映画って人生!

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「もみの家」(2020)

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志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の南沙良さん出演、さらに残念なんですが、佐々木すみえさんの遺作ということで駆けつけました。こちらは1か月遅れの公開です。

心に悩みを抱え不登校になってしまった少女本田彩花(南沙良)が青少年自立支援施設“もみの家”での出会いや経験を通して成長していく姿を描いた人間ドラマです。

この施設で生活することで紗花が生き生きとした姿になっていく様が、まるで教科書のようにうまく成長していくんです。悪いやつがいてなかなかそううまくはいかないと思わせるようなエピソードが欲しいという作品でしたが、それがそうはならない。(笑) 
一に南さんの熱演でした。いろいろな経験を積んで彩花が自分の生きたいように生きる、人に優しくなっていく顔を見ているだけで、十分楽しめる作品でした。南さんは演技に幅が出てうまくなっています!

いくつものエピソードのなかで、佐々木すみえさんが演じる太見ハナエ婆ちゃんと彩花の出会いはとても暖かいもので、老人と触れ会うことで人は大きく成長するんだと思わせてくれました。佐々木すみえさんの優しさがスクリーン一杯に映し出されます。

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飯食べて、電車に乗って、プラットフォームで、いつも携帯を見ているという生活では得られない人生でしょう。

全編、見て、聞いて、触って、食べて、笑って、泣いてという体験型人生再生ドラマ。アナログ人生こそ生きる意味があるのかもしれませんね!

監督は坂本欣弘さん、若い監督さんで故郷富山を撮りたいという想いがあって、今回は乃南アサさんの「ドラマチックチルドレンン」にインスパイアーされての作品だそうです。
脚本は北川亜矢子さん。撮影は山田明子さん、加藤育さん。主演は南彩花さん、共演に緒方直人・田中美里中村蒼・佐々木すみえ・中田青渚さんらです。


映画『もみの家』予告篇

あらすじ(ねたばれ):
半年学校休んでいた彩花が母親・明美(渡辺真紀子)に付き添われ富山の砺波平野にある青少年自立支援施設“もみの家”にやってきた。もみの家には家族を加えて10人。彩花と同じ女の子もいる。主人佐藤康利(緒方直人)は「うちの生活の基本は、早寝早起きと農作業」と穏やかに話す。

生活の基本どおりに、次の朝には彩花が寝ていても他の女の子は朝食の準備を手伝い彩花は起きないわけにはいかない。人に頼らず、規則正しく生活することがいかに大切かということを見せつけてくれます。

早速農作業が始まる。田植えのシーズン。苗を運び皆で手植えする。懐かしいシーンで、今の子で米がどうやって育つかを知っているのかなと思ったりします。これが結構楽しかった。歓迎会として泥だらけにされるのも成長の糧になります。(笑)

田植えが終われば野菜の収穫。自分で採ったトマトを食べて味を知るという体験。人がどんなに苦労して作った物かを知り感謝して食べるいう人としての基本をここで学んでいきます。自然のなかで、仲間と一緒に生きているという感覚を知らずしらずのうちに身につけていきます。

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カメラも自然の風景と食べ物をとてもきれいに写してくれます!なんたって米の産地と砺波平野の風景がいい。この空気で身体は生き返るように感じます。

特に先輩の淳平(中村順平)に「東京にはないもの」として見せてもらう砺波平野に沈む夕日。この景色を見ながら聞く「世の中にはいろんな人がいる。怖がらずに自分の好きな人とかものをすこしずつ探せばいいんだ!」という話に彩花の心は癒されていった。

仲間の萌絵(中田青渚)に足のマニキュアをしてもらいながら「何故ここに来たの?」と話が弾み、決して自分だけが不登校の落ちぶれではないことを知る。また、萌絵に就職先が決まって出ていく時には「自分はどう生きたらいいのか」と考えるようになっていく。ひとりっ子では味わえない姉妹愛のようなものを身につけていく。

稲刈りが終わり、祭りの季節。獅子舞の踊り子として村人と交わり自分の役を足し遂げることでの喜び、人に感謝されることの喜びを知る。

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このお祭りで、うまい牡丹餅を作って応援してくれたお婆ちゃんが太見ハナエ(佐々木すみ江)。「子供たちが幸せならそれが一番!」とひとり暮らしの老人の寂しさや子に対する愛情について教えてくれる。

そんなお婆ちゃんが死んでから3日目に発見されたことで動転する彩花。死の悲しみを乗り越えていくところも良いが、「人はいずれ土に還り・・」という話は古くて受けない。(笑) 「牡丹餅の味を忘れるな!」でよかったと思う。

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そして「もみの家」主人佐藤康利の妻・惠(田中美里)が産気づき、彩花はこれに立ち会うことにする。恵の苦しむお産を目の当たりにして、母・明美への感謝の気持ちが湧いて来るというシーンはよかった。特にここでの彩花の涙が最高に良かったです!
          
なにも起こってこないようなこのドラマも、彩花にとってはとても大きなドラマだったと思う。このなかで、生と死に立ち合い涙を流し、自然に感動し友を得て歓喜したことはとてつもない冒険を終えたのではないでしょうか。
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