映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「AI崩壊 」(2020)

f:id:matusima745:20200201151740p:plain

監督が「SR サイタマノラッパー」「22年目の告白-私が殺人犯です-」の入江悠さん、オリジナル作品ということで観ました。 

10年後の日本を舞台に、国民の情報と健康を管理するAI(人工知能)が突如一人ひとりの命の価値を選別する暴走を始める中、国家からテロリストとして追われ身となった開発者が、自ら真相を突き止めるべく繰り広げる決死の逃亡劇。

暴走により殺戮が起きると思っていましたが、そうではなくその一歩前で留まり、誰が何のため暴走を引き起こしたのか。AI開発に求められるものかは何かを問う作品でした。

AIの開発に必要なことは「親が子供を幸せにすることに置き換えられる」という結言に至言だと思いました。

開発者の桐生夫妻が「苦しんいる沢山の人を救うために」という願いで作った医療AIが、警察AIで国民すべてが監視下に置かれ、国家の意思として、人類を選別し殺戮することになるという怖い話でした。

今の世情ではこのような話が出ても可笑しくないところに怖さを感じます。

よくぞ描いたと思います!が、ストーリー展開や映像など映画的な視点では物足りない人もいると思います。しかし、AIに人間がどう関与すべきかと人間の暖かさを強調しているところに入江監督らしい作品だと思いました。

主演は大沢たかおさん。共演は賀来賢人広瀬アリス・岩田剛典・松嶋菜々子三浦友和さんらです。

この映画は、“ねた”を知らないでみるのがよいと思います。

あらすじ:
2030年。日本では医療AI“のぞみ”が国民の個人情報と健康を完全に管理し、国民生活に欠かせないシステムとなっていた。開発者の桐生浩介(大沢たかお)はその功績が称えられることとなり、移住先の海外から娘・心とともに久々に日本に帰国する。その直後、突如“のぞみ”が暴走を開始し、国民の価値を選別して不要と判断された人々の殺戮を始めた。警察庁のサイバー犯罪対策課を指揮する桜庭誠(岩田剛典)は、暴走を桐生によるテロと断定し、逃亡を図った桐生を全国に張り巡らされたAI監視網で追い詰めていく。日本中がパニックとなる中、警察の執拗な追跡をかわしつつ、のぞみの暴走を食い止めるべく真相解明に奔走する桐生だったが…。

***(ねたばれ)
2023年12月、桐生康介は、陽が光る海岸で、ガン治療中の妻・望(松嶋菜々子)と娘・心と写真を撮ってひとときを過ごしながら、妻と共に開発した医療AIを妻の名に因み“のぞみ”としいずれ認可され「難病で苦しむ人たちを救う日が来ると」信じていた。病気は治らないが、この情景、心の繋がりが幸せなのかもしれませんね!
このシーンはラストでこの海を望む“のぞみ”のシーンは繋がり、未来のAIに掛ける望の想い「幸せに生きる」とはというテーマで終わるすばらしいエンデイングでした!

2024年、医療AIは認可され、そのあとの管理運用をHOPE社(代表取締役・妻の弟西村悟)に任せ、心とシンガポールで自然に溢れた生活を楽しんでいた。

2029年には電気、水道、ガスに続く第4のインフラとして生活を支えるに至っていた。しかし、これにより仕事を奪われたとAI整備に対するデモ活動も活発化する情勢にあった。

2030年2月。ノーベル賞並みの功績と総理大信表彰を受けることになり、本人に日本に戻る意志はなかったが、娘に母親の想い出にと表彰式に参加するため日本に戻った。

f:id:matusima745:20200201151833p:plain

千葉にあるデーターセンターを訪れ、地震・テロ対策のある地下13階に摂津された“のぞみ”(貝殻形状、海をイメージ)を研修し、帰朝挨拶をした。このとき悟から警視庁警備局理事室のAI専門家・桜庭誠(岩田剛典)を紹介され名刺を交換した。悟が「警察はAIを開発中で協力を求められたが断った」と耳打ちした。心は母に会えると“海岸で撮った家族の写真”をバックに付けていた。

海中で生きている貝のような“のぞみ”が幸せそうだった。

f:id:matusima745:20200201151905p:plain
表彰式に参加するためセンターを出たところで心が写真を“のぞみ”室に落としたことに気付く。浩介は首官邸に急ぐために心を悟に預けて出発した。

突然、“のぞみ”に異常が発生。全てがネットで結ばれる社会。交通システム、医療システムなどにシステムエラーが発生。病院の大混乱、大渋滞の発生、ペースペーカーを付けた人たちの苦しみなどが描きだされますが、田中英子総理大臣(余貴美子)が副総理の岸から「国家保安法」を国会審議したいと進言されているときで、総理のペイスメーカーが停止して亡くなる。田中総理のスーツが真っ赤(青に対抗)、副総理が岸という名、国家保安法というのも辛辣なジョークのようで面白かったです。(笑)

浩介は渋滞のなかで何が起こったかとパソコンを開けたところをドローンで撮影され、いきなりCITF(サイバー情報戦戦略隊)に取り囲まれた。“証拠あり”と浩介がテロリストに仕立てられる。ここから、この映画の大部である浩介の逃亡劇が始める。高速道路を走り、街の中を走り、地下道を走り、運送トラックに隠れフェリーで逃亡。見つかって海に逃げ(笑)、漁船に助けられてかって“のぞみ”を開発した郡山市にある東北情報先端大学院までの逃亡劇。大沢さんがよく走りました!!大がかりのロケもありご苦労様でした。(笑)

f:id:matusima745:20200201151951p:plain

CITFといたるところで遭遇するが“捕まらない”という、この追走劇で初めて運用される警察AI“百眼”のバカさ加減に笑いました。

浩介がテロリストと認定され呼び出された麹町署の合田刑事(三浦和友)と警視庁捜査一課の新米刑事・奥瀬(広瀬アリサ)が、“百眼“が700件の犯人像から浩介を検索し追跡する様を見て「こいつはすごいが、個人情報無視か?」と怒り、「刑事が足と感で勝負する!」とアナログ的捜査を開始する。「浩介は元いたところに戻る!」という感でフェリーに乗る。(笑) これが大当たりでした。(笑) 三浦さんは当然ですが、アリサさんがいい演技をします。

f:id:matusima745:20200201152020p:plain

百眼のバカさ加減を見ていると、「AIに人間の判断力をどう生かすか」という問題にぶち当たります。

浩介は地下道を逃走しているとき、悟から“のぞみ”の暴走状態、心の現状を把握し、「人間を殺戮するプロセスにある」」ことと、“のぞみ”の冷却のため室内温度が低下しており、心をすみやかに救出する必要があると判断。「“のぞみ”のプログラム書き換えしかない」とトラックに便乗し郡山に向かった。

大学院の研究室でかって使っていたPCを見つけ、プログラムを修正中に、“内部の者でなければできないデーター修正”があることに気付く。このとき訪ねてきた悟がてっきり犯人と思いきや、違っていました。犯人捜しもあったことに気付きました!(笑)

このころ総理大臣に岸がつき「国家保安法」を制定すると宣言した。

悟の助けを借りれプログラムの修正を完成したところに、CITFが襲い掛かり、悟が抵抗する間に浩介は集成プログラムを持って脱出、逃走。悟は絶命するまえに到着した合田に犯人の名“を明かします。亡くなるときの賀来さんの演技がすばらしかった! 

f:id:matusima745:20200201152057p:plain

悟は「観たい」とやってきた桜庭を拒もうとしたが、彼の持ってきた名刺(政府高官)を見て“のぞみ”の部屋に招きいれたことが、今回の暴走の原因だった!犯人は桜庭だった。

機械のセキュリテイは完全であったが、人のセキュリテイに甘さがあった!!

浩介は初対面時にもらった桜庭の名刺を生かして、“百眼”AIをかいくぐり千葉でデーターセンターまで戻る。

百眼CITFが付近の浩介らしき人物を推定して襲いかかる混乱ぶりを見ると、“監視カメラで監視された社会の恐ろしさ”を感じます。まるで映画「リチャード・ジュエル」(2019)の世界です。

ネット中継で世界に桜庭のやったことを公表する。これは監督の「22年目の告白-私が殺人犯です-」と同じやり方です。

f:id:matusima745:20200201152143p:plain

桜庭は「この国は破綻している。どうやって立て直すか?無用な者は退場してもらう。これを可能にするのがAIだ!」と大見えを切った。

浩介は「どんなにAIが進歩してもそんなものは出来ない!人間を感じて責任を取れ!」と責めた。浩介は、修正プログラムを“のぞみ”の側に倒れている心を呼び覚まし、母の写真を拾い鏡として使わせ、修正データーを“のぞみ”に送り再起動した。“のぞみ”は蘇った!

政府がこの事件に関与していたことが判明し、検察が反乱罪を適用するという。ここまでよく描いたといいたいです!
               *
大きなテーマを取り上げ大変苦労されたと思います。監督の社会に対する温かい目線が感じられる作品でした。ここから深堀して、韓国映画「パラサイト」のような作品になっていくとよいと思います。期待しています。
                                                    ***


映画『AI崩壊』本予告 2020年1月31日(金)公開