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「地獄の黙示録」(1980)

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「アド・アストラ」(2019)の作品について、監督・製作・脚本を務めたジェームス・グレイは、「地獄の黙示録」から着想が得たと語っています。さほどに、映画史に残る名作ですがすでに記憶が遠のいている。というわけでNHK・BS録画(2016)を引っ張り出しての観賞です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/地獄の黙示録

監督はフランシス・フォード・コッポラ、出演はマーロン・ブランドロバート・デュヴァルマーティン・シーンらです。

かってベトナムの特殊任務にあたっていたウィラード大尉(マーティン・シーン)が、再びベトナムに現れ、軍上層部から殺人鬼と化したカーツ大佐マーロン・ブランド)の暗殺を命じられ、4人の部下を連れ、異様な戦場の光景を目にしながら、哨戒艇で川をさかのぼって大佐を見出し、任務を達成するという物語。
ベトナム戦におけるウィラード大尉とカーツ大佐の戦場心理を追いながら、実はこの戦に隠された米国の闇を描き出しています。

この闇が、この国から消えたか?今日的な課題として、再びこの作品が見直されているのではないでしょうか。

戦場心理を問う作品ということで、カーツ大佐の心が鬼畜になったわけが類推できるよう、ベトナム戦の有名な逸話が映像化されており、リアルで、迫力がある。


感想(あらすじ):
〇空中騎兵中隊の戦闘。
ウィラード大尉の援護が目的だが、サーフィンをするためにと、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」曲を鳴らし、大騒音のなかで村を襲撃する。たったひとりの少女のテロ行為に、狂って撃ちまくるヘリ編隊。

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このあと、波の高い海岸を求めて、サーフィン。
中隊長・キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)は、戦場は自分の思うがままだという。ナパームでふっとんだ光景を思い出しナパームの匂いこそが彼の心は癒すという、彼の神経は麻痺している。
部下はこの隊長の「本国に帰れるぞ」の言葉に心躍り、命ぜられれば何でもやる。戦争をゲームのように楽しんでいる。
本国に一度戻ったことのあるウィラード大尉には、本国はベトナム反戦運動で、激戦に耐えた彼らを歓迎する状態にはないことを知っている。国民から支持されない戦争を行うことで、目の前のベトナム軍だけでなく、後方からも国民によっても苦しめられる。もはや、第一線部隊の士気を保つためにこの愚行で凌いでいる。どう見てもこの戦争はおかしい!狂っている。

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むちゃくちゃだ!自由を守るという作戦目的を達成するために第一線部隊に具体的に任務が与えられているのか、兵士が狂ったのか。

〇民間船の臨検。
さらに河を遡る途中で、出会った民間船が武器を運搬してないかと臨検。ベトコンの恐怖を知る兵士による臨検は、犬が騒ぐだけで、機関銃を撃ちまくる。
兵士が撃たれ瀕死の少女を後送することになったが、ウィラード大尉が自ら射殺した。これをなじる兵士。ウィラード大尉は「さらに奥に進む任務がある!」と受け付けなかった。カーツ大佐と同じ地獄に落ちた。この戦場に人間愛など存在しなかった。

プレイメイトによる兵士慰問。
アメリカ軍の前線拠点陣地、戦闘で痛めつけられた神経を癒すための女性ダンサーたちの基地慰問。ヘリで運ばれステージに立ち、兵士に腰を振って煽る。慰安どころか、兵士は女を見て興奮状態に追い込み、その激情が暴発する直前にヘリで飛び立つ。兵士には吐き出せない鬱感情が残るだけ。こんなことで兵士の士気を保てないことが分かっていても、これをやり続ける狂った戦争指導者たち。

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ベトナム最前線陣地。
敵の照明弾が上がれば、機関銃をぶっ放す兵士たち。ウィラード大尉は指揮官を探すが見つからない。だれが指揮しているのか。自分たちの恐怖を取り除くために戦っているだけだ。映画「野火」と同じだ!

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異常な戦況に適応できず同行した4名の兵士のうち2人が、麻、恐怖で発狂し亡くなった。

ベトナム国境を越え、カーツ大佐に接触
カーツ大佐は現地人や兵士のなかで、王国を作り暮らしている。いたるところに処刑した人が吊るされているという、異様な不気味さが漂う。

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ウィラード大尉は捕らえられ、拷問にかけられ、牢で入れられる。過酷な責めに耐え抜いたウィラード大尉は、牢から放たれ、カーツ大佐からなぜ自分が王国を作ったかを聞かされる。
ベトナム人の子らにポリオのワクチン注射を打ち救ったと思ったが、この子たちの腕が切り落とされたのを見て、彼らの闘争心には勝てないと、すべてが恐怖!恐怖!恐怖!だ」と語る。
エストポイント陸軍士官学校出身者、朝鮮戦争を経て、ベトナムで功績をあげながら、38歳でレンジャー隊員資格を取得したカーツ大佐(通常20歳代!)。なにもせずとも将軍になれるであろうに、なぜ38歳でレンジャー資格を必要としたか? 異常な恐怖心があり、エリートだけにこれを隠すためにレンジャー資格をとり、特殊任務で多くの功績を挙げながら、彼の精神は侵されていったのではないか。将校が他のベテラン隊員を差し置いて、戦闘指揮するに必要な資質は何か?戦闘目的を達成する使命感だ!

カーツ大佐は、カメラマンを抱え、沢山の写真を撮らせていた。この事実を本国に伝えて欲しいとウィラード大尉に頼む。カーツ大佐は何を恐れていたのか?(無様なカーツだ)
ウィラード大尉は、与えられた任務どおりに、異常な戦場をいろいろ体験し、迷うこともあったが、カーツ大佐を暗殺した。これが将校だ!
                
町山さんの解説によれば、マーロン・ブランドがアクション演技できる状態でなかったためにこの結末になったということですが、これでよかったと思います。
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