎、他。

物語は

合コンで出会った、イベント会社に勤める田母神ムロツヨシ)と、ユーチューバーのゆりちゃん岸井ゆきの)。再生回数に頭を悩ませるゆりちゃんを不憫に思った田母神は、見返りを求めずに彼女のYouTubeチャンネルを手伝うようになる。それほど人気は出ないながらも、力を合わせて前向きにがんばっていく中で、2人は良きパートナーとなっていく。

しかし、あることをきっかけにやさしかった田母神が見返りを求める男に豹変。さらにはゆりちゃんまでもが容姿や振る舞いが別人のようになり、恩を仇で返す女に豹変するおいうもの。

再生回数稼ぎでヒートアップする動画出し物合戦。そこに存在するYoutuber同士の駆け引き、嫉妬や裏切り。この環境下で生まれた狂った恋の行方を描いた作品。

田母神とユリちゃんの仲良し関係がある出来事で逆転して大きく変化するふたりの関係。これを演じるムロツヨシ岸井ゆきのさんの演技の変化が見どころ!そしてふたりの関係に大きな変化を与えたYoutuberとは何ものか!


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あらすじ&感想

冒頭、覆面YouTuberが、男女に殴られている男をカメラに収めている。覆面Youtuberの餌食になった男は何者か、こいつの運命は?

 田母神は合コンで酔いつぶれたユリちゃんを必死に介護する。他のメンバーが「これユリちゃんのYoutube!」とスマホでその映像を見ている。ラーメン食べながらフラフープをする姿。(笑)これがヒットしないというが、可愛い岸井さんが演じるこの映像が何故ヒットしない?と笑いました。それほどに可愛いからぜひ見てください。

 ユリちゃんは田母神がイベント屋だと知って、「被りものでやりたいから貸して!」と電話したのがきっかけで、ふたりのYoutuberコンビが生まれた

田母神が“ティー”と呼ぶお面を被り、ユリちゃんが二輪車に乗って、輪投げをして、大きな竹トンボを回してと、“おままごと“やってる気分で撮った。田母神は仕事の合間に夜も編集作業を続けるという献身的にユリちゃんを支えた。

あるとき、田母神が仕事で付き合えないとき、ユリちゃんが「裏メニュー」として生食用牛肉を出す店を紹介してしまい、お店は閉店に追い込まれた。これに田母神が謝罪動画を作成して支えたことで、ユリちゃんは“神だ”と尊敬するありさま。自宅に招いて裸になって償いたいという。田母神は見返りを求めないと断った。お金が入るようになってもユリちゃんが思うように使っていいと言った。

人気Youtuberの集いにユリちゃんが参加。そこで田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で知り合ったのがマイルズのふたり、チョレイ吉村界人)とカビゴン(淡梨)だった。

マイルズに「もっと可愛くした方がいい」“マイルズチャネル”にゲスト出演して上半身青色にペイントする映像を作った。これで一気にユリちゃんチャネルの再生回数が増えだした!

マイルズから「田母神は古いから」とプロデューサーの村上アレン(柳俊太郎)を紹介された。ユリちゃんが「やっていい?」と田母神に許可を求めてきた。田母神は不満だったが、仕事で忙しそうな振りをして、OKを出した。

                                                          これを機会に、ユリちゃんは村上の企画で次々と動画を作る。田母神は車の運転、撮影資材の運搬などと小間使いにされる有様。なんとかこちらに気を引こうとGOD Tを描いたTシャツを渡した!

このようときに田母神は親友の難波から借金を申し込まれた。出来ないと断ったら、あろうことか難波がビルか飛び降り自殺した。田母神には難波の借金保証人としての400万円返済義務が生じた

ユリちゃんはテレフォンオペレーターを辞めて、Youtuberとして生活することにして、立派なマンションに引っ越していた。

田母神は社の同僚・梅川葉(若葉竜也)の「ユリちゃんは金持っている」の言葉を信じて、ユリに「50万円でいい」と借金を申し込んだところ「あなたは見返りを求めないと言った」の一辺倒で断られた。そして「これからは村上さんとやる」と袖にされた。

田母神はカフェにユリちゃんを呼び出し、これまでユリにしてきたことをこと細かく挙げて「恩を仇で返すのか!」と借金を催促した。

田母神は梅川から「ユリは有名Youtuberとやりまくっている」と聞き、頭にきて、覆面Youtuberとなりユリのこき下ろし動画を流した。

ふたりの間でえげつないお互いの性格・能力批判からYoutube動画の舞台裏を暴露するという泥試合。やればやるほどユリちゃんチャネルがバズリ、田母神避難のコメントが増え、覆面Youtuberの餌食となった。田母神のアパートに「ゴッティーの家」と落書され、身元がバレた。

遂に田母神はユリちゃんをストーカーして直接言葉で「俺が与えた行為と誠意を返せ!」と罵る。さらに自撮り棒で殴り合った。

 ここにきて、こんなことして何になる、田母神は“ふっと”ユリちゃんと仲良くしていたころを思い出した。

村上が新しいペイント企画を持ち込んだ。ユリちゃんがこれを渋った。次に“ゴッティー供養”(企画)を持ってきたので、ユリちゃんはこれに乗って撮影に入ったが、途中で止めた。村上から「自分の力で人気が出たのではない!俺のお陰だ!お前がやることは誰でもできる」とバッシングされ、田母神と楽しくやっていたころを思い出していた。

ユリちゃんのサイン会。女性ファンに「やりがいある仕事、頑張ってください」と言われユリちゃんは「時代を超えて残るものでないから、やりがいは?」と言葉を濁した。ほんと!これを一生の仕事にすると思うと考えるよね!

田母神は「見返りはもういい!頑張って!」と握手した。ユリちゃんは「でもやっぱりあなたは嫌い!」と返してきた。これを見た梅川が「やつらは頭悪い連中だから」撮影スティックと慰めたが「もっとしっかり生きろ!自分がないと人は離れる!」と叱った。自分への戒めでもあった。

 田母神が立ち飲み屋で一杯飲んで、店を出たところで覆面Youtuberに出会った。これを追っていてヤクザな男女に突き当たり、ボカボカに殴られた。そこをこいつが撮った。(冒頭のシーン)。

田母神はアパートに戻り、もう身元はバレたと素顔を晒し、「ウリちゃんと元に戻りたい」とゴッティー踊りを踊りながら流れる血を拭く動画を作って発信した。

ユリちゃんはこの映像を観て、田母神からプレゼントされたTシャツを取り出し、これを着て、マイルズと一緒に花火を使った動画を撮っていて、花火の暴発事故で顔に大怪我して入院した

母神が見舞に訪れると覆面Youtuberがユリちゃんを撮っていた。田母神は逃げるこいつを捕まえ覆面を剥いでスマホで写真を撮り「いつでも氏名とこの写真を公開するぞ!びくびくして過ごせ!」と警告した。

病室に戻るとユリちゃんが「やっぱりあなたが嫌い!」と言い「ありがとう」と付け加えた。帰りの車の中で田母神は“ありがとう”の映像を何度もみた。アパートに戻ると覆面Youtuberが待っていた。彼が傘で田母神の背中を数度刺してスマホを奪い逃げ去った。

田母神は覆面Youtuberを追って「背中刺されて痛いがまだまだやれる」とスマホが付いてない自撮り棒で踊り、街を彷徨していた。

感想

仲の良かったふたりが「見返りを求める男」と「恩を仇で返す女」となってYoutubeで誹謗中傷し合うという醜い争いだった。

 人のよい田母神は寝食を忘れて、ユリちゃんに尽くした。ユリちゃんが大好きだった。ユリちゃんに謝金をお願いしたことでふたりが疎遠になったのではない。

有名Youtuberの目に留まりどんどん有名になり自分の手から離れていくユリちゃんの姿を見るのが辛かった。「俺の努力があってここまで来たのに」という想いを捨てることはできなかったからだ。

覆面Youtuberなら大丈夫だろうと始めたユリちゃん降ろし。大人気ない批難合戦を続け、遂に暴力を振るうようになり、素顔が晒され、覆面Youtuberの餌食いなり、やっと「もっとしっかり生きる!自分がないと人は離れる!」と気付いた。

一方、ユリちゃんはテレフォンオペレーターでの冴えない仕事、Youtube始めてもバカにされる。そんな時に田母神に出会い、その好意に甘えた。田母神を好きになるよう有名Youtuberになりたかった

Youtuberとして売れてくると田母神が煩わしくなってきた。しかし、本当の自分の力が分かってくると、多母神と一緒にやっていたころを思い出し「時代を超えて残るものでないこの仕事、本当にやりがいあるの?」と真剣に考えるようになっていた。

田母神は覆面Youtuberに刺されたが、ユリちゃんの「ありがとう」の言葉に救われ「まだやれる」とカメラなしの自撮り棒で撮りながら、街を彷徨しているが正気に戻るでしょう。ユリちゃんも、もうYoutuberはやらないでしょう。

ふたりはYouTubeを巡ってとんでもない争いをしたが、大人になった!

ふたりの狂った恋愛模様を楽しみながら、Youtube世界の闇を見せてもらったYoutuberは少・中学生の憧れの職業だという。“今観るべき映画”だと思います。

笑顔で可愛いかったユリちゃんが“恩を仇で返す”屁理屈をたらたら述べる強いユリに変化するとは、また柔和で笑顔が絶えなかった田母神が完全に狂ったおじさんになってしまうという、岸井さんとムロさんの演技が凄かった!

もうひとり、ふたりの仲をいい加減なことばで繋ぐチャラチャラ男の梅川。梅川こそがYoutubeのメタファーだと思った。若葉さんが見事に演じました!

                                                  *****

「ファミリア」(2023)テーマはよくわかるし映像も凄いが、エンタメ過ぎて話のリアリティがぼけたかなと!

 

役所広司佐藤浩市さんおふたりが出演ということで観ることにしました。

ブラジル移民を抱えるコミュニティの在り方をタイトル「ファミリア」という絶妙なニュンスで描いた作品です。

監督:「八日目の蝉」「いのちの停車場」などの成島出脚本:いながききよたか、撮影:藤澤順一、編集:阿部亙英 三條和生、音楽:安川午朗

脚本の“いながき”さんには「ハブと拳骨」(2008)があり、ヤクザの喧嘩(拳骨)を含めて、本作もこれによく似た社会派ドラマになっています。撮影の藤澤さん鈴木清順監督に主事したカメラマン、ということでその映像には定評があります。

出演者:役所広司吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、MIYAVI、佐藤浩市、他。

物語は

山里でひとり孤独に暮らす陶器職人・神谷誠治(役所広司のもとに、一流企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任中の息子・学(吉沢亮)が婚約者ナディア(アリまらい果)を連れてやって来る。学は結婚を機に退職して焼き物を継ぎたいと話すが、誠治は反対する。

一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年マルコス(サガエルカス)は、半グレ集団に追われていたところを助けてくれた誠治に亡き父の姿を重ね、焼き物の仕事に興味を持つように。そんな中、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲う。誠治はこの悲劇を乗り越えように、マルコスらブラジル移民者に心寄せていくというヒューマンドラマ。

アルジェリアの事件、日本のブラジル移民者団地で起きた事件。これらを連ねて「ファミリア」というテーマに落とし込んでいくプロット。出てくるエピソードは脚本家 “いながき”さんがしっかり集めたもので事実なのですが、「ファミリア」に強引に結びつけようとして、「本当なの?」「ここまでやるか?」という疑問がでてくるかもしれません。

しかし、役所、佐藤さんはじめとする演者の熱演と、すばらしい映像でエンターテインメント作品として楽しめる工夫がしてあります!今の時期に、この問題を考えてみる意義のある作品だと思います。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

冒頭、誠治が森の中で土を採取し、持ち帰り土を捏ねて、ろくろで陶器に仕上げていく陶磁作業。これを演じる役所さんの佇まいに圧倒されます

作品の中心に陶器が出来ていく過程を置いているが、これは丁寧に丁寧に愛情を持って人の役に立つものにするという、この作品テーマによく合っています。

息子の学が恋人ナディアを連れて帰国、結婚式を挙げる。ナディアは5歳で両親を戦争で亡くして難民キャンプで育った子だった。このことを誠治は心配していたがナディアの笑顔を見て気に入り、とてもうれしそうな表情をする。誠治も児童養護施設出身者で若いときははみ出し者であったが、妻晶子の愛情で陶磁師になった。しかし、晶子に苦労させ早世させてしまったという悔いがあった。

テーマのためとは言え、かなり露骨なキャラクター設定になっていていると感じます

ブラジル移民用集合住宅がある保丘団地。この街のクラブで行われるブラジル人の若者たちのダンスパーテイに、半グレ集団:榎本(MIYAVI)が殴り込みをかけて、マルコスを追い回す。

マルコの父親は1990年代のバブル期にブラジルから「ジャパニーズドリームを求めて日本にやってきたリーダだったがリーマンショック、多くのブラジル人が職を失いその責任を取ってアパートの屋上から飛び降り自殺していた。

マルコスが逃げて、誠治の家までやってきて、車を盗もうとして誠治と学に捕まった。誠治は治療して返してやった。

これに、マルコスの恋人エリカ(ワケドファジレ)がお礼にやってきて団地の祭りに誘った。祭りはブラジル色一色だった。誠治、学そしてナディアは大歓迎され、誠治はまるで家族のようなもてなしに大感激だった。マルコスも誠治に心を開くように「なっていった。これはイーストウッド監督の「グラン・トリノ」(2008)に同じ描写が、物語もかなり似ています。

学とナディアはアルジェリアに戻っていた

 半クレグ集団がマルコスらを捕まえ、「団地内で麻薬を売って500万円差し出せ」と要求してきた。榎本は幼い愛娘を酒に酔ったブラジル人運転手に引き殺され、ブラジルに出向いて1年間探し回ったが犯人はすでに亡くなっていた。その恨みをブラジル移民に向けていった。このエピソードもかなり膨らまされていると感じます!

マルコスらは麻薬を町で裁こうとして青木組(重松豊)に捕まり、没収されてしまった。青木は榎本をよくは思っていないが繋がっていた。

マルコスらは再び半グレグループから「500万持ってこないと内蔵を売る。クラブで働くエリカを回す!」と暴力で脅かされた。負傷したマルコスはエリカに「もう生きる意味がない、死のう!」と集合住宅の屋上でひと晩中セックスしたが死に切れず(笑)、ここまで描く必要があるの、誠治の陶磁作業場に逃げてきた。

誠治は自分の過去のことやアルジェリアで生活する学とナディアのことを想い、、これを受け入れた。マルコスが「やりたい!」という焼もの作業を手伝わせていた。

この誠治の強い行動力には、バックにかって共に児童養護施設で育ち、今は刑事になっている駒田(佐藤浩市の存在があるからだった。

赤く髪の駒田が誠治を訪ねてきて、ふたりが雑談をかわすシーンを見れば、ふたりの関係は説明がなくても分るという、役所さんと佐藤さんの役を超えた演技を見ることができます。佐藤さんの出演シーンはわずかですが、凄い!と声がでるほどの表現力でした。

石油プラントに対するテロ事件で学とナディアが拘束された。相手の要求は身代金らしい」というニュースが誠治の耳に入ってきた。誠治は土地を担保に金を作り、外務省に設けられたテロ対策室長に「助けて欲しい!」と金を差し出したが、「除外国と足並みを揃えて対策する」という禅問答のような回答に(笑)「国は当てにならない!」と失望して帰ってきた。その後、ふたりの死が知らされた。帰還した遺体は解剖のため触ることもできなかった。

学の現地の同僚から「仲間を助ける行動で命を落とした」という言葉とともに政治に当てたメールが渡された。そこには「ネディアに子供が出来た!早くとお父さんに顔を見せたい」というものだった。誠治は陶磁師になりたいという学の望みを聞いてやればよかったと思ったと後悔した。

マルコスの同僚ルイ(シマダアラン)が半グレ集団のアジトに誘い出され殺害された。マルコスはルイの復讐と榎本を刺しにアジトに向かったが、榎本に交わされ、激しい暴行を受けて入院することになった。

榎本を演じるMIYAVIさんの蹴り演技、「ヘルドックス」(2922)でも見せてくれましたが、これは見事ですね!(笑)

誠治は学とナディアの死の悲しみの中で、「この暴力は赦せない!」と駒田に相談した。しかし、榎本には正当防衛が成立するしそのバックのヤクザに警察も簡単には動けないということでふたりが一計を案じた

誠治は半グレの一人を捕えて、指を数本折りながら(笑)、榎本の悪事を吐かせこれを録画した。榎本のアジトに出向き、録音を聞かせ、「10年は刑務所だ。ブラジル移民に手を出すな!録音内容は誰も知らない」と榎本の反撃を誘った。榎本が襲ってきたところにパトカーが駆け付け半グレ集団を一網打尽にした。榎本が防弾チョッキを着けずにアジトに乗り込んだのはまずかった。(笑)

1カ月後、傷が癒えた誠治は「焼き物の仕事がしたい」と尋ねてきたマルコスとエリカに手伝わせ、陶磁窯の火入れ作業を始めた。

まとめ

世界は、今、移民問題で苦しんでいる。日本にとっても大きな問題になってきている。いいところに目を付けた作品でした。

そのための“タイトル”が英字で表示される、そこが味噌の作品でした。しかし、エンタメ性を重視した演出が韓国映画のような作品をめざしたように見えましたが、キャラクター設定や暴力シーンなど、エンタメ過ぎてリアリティに疑問を持ちました。

しかし、藤澤順一さんによる冒頭でのドローンによる愛知県豊田市保見団地の朝の風景。マルコスの会社専用通勤バスでの出勤、子供たちの登校、エリカが夜の仕事を終え帰ってくるというブラジル移民団地の日常。ここでのお祭り風景、クラブでのダンスパーティーなど。ブラジル色いっぱいの映像により物語の真実性を証明する映像は見事でした。しかし、キャバレーの中での半グレの乱入シーンなど幾度となく繰り返される暴力シーンはやりすぎだなと感じました。

キャストに、実際に苦しんでいるブラジル人二世たちを出演させるという思い切った作品でした。みなさんよく頑張りました!

この作品での役所さんと佐藤さんの演技、韓国のそれを凌駕していました

               ***

「シェルブールの雨傘」(1964)この結末に言葉はいらない!戦争の悲劇を見事に描いた作品!

 

名作中の名作の!本作、実はまだ観ていなかったということでこの正月、WOSOWで取り貯めていたものを観ました。

こういう名作につまらない感想など書くなとお叱りを受けること覚悟で書きます!(笑)

監督・脚本ジャック・ドゥミ撮影:ジャン・ラビエ、編集:アン=マリー・コトレ、モニーク・テッセール、音楽:ミシェル・ルグラン

出演者:カトリーヌ・ドヌーブ、ニーノ・カステルヌオーボ、アンヌ・ベルノン、マルク・ミシェル、他。


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あらすじ:

物語は3つの部から成っています

第1部 旅立ち 1957年11月

フランス北西部の港町シェルブール。20歳のギイ(ニーノ・カステルヌオーボ) は自動車修理工でエリーズ伯母(ミレーユ・ペレー)の世話をしていた。16歳のジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーブ)は傘屋の娘で美しい母エムリ夫人(アンヌ・ベルノン)に厳しく育てられていた。ギイはジュヌヴィエーヴとのデートの時は幼馴染のマドレーヌ(エレン・ファルナー)に伯母の面倒を見てもらっていた。ギイとジュヌヴィエーヴは結婚を誓い合った。

ふたりは将来石油スタンドを経営したい、そして子供、男の子ならフランソワ。女の子ならフランソワーズを持っていたという夢を持っていた。しかし、エムリ夫人はふたりは若過ぎるし、ギイに生活力がないと反対だった。

ある日、ギイにアルジェリア戦争の徴兵令状がきた。ふたりは一夜を共にして、2年の兵役を終えて結婚することを固く誓って、ギイは戦場に発った。ジュヌヴィエーヴはギイの乗った列車が消えるまでホームで見送った。

第2部 不在 1958年1月

ジュヌヴィエーヴはギイからの手紙を待つが2カ月たっても来ない。彼女は妊娠していた。ジュヌヴィエーヴは大きな不安を抱えるなかで、店に大きな税金が課せられたと母エリム夫人が苦しみだした。ジュヌヴィエーヴの勧めでエリム夫人はネックレスを宝石商に売ることにした。宝石商では所望の値では引き取ってもらえなかったが、そこに居合わせたパリの宝石商カサール(マルク・ミシェル)が引き取ってくれることになった。

約束の日、サールがエリム夫人の店にやってきて金を渡し、ジュヌヴィエーヴに恋していることを告白した。母エムリ夫人の勧め、子供の面倒は見るというカサールの言葉に、ジュヌヴィエーヴはカサールと結婚し、エムリ夫人とともにロンドンに去った。

第3部 帰還 1959年3月

ギイは2年の兵役を終え帰還したが、シェリプールにジュヌヴィエーヴの姿はなかった。彼は酒と娼婦に溺れた。そんなギイを心配するエリーズ伯母が亡くなった。悲しみのどん底にある彼を支えたのがマドレーヌだった。ギイはエリーズ伯母の残した遺産でガソリンスタンドを始め、マドレーヌと結婚した。ふたりは睦ましい夫婦となり長男が生まれ、フランソワと名付けた

エピローグ

1963年12月のある雪の降る夜、マドレーヌと長男フランソワがクリスマスのショッピングに出かけているところに、一台の車がガソリンを補給にやってきた。ギイが車に近づくとジュヌヴィエーヴと女の子が車内にいた。ギイは店の中にジュヌヴィエーヴを誘った。

ジュヌヴィエーヴは「いい店ね!エリム夫人の勧めで娘を連れて久しぶりにここにやってきた。幸せ?」と聞いた。ギイは頷いた。「娘フランソワーズを見る?」と聞かれたギイは断った。ジュヌヴィエーヴは「じゃ!」と去って行った。そこにマドレーヌとフランソワが外出から戻ってきた。ギイがふたりを抱き締めた。

感想:

全編、会話が歌で語られるという物語。これミュージカル?と戸惑いました。

しかし、何度も繰り返される主題歌がすばらしく、シーンごとに変わる室内の壁や傘家具の色彩、登場人物のファッションの美しさ、さらにドヌーブの美しさに魅入り、ストーリーに飽きることはなかった。

ラストのジュヌヴィエーヴとギイの6年振りの再会、この出会いに震えました。

第2部でジュヌヴィエーヴが結婚した以降は全く描かれず、第3部で帰還したギイが悲観の中から立ち直り幸せな生活を持った中でのジュヌヴィエーヴとの再会。

そこに現れたジュヌヴィエーヴは立派なファッションと落ち着いた言葉使いだか、子供はギリとの娘フランソワーズしかいない。決してジュヌヴィエーヴは幸せとは言えない中でのふたりの再会。ふたりは言葉少なに、お互いの今を受け入れて、ジュヌヴィエーヴが去って行った。ふたりにとってこれしかない再会と別れ方が圧巻でした。

戦争の悲劇を見事に描いた作品だと思いました。

このラストシーンを描くのに、くどくど言う言葉はいらない全編、会話が歌で、バックの曲で感情が伝わればよいと納得しました。まるで大人のお伽話のようでした。

           *****

「非常宣言」(2022)リアルで迫力ある映像だけではない、韓国映画の底力を見せてくれます!

 

年最初の劇場鑑賞作品は元気のある韓国映画と決めていて、今年はこの作品。

お目当はてソン・ガンホさんですが、芸達者なかたで・・・。(笑)

韓国映画界を代表する俳優ソン・ガンホイ・ビョンホンが共演し、飛行機内で発生したウイルステロの恐怖を描いたパニックスリラー

監督・脚本:ハン・ジェリム撮影:イ・モゲ パク・ジョンチョル、編集:ハン・ジェリム音楽:イ・ビョンウ チョン・ジフン。

出演者:ソン・ガンホイ・ビョンホンチョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン、他。

物語は

飛行機恐怖症のパク・ジェヒョク(イ・ビョンホン娘パク・スミン(キム・ボミン)とともにハワイ行きの航空機に搭乗するが、離陸後まもなく乗客が相次いで謎の死を遂げ、機内はパニックに陥る。一方、地上では飛行機を標的にしたウイルステロの犯行予告動画がネット上にアップロードされていた。捜査に乗り出したベテラン刑事ク・イノ(ソン・ガンホは、その飛行機が妻チョン・ヘユン(ウ・ミファ)の搭乗した便だと知る。テロの知らせを受けた国土交通省大臣スッキ(チョン・ドヨンは、緊急着陸のため国内外に交渉を開始。副操縦士ヒョンス(キム・ナムギル)は乗客の命を守るべく奮闘するが、機体はついに操縦不能となり急降下していくというもの。

飛行機内で発生したウイルステロの恐怖を“体験してもらう”という作品。搭乗して逐次に明かされるウイルスの恐怖、それも逃げることの出来ない機体の中で。さらに機の異様飛行。ウイルスを発見してもすでに手が打てない、機から伝えられる恐怖情報に踊らされ、遂に着陸拒否という市民運動になり、その結末が見えない恐怖。

コロナ禍と最近のテロ事件の知見を加えたよく出来たストーリーに、たっぷり韓国風味の愛の物語になっているところが憎い!


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意):

ソウル警察強力チームのリーダーたるク・イン刑事。妻が「朝飯は冷蔵庫のコムタンにして」と言い残して旅行に出かけ、何も食べずに署に出勤。そこで「航空機にウイルステロを仕掛ける予告動画をアップしたという不審な男の目撃情報があった」と部下のパク・ユンチョル(ヒョン・ボンシク)から報告を受けるが、「英語がちゃんと読めたのか?」と聞き流し、飯を食いに出た。(笑)

ソウル空港では不審な男リュ・ジンソク(イム・シワン)がトイレで薬物を体内に埋め糸で縫い、喘息用の吸入器を持って搭乗ゲートを通過。ジェヒョクの娘スミンはジンソクがトイレの手洗いで血液を流しているのを見ていた。次々と 乗員・乗客が“K501”機に搭乗していった。

K501機が発進し安定飛行に移行すると、ジンソクがトイレで脇の下から薬の入ったカプセルを取り出し、吸入器に詰めた。この際、トイレ内に粉末が残り、トイレ使用者に次々と付着する。スミンとパーサーのテウン(ソル・イナ)にも付着していた。

皮膚の発疹ができ、痒い痒いという騒ぎが起こり出した!ジェヒョクは娘スミンからジンソクの不信行動を聞き、パーサー長のヒジン(キム・ソジン)に身元を調べてもらうと博士号を持つ研究者だった。

ジンソクは機長に「ウイルステロで機を乗っ取った」と伝えた。副機長のヒョンスが管制官にこのことを伝えた。

その頃、ク・イノ刑事チームは目撃情報元の少年たちに事情を聴くと「こいつら英語読めんのか?」とバカにされながら、アパートの一室を教えてもらった。(笑)

部屋を捜索すると、血まみれの遺体と膨大な映像テープを発見した。テープにはネズミを使った生体実験で、遺体からウイルスが発見された。ク・イノ刑事は直ちにソウル空港の出国航空機を調べた。ハワイ行きK501機はすでに出発していて、搭乗者名簿に妻の名があった

直ちに政府に緊急対策本部が設置された本部長は国土交通大臣のスッキ。大統領府危機管理官のパク・テス(パク・ヘジュン)に促され「K501機でウイルステロが発生した!」と声明を出し、米国との交渉を始めた。

大臣の声明映像をK501機の乗客がウマホで見て、我先に席を移動しだす者が現れ、発疹者の隔離が始まり、機内は一気に混乱状況となった。

ヒョンスが乗客キャビンにやってジェヒョクの助けを借り、ジンソクを逮捕した。ここで明らかになったのはヒョンスとジェヒョクはかって副操縦士と機長の関係にあったが、航空機事故でジェヒョクは退職していた。

ヒョンスが犯人ジンソクを尋問すると「全員が死ねばいい、自分は死ぬと決めてやった」と自供。この状況がスマホで対策本部に伝えられた。対策本部は本件がラスベガス銃乱射事件の類で、変質者による大量殺人事件と認識した。

機長がウイルス感染で倒れ操縦不能となり、機体が地上に向け回転しながら急降下を始めたヒョンスとジェヒョクで機体を立て直した。機内の混乱状態がスマホで機外に流れ、ネットで大騒動になる。

機長そして犯人ジンクス、パーサーのテウンが亡くなった。

K501機がハワイに到着したが、米国は着陸を拒否した。ヒョンスは対策本部と調整してソウル空港に引き返すことになった。この際、ヒョンスはジンソクとの格闘で負傷しており、ジェヒョクが機長に就く許可を取った。

このままで引き返すことに機内は混乱し始めた。感染者を後部座席に集まるようヒョンスが指示を出すが、自分は感染していないと拒否するものが現れ混乱となった。

そんな状況の中で燃料不足のためヒョンスは成田空港管制官に非常宣言を伝え、着陸姿勢に入ったが、進路を航空自衛隊戦闘機に妨害され、威嚇射撃を受ける事態となった。

対策本部は日本政府からの「ウイルスが変位している可能性がある」という非常宣言拒否の理由を了解した。

対策本部では「先ずは機をソウルに着陸させ、状況を確認して、次の方策を考

える」ことにした。

ク・イノ刑事に「自分がジンソクに渡した」というタレコミ情報がもたらされた。ク・イノ刑事がこの男を訪ねるとオートバイで逃げ出す。カーチェイスの末に男を捕まえ、タレコミ理由とジンソクの母親はウイルス研究者で入院中であることを聞き取った。

ク・イノ刑事は母親を病院に訪ね、ジンソクがウイルステロに奔った理由、抗ウイルス剤が開発されていることを知った。

「乗客を救って欲しい」とこの情報をスッキ大臣に渡した。大臣は製薬会社社長に早期に抗ウイルス剤を適用できるよう要請し、社長は了解をした。

K501の乗客は着陸拒否デモ・SNSを見て「着陸は止めたほうがいい、国民に迷惑を掛ける」と言い出し、家族にこのことを伝え始めた。

ジェヒョクは全員の意見として、着陸拒否を対策本部に伝えた。皆がこれを聞いて泣いた。そこにク・イノ刑事の容態が回復に向かっていることが知らされた。

対策本部が着陸を許可、ジェヒョクは自分に自信があるとソンム空港に決死の着陸を決行した。

まとめ

“非常宣言”といっても政府や国民の都合で拒否され、実行できないことがある。これをどう考えるかが本作のテーマでした。

着陸に反対する市民デモを見て、乗客は「迷惑を掛ける!着陸は止めたい」とジェヒョクに意思表示した。これをジェヒョクが「私たちは弱くて臆病な人間だけど、みなさんのために、人間としての誇りを持って、離陸しません!」と決別の言葉を本部に送りました、“こうならないよう備えること”がテーマへの答えだと思いました。

そして家族や恋人に送る愛の言葉、ただのパニックスリラーで終らない韓国らしい作品になったと思います。

ウイルスによる機内の混乱、エキストラを含めて生々しく演じられ、K501機の落下シーンの室内の混乱状況に「どうやって撮ったか?」と驚き、2度にわたる危険な着陸シーン、リアルでまるで機に乗っている気分にしてくれ、すばらしかった。

すべての行動に絵コンテを準備して、恐怖シナリオを分析したという。この粘っこい分析力が、コロナ禍より早く企画されながら、リアル感のある恐怖映像になったと思います。冒頭の、朝からコムタンを食べる民族でなければ作れない作品でした。(笑)

最後に、スマホ、ネットが及ぼす影響がうまく表現されていました。機内では知ることない情報がスマホ、ネットから入ってきて乗客は恐怖のどん底に放り込まれる。逆に、機内の状況が地上に伝わり対策が容易になる。これも将来の課題でしょう。

ソン・ガンホさん、自己犠牲で多くの人を救いましたが、ラストの姿、笑いました。固い演技から柔らかい演技まで、自由自在で楽しませてくれました!韓国映画は凄い、面白い!

               ****

「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(2017)思いやりとはほど遠い行動に、自分を見る思いで身につまらされた。

 

リューベン・オストルンド監督最新作「逆転のトライアングル」が3月に公開されるということで、前作をDVD鑑賞です。

現代美術館のキュレーターが発表した展示作品「ザ・スクエア」が、世間に思わぬ反響を生み、とんでもない大騒動へと発展していく皮肉な運命の悲喜劇。

監督・脚本:リューベン・オストルンドスウェーデン)、撮影:フレデリック・ウェンツェル、美術:ヨセフィン・オースバリ、衣装:ソフィー・クルネゴート、編集:リューベン・オストルンド ヤコプ・セカー・シュールシンガー。

出演者:主演はクレス・バング、共演にエリザベス・モス、ドミニク・ウエスト、テリー・ノタリー、クストファー・レス。

第70回カンヌ映画祭パルムドール受賞作品ということで、現代美術などあまり縁のない自分にはかなりハードルが高かったです。(笑)


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あらすじ&感想

冒頭、現代美術館のキュレーター・クリスティアン(クレス・バング)が、「ザ・スクエア」という地面に正方形を書いた作品を展示するにあたって、インタビューを受けるシーンから始まる。インタビュアーは記者のアン(エリザベス・モス)。何を論じているのか、インタビューが高尚すぎてよくわからなかった。(笑)、

コンセプトは「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、現代社会に蔓延するエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがあるというもの。この高邁な正義を掲げる彼が、現実の生活のなかでいかなる行動をとるかが問われる。

朝の出勤時、道路沿いにたくさんの“物乞い”が並び街頭では「救いの手を」とチラシを配るが誰も見向きもしない。自分には関係ない、誰かがやると思っている。

クリスティアンは、女性の「助けて!」に彼女を助けようとしてスマホ、サイフ、カフスボタンが盗まれた。盗まれた物を取り戻すため、スマホGPSから犯人は移民者専用アパートに住んでいると “全戸”に脅迫めいたビラを配って犯人をあぶり出すことにした。盗人は移民という偏見・差別。どこに思いやりがある!

ところが、盗まれたものはすべて手元に戻った。お金には一切手が付けられていなかった。クリスティアンはこの金でクラブ「王宮」で遊び、酔っぱらった勢いで「あんたとは寝ない」と言いながら、アンの部屋に押しかけ関係を結んだ。こんなことに使う金なら、移民者のために寄付しなさい!

 濡れ場は北欧らしくたっぷり見せてくる。アンが激しく絡む。翌日、アンが彼の本心を確認にくると、思わせぶりな恰好つけた返事をする。遂に切れたアンから「あなたは自分の地位を使って女を征服する男よ」と辱められた。「高邁な男がこまい男」になっている。(笑)「公務員の傲慢さ」「酒のせいにするな!」

ある少年が「脅迫めいたビラで自分が盗みをしたと叱られた」と、謝罪を要求してきた。部下に任せて対応していたが、自宅にまで押しかけられ、耐えられず突き飛ばしてしまった。しかし、少年の「助けて!」の声に苛まれ、紛失した少年の住所メモを、ごみ集積場のなかまで探すが、見つからず、そのままにしておいた。

クリスティアンバツイチ、二人の娘がいる。喧嘩する娘たちを仲直りさせることはできない。そこでふたりを美術館に連れてきて「携帯をスクエアのなかに置いておけ!帰るまで預かる」と罰を与え、作品のもつ「信頼心」を鑑賞体験させた。

現代美術愛好家を招いてディナー会を開催。美術館の展示写真モデルのモンキーマン(テリー・ノタリー)に猿のモノマネを余興で演じさせると、招待客は当初は笑ってみているが、彼の行動が過激化してくると自分のところには来ないでと鎮座し、女性の髪を掴み乱暴を振舞っても、誰か助けるだろうと見ている。

しかし、女性がレイプされかけた時、初めて人々は事態の重大さに気づき行動する。誰かが勇敢に飛び込むと、多くの男たちが援護に加わり、暴力で復讐する。集団のなかにおける個人の行動原理は「見て見ぬふり」「皆でやれば怖くない」だ

しかし、この企画が理解できない。モンキーマンをモデルに写真展示したコンセプトは何か。モンキーマンに猿を演じさせることが、彼にとっては、悪意にとられるとわからなかった。

ザ・スクエア」の広報についてスタッフで論議が交わされるが、なかなかよい案が見つからない。そこでやり手のPR会社に任せることにした。彼らは、youtubeで動画を見せるのが効果的と、スクエアの中で物乞いをする移民少女が爆薬で吹っ飛ばされる映像を流した。動画はあっと言う間に炎上いた。スクエアのコンセプトとは真逆だと大問題になり、記者会見の場で糾弾され、クリスティアンは「担当者に任せていた」と釈明するが、辞職へと追い込まれた。他人任せの「責任逃れ」だった。

クリスティアンは、キュレーターの地位を失った。娘が仲間に支えられる姿を見て、「謝りたい」と少年の移民者専用アパートを訪ねたが、すでに移転していた。クリスティアンは少年のことを悔い、ここから”思いやり”の第1歩が始まった。スクエアなんぞ作る必要はない!先ずは自らの身を糺すことから始めねばならない。(笑)

感想

移民問題で苦しむスウエーデン社会の問題をあぶり出す形で、現代社会に生きる人々が抱える格差や差別に対する正義とそれで生きていくことの難しさ、理想(建前)と現実(本音)の落差が皮肉たっぷりに描かれ笑えます。

主人公の理想とはほど遠い大矛盾行動に、そこに立っている自分を見ることになり、結構、身につまらされる話でした。

 高邁なことを言う人にはこういう輩が多い!というのが私の体験です(笑)

しかし、これが映画になるとは思わなかった。それもパルムドール受賞作品とは。“現代美術となど理解できない私の観かたが間違っている。(笑)

 福祉国家だと聞かされていたスウエーデンに、そこら中に「物乞い人」が溢れていることに驚きです。

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「前科者」(2022)犯罪者の更生に尽力する保護司の物語、力作だった!

 

“前科者“というタイトルに魅かれて、情報を持たずに、WOWOW「W座からの招待状」で鑑賞。

「第47回報知映画賞」の主演女優賞作品だと知ってびっくり。(笑)しかしこれに相当する社会派ドラマでした。

原作:香川まさひと/作画・月島冬二の同名マンガ。WOWOW連続ドラマ版「前科者 新米保護司・阿川佳代」にないオリジナルストーリーとのこと。

監督・脚本・編集:「二重生活」「あゝ荒野」の岸善幸、撮影:夏海光造、音楽:岩代太郎

出演者:有村架純磯村勇斗森田剛若葉竜也マキタスポーツ石橋静河、他。

物語は

保護司を始めて3年となる阿川佳代(有村架純は、この仕事にやりがいを感じ、さまざまな前科者のために奔走する日々を送っていた。彼女が担当する物静かな前科者の工藤誠(森田剛は順調な更生生活を送り、佳代も誠が社会人として自立する日を楽しみにしていた。そんな誠が忽然と姿を消し、ふたたび警察に追われる身となってしまう。一方その頃、連続殺人事件が発生する。捜査が進むにつれ佳代の過去や、彼女が保護司という仕事を選んだ理由が次第に明らかになっていくというもの。(映画COMより)

佳代が保護司として、連続殺人事件に絡む誠に、保護司として何をすべきかと苦悩し、成長していく物語です。

地味な社会派ドラマですが、これを盛り上げるためにミステリー仕立てになっています。これがすばらしい!岸善幸監督の力作となりましたね!さらに、森田剛さんが6年振りの映画出演というのも見どころでした。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意):

冒頭、中学生の佳代と滝本真司は恋仲であったが、佳代が暴漢に襲われ、通りがかった真司の父親が救おうとして命を落とすシーンから物語が始まります。

その後、佳代は保護司となり、真司は刑事となった。こうして前科者に対して刑事と保護司の目線で連続殺人事件を追うところが面白いところです。

佳代はコンビニの仕事があけた時間をボランティアとして保護司の仕事を行なっている。保護司は無償の国家公務員の仕事だというから驚きです。本作が訴えたいところです。

現在、佳代は3人の仮釈放者の保護司となっています。三人の住まいや職場を訪ね、勤務状況や生活態度を掌握し、無事釈放できるよう支援していますが、どう保護すべきかいまだ掴めないという状況です。

その中にひとり、職場の先輩を刺殺した前科者・誠の職場を訪ね、社長さんから聞く「仮釈放明けには正社員に迎えたい」の言葉に安堵します。

半年前、誠は刑務所を出所してすぐに牛丼を食べ、その足で佳代のアパートを訪ね、ここで佳代と一緒にまた牛丼食べるという男でした。 (笑) まじめで優しい、気遣いが出来る男でした。

月2回佳代のアパートで会いチェックを受けるのですが、あと1回のチェックで佳代の仕事は終わりという段階に漕ぎ着けていました。佳代は誠が好きだというラーメン屋で会うことを約束した。このとき「あなたは何故保護司になった?」と誠に聞かれ、返事は保留することにしました。

このころ、交番の巡査が刺され拳銃を奪われるという事件が起こった。次いで市福祉課の女性職員が拳銃で射殺される事件が発生。佳代は新聞でこのことを知った。

鈴木刑事(マキタスポーツ)と滝本刑事がふたつの事件を追っていた。

誠が、昔母と弟と一緒に訪れたラーメン屋で食べていると、黒いフードを着けた男が入ってきた。弟の実(若葉竜也)だった。誠は実を自分のアパートに連れてきて事情を聴いた。誠が仕事仲間の殺人事件で拘留されている間、実は保護施設で虐めに合い大量の薬を飲まされ、今尚薬で苦しむ実の姿を見た。そして第3の事件が起きた。

誠が訪ねてくる最後の日。佳代はアパートで待っていた。しかし現れない。電話するがかからない。寮の誠の部屋を訪ねるときれいに整理されていた。佳代はとりあえず東京保護観察所の高松課長(北村有起哉)に報告し、連絡を待つことにした。

刑事たちは第3の事件を追っていて容疑者として工藤誠が浮かんでいた

 滝本刑事が佳代の働くコンビニにやってきた。滝本の父親が亡くなって以来の再会だった。滝本から「DNAが一致している」として誠の居場所を聞かれたが分からないと応えた。佳代は誠について何も知らないことに泣いた。夜、滝本がアパートに訪ねてきたが、好きだったあのころには戻れないことを知った。

佳代は誠ことをもっと知ろうと調べることにした誠と一緒に働いていたパン工場で働く岡崎を訪ね、誠が事件を起こしたときの話を聞いた。無表情で刺して血を見て半狂乱となり「母さんごめん!守れなくて!」と泣いていたという。

誠が「ごめん、やっぱり戻れない!」と電話してきた。「ラーメン屋で待っている、来て!」とラーメン屋に急いだ。

ラーメン屋で待っていたが誠は現れなかった。佳代は刑事に尾行されていた。佳代は「警察に協力する。更生のために何が必要なのか分からない、だから知りたい」と申し出て、滝本から事件の概要を教えてもらった。

3つの殺人事件、義父の暴力相談に母と駆け込んだ交番警察官の殺害と拳銃強奪、義父の暴力から逃れるため転居の相談に訪れた厚生課の女性職員殺害、保護施設の職員殺害に嫌疑が掛けられていた。

佳代は義父・遠山(リリーフランキー)の妻殺人事件をPCで検索し、遠山の担当弁護士が宮口(木村多江)であることを知った。宮口弁護士を訪ね「誠の更生のために必要だ」と遠山の現住所を聞いた。宮口弁護士は「午後6過ぎに訪ねてみて!」と教えてくれた。「なぜあなたが死刑囚の弁護を引き受けるのか」と聞くと「リハビリと治療で治る可能性があるから。更生という点で線引きがあってはならない、あなたも同じ」と答えてくれた。

佳代が遠山を訪ねた。とても融和な人だった。警察が遠山を標的に誠が来ると張り込んでいた。ここで第4の事件が起きた。遠山を殺害しようとやってきた誠と実。実は遠山と対峙したが拳銃で撃てず自殺した。誠は実を救おうと車を警察隊の中に突っ込み、逮捕された。

誠は病院に収容された。警察はその後の調査で連続傷害事件は全て実の犯行だと判定した。

宮口弁護士が、病院で誠に接見することになっていた。コンビニで働いている佳代に滝本から「いつ会う?」と電話があった。佳代は「6時!」と答えて病院に走った。滝本は実の遺品を整理して彼の復讐計画を見つけた。実の復讐目標は宮口弁護士だった。

刑事、弁護士より先に到着した佳代は誠の病室に飛び込み、刃物を持った誠の頬っぺたを張って、「これ以上加害者を産んではいけない!戻ってきて!このままでは人間に戻れない!」と抱いた。そして自分が保護司になったわけを話した。 

まとめ

誠は自分が犯した罪であまりにも惨い状態にある弟・実を見て“復讐をやめろ”とは言えなかった。そこまで彼の心は更生されていなかった。どこまで更生されているかなど誰にも分からない。

このような心理状態の誠の保護司として、佳代が出来ることは“抱き抱え”、「法律では解決しない。今度戻ってきたら私を訪ねてください。お手伝いします。“辛いときはそのことを伝えてください”」寄り添うことでした。

佳代は中学生のころ受けた事件がトラウマとなり苦しんでいたが、ある時、前科者に「諦めるな!」と叱りつけている保護司を見て、自分を襲った人にも寄り添う人がいたらあの事件は起こらなかったと保護司になった。これが自分に課せられた役割だと思っているというものだった。

か弱そうな保護司・佳代が意思のある強い保護司へと変貌していく有村さんの演技はこれまでにないものでした。

佳代の採った行動・覚悟は適切で、保護司職に対する見方、処遇について考えさせられました。

前科者をどうとらえるか。誠は物静かで普通の人ですが、こころの底にはとんでもない痛みを抱えていた。誠を演じた森田さんが繊細な演技で応えてくれました。

ドラマとして刑事の追走劇が、佳代と真司の恋の行方を絡ませながら、ラストまで続き、観る人に緊張感を与え、エンターマント作品としてすばらしいものになっていました。罪を犯した人にも救いの手が差し伸べられる社会になって欲しいと願わざるを得ない作品でした

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