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「プライベート・ライアン」(1998)Saving Private Ryan

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スピルバーグ監督による戦争映画の金字塔ともいうべき作品。98年度アカデミー賞最優秀監督賞受賞作。DVDでの初めての観賞です。

第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を舞台に、1人の兵士の救出に向かう兵隊たちのストーリー。タイトルは救出される「ライアン”ニ等兵”」を表しています。

テーマは戦場における命の使い方、救出隊がほぼ全滅してライアンが救われるという“命の使い方”を描いた物語です。救出隊長ミラー大尉が最期にライアン2等兵に掛ける言葉「ライアン、無駄にするな!しっかり生きろ!」に涙でした。ミラー中隊長のリーダーシップと多くの部下の死にざまに「彼らの死は無駄にならなかったか?」と心打たれます。

いくつもの戦闘シーンが徹底したリアルさとヒューマニズムで戦場の厳しさと命の大切が描かれています。冒頭から約20分間にもおよぶオマハ・ビーチにおけるノルマンディー上陸戦闘シーンは目を覆いたくなるシーンがいくつもあります。後半の拠点守備隊の戦闘では、黒澤監督の七人の侍をモチーフに、エンターテイメント性溢れる描写になっています。

スタッフ:
監督:スティーヴン・スピルバーグ。脚本:ロバート・ロダット。撮影:ヤヌス・カミンスキー。美術:トム・サンダース。音楽:ジョン・ウィリアムス、編集:マイケル・カーン
キャスト:
トム・ハンクス(ミラー大尉)、トム・サイズモア(カーヴァス曹長)、エドワード・バーンズ(ライベン一等兵)、アダム・ゴールドバーグ(メリッシュ2等兵)、
バリー・ペッパー(ジャクソン一等兵)、ヴィン・ディーゼル(カバーゾ2等兵)、
ジョバンニ・リビン(ウェイド衛生兵)シャレミ・ディビス(アバム通訳兵)、マット・デイモン(ライアン一等兵)ほかです。

あらすじ:
1944年6月6日。米英連合軍による上陸作戦の開始。ミラー大尉はオマハビーチの第2レンジャー大隊C中隊を率い、激しいドイツ軍の抵抗に多くの犠牲者を出したが、果敢な攻撃で上陸拠点を確保した。

その3日後、陸軍参謀長の「3人の兄を戦争で失った末っ子のジェームズ・ライアン2等兵を探し出し、故郷の母親の元へ帰国させよ」という命令を受け、ミラー大尉はホーヴァス曹長、レイベン、カパーゾ、メリッシュ、ジャクソン、ウェイド、アパムを伴い、落下傘の誤降下で行方の空挺部隊員ライアンの所在を求めてヌーベルに向かう。

残敵ドイツ兵に遭遇し犠牲者で出て、「なぜライアン1人のために8人が命をかけなければならないのか?」という任務に対する隊員のジレンマの中、ミラー大尉のリーダーシップでライアンを探し出すことに成功する。レかし、ライアンは戦友を残して自分だけ帰国することはできないと言い放つ。ライアンを残して引き上げるか、それともここに踏みとどまりドイツ軍と一戦を交えて友軍の進撃を待つか・・・・。

****(ねたばれ)
冒頭、年老いたライアンが家族を伴いノルマンディー米軍英霊墓地を訪れ、ある墓に急ぐシーンから、回想という形で物語が始まります。

〇1944年6月6日。米英連合軍によるノルマンディー上陸作戦の開始。
ミラー大尉は、オマハビーチのドッグ・グリーン区に上陸する上陸用舟艇の中にあった。

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汀線直前、戦闘開始の前に出てくる右手の震えを押さえ、舟艇の前扉が開くのを待っていた。艇の中では不安な隊員、艇の揺れによって吐き出す者が続出。扉が開くと、ドイツ軍のトーチカからの十字射撃が始まり、ばたばた撃たれ、海の中に落ち海が赤く染まる。
ミラー大尉はわずかな障害に身を隠し、ゆっくりと頭をあげて前方を確認。ホーヴァス曹長が隊員を掌握する。「前方斜面に走れ!止まるな!」と指示。倒れた兵士の首襟をつかみ前進。その兵士の下半身が吹っ飛ばされていた。

夥しい負傷者。片足が吹っ飛んだもの、腸がはみ出したもの。こんななかで衛生大隊から派遣された軍医が這いまわり、傷口を縫合している。中隊のウェイド衛生兵が懸命に救急処置に走る。至るところから“衛生兵!”の声が上がる。

敵陣直前でこのような治療シーンが出てくる作品を知らない。

ミラー大尉が射撃手のジャクソン一等兵を呼び、噛んでいたガムが吐き出させ、これで銃剣の先に鏡を張り付け、身を隠して敵銃眼を確認。突入命令を下達する。

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ミラー大尉はイタリア戦線を経験し戦闘のコツを心得ており、指示が的確だ。部下の意見をうまく汲み、無駄な行動で、兵士を死なせない。

兵士たちは相互に支援しながら前進してトーチカの死角に入り、破壊筒で鉄条網を破壊、一斉に手榴弾を銃眼口に投げ込み、火炎放射器で焼き払う。火のついた敵が飛び出しこれを射殺する。ミラー大尉は自ら手榴弾を投げ、兵士に遅れることなく突入。
陣内の敵捜索。手を上げるドイツ兵に射撃を浴びせる。これが戦場の実態だ。ミラー大尉はこれに不快感を示す。

この戦闘で35名の戦死者、その倍の負傷者が出た。ミラー中隊長はこの死を決して無駄にしないよう闘い続けていた。

〇ライアン二等兵の救出命令
アメリカ陸軍参謀総長ジョージ・マーシャル将軍の元にライアン家の四兄弟のうち3人が戦死した報告が届く。アブラハム・リンカーン大統領が南北戦争時、5人の子を失った母親に送った哀悼のことばを思い出し、“慰める言葉はない”と空挺降下の際に敵地で行方不明のライアンを救出し本国に帰還させるように指示した。

ミラー大尉はレンジャー大隊長から特命としてライアン救出を命じられた。

大隊本部の参謀から空挺部隊の降下地域、敵情を入手し、本部勤務のドイツ語とフランス語の達者な通訳アバムを加え、上陸作戦で共に行動したホーヴァス曹長、レイベン、カパーゾ、メリッシュ、ジャクソン、ウェイドを伴い、ヌーベルへ出発した。

〇ライアンの捜索
警戒をしながらの行進。雨の降る中、破壊されつくされた街に入ると突然の銃声。残敵の掃討に当たっている空挺部隊の一部に出会った。「ライアンを知らないか?」と聞くが返事はない。
ビルの瓦礫に身を隠して掃討が落ち着くのを待っていたところ、破壊されたビルの住人が子どもを安全のため預かって欲しいという。ミラー大尉は止めたが、イタリア系のカバーゾ2等兵が子供を預かったところを敵残兵に狙撃され負傷。懸命にウェイドが治療にあたったが駄目だった。ここでも治療の様子を生々しく見せてくれます。アバムはただ震えて見ていた。ミラー大尉は何事もないようにカバーゾの身体から認識票を外し、遺書を取り上げたが、心の中では“無駄な死に方をさせた”と悔やんだ。レイベン2等兵が「ライアンめ!」とこの捜索任務に疑問を抱く。

市街地に入り、戦闘中の部隊長ハミル大尉を探して廃ビルに入ると、残敵ドイツ兵との撃ち合いに遭遇する。ライアンの所在を聞くが情報はない。道路に出てライアン!と叫んでいると「ライアンだ!」という兵士が出てきたが人違いだった。

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夜、破壊された教会でローソクの火で暖をとりながら休息。ミラー大尉はカバーゾのことを想い出し「部下が死ぬと俺は自分に聞かせている。2人、3人、10人の部下を救うためだったと。失った部下は94人だ。しかし、その10倍も20倍もの兵士を救った。そう割り切る、任務か兵の命が先かの選択だ!」と涙ぐむ。

兵士の死を無駄にしないミラー大尉の考えがよく出ています。

朝暗いうちに出発。墜落したパラグライダーに集まってきた各種空挺部隊が屯する集結地に遭遇。准将の我儘でジープを搭載し重量オーバーで墜落したという。多くの兵士を無駄に死にさせたことに、ミラー隊の兵士たちは「ばかげている」と漏らした。亡くなった空挺隊員の認識票を借り受け、調べたがライデンの票はなかった。

そこに「ライデンを知っている」という兵士が現れ「30km離れて降下し、橋の監視についている」という。ミラー大尉は地図を検討し、戦略的は観点から“ラメル橋”と断定し、出発命令を下達した。これには兵士たちが驚いた。

途中で敵レーダー陣地に遭遇。付近に82空挺師団の兵士の遺体が放置されていた。「後続部隊のために」とミラー大尉は攻撃することにした。しかし、「任務に関係ない、迂回だ!」という意見が起こったが、ミラー大尉はこれを無視し、当然だ、自ら敵情を偵察して攻撃を命令した。うまく陣地を奪取したが、衛生兵のウェイドが負傷。懸命に治療するが駄目だった。ここでの治療シーンも壮絶だった。さらに捕虜兵を刺殺することを禁じ、亡くなった空挺兵士の埋葬壕を掘らせたあと放った! これには兵士のなかから批判がでた。アバムは捕虜を撃つべきでない、戦争法違反だと訴えた。ミラー大尉はそっと席を外し、だれにも見られないように泣いた。恐らくこうして何度も泣いたのではないでしょうか。

ミラー大尉に批判的なライベンが「離隊する」と言い出す。大尉は「自分は11年間教師だった。街で教師が言えば聞いてもらえるが、戦場ではそうはいかん。大きな壁だ。ライアンはどうでもいい、ただの名前に過ぎないが彼を探し帰還させたら胸を張って家に帰れる」と告げ、ライベンの離隊を許可したが、ホーヴァス曹長がライベンを説得し、同行することになった。この陣地で亡くなった兵士たちを丁寧に埋葬した。

〇ライアンと遭遇
ラメルの町に近づいたところで突然現れた敵装甲車に驚くが、誰が撃ったか装甲車が炎上。射撃したのは101空挺師団の部隊だった。そのなかにライアンがいた。
大隊長がなくなり曹長が指揮し橋梁を確保する任務についている。ライアンに「3人の兄が亡くなり、陸軍参謀長命で迎えにきた」と伝えるが、「仲間を置いて帰るわけにはいかない」と断わる。その意思の硬いことを見極め、ホーヴァス曹長の意見を聞いた。「奴を残して引き上げるか、一緒に戦って生き残り帰るか。ライアンと一緒に戦ったことがこのクソ戦争で唯一誇れることかもしれない」。この意見にミラー大尉は同意し、空挺兵士をも合わせ指揮して橋梁を確保し、友軍の進撃を待つことにした。

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〇拠点守備隊の戦闘
ミラー大尉は手榴弾、地雷、バズーガ弾、迫撃砲弾などの武器を把握、手製で戦車くっつき弾を考案し、映画「七人の侍」の島田勘兵衛が騎馬武者を村に引き入れ叩いたように、戦車を中央道に沿って誘導しくっつき弾を張り付け爆破して履帯を切り停車させ、側方からバズーガで撃破。包囲する歩兵を鐘楼から機関銃で射撃する。いくつもの射撃陣地を準備し移動しながら射撃して敵を撃破すると指示し、しっかり準備した。エディット・ピアフの「Tu es partout」が流れるなか敵の攻撃を待った。多くの兵士にとって、このひとときが人生最期の安らぎのときとなった。

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敵の攻撃に、各兵士が準備したとおりに勇敢に戦ったが、数的な劣勢で追い詰められ、メリッシュやジャクソン、ホーヴァスらが次々に戦死する。ミラー大尉の前面に戦車が現れた。大尉は負傷し意識朦朧のなかで拳銃を撃つ。そこに友軍のP51地上戦闘支援機が現れ戦車を撃破、大尉の一命は救われた。救援にやってきたライアンに「しっかり生きろ!」と言葉をかけて絶命した。ミラー大尉の遺書を預かったのはライベンだった。
アバムは弾薬運搬を担当したが身体が震え役立たなかった。しかし、逃がした捕虜が現れたとき射殺した。戦争とは何かを知った。

戦闘のリアルが大きく喧伝されていますが、任務と生きることの狭間で苦しむミラー大尉以下各兵士の心情もよく描かれ、人の心の優しさに触れることができました。
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Saving Private Ryan (1998) - Official Trailer