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「ナイブズ ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」(2019)

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スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督のオリジナル脚本。ダニエル・クレイグクリス・エヴァンスジェイミー・リー・カーティスクリストファー・プラマー、ジェイミー・リー・カーテイス、マイケル・シャノン、アナ・デ・アルマスら豪華キャストに誘われ観ることにしました。 

前作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」に世界に発信するメッセージを期待していましたがすこしがっかりしていたところ、今作でミステリーを十分に楽しみながら、ラストの刃の館の住人は誰になったかと?映画「パラサイト」(2019)にも匹敵する社会構造の歪を衝くメッセージに満足でした!!

作品は、アガサ・クリスティーの曲げ物かと思うほどにオマージュのある作品ですが、そこはライアン・ジョンソン監督、これを上回るひねり、逆転や仕掛けで今の時代ならではのテイストとメセージを含ませ、スピードと緊張感で楽しませてくれ、最後まで騙され続けました!!

すばらしい脚本です。実は、今も分からない、このネタはどの伏線繋がりなのかと話し合いたいほどです!(笑) 

さらにジェイムスポンド役・ダニエル・クレイブ、アベンジャーズシリーズのキャプテンアメリカ役・クリス・エヴァンスの意外なキャステイングによるギャグ演技、そしてこの作品の主役といっていいアナ・デ・アルマスの可愛いくって多彩な感情表現の演技が楽しめます。

あらすじ:
世界的ミステリー作家にして富豪のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が85歳の誕生日を迎え、ニューヨーク郊外にある彼の豪邸では家族が集いパーティが開かれる。ところが翌朝、ハーランは遺体で発見される。一見自殺かに思われた彼の死だったが、そこへ匿名の人物から依頼を受けた名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が現われ、殺しと確信して調査を開始する。容疑者は家族や家政婦、ハーランの看護師マルタ・カブレラ(アナ・デ・アルマス)といった屋敷にいた全員。そして調べが進むほどに、家族の秘密や嘘が次々と暴かれていくのだったが…。<allcinema>

ねたばれは厳禁でしょうが、あらすじの範囲ないで感想を書きます。

****(ねたばれ)
冒頭、事件の起きそうな(笑)奇妙な三階建ての屋敷。枯れ葉の庭を二匹の犬が走り回る。次いで各部屋の紹介。各部屋は豪華な家具、凝った彫刻や絵、大理石の暖炉、見事なアンテイィクが置かれまるで美術館のようです。3階がハーランの空間。ここには書斎と寝室と廊下があり、タイトルの複数のナイフは書斎に飾られ、“富豪の彼に向けられた家族の目”のように感じます。(笑) 美術がすばらしいです!!

誕生日の翌朝、家政婦フラン(エディ・パターソン)によってハーランの遺体が発見される。
事件から1週間後、刑事エリオット警部補(キース・スタンフィールド)による誕生会参加者の聴取が行われているなかに、“匿名人物からの事件以来があった”と名探偵ブノワがグランドピアノの鍵盤をポーン!と叩いて登場。

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まずは家族それぞれの職業、ハーランへの想い、マルタへの想い、さらに事件当時の行動、異変を聴取します。

家族のいずれもがハーランの財力と深い関りがあり、家族間のぎぐしゃくした関係が浮き彫りになる。

長女・リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)が不動産業を営み夫リチャード(ドン・ジョンソン)はその下で働いている。彼は浮気をしており、リンダはまだ気づいていないが、ハーランから注意を受ける有様。孫のランサム(クリス・エヴァンス)は、ハーランドの誕生日当日、彼と諍いを起こして誕生会に参加せず、葬儀にも欠席するというスロンビー家のやっかい者になっている。

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長男・ニールは16年前に死亡、妻のジョニ(トニ・コレット)はライフスタイル提案型化粧品会社を営んでいるが経済的に苦しく孫のメグ(キャサリン・ラングフィールド)の学資をハーランに援助してもらっているが、「二重取りしている」と援助の打ち切りを言い渡されている。

次男・ヴォルト(マイケル・シャノン)はハーランの出版物を扱う出版社を運営しているがその経営手腕を問われハーランから解雇を言い渡されている。妻・ドナは専業主婦。孫のジェイコフ(ジェイデン・マーテル)は16才で政治に興味を持っている。

ハーランの母親・ナナ(95才、K・カラン)と家政婦フランは、この段階では聴取しなかった。

どの家族もハーランの遺産に関心があり、ハーランの死因や誰に殺されたかなどには関心が薄い。

マルタはウルグアイからの移民で“なまり”がある。家族に彼女の印象を尋ねると、皆が褒め「大切に思っている」という。が・・、

マルタはハーラン死後憔悴しきっていた。ブノワが「あんたの証言が大切だ」と聴取を始める。マルタには奇妙な癖があって「嘘をつくと吐く」癖がある。

誕生会が終わり書斎に送って碁石並べをしていたが負けたせいか突然震えを起こしたので鎮痛剤を注射をしたが間違えに気付き、“モルヒネ!”というと、ハーランは「(死に至るには)何分かかるか」と聞くので「10分!」と答えた。懸命に解毒剤を探したが見つからないので慌てて“電話”した。ハーランが「君を守ってやる!」と言って、防犯カメラを避け、家人に会わず天井部屋に脱出する方法を教えてくれた。
ハーランが教えてくれたように部屋を出て、ヴォルトに出会ったがうまく交して、家に帰ったと証言した。そのあとマルタは洗面所で吐いた!(笑)

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ここまでのスト―リーで、犬をも含めて、ほとんどの伏線が張られており、これらを掬って見事に繋がっていく。ハーランは自殺なのか、マルタは故意に薬を間違えたのか誰かに細工されたのか、マルタが犯人なのか犯人でないのか、誰が遺産を相続するのかと推理思考を揺さぶる脚本がすばらしいです。

ここで注目すべきはハーランがなぜマルタを救うことにしたかです。

ハーランは世界的ミステリー作家にして巨額の富を手にしたが、子供たちと金では繋がるが心の繋がりが得られなかった。一方、マルタは献身的に尽くしてくれる。しかし、マルタは移民出で、家族は口では大切だというが陰では見下す、金が無くなれば放り出される運命にある。マルタとその家族を救えるのは自分しかいないとしての決心でマルタを逃がした。このあとの遺産相続でもこの問題を絡ませてしっかり描かれます。

移民問題という社会の歪みを訴えながらミステリーを描くというのが凄い!

ミステリーの作り方として、典型的な密室サスペンス作品でありながら、探偵ブノワのちょっととぼけたキャラクター、“ドーナツには穴がある。ただの穴ではないぞ」とジョークを飛ばし穴を埋めていく推理。これに輪をかけたようなすっとぼけのランサムなど、”笑えるミステリー“というのがいい。

ねたばれを止めます。よく詰めた、よく繋がる、どんでん返しのあるミステリー作品でした。なによりもラストで刃の館の住人が入れ替わるという結末がすばらしい。
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『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』1.31(金)公開/60秒予告(ナレーション:中村悠一)