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「スパイ・ゲーム」(2001)男の友情物語として最上の作品だ!

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タイトルが「007」を彷彿させ、ダサイ。が、ブラッド・ピットロバート・レッドフォードの初共演だという。NHKSBプレミアムで観ました。

中国での非合法工作に失敗し、拘束されてしまった愛弟子ビショップ(ブラッド・ピット)を救出するために、引退間際 のスパイ・ミュア(ロバート・レッドフォード)がそのネットワークと知力を駆使して奔走する物語。

タイトルがダサすぎます! 国家のために、危険を顧みず、超法規的に行動するCIA諜報員。厳しい環境のなかでの彼らの“正義”と絆が描かれ、命を賭けた友情物語に泣けました。

「リバー・ランズ・スルー・イット」の監督ロバート・レッドフォードとこの作品に主演したブラッドビットの関係が、まるでこの作品のベテラン諜報員とその下で働く諜報員の関係がダブリ、一層、感動的な物語になっていきます。

監督はトニー・スコット。脚本:マイケル・フロスト・ベックナー デビッド・アラタ 、撮影:ダニエル・ミンデル。

共演はキャサリン・マコーマック、 スティーブン・ディレイン、 ラリー・ブッグマン、 マリアンヌ・ジャン=バプティスト、 マシュー・マーシュ、 トッド・ボイス、 デビッド・ヘミングスらです。


『スパイ・ゲーム』日本版劇場予告編

あらすじ(ねたばれ):
1991年4月10日、蘇州刑務所でコレラが発生。外国人医師団が急行。ビショップ(ブラッド・ピット)は医師とともに救急車で刑務所に入り、医師たちの診断開始に合わせ、自らの身体を使って停電させて、ある女性の脱獄を図るが、衛門で発覚し逮捕された。とてもスリリングに描かれています。

郊外のアパートにひとり住まいのベテラン諜報員ミユア(ロバート・レッドフォード)。早朝、香港アメリカ大使館所員である諜報員ダンカン(デヴィッド・ヘミングス)から「ビショップが逮捕された。直ちに出勤して目を通せ」と知らせてきた。

ミュアがベンツを飛ばしてCIA本部に急いだ。彼にとって今日がCIA最後の勤務日だった。自室に出勤するとダンカンからの「ビショップの逮捕について」として数枚からなくレポートが届いていた。
ミュアはビショップを救う、いや救わなければならないと決めた。そこでビショップの処分を有利に進めるため詳しいことは自分が喋ると決めて、簡単な要約1枚のレポートと数枚のビショップの写真を付けた資料を副局長フォルジャー(ラリー・ブリッグマン)に提出した。ダンカンのレポートの残りは秘書のクラウディに処分するように命じた。

米中が通商交渉を開始する矢先に起きたスパイ事件。CIA作戦本部はこの事件をどう決着つけるかと難しい判断を求められていた。

ここからは「ビショップを救ってやりたい」とミュアが、彼とビショップが絡んだ過去のスパイ活動を絡ませながら、作戦本部と繰り広げる駆け引きを楽しむことになります。

早速、作戦会議は始まった。
フォルジャー副長官から「ビショップは1週間前に香港から消え、昨夜スパイ容疑で逮捕された。大統領声明のために明日の0800までにビショップに関する完全なデーターが必要だ」とミュアに協力を求められた。

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ミュアは1975年4月、ベトナム・ダナンでの出会いから、彼に与えたラオスのハン・チュー将軍暗殺行動について語った。与えられた任務は必ず達成する無鉄砲で責任感のあるやつだと強調した。

ビショップに与えられた任務はベトコンとの作戦会議にチュー将軍が現れたところをビショップが狙撃するのだが、警備ヘリが邪魔して射撃できない。ビショップは辛抱強くチャンスを待って、射殺に成功。激しいベトコンの追撃を逃れて脱出した。この暗殺はベトナム戦争終焉に大きく貢献した。

この説明に、本部局員のパーカー(スティーヴン・ディレイン)が「大統領が暗殺を許可した暗殺か?」とミュアのやり方に疑義を挟んでくる。「命令違反なんぞ平気でやるやつらだ」という感情が出ている。
ミュアは「大統領がビショップをCIA局員と認めて政治交渉すべきだ」と応えた。
「ビショップの精神状況はどうか?それが問題なら、それを言い訳にしたらいい」という意見も出てくる。ミュアは会議の雰囲気から「ビショップは見殺しにされる」と読み取った。

会議室から出て、盗聴防止電話で、香港ヘラルドのギブソン記者に「CNN向けニュースでCIA局員がスパイ容疑で逮捕されたと流して欲しい」と依頼した。

ビショップのCIA諜報員としての資質について、とても優秀だったと証言した。
技術的な専門教育のほかに、ミュアは「情報提供者のために自分の命を賭けるな!」「南国で生活できる金を貯めて手を付けるな!」(笑)を強調して教育した。

ミュアがギブソンへの依頼電話の結果を待っていた。一方本部局員たちはミュアの隠匿文書、電話記録を必死に探していた。

ミュアはフォルジャー副長官がサイドショーなる文書を持っていることに疑問を持った。

フォルジャーに促され、ロデオ作戦について説明した。これはミュアとビショップが任務で対立したときのビショップの身の処し方だった。「ビショップはやり方に反対でも、最後には必ず従う男だ!」と証言した。

東独情報筋から米大使館から機密が漏れているという情報がもたらされ、アン大使夫人に容疑が掛けられた。夫人を嵌めるため、ビショップは東ベルリンに入り政府役人を米大使館に連れてくるという任務が与えられた。
当日ミュアが大使館に乗り込みアン夫人に接触。一方ビショップは役人を連れ出すことに成功し東西境界線に近づいていた。ミュアは夫人にこの作戦がバレていることに気付き、ビショップに「作戦中止、役人を捨てろ!」と命じた。ビショップは「捨てれば彼は死」と激しく抗議したが、最後には捨てた。

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事件後ふたりはビルの屋上で会い、言い争い、ミュアが「降りろ!勝手なことをしたら決して助けにいかない!」とビショップに告げて去った。ビショップは悔しさでのあまり、屋上から椅子を投げまくった。(笑)

ミュアはフォルジャーに「サイドショーって何か?」と聞いた。彼は「盗聴作戦だ!ビショップは誰を救出しようとして逮捕された?」と言う。ミュアは「誰か?」と心当たりを探した。

1410ごろ、香港から「中国政府はCIAスパイの逮捕を確認した。米国政府は目下スパイの釈放を交渉中」とのニュースが入った。本部局員ハーカーは「最悪だ!」と叫んだ。ミュアは「これで事件は決着!」と思った。

1530、私物を整理し、退庁しようとして「ビショップ逮捕報道はデッチあげ、ビショップは14か月前に死亡。CIAは沈黙しているが彼の死は事実のようだ」というTVニュースを目にした。ミュアはサイドショー計画を逆用してビショップを救い出すことに決めた。

事務所に戻り、秘書に蘇州刑務所の衛星写真を取り寄せるよう指示。地図解析室に出向きサイドショー作戦の指揮官はロイリー中佐、作戦拠点はポンフー諸島という情報を得た。

作戦室に戻り副長官フォルジャーに「ビショップの救出相手はハドレーキャサリン・マコーマック)」と告げ細部を説明することにした。作戦本部を安心させ、サイドショー計画を盗み出すためだった。

ミュアは1985年ビショップとハドレーが絡んだベイルートでのテロ組織リーダー・サラメの暗殺作戦を説明した。ビショップはミュアより先にベイルートに入り作戦を準備した。戦場カメラマンに化けサロメの主治医アマード(アミドウ)に近づき、彼を使ってサラメを暗殺するという名案だった。そこで難民医療支援をしていたハドレーと知合い愛するようになった。

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遅れて入ったミュアにビショップはスパイでなければ手に入らないという高価なウイスキーを準備して「ディナー作戦の成果だ」と喜ばせてくれた。

ミュアは万一の場合を考え予備としてレバノン義勇軍による案を準備し、ハドレーの過去を調べて、彼女が中国政府に追われている人物だと知り、「ハドレーは危険だ」とビショップに忠告し、ハドレーには別れるよう仕向けた。

作戦結果は、当日ベイルートが戦闘状態になり、義勇軍でサラメの滞在ビルを爆破することになり、ビショップの計画は泡と消えた。
この作戦が誰の計画かバレることを恐れ、ハドレーを米国スパイとの交換で中国に手渡した。ビショップはこのことを知らず、別のチームで働くと去って行った。

1742、フォルジャーが「ホワイトハウスから呼び出しだ、会議は明朝0700から!」と席を立った隙に、サイドショー計画を盗み、これをビショップ救出命令(ディナー計画)に書き換えウイルソン長官名で、緊急通信により、ロイリー中佐に送った。さらに計画に合わせ、蘇州を30分間停電させるため専門筋に渡す金として、定年時後フロリダで過ごすために蓄えていた預金全額をマイタム銀行に振り込み、ダンカンに工作を依頼した。

0255ダンカンからの停電準備完了を聞き、0700作戦室に出勤した。

昨夜ミュアが使った通信が話題となったが、彼は平然としてロイリー中佐の計画発動許可報告を待っていた。
中佐が作戦開始許可を求めてきた電話は、秘書を通じてミュアに繋がり、ミュアが「ディナー作戦決行だ!」とにんまりと応答した。本部局員には「そんな作戦あるの?」と意味が分からなかった。

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0742、長官が「ひとり勝手なスパイの行動に、責任は取れない」と差し出した文書に、ミュアはサインして親父が営む農場へ急いだ。(笑)

感想:
本部局員とミュアの駆け引きはスリリングな頭脳戦。米国、中国の反応を読み、ビショップ見捨が決まるや、サイドショー計画をビショップ救出作戦に書き換え、香港の夜を待ち、一気に短時間で救出するという展開にスカットします。

ミュアがなぜビショップを救いたかったか。よく伏線が繋がって、非情なスパイ活動のなかにあって結ばれた友情が浮かび上がるという、うまい脚本でした。
非情なミュアの決断に恨みながらも慕うビショップ。「勝手なことをしたら決して助けない!」と宣言したにも関わらず、全財産をはたいてビショップを救出するミュア。これは泣けます。

ヘリで救出されたビショップ、パイロットが報告する「ディナー作戦終了!」を聞いて「なんと言った?」と聞き返し「ディナー作戦!」と聞いて涙を流すシーン、ブラッド・ビットのこの時の表情がすばらしい!

物語の背景としてのベトナム戦争、ドイツ東西の壁、レバノン内戦を取り上げたスパイ活動が、小噺ではあるが、映像がしっかりしていて、とてもリアルで楽しめました。特にビショップとハドレーが絡んだベイルートでのテロ組織リーダー暗殺作戦は、この部分だけでも充分楽しめるドラマになっていました。

ベトナム戦やベイルート市街戦などの戦闘シーン、ベルリンの壁を通過するシーンなど映像が当時を思い出してくれるようにとてもリアルでよかった。また、
ヘリで撮影したミュアとビショップがベルリン屋上で言合うシーンなど、とても印象的な映像でした。

男の友情物語として最上の作品だと思います。
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