映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「浅田家!」(2019)パンフレットでより深く味わえる作品です!

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「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」の中野量太監督作ということで期待していました。家族の絆の物語、しっかり描かれていて、監督らしい作品でした。

さいころから写真好きで、家族の応援のなかで撮ったユニークな家族写真で世に知られ、東北大地震発生時瓦礫のなかに埋もれた家族写真の洗浄作業を行うボランティア活動を通じて、家族の絆と人生における写真の力を知るという写真家としての成長、家族の絆を問う、ユーモアと涙溢れる物語です。

写真集「浅田家!」「アルバムの力」の写真家、浅田政志さんをモデルにした作品。なぜ彼は家族写真家で世に出ることができたか、そして家族写真の力とは何かを問う作品です。

この映画にはすこし高価なパンフレットが準備されています。何故このような贅沢なパンフレットと思いましたが、理由があるんです!写真家浅田さんが出演者をモデルに撮った十数枚の家族写真が掲載されています。この写真を見たら一目瞭然、作品のテーマが全て解き明かされます!劇中の個展シーンで、来客が微笑む意味が分かります。

脚本:菅野友恵 中野量太、撮影:山崎裕典、音楽:渡邊崇。主題歌:「S.Wonderfull」歌THE SKA FLAMES

主演:二宮和也、共演に妻夫木聡平田満風吹ジュン黒木華菅田将暉


映画「浅田家!」予告【2020年10月2日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ)):

浅田家の当主浅田章(平田満)の葬儀で、亡き父親に家族が声を掛けるシーンから物語が始まります。この映像には、作品の大きなテーマが隠されています。この映像を観て、私にはこういう写真を持っていないことに、大きな失敗をしでかしたなと思っています。

この席で長男の幸弘(妻夫木聡)は弟政志(二宮和也)が家族を巻き込んでなりたい写真家になったと言います。

1989年、政志10歳。父・章は看護師の妻・順子(風吹ジュン)に代わって、主夫として、家族を支えていた。ケーキを作っていて包丁を落とし、脚に大怪我。そこに遊びから戻った政志が巻き込まれ、二階にいた幸弘が転げて駆けつけ、いずれも父親を思うばかりに怪我を負い、母の勤める整形外科で治療。治療が終わって、息子たちに送った順子の言葉が“あっぱれ”だった。(笑) 

政志12歳の時、父親が年賀状に添えるため専修寺で家族写真を撮って、そのカメラ、ニコンFeが政志の手に渡った。

記念に撮った写真は家族の写真と幼なじみの川上若菜だった。若菜には忘れられない宝物の写真となった。

政志は19歳で写真専門学校に入って、以来音沙汰なかったが、22歳のとき突然家に帰ってきた。父章がタコ焼きで祝った。この作品は料理で人の絆を描くので、なにを食べたかが大切なんです!(笑)

政志は、担任の先生に「一生であと一枚撮るとしたら何を撮るか?」という卒業課題に応えようと“あの日”の写真を撮りに戻ったのです。しかし、政志のカラフルな井出たち(刺青)に驚いた! (笑)

撮った写真は、皆でコスプレして、父が包丁で怪我して母の病院で治療したときのもの「怪我」。これで政志は最高賞を貰った。

その後、24歳で実家に戻って、パチプロ暮らし。そんななかで父が話した「俺はなれなかったが、なりたい自分になれ!」の言葉に発奮、父親の「消防士」、母親の「極道」、兄貴の「レーサー」等、成りたい自分の写真をコスプレして家族で撮りまくった。兄幸弘が恥ずかしい思いをしながら、全面的に支援した。

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政志は撮ることに自信ができ、この写真を持って東京に出てきて、若菜のアパートに同居させてもらい、プロの写真家を目指した。

幾つもの写真出版社に応募するが「オリジナリティはあるが家族写真は売れない!」と断わられ、路面に這いつくばって亀の動きを撮っていた。これを見た若菜が、自腹を切って、政志のために浅田家の家族写真をテーマにした個展を開いた。訪れる人は、みなさん笑いながら観て帰っていく。その中で小さな出版社「赤々舎」の代表・姫野希美(池谷のぶえ)に目を付けられ、出版した。このとき政志と若菜は鍋料理で祝い、ふたりで泣いた。

しかし、売れなかった。ところがこの作品が写真の芥川賞と言われる木村伊兵衛写真賞を受賞した。ことのほか若菜が喜んだ!

授賞式には家族が出席し、父・章」が「カメラを教えたのは私。受賞は私の手柄。70年の人生で自慢できるのは息子と生甲斐のある家族です」と挨拶した。

これを機に政志には各地から家族写真を撮って欲しいという依頼が入るようになった。最初に撮ったのは三陸海岸、野津町に住む高原さんの家族写真だった。しっかり家族の願いを聞いて、感情を込めて、桜の満開のなかで微笑む家族の写真を撮った。

次いで白血症の子供をもつ佐伯家の写真を撮った。子供が虹が好きというので家族で虹になってもらった。この写真を撮るとき、この家族の運命に政志はレンズを通して大粒の涙を見せた。

2011年4月、富山で仕事中、東北で地震があったことを知り、高原さん安否が心配で、震災地にやってきた。そこで大学院生小野陽介(菅田将暉)が津波で泥だらけの写真を洗浄するのを見て、外川美智子(渡辺真紀子)とともにボランティアとして参加。沢山の写真を洗浄し、写真を見て喜び元気になっていく人々を目にした。そして避難所となっている小学校の中に写真保管所を立ち上げた。

写真保管所に自分で作った家族のアルバムを持って訪れる内海莉子(後藤由依)がいた。なかなか父親が見つからない。ある日、政志が家族写真家と知って家族写真を撮って欲しいと言い出す。政志は多くの方が亡くなっているなかで撮ることはできないと断った。

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父・章の72歳の誕生祝いに実家に戻った。楽しい誕生会であったが父が脳卒中で倒れた。見舞いにきた若菜が「浅田家の写真に入れて!」と言うので、加わってもらうことにした。(笑)

父の早い回復をと兄・幸弘と専修寺を尋ね、ここで父が写真を撮ってくれた家族写真を思い出し、写真保管所に戻った。

莉子に家族写真を撮ると伝え、莉子と母親、妹の希望で、父の思い出のある海水浴の写真を撮ることにした。冬の海岸での撮影。莉子の父親が見つからないわけが分かったといつも莉子が身に着けている腕時計を自分の腕につけ、ポーズをつけて写真を撮った。莉子が泣いた! 自分が家族写真を撮ること自体に意味があることを知った。

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政志は幸いに高原家が安全であったことを掲示板で確かめることができた。

2011年9月、写真保管所を閉所し、仕事は外川さんが引き継ぐことになった。8万枚の写真を集め、6万枚が引き取られた。写真は記憶を大切にしてくれるものであるが、今を生きる力になることを知った! 政志はある日、父・章の生前葬家族写真「お葬式」を撮った。

感想:

前段、家族写真で家族の絆、政志の写真家としての成長を描く。後段、東北地震での写真洗浄作業を通じて、多くの死者に出会いそれが家族と結ばれていく姿に、写真の真の力を知るという2段構えの描き方。ふたつの話がうまく続くうまい脚本でした。パンフレットの家族写真を見れば、家族の絆や政志の成長は分かると、ストーリーを描かないパンフレットも粋なものでした。

忘れかけている津波震災の被害状況や支援活動が生々しく伝わってくる、見事なセット撮影でした。

出演者、皆さんの演技、すばらしいです。二宮さんのカラフルな井出達から立派なプロカメラマンまでの変化のある演技。その都度美しい涙を見せるという演技に酔わされます。

小野さんの無口で、黙々と写真を洗浄する姿。こんな平凡な人が、これほどの大きな仕事を成し遂げたことに、物語の本筋ではないが、感動しましました。菅田さんが演じているとは思いませんでした。分かってびっくり。作品のなかで、決して表にでない菅田さんの押さえた演技もよかったと思います。

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一番のお気に入りは父・親章です。木村伊兵衛写真賞受賞式での挨拶にみるように、家族を愛してやまない父親の姿を見ることになります。この父があっての浅田家。演じる平田さんが自然な演技ですばらしく、立派な家長さんでした。

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