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「JFK」(1991)誰が犯人かより、誰が何のために企んだか?

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NHK総合「未解決事件 File.08 JFK暗殺」(5月2日)が放送され、「CIAの一部、跳ね上がりが起こしたオズワルド濡れ衣説」が新しく発見された事実だと結論づけました。これを機会にNHKプレミアムで放送されたデレクターカット版オリヴァー・ストーン監督作「JFK」に挑んでみました。

第64回アカデミー賞で撮影賞と編集賞を受賞した作品、テーマがしっかりして政治メセージがすばらしい作品ですが、当時ジョージ・H・W・ブッシュが大統領では作品賞には選ばれない。(笑) また、トランプ大統領が資料公開にあたって秘密を明かすことを拒否したことも頷けます。監督も危険を感じることがあったのではないでしょうか。(笑)

オリヴァー・ストーン監督作「プラトーン」(1986)のラストシーンで主人公クリス・テイラー(監督)が第一線から後送されるヘリの中でつぶやいた「生き残った者がやるべきことは戦場で見たことを伝えること、残された人生を命を賭けて意義あるものにしなければならない」を具現した作品のように思います。 

監督、脚本オリヴァー・ストーン、撮影:ロバート・リチャードソン、編集:ジョー・ハッシング、ピエトロ・スカリア、主演ケビン・コスナートミー・リー・ジョーンズケヴィン・ベーコンゲイリー・オールドマン他豪華スター競演のドラマ。


JFK 予告編

物語は
1963年11月22日ケネディ大統領がダラスで何者かに狙撃され亡くなった。オズワルド(ゲイリー・オールドマン)が容疑者として直ちに逮捕され、その2日後郡刑務所に移送される車に乗る直前にクラブ経営者のジャック・ルビー(ブライアン=ドイル・マーレー)に射殺された。
ニューオリンズのギャリソン検事(ケヴィン・コスナー)は、TVを観ていて、オズワルドが夏ある事件を起こしていたことを思い出しその仲間のデビッド・フェリー(ジョー・ペシ)も逮捕されたが即釈放された。これら一連の迅速な事件経過に違和感を持った。事件は政府の前 CIA長官アレン・ウェルシュ・ダレスを含むウォーレン委員会の調査に委ねられ、結果が1964年9月に公表された。6 - 9秒の間にオズワルド単独で3発の発射により大統領が致命傷、同乗のコナリー知事に重傷を与えたことに大きな疑問を抱いていた。

事件から3年後、ギャリソンはオズワルドの尋問記録や射撃目撃者の調書記録が存在しないことを知り「共犯者がいる、オズワルドは囮だ!」とニューオリンズ地方検事局のスタッフと共に自ら再調査をすることにした。

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オズワルドを追うために、バニスター探偵事務所から調査開始。ここは元FBIで2年前に亡くなったバニスター(エドワード・アズナー)が“カリブ海反共同盟”を率いていた本部。オズワルドはこの事務所名でカストロ支援ビラを撒き反対派から袋叩きにされる事件を起こしていた。

ここから事件を洗い直すと意気込んだ!

バニスターの下で働いていたデビッド・フェリーを競馬場に訪ねて事件当日の行動を聞く。

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フェリーはバニスターから「(銃撃)見たことを喋るな!」と激しく殴られた」と言い、「この事務所は亡命キューバ人を訓練して本国に送る支援事務所で本拠地はマイアミにあった。皆CIAのために働いていた。オズワルドは白髪のグレイという男と一緒だった。ケネディになって閉鎖になった」と喋った。(笑)
しかし、クレイという人物の名を決して明かさなかった。

グレイという人物が何者かとフェリーの話しの中で出てきた仲間ウイリー、キォークをルイジアナ刑務に訪ねた。
ウイリーが「やつはバートランドでゲイだ。自分が相手をした」と言い、「キャンプを閉じられ、ケネディをオープンカー殺ろう。3か所なら狙うと言っていた。ケネディは国をめちゃめちゃにしたからな!」としゃあしゃあと話す。(笑)

ギャリソンは「この話は使えん!」と苦笑いした。(映画では使った(笑))

ギャリソンのスタッフが集まりこれまでに集めた情報交換を持ち寄って審査。
射撃グループを見たという鉄道員パワーズが自損事故で、麻薬の運び屋でジャック・ビルとオズワルドと知り合いという娼婦が轢逃げされて亡くなったと知る。これはかなりの痛手だ。
オズワルトの情報が明らかとなったが、ソ連に亡命した彼が何故容易に帰国できたのか。彼ほどのインテリがなぜ教科書運びという仕事をしていたのか、帰国してから何故妻に暴行するようになったか、分からないことだらけだった。

メンバーたちは射撃したという教科書倉庫ビルで、射撃に使ったと同じライフルで射撃~弾の装填~照準~射撃で6~9秒間に何発撃てるか、移動するオープンカーを遮蔽するものはないかと実証実験をした結果、3個チームが必要だという結論を得た。

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ルーセル・クラブでジャック・ルビーとオズワルドの情報を集めているとき、そこにクレイ・ショートミー・リー・ジョーンズ)が現れた。ニューオリンズ経済界の大立者で貿易センターの元理事だった。

事務所にショーを招いて事情聴取するが何も話さない。このあとショーがフェリーを脅し、これに耐えきれずフェリーがギャリソンに助けを求めてきた。「ショーとオズワルドはCIA。リビーは運び屋だった。マフィアもCIA、マングース作戦を仕切っていたのは国防省だ」と語って怯え泣きだす。その後フェリーは暗殺された。

スタッフの中にも不安がる者が出始めたとき、政府内で働いていたという退役大佐X(ドナルド・サザーランド)が現れ、「ケネディが2年後のベトナム撤退を示唆した。これにともない、大統領が暗殺された2週間前からおかしな動きがあった。在ドイツ米軍の1/3が帰国でアメリカ上空にいた、大統領警備が希薄であった。警備担当の俺が外された!」と話し、「オズワルド、ルビー、キューバ、マフィアは大きなものから目を離させる罠だ。ニュージーランドではオズワルドが逮捕された時刻に即報道されていた。組織犯罪だ!」と「新政府のクーデター」を臭わせた。

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ギャリソンの家族を脅す電話が入り、妻(シシー・スペイセク)がこの仕事から手を引くよう求めることで夫婦関係が悪化していった。
また、スタッフにもギャリソンのクーデター説に同意できず去るものが出始めた。

キング牧師が暗殺され(1968年4月4日)、ロバートケネディが選挙で勝利し、その勝利宣言中暗殺されるという事件が起こった(1968年6月5日)。もう黙っておれない、クレイー・ショーを暗殺の共謀罪で告訴した。

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1969年1月29日、ギャリソンはニューオリンズ郡刑事裁判所でケネディが三方から射撃され1発の銃弾で7ケ所に傷を与えたという“魔法の弾丸説”の虚構を暴き、クレーイの共犯を、そしてその背後にある政府によるクーデター説を吐いた。しかし、クレー・ショーは無罪に終わった。これで全ての真相が明らかになるには、オズワルドやジャック・ルビーについての非公開の極秘報告書が公表される2039年まで待つことになった。
            
冒頭での、娼婦が車から放り出され「こいつらがケネディを殺す」と叫ぶシーンとケネディ暗殺現場を見た男が「ケネディは死んだ!」と喜び、バニスター事務所の戻って小男に「何も見なかった!」とぶん殴るシーンは、分けわからなかったが、これが伏線となり、国家が犯人ではないかと謎解きをしていくサスペンス物語。
ドキュメンタリーではなく、さスペンスとして楽しめるように工夫して、この難解な事件をわかり易く観てくれるのがすばらしい!

証言者の証言内容をできるだけ実映像で、足らないものは演技映像で補完し分かり易く作って、当時の事件背景をうまく伝えてくれました!

この作品から30年後のNHK「未解決事件 File.08 JFK暗殺」で語られる内容と比して、いかにこの作品が十分に資料検討なされて作られたかが分かります。

オズワルド単独によるライフル銃弾3発でケネディ大統領と市長を死に至らしめたというウォーレン調査報告書への反論として多くの目撃者の証言をもとに実地検証で射撃機会を検討し、後半の裁判でこの成果をザプルーダー・フィルムをスクリーンに映し出して推論の正しさを訴えるシーンは、ケビン・コスナーの長いセリフも見事で、迫力があり説得力のあるものでした。マングース作戦」のメンバーが絡み複数チームによる犯行であったことは間違いない。

クーデター説の論拠を大佐(監督自身でしょう!)の証言に置き、公表されない多くの資料やいくつもの不可思議なCIA、ダラス警察などの動きから推察しているが、ベトナム戦争を遂行するためにケネディを消したい諸々の組織の思惑を忖度しCIAが実行したのではないかと思う。

「未解決事件 File.08 JFK暗殺」の結論はオリヴァー・ストン監督作の範疇でした。

トランプ米大統領ケネディ大統領の暗殺に関する2800件の機密資料公開を承認したが、国家安全保障上の懸念を理由に、その他の資料は公開しなかった。2039年の調査資料の公開を待つことになります!

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