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「愛しのアイリーン」(2018)

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吉田恵輔監督作品、当地では上映されず、WOWOWでやっと観ることができました。
国際結婚という社会問題を取り上げ、夫婦、親子、家族の絆、さらに愛とは何かと、強烈な暴力と性描写で、あるべき姿を問う作品でした。暗い話のようでユーモアたっぷりに描かれ、これまでの監督作品のなかで、最高傑作だと思います。

原作は新井英樹さんの同名コミック。新井さん作品では、間もなく「宮本から君へ」の公開が控えています。
監督・脚本は吉田恵輔さん。主演は安田顕さん、共演はフィリピン人女優のナッツ・シトイ・木野花伊勢谷友介さんらが出演。

あらすじ:
42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男(安田顕)が、寒村では縁に恵まれず、父親・源蔵(品川徹)の惚けも激しくなり、それではと2週間フィリピンに出向き、嫁アイリーン(ナッツ・シトイ)を調達して連れ帰ると父親の葬式の真っ最中だった。
母親ツル(木野花)は、近隣の人はアイリーンを受け入れられるのか、本当にアイリーンは岩男を愛せるか、さらにアイリーンを食い物にしようとするヤクザ(伊勢谷友介)の動き・・・。日本の社会はアイリーンを受け入れることができるのか?

****(ねたばれ)
岩男は、4人目の子として産まれた。上の3人子が死産、死後まもなく亡くなったことで、母ツルは岩男を溺愛して育てた。これも岩男の婚期が遅れた理由です。
パチンコ店の従業員として勤務。そこで働く愛子(河井青葉)に声を掛けられ、好意をもつが、受け入れられなかった。そこで、フィリピン女性との結婚ツアーに参加して、アイリーンと出会う。見合いのあと、彼女の家族(母子家庭)に会い、家族が如何にアイリーンを可愛がり、彼女が得るであろうお金の仕送りを期待していることを知る。
アイリーンは、無垢な子、家族のために結婚と思っていて、結婚して将来どうなるかなど考えたこともいない。初夜も、岩男を寄せ付けない。(笑)

こんなアイリーンを連れ戻った岩男。アイリーンは「はなよめ」と挨拶する程度で、日本語も話せず、日本の作法にも馴染めておらず、ツルは猟銃を持ち出して、帰れと脅すありさま。(笑) 

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岩男はアイリーンとしばらくホテル生活。アイリーンは友達マリーン(ディオンヌ・モンサント)がいるバーに出入りするようになる。
彼女から辞書を借りで、尊敬します、だいすき、すばらしい・・と美しい日本語を勉強しはじめる。とても前向きな可愛い子です。

日本の夏祭り、洗濯のやりかた、と日本の文化や習慣に少しづつ馴染んでいく。この姿を目にして、岩男はアイリーンに愛情を抱くようになっていく。お金はわずかでも与えるようにしていた。

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しかし、ツルは受け入れることはできない。仲人(左時枝)がもってきた真嶋琴美(桜まゆみ)との縁談話に乗る。
琴美は、結婚したら義母を大切にすると言い、掃除洗濯のよくでき日本のお嫁さんイメージに合致する子。
ここで、琴美とアイリーンのどちらが良いか?と観る人に問うところがいい。アイリーンがよいと思いましたね。

アイリーンがバーに出入りするなかで、ヤクザの塩崎(伊勢谷友介)に出会いホステスになることを勧められる。
塩崎は「ただ働きをさせられているだけで、結婚では金が取れない、安い性奴隷になるな!日本の社会はそういう社会なんだ」と説く。アイリーンは「お金と結婚は別もの。幸せな結婚をする」と、きれいな言葉で返すところがいい。

塩崎はツルに、岩男は300万円を使ってあの女を買った。これからも金がかかり、国際結婚は大変なんだと吹き込み、一緒にあの女を追い出そうと提案する。

ツルは銃でアイリーンを脅し、塩崎が車にアイリーンを乗せて逃走。

これを知った岩男はふたりの車を負い、通行止めで停車した塩崎の車に追いつき、ふたりは激しくもみ合い、岩男が猟銃で潮騒を射殺した。
岩男とアイリーンで塩崎を埋葬し、岩男が、「逃げて幸せになれ」と財布とキャッシュカードを与えてたが、アイリーンは「私が岩男を守る」と動かなかった。

岩男とアイリーンが激しく交わるシーンが続くが、真に結婚したふたりの関係を浮き彫りにするいいシーンだった。これを覘き見たツルは激しく嫉妬する

ヤクザが岩男を疑い、車に自宅に、「人殺し」の落書きをされるようになる。ときを同じして、岩男はアイリーンを避け、愛子と交わるようになりる。酔っぱらって帰って、金をばらまいても、アイリーンは受け取らなくなっていた。

岩男がマリーンと交わり、帰りに、木の幹に「アイリーン」の文字を掘り、青酸カリを飲んで自殺した(遺体の黒さ)。
岩男はアイリーンの将来を考え、金を与え、交わることを避け、フィリピンに返そうとしての覚悟の死だった。
アイリーンとツルは必至で、岩男を探した。アイリーンが見つけ、ツルに問い詰められ死を明かすと、ツルは生きる気力を無くして寝込んだ。

ツルは死を選び、アイリーンに背負われて、雪山に入り篭ろうとする。アイリーンは「お義母さん生きて」と泣き叫ぶが、ツルは聞き入れない。
アイリーンが、お腹に子がいるとつぶやくと、ツルは家に戻ると言い、自分が苦しみながら、皆にガンバレガンバレと励まされて岩男を産んだことを思い出し、家族になってアイリーンの背中で亡くなった。
                
ここでの言葉を発することができない狂った木野花さんと泣きながら生きることを勧めるナッツ・シトイの演技は、ことばにならないぐらいにすばらしかった。なにか賞をあげたいですね!!
最後になりましたが、安田顕が無気力から、アイリーンと出会い生気を取り戻し、最後に狂ってしまう、これもすばらしい演技でした。

献身こそが真の愛。愛に国境という境界はない。すばらしい作品でした。
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『愛しのアイリーン』予告