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宮﨑あおいさんを応援します

「きみの瞳が問いかけている」(2020)

 

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不慮の事故で視力を失ったヒロインと、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた青年の切ない恋の行方を描くというもの。

監督は三木孝浩さん。前作の「思い、思われ、ふり、ふられ」は変化球でしたので、今作は“ど”ストレートの“純愛もの”と期待しておりました。(笑)しかし、ラストで空振り!やられました!(笑)

原案は韓国映画「ただ君だけ」(2011)、未観賞です。この作品はチャップリンの「街の灯」(1931)を下敷きにしているそうです。この作品は観ております。物語のエピソードはよく似ていますが、テーマが全く異なるので比較はできません。

脚本:登米裕一、撮影:小宮山充、音楽:mio-sotido、主題歌:BTS「Your eyes tell」。

出演者:吉高由里子横浜流星、やべきょうすけ、田山涼成野間口徹岡田義徳、奥野瑛太、般若、町田圭太、風吹ジュン

突っ込みどころが多いですが、作品のテーマ追及には仕方がない、それほどに面白い作品になっています。 タイトル「きみの瞳が問いかけている」が生かされるラストシーンに号泣必死です!


映画『きみの瞳(め)が問いかけている』予告

あらすじ(ねたばれ):

酒の配達を終わって、ビル管理人として事務所に座る働き者の元キックボクシン選手・篠崎塁(横浜流星)。いつものように管理人とTVの連続ドラマを楽しむために食べ物と酒をもって立ち寄った盲目の美しい女性・柏木明香里(吉高由里子)。新しい人に替わっていてまごつくが、とても陽気にふるまう女性で、一緒にTV観て、「また来週!キンモクセイに水をやっておいて!」と帰っていく。盲目なため、臭覚が発達(笑)、塁がシャツや靴の匂いを気にする。吉高さんが塁と目線を合わせないで会話するシーン、しっかり研究したことが伺われます!

雨降りに夜。管理人室を出たところで、転倒。塁が病院で治療を受けさせ、彼女のアパートまで送るが、厳しい階段を明香里を背負って登らねばならなかった。(笑)

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塁は音楽会に誘われ、その後彼女が昔両親と来たという焼肉店で食事。「ロダンの彫刻“考える人”の足の爪は陥入爪だった」と明日香は美大で彫刻をやっていたから気付いたと言い、関心を持たないと見えるものでも見えないと話した。父母を亡くしているのだがあまり記憶がないことを嘆く。何があったのか?塁は自分の過去に触れて欲しくないので無関心を装った。

アパートに送って、塁はこれまで明かさなかった自分の名「アントニオ篠崎塁24歳」と明かした。

塁はキックボクシンをチャンピオン目前に控えながら、かって孤児院で一緒に育った今では半グレの佐久間(町田圭太)に頼まれて用心棒を勤め、ひとりの男・坂本(岡田義徳)を死に追いやって刑務所入り。人生を棒に振っていた。いまでもこの男の家族に謝罪し、教会で祈り続けていた。とても律義でいいやつ!

明香里はコールセンターで働いていた。上司の尾崎(野間口徹)が明香里のアパ-トにやってきて関係を迫る。必死でこれに抗っているところに、塁が顔を出した。(笑)塁は「やめて!」と叫ぶ明香里の声を無視して、尾崎の指を1本へし折った。

明香里が「障がい者の私には仕事がなくなる。なんでこんなことを」と塁を非難した。この現状は辛いですね!塁は「俺が責任を取る」と帰った。

塁は元のキックボクシングジムに戻ることを会長(田山涼成)とトレーナーの原田(やべきょうすけ)に伝え、猛練習を開始した。

明香里が会社を辞めたと塁の元にやってきた。「責任を取って、どこかに連れて行って」というので、塁が一番古い記憶のある風車発電のある海浜に連れていった。ここは幼いころ母親と入水自殺をした場所で、「母を死なせた!」と誰にも話さなかった胸の内を明香里に告白した。

明香里はシーグラスを探させ、「丸くなったシーグラスは誰も傷をつけない!あなたは大きな傷を負っているから、優しくなっている!」と塁を励ました。このことばで塁は盲目で弱い明日香から生きる力を貰った。この映画にはいくつかの印象的な言葉があって、これがドラマをうまく繋いでいます。

このことばで塁は明日香を一生面倒をみると同棲に踏み切り、犬のスクを飼うことにした。

塁は練習に練習を重ね、連戦連勝だった。一方、明香里は彫刻を始め、塁に役立つようにとマッサージの勉強も始めた。毎日は楽しい日々が続いた。明日香はシェイクスピアが好きで、ジュリエットがロミオに語る「私の目を見て、本心を明かしなさい」が好きな言葉だと教えた。塁が完全に明日香の虜になっていった。(笑)

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クリスマス、明日香は亡くなった両親の墓参りに塁を同行した。明日香は「初めての運転で両親を乗せて運転中に火炎で包まれた男がビルから落ちてきて、これに注意を取られ衝突死後で両親を死なせた」と話す。塁は自分が追い詰めてガソリンを被り飛び降りた事件を思い出し、驚愕した。

塁は孤児院を尋ねシスター(風吹ジュン)に罪をどう償えばよいかを問うた。シスターは「すでに終わっている、あなたが自分を許さないだけ!」と諭した。

帰ると明香里が網膜剥離で入院していた。塁は手術を勧めたが金がなく、いまでの幸せでこのままでよいと言うが、塁は自分が許せなかった。

半グレから勧められていた莫大な懸賞金が掛かった地下格闘技大会出場を引き受けた。

アパートの自分の持ち物を全て焼却し、明香里が目の手術室に入るのを見送って、試合に臨んだ。

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壮絶な試合だったが、塁の必殺技で勝負がついた。塁は明日香の手術が成功したことを確認し、償金の半分は明日香に、残り半分はガソリンを被って亡くなった坂本の家族に贈った。半グレが試合帰りの塁を待ち伏せし三度ナイフで腹をめった斬りした。

明日香は退院をして、アパートを引き払った。塁が教会の紋のついた小箱を宅配便で送ってきたが中身を確認しなかった。

明日香は孤児院を尋ね、シスターから「大切な人が出来たが側にいる資格はない」と塁が漏らしていたことを聞き、泣いた。

2年後、明日香はしゃれた陶磁器店を営んでいた。身につけていたマッサージ術を生かして、リハビリセンターでボランティアをしていた。そこで言葉が出ない肢体不自由な塁のマッサージをしたが、塁は自分を隠すことに必死だったが、明日香は塁だということが分からなかった。塁は泣いた。

塁は退院して、明日香の店「アントニオ」陶器店を尋ね、キンモクセイを持って店を出た。帰りに犬のスクが懐いてくるが、これを無視して帰った。

明日香は犬のスクの行動に異変を感じ店に帰って塁から贈られた小箱を開けた。オルゴールで「椰子の実」だった。明日香は車で塁を追って風車のある浜に着いた。

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海に向かって歩く塁に「帰る場所はそこでなない!一緒に帰ろう!」「私の瞳を見て!」と声を掛けた。塁は「・・・・・」と泣いた。

感想:

愛の形を贖罪という形で問う物語。タイトルの真意が、「暗転」があってのラストで描かれるという、「暗転」で「街の灯」とは異なる結末を見せるという発想。とても楽しく観ました。 

塁は死を求めて母の眠る海に身を沈めようとしたが、そこに明日香が現れ、「私の瞳を見て!」に塁はその瞳に何を見たか?明日香の瞳に答えがあったという結末。

吉高由里子さんを盲目のマリア様のような笑みが絶えない優しい女性に仕立て、無鉄砲で純真、めっぽう格技に強い無骨な青年を横浜流星が演じるというこのキャステイングが物語にぴたりと合っていました。吉高さんの演技評価が高いのは当然で、ここでは流星君の頑張り、特にラストシーンを評価したいですね。よかったです。新人を育てるのが上手い監督さんですから、流星君のこれからを楽しみにしています。

さて、物語ですが、突っ込みどころが多いと言いましたが、これを遙かに凌駕するテンポのよさ、伏線回収、印象に残るセリフがあって、上手い脚本でした。

物語をナゾルような監督特有の美しい映像。それにBTSの主題歌「Your eyes tell」。十分に楽しめました。次作を期待しています。

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