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宮﨑あおいさんを応援します

「評決のとき」(1996)目と頭でなく、ハートで陪審員の心を掴め!

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裁判を目前に控えていまして、裁判劇を観たいと思っているところに、WOWOWでの放送。

原作はジョン・グリシャムの処女作。彼の新米弁護士時代の体験に基づく作品。

新米弁護士が、街を荒らす無法者の白人ふたりが黒人少女を強姦。これに復讐した黒人の父親を弁護し、数々の脅迫、妨害のなかで、如何にして無罪を勝ち得るかと苦悩するサスペンス・タッチで描くヒューマン・ドラマ。

初々しい弁護士が大きく育つ瞬間に立ち会える映画。大義のため、法を超えてもと、徹底的に弁護依頼者に尽くす新米弁護士に喝采でした。弁護士を演じたマシュー・マコノヒー出世作です!

弁護士はいかなる人物が望ましいか?この映画はその回答を与えてくれています!

監督:ジョエル・シュマッカー、脚本:アキヴァ・ゴールズマン、撮影:ピーター・メンジーズ・ジュニア。

主演はマシュー・マコノヒー、共演にサミュエル・L・ジャクソンサンドラ・ブロックケヴィン・スペイシードナルド・サザーランドキーファー・サザーランドオリヴァー・プラットアシュレイ・ジャッドら多彩と多彩です。


A Time To Kill Trailer

あらすじ(ねたばれ):

材木業の労務者カール・リー(サミュエル・L・ジャクソン)の長女トーニャ(10歳)が町の嫌われ者の白人ビリーとテイラーのふたりに強姦され木に吊るされるが、一命を取り留めるという事件が発生。

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カールは新米弁護士ブリガンスに、かってブリガンスの兄が世話になった縁を頼って擁護を要請。強姦者ふたりが裁判所に出頭したところを、軽機でぶち殺し、保安官ルーニークリス・クーパー)に右脚切断という重傷を負わせた。

ブリガンスは事務所の同僚弁護士ハリー(オリバー・プラット)と秘書のエセル(ブレンダ・フリッカー)、妻カーラ(アシュレイ・ジャッド)の反対されるがが、町を汚すならず者は許されないと、またカールの娘を自分の娘ハンナに重ねて、幼い子がレイプされた親がレイプ相手を殺す気持ちは理解できると、カールの殺人事件裁判の弁護士を引き受けた。カールは白人なら無罪、だから黒人の自分も無罪だと主張した。

担当検事は地方首席検事のバクリー(ケビン・スペイシー)で、ブリガンスは勝ったためしがない、陪審委員さえしっかり押さえておけばカールは死刑だと資金準備をする。裁判官は次期州知事を狙うヌース判事で黒人が勝利など受け入れられない。

レイプ犯ビリーの弟フレディ(キーファー・サザーランド)は、KKK団本部に頼み込み、自らが支部長となり町にKKK団を立ち上げ、ブリガンスや黒人たちの裁判活動を妨害する活動を開始した。

第1回の裁判。ブリガンスは「心身喪失で無罪」を主張。バクリー検事は「死刑」を主張し、精神科医は検察側にと強く主張した。ブリガンスは裁判地の変更を申請したが却下された。ところが密かに法廷に紛れ込んでいた司法生のロアーク(サンドラ・ブロック)が「裁判地変更却下は認められないという最高裁判例」をブリガンスに渡す。ブリガンスがこのことをヌース判事に訴えるが再び却下された。

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ロアークは高名な弁護士の娘で、死刑制度廃止を志す司法生。ブリガンスの手助けをしたいというが、ブリガンスは断った。

ブリガンスの事務所は電気経費も払えない状況。カールもその資金はない。幸い黒人牧師のエイジー(トーマス・メルディス)が寄付を募り裁判資金を作ったが、NAACP(黒人地位向上委員会)という組織を通じて白人弁護団がカールの裁判をやりたいとやってきた。カールとブリガンスはうまく連携して弁護団の不正を見ぬき、ことなきを得た。

ブリガンスは裁判に勝にかためには、黒人に有利な裁判地への変更とカールが心身喪失状態にあったと証言できる精神科医を確保すること、さらにカールが保安官ルーニーに謝罪しておくことだった。

KKK団によるブリガンス家族への攻撃が始まった。ハンナは黒人弁護士の子と虐められ、夜中ブリガンスの家の周りで十字架を燃やしで脅す!遂に時限爆弾が仕掛けられる。妻のカーラは、この仕打ちに耐えられず、裁判を続ける夫をなじって、娘ハンナを連れて実家に帰ってしまった。

ブリガンスはヌース判事の自宅を尋ね、再度裁判地の変更を求めたが「傷害致死で懲役20年でどうだ」と言い、裁判地変更は断られた。

残るは精神科医をどうするか?だった。恩師のウィルバンクス(ドナルド・サザーランド)弁護士からウィラード(ダグ・ハッチソン)精神医を紹介された。

ここにきて、ブリガンスはトーニャが犯された写真がいると、ロアークを弁護団に加えた。

ブース判の召喚状で集まった150人の陪審員のうち拒否権を使う人が何人いるかチェックした。ダメだった!

裁判所の外ではエイジー牧師の率いるカール支持者のデモが始まった。KKK団が裁判所に押しかけ、陪審員に圧力をかける。

黒人、KKK団、これに警官隊が加わり、いたるところで火炎があがるという、不気味な夜が続く。

ブリガンスはこの裁判の勝ち目は検察側の精神科医ロードヒーバー博士(アンソニー・ヒールド)のマイナス材料を見つけることだとロアークの資料集めに託した。

KKK団は裁判所にブリガンスの自宅に火をかけ、秘書のエセルの夫に危害を食われるなど一層激化し、軍隊が出動する騒ぎとなっていった。

裁判が始まった。重症を負った保安官のカールを擁護した。弁護側の精神科医ウィラードは「カールは心身喪失にあった」と証言した。一方、建設側の精神医ロードヒーバーは「正常だった」と証言した。

ロアークの情報が欲しいと思っていたところに、ドアークが精神医の勤める刑務所病院から資料を盗み出し、これまでロードヒーバーが関わった殺人事件証言11件のなかに1件も精神喪失者はないが、現実には刑務所病院に匿われていることが分かった。

これで勝てたとこの日の裁判を終え、法廷を出たところでKKK団に襲われ、警護の保安官が撃たれた。またロアークも襲われ、レイプされた。ブリガンスはロアークの入院する病院を尋ね、謝った。

翌日の裁判で、バクリー検事が弁護側の精神科医ウィラードに過去に強姦罪があったことが明かされた。もはやブリガンスに勝ち目がない! このとき恩師のウィルバンクスから「自分で乗り切れ!俺を超えろ!」と励まされた。

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カールに「あとは取引だ!第2種殺人を認めれば終身刑だ」と話し合った。カールは「あんたは白人だから、それを逆に利用して、陪審員を動かせる」と暗示した。

最終答弁でブリガンスは正義のため法の前で平等な裁判が受けられねばならないと黒人に対する偏見を戒め、目と頭は怖れと憎しみでしばしば偏見に毒されるとしてハートで感じとれるものが純粋だと説き、陪審員・傍聴人に目をつぶって聞いて欲しいと促し、少女が強姦された状況を詳細に明かし少女は白人の子だったと語って、判決を仰いだ!

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陪審員の判定は、ブリガンスの勝となった。カールの無罪を祝う黒人たちのパーティにブリガンスは家族を伴ってやってきた。

感想:

作品の背景が何時の時代、場所はどこかが明示されないが、現在の黒人騒動を見るとおり、同じことがアメリカでは今でも起こっています。

平等な黒人裁判には偏見を取り去ることだが必要だと「アラバマ物語」(1962)で説かれ、その精神はこのドラマでも描かれ、最新作「黒い司法0%からの司法」(2019)に引き継がれています。

いまだ解決の糸口さえ見えないこの大問題に、新米弁護士はどう取り組んだか?

裁判官、検察官、弁護士、陪審員さらに群衆、KKK団を絡ませながらサスペンス風に描いた弁護士物語はこれが初めて。この状況を打破するために正義や偏見だけを説いていいのかという現場弁護士の葛藤が描かれています。

KKK団の不気味な動向、黒人たちとKKK団が衝突など暴動の発生する事態がリアルで、このような状態のなかで、家族や同僚を失いながら、嘘をついてでも大義に向かって進む弁護士の姿に感動です。柔らかそうで、芯のある熱血弁護士を演じるマシュー・マコノヒーがとても魅力的で、これに絡むスーパー美人のサンドラ・ブロックにハラハラさせられます。(笑)

映像が美しく独特のカメラワークでスリリングに描いてくれます。

ブリガンスがすべての攻め手を失って気付いたのが、徹底的にカールの心情を汲み、正義のために敵を騙してでも黒人を擁護することだった。このことが歴史を変えるここにこの作品の意義があります。

弁護士は依頼人の心情を汲み、法を超えたところにまで踏み込む勇気がなければならないことを教えてくれます。弁護士さんにはこうあって欲しいと思います!

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