映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「フロントランナー」(2018)大統領としての資質が試された。

f:id:matusima745:20191212114649p:plain

1988年アメリカ大統領予備選で最も大統領に近い候補(フロントランナー)と見られていた上院議員ゲイリー・ハートが、週刊誌記者の記事により立候補から3週間後、その地位を棒に振ったという。なぜ週刊誌の不倫疑惑ぐらいで辞めなければならなかったのかとWOWOWで観ました。

ハートは大統領には不適格な男でした!プライバシーを踏みにじるような週刊誌記事からの告発が大新聞を動かし、TV放映でハートの説明責任が追及され、彼の大統領としての資質が試された。

監督はジェイソン・ライトマン。主演は「グレイテスト・ショーマン」のヒュー・ジャックマン。共演にヴェラ・ファーミガ、J.K.シモンズ、アルフレッド・モリーナ、モリー・イフラム、スティーブ・ジシスなどが出演。

あらすじ:
1988年アメリカ大統領選挙。ゲイリー・ハート上院議員ヒュー・ジャックマン)は、史上最年少の46歳で民主党の大統領候補となり、予備選で最有力候補として一気に躍り出た。その若さからジョン・F・ケネディの再来と称され、大衆からも愛されていたハートの状況を一変させる出来事が起こる。

アイアミ・ヘラルド紙の記者トム・フィドラ―(スティーブ・ジシス)が入手したハートに関する「ある疑惑」。このスキャンダルが一斉に報じられたことで、ハートの支持率は急落し、予備選の当落線上から姿を消すことになった。
               
映画はドキュメンタリー映画のように、ほとんど笑いがなく、不倫疑惑が発覚して大統領候補を辞退するまでの本人及び家族と選挙事務局、メディアの動きが淡々と展開され、結末は観る人に任せてあります。が、登場人物たちの感情がしっかりと描写されハートの人物像が浮かび上がり、大統領として最も大切な資質“信”を持ち合わせてないことが分かる作品になっています。夫婦の物語としても面白い。

また、当時の大統領選挙におけるメディアの活動が描かれ、今後SNSがどう選挙に関わるかという今の時代に繋がるドラマです。

主演のヒュー・ジャックマンが、笑いを一切封じ、誰にも負けない政策通だと信じ切った傲慢な男が、夫として親として何をなすべきかに気付く男に変化していく過程を熱く演じています。ラストの長い選挙からの撤退演説が見どころ!この演説、敗れても本人は自分の非を認めていない。「本人がいくら大切だと思っても他人はそう思わないということが分からない。」

***(ねたばれ)
1984年の予備選挙
冒頭1984年、ハートが有力と言われながら前大統領モンデールに敗れという民主党全国大会を中継するTV局のアナウンサーと、アンテナ設置で混乱するTVクルーのシーンから物語が始まる。この混乱、まさかハートが負けるとは思わなかった?ハートは政治無関心層を取り込めたと次の選挙に大きな希望を繋ぐ。この自惚れが終始つきまとう。“孫子の兵法”を読んでいなかった!

〇1988年選挙戦の幕開け
TV、ワシントンポストは「ハート有利」と報道。ハート陣営はこのチャンスを潰すなと周到な準備に掛かる。

f:id:matusima745:20191212114802p:plain

スタートは故郷コロラドのレッドロックで出馬宣言。ホテルを使わないで1800mの高地で行うというもの。問題はハートがひとりであること。夫人はコロラドで娘アンドレアと別居生活中。
選挙事務局の若いスタッフは「政治が語れるハートだから問題ない」というが、選挙参謀のビル(J.K.シモンズ)は「かってブロンドの女と消えたことがある」と何もなければと心配する。

事務局は「議員の半数は浮気している」とメディアは記事しないと判断した。これが裏目に出ることになろうとは、政策通のハートもウーマンリブの流れを読んでいなかった。(笑)
事務局はニューイングランドを重視しマイアミを甘く見た。後援者のビリー・ブロードハースト(トビー・ハス)に任せた。

〇第1週目
レッドロックでの出馬表明は好評で、TVは「大統領にふさわしい人物」と伝えていた。ニューズウイークの表紙に飾り「次席を大きく引き離している」と報じた。

南部はカーターの地で金がムダという意見もあったが、同じ演説で良いというハートの意見で、週後半にマイアミに遊説。
ビリーはハートを誘い支援者を乗せた船「やばいビジネスへ」号でクルーズに出た。多くの女性支援者のなかにドナ(サラ・バクストン)が居た。ハートはドナに近づいたが、何があったかは描かれない。

〇第2週
アラバマへの遊説。記者たちと共に移動する航空機のなかでワシントンポスト紙の若い黒人記者・パーカー(マムドゥ・アチー)を呼んで自分の政策を披露する。すっかりパーカーはハートに魅せられてしまう。一方同乗していたマイアミヘラルドの記者フィドラーは交渉しても相手にされない。週刊誌記者は新聞記者に比して差別されていた。

マイアミヘラルドの記事のなかでも政治記事の地位は低い。こんな中でフィドラーに垂れ込み電話が入る。「友人とハートが浮気をしている。写真を買って欲しい。友人は終末ワシントンで会う」というもの。終末はケンタッキーダービーのはずと配信されてきたハートの予定を確認するとこれが消されていた。

f:id:matusima745:20191212114851p:plain

フィドラーら3人がワシントンのハートのマンショに一昼夜張り込み、3人の女性が出入りするのを確認した。彼らはハートに「一緒にいたのは誰か、性的関係は?」と詰め寄ると、ハートは「恥を知れ!」の一点張り、否定もしない。フィドラーらは「特ダネ!」としてデスクに報告するが「ドナに接触することが条件」と発表を押さえられた。しかし、時間経過とともにハート側に手を打たれると主幹が公表に踏み切った。

ハートは事態を選挙参謀のビルと妻に知らせた。ビルはスタッフに命じてドナを事務所に確保し事情聴取。妻リー(ヴェラ・ファーミガ)は「恥だけはかかせないで」とハートに伝えた。

〇第3週
ワシントンポストでは、主幹のベン(アルフレッド・モリーナ)がマイアミヘラルドの記事をどう扱うかで記者たちの意見を聞き、「今の時代、候補者の“裸の姿”を読者は欲している」とマイアミヘラルドのスクープを取り上げることに決めた。

選挙参謀ビルはドナの話を聞き、パートを訪ねて公表するよう説得した。ハートは「ゴシップだ、答える必要がない」と聞き入れない。ビルは「家族から離れて働いているもののことを考えてくれ。君のプライバシーを守るためにも説明責任がある」と公表を勧めるが「そんな噂より神聖な選挙で決まる」とビルにすら事実を話さなかった。

ここまで参謀を信用しないようでは、こりゃあダメだと思いましたね!

TVではお笑い芸人のタミー・ベイヤーのネタにされるという始末。

妻リーと娘の住む静かな邸宅にメディアが押しかけ大混乱。外出が出来ない状況になり、リーも精神的に落ち込む。

ドナもマイアミに帰ろうとしてマスコミに掴まり、「議員からこの件に関わるなと言われている」と喋った。

キャスターからフィドラーは「女性は泊まったのではなく別の出口から出て行ったのでは?寝てないのでは?」と突っ込むTV番組も出てくる。

この事態のなかハートはニューヨークの経済公演会に参加。ハートが話はじめたが、マイアミヘラルドの主幹を見て、取材で貶められたと詰め寄り、逆に反撃されるという失態を演じる。

ニューハンプシャーでの記者会見
会見前のスタッフミーテイング。世論調査で「マイアミヘラルドは行きすぎているが64%、私生活が大統領の資質に関連するは387%だ」とハートはこれまでの態度を変える気はないという。「ドナのプライバシーをマスコミから守ってやらないと」という意見には「バカな!」と言い、「必ず女性の問題が出る」とスタッフが注意喚起すると、「答えない!」と怒る。
そこに妻リーがやってきて「私を傷つけた痛みを感じてそれを背負うのがあなた、私ではない」と告げる。

会見でワシントンポストのパーカーが質問に立ち、これまで好意を持っていただけに苦しそうに、「あなたの見識と資質が問われている」と質問。これにハートは「私は罪を犯した。資質は業績に照らして判断されるべきで、上院議員としての業績、未来への政策だ」と答えた。ところで会場に大ブーイングが起こる。パーカーは「道義いついて詳しく」と「あなたは過去に不倫関係がありましたか?」と質問した。「妥当な質問でない」と答えない。会場は大混乱になった。

アンドレアから妻リーに「集まっているマスコミから・・」と電話が入り、リーが泣くのを見たハートは、選挙から撤退することを決意した。

f:id:matusima745:20191212114928p:plain

ハートは撤退にあたり長文の声明を発表した。
「これでは選挙は続けられない。家族と友人をゴシップの餌食にしたくない。私はその中心になりたくない。自分のことだけを語り続けそれで有権者とのつながりを保つことができるでしょうか。興味を惹くことが世のため重要とは限りません。・・・・」
               
マスコミの行き過ぎはよくないが、権力を持つ政治家が説明責任を果たす事こそが大切だ。国家の運命を背負う大統領であるがゆえに問われた資質であったと思う。日本の現状を憂う!
                                                ***


映画『フロントランナー』予告2(2019年2月1日公開)