タイトル“二度の決断”とは何か?これで観ることに決めました。(WOWOW)
母親の愛に満ちた、人種差別・移民排斥運動への強い抗議というメッセージ性のある作品でした。
監督は「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」のファティ・アキン。主演はダイアン・クルーガー、共演はヌーマン・アチャル、デニス・モシットー ヨハネス・クリシュ サミア・ムリエル・シャンクラン。
あらすじ:
ドイツ、ハンブルグに在住。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤ(ダイアン・クルーガー)は幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリ(ヌーマン・アチャル)と息子のロッコ(ラファエル・サンタナ)が犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまよい、・・・。
〇人種差別テロに復讐する理由。家族を返せ!
冒頭、夫が刑務所でから出所し、その場での結婚式で愛を誓う。夫を如何に愛し待っていたか、この出だしにはびっくりさせられます。
サウナで友人ギルビットに見せる刺青。子供が強く育つようにと日本の“侍”を彫り込んでいる。子供のオモチャは自分で修理、これがラストの伏線に使われるという子供愛に満ちた母親。いたるところで夫と子供が遊ぶ映像を思い出すシーン。いかに妻として母親としての愛が強かったか。画面から強烈に伝わってきます。復讐する理屈はこれで十分でした!
結婚という喜びから人生のドン底、復讐へと変化するダイアン・クルーガーの喜び、悲しみ、絶望、憎しみの表情がすばらしい!!
〇生きて復讐するが第1の決断。
夫と息子の死による孤独に耐えられず風呂で自殺を図るが、そこにかかってきた“犯人は人種差別極右テロリスト”の電話で、血液で染まった風呂水から生還する演出が衝撃的だった。
カティヤの証言で、警察が逮捕したのはネオナチのアンドレ(ウルリッヒ・ブラントホフ)とエッダ(ハンナ・ヒルスドルフ)の若いメラー夫妻。
裁判では、強面のメラー夫妻の弁護士(ヨハネス・クリシュ)と華奢なカティヤのダニーロ弁護士(デニス・モシット)という弁護士対決の構図から、いかにもカティヤ側が弱そう。(笑) そして検事のやる気のなさが目に付く。人種差別に対する国の感心のなさを訴えているようだ。
被告側の親の証言は有利なものであったが、爆弾製造した部屋の鍵の保管が曖昧だったこと、さらにメラー夫妻以外の指紋が遺されていて犯人を確定できない。さらに、当日ふたりが逗留していたというギリシャのホテル経営者ニコラス・マルキスの証言で窮地に立たされる。
カティヤは自分が現場で見た事実を証言するが、彼女が薬を使用していたことから、証言の信ぴょう性に欠けると取り上げられない。判決は証拠不十分で無罪となった。メラー夫妻が犯人であることに間違いなにのだが、これを受け入れてもらえないことにカティヤは怒り心頭。
カティヤは彫り物に赤色を付けて完成させて復讐を誓い、ギリシャのマルキスのホテルを訪ねる。
そこで、カティヤはメラー夫妻がキャンピングカーで海辺に滞在していることを確認し、法廷審議のなかで知った作り方で、時限爆弾をつくり殺害することにする。
早朝、メラー夫妻が楽しそうに出かけたのを確認して時限爆弾を仕掛け、夫妻の戻りを待って爆破しようとするがなかなか戻って来ない。待つうちに、「テロ行で復讐することが正義なのか。テロにテロで復讐すれば、自分がテロに追われる」と頭によぎり、爆破を中止した。
〇死して復讐するが第2の決断。
このとき、彼女にこれまで止まっていた生理が始める。赤い血に、幸せだったころの記憶が戻った。復讐は止められない!
ダニーロ弁護士から、終身刑を喰らわすために上告しようと持ち掛けられるが、彼女は感謝して、自らの死を持って復讐することで、復讐の連鎖を断ち切ると決断した。
メラー夫妻が外出から戻り、レジャーカーの中に消えたのを確認し、自らら車に乗り込み、時限爆弾を爆発させた。
彼女には差別のない海にいる夫と息子に会いに行ったのでしょう。静かなエンデイングでしたが、強烈な印象に残る作品でした。
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