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「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)

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第84回アカデミー賞(2012)で編集賞を受賞した作品ということでWOWOWで観賞。
40年前の少女失踪事件の調査を依頼された社会派ジャーナリストの主人公が、社会のほとんど全てに敵意を向ける孤独な天才ハッカーのパンク少女と奇妙な協力関係を築き、次第に明らかとなる巨大財閥一族の忌まわしき秘密に迫るさまをハードなバイオレンス描写を織り交ぜスリリングに描くというもの。

スリリングなカット編集で犯人像が浮かび上がってくる編集が見事ですが、作品の背景であるレイプ犯罪への激しい怒りに作品の大きな意義が見てとれます。

原作はスティーグ・ラーソンの世界的ベストセラー小説「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」。未読です。
監督:デヴィッド・フィンチャー、脚本:スティーブン・ザイリアンで、ふたりが関われば名作になります!

主演はダニエル・クレイグルーニー・マーラ。共演にクリストファー・プラマースティーヴン・バーコフステラン・スカルスガルドロビン・ライトらです。
 
あらすじ:
スウェーデンの社会派雑誌「ミレニアム」を発行するジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)は、大物実業家ヴェンネルストレム(ウルフ・フリベリ)の不正告発記事が原因の名誉毀損裁判で敗訴し窮地に陥っていた。そんな時、国内有数の企業グループ・ヴァンゲル社の元会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)からある依頼が舞い込む。それは、40年前に彼が我が子のようにかわいがっていた一族の少女ハリエットが忽然と姿を消した迷宮入り事件の再調査というもの。

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やがて、調査が暗礁に乗り上げたミカエルは、ヘンリックの弁護士ディルク・フルーデ(スティーヴン・バーコフ)から社会性はないものの驚異的な情報収集能力を持つ小柄な女リサーチャー、リスベット(ルーニー・マーラ)を紹介される。実は、ミカエルがこの一件を任されるにあたり、信用に足る人物か、その身元調査を担当していたのが彼女だった。こうして、2人は手分けをしながら事件の真相を追っていくこととなるが…。<allcinema>

****(ねたばれ)
〇謎めいたオープニング・タイトル
先ずは冒頭のオープニング・タイトル。ここでは分からないですがラストまで見ると、刺青のインクと犯される女たちを組み合させて作られたテーマを暗示する秀逸なタイトルであることに気付かされます。
刺青はリスベットの背中にドラゴンとして彫り込まれ、レイプされる度に補強される。さらにレイプした男への復讐として「レイプ魔の豚野郎」と相手に刻み込むというレイプへの激しい抗議のシンボルです。

〇とてもミステリアスでスリリングなストーリー展開
映像が暗い。これがスウエーデンの冬の冷たい風景に合って、不穏感を増長する。そこに不穏な音をかぶせてくる。

物語は前半、ミカエルが捜索依頼を受けて、一族が暮らす島に住み込み、渡されたわずかな資料を頼りに、親族や事件調査にあたった刑事からいくつかの疑念を引っ張りだす。ここで出てきたのが、ハリエットが遺した謎の電話番号と彼女が吹き込んだという旧約聖書の一文。さらにハリエットが行方不明になった日のお祭り見物写真。

謎の電話番号と旧約聖書の一文はどう繋がるのか。お祭り見物写真のなかで、ハリエットの目線だけが他の人と違うところを見ている、その目線の先に何があるのか?この2つが、何を介して、どう繋がるのかという謎解き!
写真映像と意味不明の旧約聖書で描かれる犯人推定描写は、言葉を必要とせず、不気味だ。これぞミステリードラマという感じ!

一方、ミカエルの捜査パートナーとなるリスペット。黒いオートバイスーツで軽快に走り回るハッキングのプロにどんな過去があったのか。謎に満ちた姿があぶり出されます。

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12才で犯された父親を80%焼き殺したという彼女は少年院から後見人の手で暮らし、あやしげな調査会社に属するリサーチャー。必要なことしか喋らない。リスペットがこれまでの後見人が病に倒れ、新しい後見人となった弁護士ビュルマンがリスペクトに加える壮烈なレイプとこれに対するリスペットの復讐が描かれ、かなりハードなセックスシーンがあります。

彼女のレイプへの復讐は、この男に留まらず、ミカエルの追う事件協力の動機になってくる。

この作品の面白さは謎めいたリスペットのキャラクターです。これをルーニー・マーラが、ほっそり痩せた肢体で、見事に演じてくれます。度胸のある女優さんだ!

〇巧みな編集による臨場感
後段はミカエルとリスベットが手を組み、この巨大な謎にどう挑むか!

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ミカエルはリスペットに謎の電話番号と名前の関係、失踪事件とヴァンゲル家の動きを警察、ヴァンゲル社の資料室で調べるよう指示し、自らはヴァンゲル家身内と事件のあった日のお祭りに居合わせた人たちを訪問してハリエットの目線の先に何があったかを追う。

ミカエルの訪問調査とリスペットの資料検索が交互に描かれ、調査がしだいに犯人に近づいてくる描写がとても怖い!

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電話番号が連続少女殺人事件に繋がり、そしてハリエットの父がそれに関連してくる。そして、ハリエットの目線の先にヴァンゲルス社の現経営者・マルティンステラン・スカルスガルド)が浮かび上がって来る展開に震えます!

〇バイオレントな描写
ミカエルが目をつけたマルティンの邸宅に侵入し、彼に掴まっての拷問。これは目を覆いたくなります!

〇エンターテイメントとしてのラストの描き方。
お祭りでハリエットが見ていたのは現ヴァンゲルス社の社長で実兄でもあるマルティン。ハリエットの失踪はマルティンのレイプから逃げるためだった。現在、従姉の名前でパリで生活している。

ミカエルは、ヘンリクから報酬の一部として、再告訴に必要なヴァンネルストレムの資料を受取が、これが古すぎて使えない。

これを知ったリスペットが、自慢のハッカー能力で、ヴァンネルストレムがロシアマフィアと取引した資金を探し出し、そっくりいただき、ミカエルのミレニアム誌復活資金にしてやる。
リスペットが金髪美女に化けてスイスの銀行で資金洗浄をするというハードボイルドな活躍が恰好いい。しかし、ミカエルは社主のエリカ・ベルジェ(ロビン・ライト)とアバンチュール。

身内のレイプという忌まわしい事件を扱うというなんともやり切れない物語。捜査の進め方は繊細でミステリアス、ホラーっぽい展開。最後がスカッとする結末で、すばらしいエンターテイメント作品に仕上がっていました。
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2/10(金)公開『ドラゴン・タトゥーの女』予告編