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「ステップ」(2020)「命の洗濯」ができる作品!

 

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原作が重松清さんの同名小説、未読です。主演が山田孝之さん。結婚3年で妻に先立たれて男手ひとつで娘を育てるシングルファーザーと、母親を亡くし父と2人で人生を歩む娘の10年間の足跡を描いた物語だという。

もうこれだけで観る理由は十分でした。

父と娘の奮闘記だけでなく、これにお爺ちゃん、お婆ちゃんが絡む家族とはなにか、生きるとはなにか、繋がる命というとても大きな話でした。

年齢とともに家族の形は変わる。悲しいこと辛いことが一杯だ。しかしそれが人を強く優しくしてくれ、強い絆に代わる。すぐに形は見えないがステップ、ステップで踏み出せ!

監督・脚本・編集は飯塚健さん。本作が初観賞作でした。撮影:川島周さん、音楽:海田省吾さん。

共演は娘として年齢の応じ中野翆咲・白鳥玉季・田中理念ちゃん、ベテランの國村隼余貴美子広末涼子さんらが出演です。

10年間の物語を章立て(6章)にして、年齢に応じるエピソードを拾いだし、前段では父と娘の成長記が、後半はお爺ちゃんの死に絡む家族の行く末、繋がる命について描かれ、人生とは何かを問うてきます。

観る人それぞれの体験がここで描かれるエピソードに繋がり、反省や感動させられます。観る人の立場で父や娘、お爺ちゃんと主役が変わってくるのではないでしょうか。「命の洗濯」ができる作品だと思います。


映画「ステップ」7月17日(金) 遂に公開/予告編

あらすじ(ねたばれ):

2009年10月、武田健一(山田孝之)は結婚3年にして妻朋子を病気で亡くし、葬儀を終えて、妻が書き込みをしていたカレンダーを新しいものに取り換え、19日の蘭に「再出発」と書き入れ、娘とふたりで生活することにした。

なぜ健一はこの決心をしたか?最後に明かされます!一番泣けるのはここでした。

第1章 ふたりで始まった!

赤いリュックを背負わせ、ベビーカーで保育園へ。先生はカエル先生(伊藤紗莉)でとても優しい先生でした。

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会社は営業から総務に移動し、フレックス勤務を活用して育て上げる決意です。しかし、保育園の送り迎え、ごはん作り、風呂、洗濯、本を読んで寝かせる。もうくたくたで音を上げる一歩手前。しかし、「体温計で計っても分からないもの」朋子の愛を与えることはできないと悩む。このことが健一の朋子への愛となり、頑張る力になっていく。

第2章 母の日

美紀、小学1年生。見送る母親たちのなかに美紀の母の姿はないが元気だ。

参観日に母親の絵を飾ることになった。先生が心配してくれるが「私の家には母がいる」と美紀は描くことを決意。しかし、動くお母さんを見たことがないので難しいという。

健一は妻朋子似のカフェ展で働く成瀬さん(川栄李奈)さんに頼んで、遊んでもらって、お母さんらしい絵が描けた。(笑)

ここで大切なのは、美紀は母親を亡くしたことを弱点とはしていない。毎日母親の仏壇を拝むことによる、人としての強さです。母がいないことで強くなり他の子より一歩大人になっていることです。健一が逆に美紀に救われている。

第3章 お盆!

2016年美紀、小学3年生。健一38歳。

義父村松明(國村隼)に求められて岡山津山の実家のお盆に参加することになった。惚けが入った曾祖母が浴衣姿の美紀を見て朋子と間違え、「よう帰った!」と喜ぶ。美紀もすっかりそんな素ぶりを見せるという成長ぶりに健一は驚く。家族の歴史のなかで自分の立ち位置を知り、家族の絆を感じたのでしょう。

盆の灯篭流しを見ていて、「そろそろ見合いがあってもいいころ」という榎本部長(岩松了)の言葉に引っかかる。

2018年、健一40歳。

健一は榎本部長の配慮で営業部に復帰し、新規プロゼクトに出向してきた旧知の奈々恵(広末涼子)に出会い、美紀に紹介できるのはこの人だと思った。

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第4章 ガーター

義父も定年となり、義父、義母千代子(余貴美子)義兄夫婦と一緒にボーリングを楽しんだ。そのおり、義父母、義兄夫婦から奈々恵との再婚を勧められた。

 健一は美紀のことを考えて、奈々恵には結婚を言い出せない。そんな健一の気持ちを知った義父母は美紀から頼まれていたのり巻き料理を健一に肩代わりして欲しいと頼み、健一がこれを引き受けた。奈々恵から習ってのり捲きを作ったが、美紀はすべてを知っていた。美紀を奈々恵に会わせたが、これがいけなかった。

美紀は熱を出して精神的に不安定になり、義父母に「中学はそちらで過ごしたい」と訴えた。「美紀が俺との間に壁を作った!」と健一は悩んだ。

 第5章 新しい朝

2019年、義父に呼ばれ「子供が苦しいときは親も苦しい。俺も親なんだ、血が繋がっていなくても!俺の息子だ。息子夫婦には子供ができない。朋子は早死だ! 人生はリフォームすれば良いんだ!ステップファーザーだよ!」と強く背中を押された。悲しいこと、辛いことだが踏み出せ!必ず分かってくると。

 健一は朝食を三人分作り、奈々恵を招待した。奈々恵はやってきて仏壇の朋子に「ゆっくりと知ってください」と挨拶してテーブルに着いた。美紀は部屋から出てこなかったが、「トイレ!」と出てきた。(笑)

 2020年義父がガンで倒れ、入院することになった。

 最終章 卒業

健一は美紀と奈々恵を連れて、義父の入院する病院を訪ねたが、この姿は見せたくないとふたりと会うことを拒否した。

 美紀の卒業も間近。美紀が謝恩会を開くことにしてお爺ちゃんに感謝の手紙を書いた。健一も奈々恵もこの文面に泣いた!

 健一は美紀の手紙を持って雪の降る病院にお爺ちゃんを訪ねた。お爺ちゃんは美紀の手紙を読んだ。そして健一が「悲しみと辛さのなかで美紀が育ってきました。付き合って行くしかなかったんです。そこから力をもらって、朋子とともに一緒だった。父と会うことで思い出し、優しくなり、生きることに一生懸命になり、そして大人になりました」と感謝を述べた。

 父が泣いた!そして義父は正装して、義兄夫婦もいるなかで、健一、奈々恵、美紀と面会した。

義父は「雪うさぎを作ってくれ!」と美紀にせがみ外に出して、健一と奈々恵を前に「奈々恵さん、美紀と健一を頼みます。俺の息子です。朋子の分までも生きてください」と声を掛けた。奈々恵、健一が泣いた。

 雪うさぎを見て、「これは水からできているから水に戻る、お爺ちゃんも同じだ、先に消えて会えないがたまには思い出してくれ」と美紀に声を掛けた。

 美紀は生涯お爺ちゃんの言葉を思い出し強く生きていくでしょう!

 感想:

毎日の平凡な暮らしの中で、母の日、お盆、灯篭流し、のり巻きと日本の伝統的な出来事を絡ませアクセントをつけて、健一と美紀親子の生活が紡がれました。母親なしで美紀を育てることは健一にとって、とても辛い大変なことでしたが、過ぎ去ってみると、実が美紀に助けられて人間として成長していた。そこには亡くなった朋子の命が繋がっていたという結末に感動します。

 なぜ健一はひとりで美紀を育てようとしたか?答えは秦基博さんによる主題歌「在る」にありました。ラストでこれが流れるという憎い演出でした。もうひとつ、映画には出て来ませんが、義父明が奈々恵に語り掛けたことばを、美紀と結婚するときに健一に語ったと思います。

 私にとっては、義父明の生き方に感動しました。孫に美紀しかいないという明にとって、絶対的な力で守りたかったと思います。家族とはこうして命を繋ぐこと、歳を取らないと分からないかも知れません!(笑)

動的なセリフで綴られる物語でしたが、亡くなった朋子がカレンダーに健一の「昇進祝い、寿司!」と赤いペンでびっくりマークを付けて、そのまま壁に赤い線を引きながら倒れた。その赤い線を辿るように美紀が成長するに合わせて落書きをするという、これもうまい演出でした。この他にも10年間の変化を見せるいろいろな工夫がしてあって楽しめました。

最後に山田孝之んの演技。こんな演技ができるんだという繊細な演技でした。そして國村隼さんの演技。演技で泣くことはないという国村さんが泣くんです!この物語のすばらしさを表現していると思います!

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