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宮﨑あおいさんを応援します

「舟を編む」(2013)仕事を持つことの喜び。辞書を読む楽しみ!

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2013年数々の賞を得た作品で、主演松田龍平さんが言うように「みれば見るほどに味が出る映画」です。辞書とはこんなに面白いものなのか!地味な仕事ですが、仕事をもつことの喜びを教えてくれます。ユーモア一杯の作品です。

原作が“三浦しをん”さんの同名小説。監督は石井裕也さん。第37回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞ほか6冠という作品。主演は松田龍平さん、共演に宮崎あおいオダギリジョー黒木華渡辺美佐子・桶脇千鶴・八千草薫小林薫加藤剛さんらとても豪華です。

あらすじ:
玄武書房の営業部に勤める馬締光也(松田龍平)は、独特の視点で言葉を捉える能力を買われ、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に迎えられる。個性的な編集部の面々に囲まれ、辞書づくりに没頭する馬締は、ある日、林香具矢(宮﨑あおい)という女性に出会い、心ひかれる。言葉を扱う仕事をしながらも、香具矢に気持ちを伝える言葉が見つからない馬締だったが……。

****(ねたばれ含む)
辞書の作成では、まず言葉集め。100万語にも及ぶ言葉を集め、その25万語ほどで辞書を作ると言い、20~30年にも及ぶという。大変な根気のいる仕事です。馬締は「左とは東に向かったときの北」と答えたことで言葉に対する感性が認められ、辞書部にスカウトされた。
今を生きる辞書、人とつながる辞書、誰かと繋がりたくて広大な言葉の海を渡る人たちに役立つ辞書「大渡海」の作製意図と聞き、馬締は“まじめ”だが人付き合いが苦手で不安になる。

大家であるタケおばあさん(渡辺美佐子)の夕食に誘われ、「人の気持ちが分らない」というと相談すると、
「あたりまえだよ、だから言葉があるんだよ、あんた真面目だから、若いうちに、一生の仕事を見つけて、それだけで、幸せなんだから、あとはずっと行くだけだよ」とタケさんがいう。

まさにこの会話どうりのストーリー展開でした。

ここで描かれている辞書編纂作業、
数十万にもおよぶ生活のなかで使っている言葉を採集し、これに説明を加える作業。こんな仕事があることを知りました

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そこには、編纂者の個性が出てとても人間臭い作業で、言葉にまつわる人生ドラマがあるのだと、“辞書を読む”楽しみを発見しました。

香具矢に恋した馬締めの恋の語釈は「ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。成就すれば、天にものぼる気持ちになる」という具合。

十数年にわたる辞書つくりの人生、
向上心を持って続けることで、辞書作りに引き込まれて、仕事が面白くなっていく人生。
迷ったり、病気したり、妻を失った人も仕事に救われると言う、仕事を持つことの喜びを感じます。

生涯でその成果を見ることが出来ない場合もあるが、夢を次の人につなぐという壮大な仕事。

香具矢役の宮﨑あおいさん、
和食料理人で辞書編纂に係わりがないため出番は多くはないですが、馬締との出会いから結婚までのエピソードが描かれます。

お互いに惹かれあっても、戦国武将が書くような文体の馬締のラブレターの意味が分からず、香具矢の「言葉で聞きたい」に馬締の「好きです」という言葉で結ばれる。

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辞書完成直前のミス発見で、膨大な見直し作業のために没頭する馬締を助け、人間関係の下手な馬締のために、料理人という自分の仕事をこなしながら、恩師の病気見舞いや編纂部の方へのおもてなしなどで懸命に馬締を支えます。辞書つくりというのは本人だけでない、家族をも巻き込む大仕事です。

ここでの、無口でさりげない影のような宮﨑あおいさんの演技が光っています。

辞書を作り上げて、馬締が妻に贈る“これからもよろしくお願いします”の言葉には、妻への大きな感謝、愛が感じられとともに、作り上げた辞書の改善、次の辞書つくりへの意欲が伺えます。辞書つくりは終わることのない仕事です!
夫婦の成長という視点から見てもおもしろい作品でした。
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映画『舟を編む』予告編