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「ルーベ、嘆きの光」(2019)

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ベルギーとの国境に近い北仏の町ルーペで老女性が殺される事件が起き、事件解決に奔走するある警察署長の物語。第72回カンヌ国際映画祭に正式出品です。
監督はルーペが故郷のA・デプレシャン監督。“007”シリーズの最新作「~ノー・タイム・トゥ・ダイ」のポンドガール・レア・セドゥを一足先に観ようとWOWOWジャパンプレミアムで観賞しました。

撮影はイリナ・ルブチャンスキー。出演者はレア・セドゥ、ロシュディ・ゼム、サラ・フォレスティエ、アントワーヌ・レナルツらです。

あらすじ:
冒頭、クリスマスのイルミネーションが光る道路をパトカーが車両が火災を起こした現場に向かうシーンから物語が始まります。この映像がとても美しいが、他に車の動きはなくもの物悲しい。

ルーペは中産階級は姿を消し、街の75%は問題区域に指定され、人口の45%が貧困に苦しむ町。あらゆる人種が集まり、産業で栄えたことなど誰も知らない。残ったのは貧困と衰退の記憶だけという。

事件は夜に起こるためか、淡い電灯が浮かび上がる暗い夜景を背景に物語が語られます。この暗さがルーペの雰囲気をよく伝えているように思います。

この夜の事件は車の炎上事件、ピストル強盗、麻薬を巡る暴力事件、放火事件の発生。
部下が各事件に対応するなかで、ルーペ中央警察署の所長ダウード(ロシュディ・ゼム)は車の炎上事件で現場から通報のあった男を尋問する。こんな事件が頻繁に起こっているのでしょうか、手際よく責めて、保険金詐欺で自らが火を放ったことを認めさせます。
ダウードは7才でこの町にやってきて、以来この町で暮らしていたが、この町の衰退に、妻子を北アフリカ・アルゼーに帰しひとりで暮らしている。移民で昔のような人の絆が消えてしまった街に残り、治安に励むラウド署長を「嘆きの光」と言っているように思います。

翌日、新米刑事のルイ(アントワーヌ・レナルツ)に放火事件の現場調査を指示し自らは新しく持ち込まれた17才の少女・マリーの失踪事件で両親から事情を聴取していた。手際のよい質問で、少女が父親との確執で家出したとみて、少女が訪ねるであろう叔父のところに出掛け、ここにいたことを突き止め、スケートリンクで遊んでいるマリーを見つけて一件落着。両親はしっかり調べたというが、なんでこんなことが出来ないのか?こんな事件でもないようなことに、ダウートは少女が隣町のリールに娼婦として連れ去られたのではという住民への愛情で対応している。日本の駐在さんにはこんなところがありますね!

夜間地下鉄の会談で暴行を受けたという事件が入ってくる。荒れたこの街では、日常茶飯事。暴行専門のブノワ刑事に任せる。

問題の放火事件ですが、ルイが現場で犯人の顔を見たというふたりの女性、クロード(ロシュディ・ゼム)とマリー(サラ・フォレスティエ)を署に連行した。クロードは6歳の子供をもつシングルマザー、マリーは移民で独り者。ふたりは同性愛者。ダウロードはクロードの小さい頃から、学生のころは若い者の憧れの女性であったことを知っていた。

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署で容疑者の面通しに立ち会わせると、クロードがギョームとゴバルギという男を指名するが、彼らにはアリバイが成立し、捜査は行詰まっていた。

夜間、警察署にクロードから「中庭で妙な音がする」と通報がありルイとダウードが出動。現場で男を逮捕し、二階に上がり部屋を捜索するとこの家の住人りュセットが暴行を加えられ首を絞め
とられて殺されていた。ダウードは火災の跡からクロードとマリーを容疑者として逮捕した。・・・


ROUBAIX, UNE LUMIÈRE Bande Annonce (2019)
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ここからがドラマの本番で、クロードとマリーを尋問して主犯を割り出す。警察の尋問シーンに主体を置いたドラマはめずらしいのではないでしょうか。容疑者ふたりの感情が相互に行き合うというとてもスリリングなドラマになっていました。

クロードを演じるレア・セドゥはノーメイクで、堕いた女性の複雑な感情を見せてくれます。

マリーをダウードと他に2人の刑事で、クロードをルイと他に2人の刑事で尋問する。マリーはクロードが主動でやったと、とても気にしながら供述する。このマリーの供述でクロードを責めるが、クロードは否定する。

ふたりを立会させ、調書の整合を図る。ここでもクロードはマリーの証言を認めない。人形を使っての具体的な絞首の現場を再現させるがクロードはマリーの証言を認めない。

現場検証。クロードが主導性を持って証言するが、絞首のところはマリーに任せ、マリーの証言を認めない。マリーは泣いて「本当のことを言わないと刑が重くなる」と促すが、クロードは拒否した。

ダウードは「ここまでだ、あとは検事と弁護士に話せ!」と現場検証を終え、ふたりを拘留所に送った。マリーはクロードのことを心配していた。

ダウードはどちらが主犯か分かったと思う。これを言わなかったのはダウードの優しさではなかったかと!こうしてルーベの安全は彼に託されていた。
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