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「ザ・シークレット・サービス」(1993)ケネディ暗殺事件をモチーフに、ただの犯人追跡のエーゼント物語ではない!

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米大統領選が目前に迫っています。大統領を身を投げ出して守る護衛官の話ということで、NHKBSプレミアムで観賞。

第66回アカデミー賞(1994)で助演男優賞編集賞脚本賞にノミネートされた作品。物語は抜群に面白いです!

ケネディ大統領付き護衛官として、ダラスでの暗殺を防げなかったことを後悔するホリガンの元に、「大統領を暗殺する!」と挑発する謎の男が現れる。二度とこのような事件を起こさせないと再び大統領付護衛官となったホリガンと謎の男との対決を描くというもの。

ケネディ暗殺事件をモチーフにした作品。犯人が元CIAの男でジム・ギャリソン判事(ケネディ暗殺事件での唯一の裁判)が新犯人と推論する人物像に近いだけに、ダラス事件を思い出させてくれ、ただの犯人追跡の刑事物語ではない、アメリカの闇を思い出す作品だと思います。

エンターメント作品として、華やかな大統領選挙遊説の現場、シークレットサービスの勤務実態を知るとともに、恋あり、大アクションありで、楽しめる作品になっています。

ホリガンはプロの警護官と、いかなることがあっても“己の目”で相手を発見し、相手が撃った銃弾を身をもって受け止めるという信念の男(原題:In the Line of Fire)。ホリガンを演じるクリント・イーストウッドには大満足の役だったでしょう!

監督:ウォルフガング・ペーターゼン、脚本:ジェフ・マグワイア、撮影:ジョン・ベイリー、音楽エンニオ・モリコーネ

出演者:クリント・イーストウッドジョン・マルコヴィッチレネ・ルッソディラン・マクダーモット、ゲイリー・コール、フレッド・ダルトン・トンプソン、ジョン・マホーニ、クライド草津ジョン・ハードトビン・ベル


映画CM 「ザ・シークレット・サービス」テレビスポット

あらすじ(ねたばれ):

偽札犯罪捜査で“シークレット・エーゼント”と見破られ捕まったアリ(ディラン・マクダーモット)を素早い拳銃さばきでいとも簡単に救出するホリガン(クリント・イーストウッド)。アリは狂言回し役で、ホリガンを支えます。

ホリガンは伝説の大統領付警護官。ダラスでケネディ大統領を狙った弾を受け止められなかったことに大きな後悔を持っていた。これで妻子と別れ、今は孤独でバーでピアノを弾いて慰めるのが唯一の安らぎ。

アパートの管理人から男(J・マクローリー)が部屋に奇妙な物を残して消えたという通報で駆け付けると、ケネディ暗殺事件の報道記事・写真記事、模型フアン誌などを発見。調べるとマクローリーは31年前に死亡していたことが分かった。

引っ越し先のアパートは空になっていて、ケネディ大統領暗殺時の写真が貼られ、警護についていたホリガンの顔に丸印がついていた。

夜アパートに帰ったホリガンにマクローリーから電話が入る。「辞めずにシークレットにいたか!大統領を殺す!あんたも敵だ!」と怪電話があった。

翌日、ホワイトハウスシークレットサービス室に出向き、主任のワッツ(ゲイリー・コール)に自分への電話の傍受と大統領付護衛官に戻してくれることを訴えた。

早速、大統領の街頭パレードの警護に付いた。しかし、若いエーゼントと一緒に走るのはきつかった!

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勤務を終えてアルの車でアパートに帰る途中で、“模型フアン誌”を買ってアルに調べるよう頼んだ。

夜、またマクローリーから電話。「あのとき銃声に反応したのはあんたが一人だった。しかし、教科書倉庫をちょっと見上げればいいのにそれをせず、あの惨事。なんでせんかった?恐怖か?」と言ってきた(ヴォーレン・レポート)。これにホリガンが激怒した。逆探知は成功したがその場所にはマクローリーはいなかった。

仏大統領とのディナーを止めるよう首席補佐官に具申したが、拒否された。ディナーの警備に、女性シークレット・エイジェント:リリー(レネ・ルッソ)と共についた。

クローリージョン・マルコヴィッチ)は、プラスティックで銃を作り、サウスウエスト銀行に「マイクロ・スタンリーコーポレーション」名義で口座を作っていた。口座を作る際、おしゃべりな女性行員と会話して、素性がばれると彼女を殺害した。

シークレットサービス室にマクローリーから電話が掛かってきた。「こんども大統領のために命を捨てるのか?ヴォーレン・レポートで警護官に落ち度があったと書かれているぞ!やめとけ!ケネディには死の願望があったんだ。自分勝手なケネディだったんだ!」。電話の傍聴に成功し、駆け出したが、逃げられた。この際マクローリーは車に当たり指紋を残した。

指紋はFBIで解析したが、「これは機密だ!」とホリガンには「解析不能!」としか知らされなかった。

6日間で12州を巡る大統領の遊説に同行することになった。アルに模型フアン誌の分析を依頼した。

大統領がエアーフォースに乗り込み、大パレードを繰り広げる映像がうつくしい。ホリガンは警護に立ち続けた。カリフォルニアが決戦地と報じられていた。

一方、マクローリーはカルフォリニア勝利寄付金5万ドルを大統領に送金していた。

エアーフォースで移動中、リリーが「立ち番のとき何故サングラスをしないか?」と問うと「異常者を見た時、目で威圧感を与えるためだ!」という。ふたりはすかりいい関係になっていった。(笑)

急遽アトランタに会場が変更。雨の中で任務に就いた。風邪をひいた。次にシカゴ、雨の中での演説だった。「テロ!」と声を上げ、大統領が防護体制をとったが、これが風船の音を銃射撃音と間違えたことが分かった。「大統領が臆病に見える!」とホリガンは任務を解かれた。リリーからは「ケネディの愛人が訪ねてきたとき俺のだ!と言って停職になったでしょう。同じよ!」と慰められた。(笑)

夜、マクローリーから「風船が割れてパニクったか?なんであんな男に命を投げる!変わった仕事だ!バカだよ。俺は憂さ晴らしで殺す!」と電話があった。

アルから模型フアン誌を呼んで模型製作工場を尋ねると、政治に執着を持ち復讐するといっていた男がいたという情報を得た。似顔絵から身元は「ミッチ・リアリー」だと割れた。

彼の居場所を襲うと、そこでCIAと出くわした。CIAは「工作員で非公式任務、暗殺要員だった。不要になり解雇した」という。リアリーはプラスチックの拳銃の試射を終えていた。

ホリガンはリアリーの色々な変装写真を作らせ、警護官に持たせた。

リアリーが長電話を寄こした。「この国は美しい国だと思ったが無理だった。俺は身の毛がよだつような仕事をしていた。やつら(CIA)にそんな男に仕立てられ、俺を殺しにきた。一緒にやらんか!大統領を箱に入れて返すよ、カリフォルニアだ!」。

この長電話を傍聴し、リアリーの居るホテルに駆けつけた。彼はビルを伝って逃げる、これを追うホリガンとアル。ホリガンが捕らえられ危機に陥ったが逃げ切ったが、アルが射殺された。アルが死の直前に「この仕事を降りたい」と言っていただけに、ホリガンは「目をしっかり見たから息を止めてやる」と復讐を誓った。

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リアリーに「ダラスで任務を果たしたか?選択したか?本当に弾を喰うガッツがあったか?」と問われたのを思い出した。再び大統領付護衛官を懇願した。

リアリーのいたホテルの部屋に“SW・スケラムLA”の紙切れが遺されていた。電話番号をエーゼントスタッフに調べさせた。

ロスの「ザ・ウェスティン・ボナベンチャーホテル」。大統領到着前のホテルの安全確認でベルボーイを異常者と誤認したことで大統領付護衛官を外され、サンディエゴに先行して準備を命じられた。

空港で、エアーフォースワンの到着を見て思い出し、リアリーの部屋にあった紙切れの住所に電話すると銀行に繋がり、口座を作った当時の行員が殺されたと聞いた。

ホリガンは急遽ホテルに引き返し、寄付者名後、参加者名簿と調べていく。リアリーは変装して支持者グループに紛れ込み、密かにプラスチック銃を組み立て、装填を終えた。

大統領がリアリーに近づく。リアリーが銃の引き金を引き、ホリガンがその先に飛び込んだ!

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大統領暗殺に失敗したリアリーはホリガンを人質にエレベーターに逃げ込んだ。ホリガンの機転でリリーにエレベーター上部を撃てと指示。狙撃隊が射撃し、その隙に逃れたホリガンがリアリーを追い詰め、彼はエレバーターから投身自殺した。

感想:

前半は見えないマクローリー(リアリー)の影に、ホリガンが警護中になにが起きるのかとハラハラさせられる。後半はリアリーが姿を現し、ホリガンとリアリーが交互に描かれ、預金口座、宿に残したメモ、プラスチック拳銃などの伏線がよく繋がり、どういう形で対決することになるかとひやひやで、よく出来た脚本でした。

ラストの“ザ.ウェスティン.ボナベンチャーホテル”のパーティで大統領にリアリーが近づき発砲すると同時にホリガンが飛び込み、大会場の混乱。このあとホテルのエレベーターでのふたりの格闘と息つく間のない展開でした。

 イーストウッドのラブシーンはサービスでしたね!(笑)

 リアリーのキャラクターが圧巻で、ジョン・マルコヴィッチが凄みを出しています。CIAに恨みをもつ殺人偏執者。いったいCIAは当時如何なる動きをしていたのかという大きな疑念を抱かせ、CIAがケネディ暗殺に関わったことを暗示しているようでとても面白い。実際にこういう人物がいたかもしれないことに驚きです。

オリバーストーン監督の「JFK」(1991)が参考になります。

クリント・イーストウッドはこの年、自らが監督俳優(兼)でパーフェクトワールド」(1993)を撮っていて、ケネディ暗殺事件によほどの思い入れがあったのでしょうか、ここでもこの事件を背景にしています。

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