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「パラサイト」(2019)

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カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。第92回アカデミー賞(授賞式2月9日)作品賞と監督賞、脚本賞、国際長編映画賞(旧外国語映画賞)、編集賞美術賞の6部門にノミネートされた作品。韓国作品をあまり観ないんですが評判につられて観ました。
さすがだ!勢いがある。脚本、演技力、映像力。笑えて、ミステリアスで、怖い!とにかく面白い! しかし、社会性ドラマとして貧困問題の背景が大きな視点で捉えられている。

富裕家庭に貧困家庭がパラサイト(寄生)し、パラサイト状態が予想もしない展開をしてきます。この予想もしないところが肝。監督が“ねたばれ禁止”を強調されており、これは守らねばならない!国際信義です。(笑) あらすじの範囲内で感動を伝えたいと思います。

監督はポン・ジュノ。主演はソン・ガンホ、共演はイ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウシ、チャン・ヘジン、チョン・ジソ、チョン・ヒョメ・ジュン、パク・ソジュン。

あらすじ:
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウ(チェ・ウシク)がIT企業のCEOであるパク氏(イ・ソンギュン)の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョン(パク・ソダム)も、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。(映画.com)
               
〇富裕層と貧困層の格差を一目で分かるよう映像で訴えてくる!
冒頭、半地下住宅の窓から見た外景、トーチカの銃眼口から覘いている感じ。

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そして、突然市の衛生局による消毒が始まる。ゴキブリ並みの生活をしている。さらに、窓付近の路上で小便されるという。笑ったがギョッとした。

室内の状況が映し出され、狭い部屋の中に洗濯物がぶら下がり、奇異なのは調理台の後ろに西式便器があって、これが高い位置に置かれている。
ここに父親キム・ギテク(ソン・ガンホ)、母親キム・チェンスク(チャン・ヘジン)、長男キム・ギウ(チェ・ウシク)、長女キム・ギジョン(パク・ソダム)の4人が生活し、仕事はない。ピザの箱の組立作業という単純作業の手内職。この手内職に出来上がりが悪いとクレームを付ける箱製造会社の若い女性社員(フリーター?)。彼らはこれでまた作業量が減る、どうやって食べていくのか? 携帯電話は持っているが、他人のWiFiが入らないと使えず部屋中を探し回る。

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これほどの貧困というのはあまりお目に掛かれない!警備員1人に500人の応募があるというから、大変な就職難らしい。

ギウが4回大学受験したが不合格。激しい格差社会と就職難による厳しい受験競争に晒されているのでしょう。おそらく予備校に通えないハンデイキャップによるもの。妹のギジョンは美術の勉強をしたいが学校に行く金がない。

一方、富裕層のパク一家。住宅は高台の高級住宅街。外国人設計による洋館、地下1階地上2階、大人数の野外パーティの出来る庭つきの豪邸。一階の居間の窓と半地下住宅の窓から見る外景の違いが、経済格差を示している。

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この豪邸にはIT企業の社長の父親パク・ドンイク(イ・ソンギュン)、専業主婦のパク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)、長女パク・ダヘ(チョン・ジソ)、長男パク・ダソン(チョン・ヒョメ・ジュン)の4人と家政婦ムンダアン(は住み、通いのお抱え運転手がいる。
ダヘは高校生で家庭教師をつけてもらい米国留学を目指している。ダソンは小学生で絵に興味を持ちインデアンごっこで遊ぶという奇妙なところのある子?、時に発作を起こす体質がある。

〇笑いとネタがよくつながるスピード感のある脚本。
ギウが家庭教師としてパク家に入り、次々に家人を呼び寄せパク家にパラサイトして生きていくという発想、これを韓国風味でとてもコミカルに描いていて大笑いです。

パラサイトのやり方は移民で、ひとりが成功すれば一家が移民するという、韓国人がよく使う手ではないでしょうか。

友人ミニック(パク・ソジュン)がギウに、パク・ダの家庭教師を代わって欲しいと、祖父が士官学校時代から鬼集していたという“水石”(山水渓石)を贈り、家庭教師になることを不安がるギウに「奥さん(ヨンギョ)は“シンプル”な人だから心配しないでよい」とコメントした。

ここで“水石”というのが何をメタファーとしているか? “シンプル”というネタがキム家族がパク家にパラサイトしていく過程にどう繋がるか?このメタファーや小ネタの使われ方にあっと言わされ、ドラマが生き生きとしてくる脚本のうまさです。こんなに笑わせておいて、実が大きなテーマの背景を描いているという、憎い演出です。

〇一度では掴みきれない深みのある作品。
半地下と地下の使い分け、臭いなどのように「会話」と「映像」に隠されたネタやメッセージがあり、たくさんの見落としがあると思っています。
さらに他映画作品のオマージが加わり、一度では分からない、味わいきれない深い作品だと感じました。


〇ギウがパク邸で最初に出会った風景がとんでもない物語へと繋がる展開とテーマがすばらしい。
ギウがパク家やってくると、“家政婦”のムンダアン(イ・ジョンウシ)に案内されて庭の見える大きな居間に案内される。そこで家族4人の“家族写真”と部屋を飾る美術品そのなかに一枚の“ふしぎな人物像?”を目にする。そして窓越しに“美しい大きな庭”を見た。

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“ヨンギ夫人”はとても優雅で“シンプル”そうな人で、娘のダヘは可愛い子だった。インデアンに扮したアソンが突然飛び出してきた。

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こんな空気のなかで暮らすパク一家に、そしてダヘにギウはどんな感情を抱いたか? ふしぎな人物像がどんな意味を持っているのか? 最初のこんな平凡で小さな出会いが、とんでもない事態につながり、その背景にとても大きな問題としての社会システムが浮かび上がってくるという、エンターテイメント作品にして大きなテーマを突き付けてくるすばらしい作品だと思います。

今回のアカデミー賞6部門ノミネート、スタッフ・キャストそして韓国のみなさんおめでとうございます。どこまで頑張れるか、応援していますよ!!
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第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編