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「ホテル・ムンバイ」(2018)

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2008年のインド・ムンバイ同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・パレス・ホテルでの人質脱出劇の映画化。オリンピックを控えている日本としてはぜひ観ておくべき作品とWOWOWシネマで観賞。

2008年11月26日夜、インドを代表する五つ星ホテルが赤ちゃんを伴った富豪夫婦や実業家など500人以上の宿泊客と従業員を人質にテロリストによって占拠された。宿泊客を守るために、プロとしての誇りをかけてホテルに残ったホテルマンたち。部屋に取り残された赤ちゃんを救出するため、決死の覚悟で銃弾の中へと向かう父と母。テロリストたちに支配される極限の状況下で、特殊部隊の到着まで数日間、どう耐え生き、脱出したが描かれます。

テルマンの「ホテルは安全!」という誇り高い使命感に感動するとともに、テロリストがTVニュースを見て動いていたという「報道の在り方」を考えさせられ、またテロリストの顔が明かされ、この種テロの背景を垣間見たように思います。

何もない日常がいかにすばらしい日々か。突発的な襲ってくる非日常に置かれて、日常で培われた絆が試されることを教えられます。

監督は本作が長編初監督作となるオーストラリア出身のアンソニー・マラス。

脚本:ジョン・コリー、アンソニー・マラス、撮影:ニック・レミー・マシューズ

出演者:デブ・パテル、アーミー・ハマーナザニン・ボニアディ、ティルダ・コブハム=ハーベイ、アヌバム・カー、ジェイソン・アンザックス。


【公式】『ホテル・ムンバイ』9.27(金)公開 /本予告

あらすじ(ねたばれ):

若い10人のテロリストを乗せたボートが「私とともにある。神とともにある。楽園が待っている。神は偉大なり!」という言葉を胸に、ムンバイの海岸を目指していた。彼らの最後は自爆である。

海岸に上がると、3組に分かれてタクシーを拾い、夕闇のなかCTS駅、カフェ・リロバ、タージマハール・ホテル(以下ホテルと略称)に急いだ。タクシーから見るムンバイの猥雑な市街地が印象的でした。

このころホテルのレストランで働くボーイのアルジュン(デブ・パテル)。シーク教徒であり、しっかり“パグリー”でめかしてホテルにスクーターで出勤。ところが出掛ける際、バッグから仕事時に履く靴が落ちたことに気づかなかった。アルジュンが住んでいるところは貧民窟でホテルとは別世界!あまりにもひどい貧富の差に驚きです。

テロリストたちは「(お前たちが襲うのは)“彼らが奪ったもの”。お前たちの父親や先祖から奪ったものだ。世界が観ているぞ!」という指導者グリーの言葉に従い、まず駅を襲う。次いで30分後カフェ、ホテルを襲うという計画。「彼らが奪ったもの!」とは何を示し、テロリストは何者か?

ホテルでは超豪華VIP、富豪ガルシア家の娘ザーラ(ナザニン・ボニアディ)とその子・キャメロン、夫である米国人の建築家デヴィッドアーミー・ハマー)を迎えていた。二人はまだ正式には結婚していないので別々に車でやってきた。

「ザーラ夫人に失礼があったら殺されるぞ!」というフロントの噂。インドには今もカースト制があるらしい。

ホテルではもうひとりの要注意VIP・実業家のワシリー(ジェイソン・アンザックス)を迎えた。女癖が悪いらしい。(笑)

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厨房ではボーイたちの服装点検がオペロイ料理長(アヌバム・カー)によって行われていた。アルジュンが靴を履いてないので勤務を降ろされるところだったが、妻が妊娠で金が必要だということで、サイズの小さい予備の靴で働くことになった。

夕食時。デヴィッドとザーラは4階の部屋にキャメロンをシッターのサリー(ティルダ・コブハム=ハーベイ)に預けて、一階のレストランでメニューを検討していた。ワシリーは夜を過ごす女をメニューからふたり選定していた。(笑)

CTS駅で、二人のテロリストがトイレで銃器を組み立て、無差別に乱射を開始。手榴弾を投げ、街頭の市民を乱射しながら警察車両を奪って逃走。カフェ・リロバ付近でもテロリストの乱射が始まり、逃げ惑う市民がホテルに押しかけていた。

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ホテルに逃げ込む市民に紛れて、3人のテロリストが侵入。いきなりロビーで無差別に乱射!ロビーを制圧し、ひとりがレストランに入ってきた。アルジュンの指示で客は一斉にテーブルの下に身を隠した。そのとき「第一段階は終了!」の声でレストランの捜索が止み、彼らは4階のBIPルームの捜索に移って行った。

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ザーラとデヴィッドは娘が気になる!携帯で確認しようにも、サリーは事件に気付かずシャワーを浴びていた。そこにテロリストが入ってきたが、サリーはキャメロンを抱えうまく別室に身を隠し難を逃れた。テロリストがトイレを覘き「糞を流す機械がある」と驚く。

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デヴィッドがひとりでキャメロンの救出に向かった。テロリストに出会ったがうまくかわし娘とサリーに会うことができた。一方、ザーラはレストランでデヴィッドたちを待つことにした。ワシリーはザーラに「これを捲け!仲間と分かるように!」とスカーフを渡す。ザーラは「仲間じゃない」と断った。ワシリーは何者かとヒヤヒヤさせられる。

TVニュース:

「金融都市が廃滅した。武装集団が暴れ回っているが、地元警察では対応できない。ホテルには1000名の客。500人の従業員がいる。ムンバイには特殊部隊がなく、ニューデリーに要請した。到着までに数時間かかる」。このニュースはテロリストが欲しがる情報を送っていた!!

ニュースを見た地元警察官の4名がアルジュンの誘導で2階管理室に入り、モニターで全館の状況把握に動く。

厨房室では、お客様を守ると、オペロイ料理長の指揮のもと、客の安全を確保できる6階チャンバーズ・ラウンジに非常階段を使って集めることにした。アルジュンはレストランに隠れている客を無事ここに誘導した。ザーラはチャンバーズにいることを携帯でデヴィッドに伝えた。

TVニュース:

イスラム原理主義者の反抗。ホテルに“ラビ”のホルツベルグと妊娠中の妻がいる」。これもひどい!

デヴィッドが6階チャンバーズ・ラウンジに行こうとサリーと娘を連れて廊下に出るが、テロリストに見つかり、デヴィッドは英人と米人を集めた特別室に軟禁され猿ぐつわをされる。サリーと娘は415室に逃げ込み、敵をかわした。

ザーラが母親に原語で携帯により話をする。これを見た英国夫人が「やつらの言葉!何を話した!一味?」と疑いの目を向けた。ヘタをするとラウンジで騒動が起きるのでは? ワシリーが「関係ない!」と夫人を宥めた!

アルジュンの髭とにも嫌疑がかかる。アルジュンは丁寧にテロリストとは無関係関係と説明した。このテロがインドの歴史と深くかかわっていることが分かります。

アルジュンはラウンジ内の病人を外に逃がすことに(失敗したが)、また「コラバ警察だ!」と名乗ってラウンジの扉に近づくテロリストをモニターで発見し、オペロイ料理長に知らせて扉を開けさせないなど、客を守ることに必死だった。

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2人の警察が制圧に当たり、撃ち合いとなり、ラウンジ内は恐怖で一時大混乱に陥った。

負傷したテロリスト・イムランが「本当に金を家族に原ってくれたのかな」と家族に携帯で確認した。「俺たちは神のしもべだ!」と泣いた。生きたいんだよな!

9時間後、ザーラはラウンジで待つことに耐えられず、デヴィッドたちに会いに行くことをオペロイ料理長に申し出た。これにワシリーが「この場所は相手に知られている」と同行を申し出て、6人が一緒に外に出ることになった。しかし、テロリストに見つかり、ザーラとワシリーが捕までデヴィッドのいる特別室に軟禁されることに。他は全員射殺された。ザーラは夫と話は出来なかった。

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12時間後、TVニュース。「ホテルを特殊部隊が囲んでいる現場映像」。

ワシリーが拷問で責められ「NDキャピタル社長で、元ソ蓮軍特殊部隊の将校であること」が分かり、「アフガンを償え!」と処刑された。

この騒ぎの隙に、デヴィッドが猿ぐつわを自分で解いてザーラに「キャメロンは4階415号室にいる」ことを教え、射殺された。ザーラは泣いた!

グリーから「軍が着いた!ワシントンに悲鳴を聞かせろ!」とホテル爆破を命じた。ホテルが火災炎に包まれる!イムランに「監禁者を全員射殺しろ!」という命令が下ったが、アラーの聖典を口にするザーラを討つことはできなかった。

オペロイ料理長が火災と特殊部隊の到着を知って、非常階段を使ってホテルを脱出することをお客に説得した。

TVの現地レポート:

ラウンジにいるホテルマンと繋がり「北棟のチェンバーズ・ラウンジには多くのVIPがいる」とレポートした。これは最悪だ!

ブルーから「チェンバーズへ行け!」と命令が下された。

お客は、ホテルマンたちに導かれ非常階段を使い、厨房を経て、途中で特殊部隊に遭遇し、表に脱出した。このなかにサリーとキャメロンの姿があった。

ザーラは415室に入り、リーサたちが逃げ出したことを確認し、窓を割って助けを求めた。

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感想:

全く動揺を見せないでAK47や拳銃を撃ちまくる銃撃現場。この残忍性にショッキングでした。人間としていかなる正義があるにせよ、許されない!

テロリストがTVニュースを見ながら、要人確保から皆殺し、ホテルの爆破・崩壊へと戦術を変えていく有様をリアルで、さらにインドのカースト制度や民族の悲しい歴史が添えられるという脚本がすばらしく、迫力がありました!

テロリストの厳しい捜索にひたすらチャンバーズ・ラウンジに籠って耐える。うろつき回るテロリストを捲いて、非常階段からの脱出など、スリリングに描いています。オペロイ料理長の的確な状況判断とアルジュンらのボーイのお客様もためにと自らを投げ出し勇気をもってお客を守り抜いた行動がすばらしい!

こんな状況で、カーストが残るなかで断禁の恋で結ばれた夫婦が、自分たちを犠牲にしてもふたりの間に生まれた赤ちゃんを救いだそうとする夫婦の物語。

感動的でした!

特殊部隊の不在や到着日時、VIP情報、その隠れ場所など、生命に関する情報やテロ制圧計画が漏れるという報道現場がしっかり描かれていた。さらにこれにSNS情報が加わったらどうなるか?

若きテロリストたちは、グリーという人物に操られ、これまでに見たこともない文明に触れ、親たちを心配し、決まっているとはいえ、最後には涙を見せて死んでいった。テロは許されることではないが、その背景に激しい貧富の差の拡大があることを訴えていた!

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