映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

韓国映画「無垢なる証人」(2020)自閉症者の証言を信じますか?

f:id:matusima745:20201105132210p:plain

家主を窒息死させた容疑の女性を弁護する弁護士が、唯一の目撃者である自閉症の少女の証言を巡り、検察と対決する韓国の法廷ドラマ

とても上質なエンタメ法廷ドラマで、日本での公開館が非常に限られたのが残念だったかもしれません。WOWOW初放送で観賞。

韓国映画をあまり見ないので、深いところは分かりませんでしたが、うまくできた作品だと思います。裁判劇を通じて、自閉症者への暖かい接し方、弁護士としての正義が描かれます。“お金より正義のためにと奔走する弁護士が今の日本にいるだろうか!”と感動しました。

監督は「戦場のメロディ」「優しい嘘」のイ・ハン。出演はチョン・ウソン、キム・ヒャンギ、イ・ギュヒョンチャン・ヨンナム、ヨム・ヘラン、キム・ジョンス、チョン・ウォンジュン、キム・サンユン注目はキム・ヒャンギです。


『無垢なる証人』予告編

あらすじ(ねたばれ):

人権団体弁護士のヤン・スノ(チョン・ウソン)は、年老いた父親の面倒を見ながら、46歳になるも平弁護士を続けていた。

そこに有力弁護士事務所長ビョンウ(チョン・ウォンジュン)から声が掛かり、「もうちょっと垢をつければ使える弁護士になれる」と「鼻腔閉鎖による窒息死」事件、自殺に見せかけて主人を殺害したという家政婦オ・ミラン(ヨム・ヘラン)を擁護する国選弁護士を命じられた。逮捕の決め手は自閉症をもつ少女イム・ジウ(15歳)が目撃者だということ。

ジウ(キム・ヒャンギ)はとても純粋な子。ゲームが好きで、ゲーム中に“異音”を感じて向かいのウンチク邸を見ると女性が「ぎゃあ!やめてください旦那さま・・」と叫び揉み合うふたつの影を見た。

f:id:matusima745:20201105133040p:plain

スノは刑務所でミランに会い事件を確認すると「主人キム・ウンテクは精神病で自殺だ」と言い“飴”を差し出すような愛想の良い女性だった。

ジウについては検察が証言を取ったビデオを見た。証言台に立たせれば誰も信じないからこうして証言を取ったのだろうと言われていた。

犯行現場確認にウンテク邸を訪ねると、近隣の人は「彼女はやっていない」という。部屋には息子のキム・マンホ(キム・ジョンス)が居た。会計事務所を経営していて「ミランを弁護する気はない」という。部屋の窓からジウの家を確認した。

特別児童養護学校を訪ねジウの症状を聞いた。「ジウの自閉症は一般的な自閉症とは異なり、知能が高く、話の筋が通っている。自分の世界を持っていて、開くのが大変だ」。

帰りに「発がん性ナプキン被害者」訴訟を担当している大学同期の女性弁護士キム・スインを訪ねた。訴訟裁判の先行を聞くと「想像以上に腐っている、壁の高い国だ!」と嘆く。「訴訟は長引くから保証金に焦点を絞れ!現実を見ろ!負けるのも必要だ!」と諭した。というより自分に言い聞かせていた。(笑)

刑務所でミランと打ち合わせ。現場にあったブタンガスはウンテクが買い自分で使ったことを確認した。

 公判準備。

弁護士のスノと検察担当のイ・ヒュンジュン検事(イ・ギュヒョン)が判事に呼ばれ、ジウの証人喚問について意見を求められた。判事裁定でジウが証人台に立つことに決まった。

f:id:matusima745:20201105132352p:plain

 スノはジウの証言能力を知るため、下校時のジウを追うと、学友のチェ・シネ(キム・サンユン)と一緒だった。ジウが犬の鳴き声が激しく反応するパズルやクイズが好きだった。

 第1回目の裁判。第1次公判では国立科学軍事検査研究所のコ・ジュホン研究員に対する尋問だった。ミランがウンテクにビニール袋を被らせブタンガスを注入して殺害したことを立証するために検事側が用意した証人。

f:id:matusima745:20201105132706p:plain

 ウンテクが袋を破ろうとする力とこれを阻止するミランの力のどちらが強いかの論議。スノがジュホンの論文を逆に利用してウンテクの抵抗力が強いことを主張し、ウンテクがブタンガスを販売店で購入するビデオを提示して、ミランが殺そうとしたのではなく自殺を止めようとしたことが立証された。判事から次回公判にジウが召喚すると告げられた。

 スノは下校するジウとシネを掴まえて、数学パズルをしたり、ラーメンを食べたりでジウの心を掴むよう過ごしていた。

 所長ビョンウからキャバレーに呼び出された。同席していた生理ナプキン社のイ・ジュンがホステスに金を配っていた。彼女たちを使ってインチキ情報をばら撒いているらしい。ビョンウから「キム・マンホが顧問弁護士を探しているので君を推薦した」と告げられた。

 夜、スイン担当の訴訟裁判がうまく行ってないことを知り彼女に電話しようとしているところにジウがクイズの回答を送ってきた。これを機会に朝、夕5時にクイズを出すことにした。ジウから近づきたいらしい!

 ある日、ジウを校門で待っていると、いつも一緒のシネに殴られていた。シネはジウを守る振りをしてうまく利用していたのだった。スノはジウを特別児童養護学校の救護室で休ませ、母親(チャン・ヨンナム)を呼び特殊児童学校への転校を勧めた。母親はジウには2歳で新聞を読むほどの特別な能力があり、問題ないと受け付けなかった。

 ジウを家に送って、部屋でゲームをしながら、「あの夜の事件で何を見たか」と探りを入れた。ジウがセリフと会話を覚えるのが得意だというから、「あばさん(ミラン)はどんな顔をしていた?」と聞くと、「人の心は難しい」という。彼女は壁一面に「笑い」「怒り」の写真を貼って、その時々顔とその人の心を分析していた。「お母さんは怒った顔なのに私を愛している。おじさんは笑っているが、私を利用するんですか?」と聞いてきた。スノは重要な情報を掴んだ!ここらがヨンヒこの作品のうまいところです。

f:id:matusima745:20201105132617p:plain

 第2次公判。ジウに対する尋問。ミランはウンテクを殺すときの表情は攻撃的であったというジウの証言の検証。ビョンウは「自閉スベクトラム症の理解」という文献を示し、「自閉症のものは他人の考えや感情など簡単には理解できない!」とジウの証言は信用でしないと主張した。スノは実際に色々な表情の顔を展示してジウに読ませ、「精神病患者がつまり特別な障害のある人が私の被害者の行動が攻撃だったか救助のどちらかだったかなど判断できない」とビョンウの主張を支持した。

 スノの主張で、ミラン無罪判決は決定的なものとなった。が、検事は控訴すると思った。

 公判が終わって、ジウが「私は精神病患者ですか?」と抗議。母親も激しく抗議してきた。スノは「自分は弁護士の仕事をしただけ」と答えた。

 結審で、判事はジウの証言能力からミランは「無罪」と宣告した。法廷で傍聴していたキム・マンホが微笑んで出て行った。そして、ミランがスノの話しかけにも返事せず、携帯で(息子)と会話しながら、急いで退廷した。

 スノはミランの態度の急変とキム・マンホの態度に疑問を抱き、ふたりの関係を追った。ミランの子が大病で入院中だが金がないで困っていた。キム・マンホの父親ウンテクは孤児院に遺産の全額を寄付すると意志表示していた。

 スノはこの状況を知って悩んだ!「弁護士には守秘義務がある!でも・・」。

 雨の日。ミランが動いた!下校中のジウに「今、この顔どんな顔?私は殺していないよ!あんたの口を割いてやる!」と脅した。

 スノがジウに電話したが出ない。遂に決心してイ・ヒュンジュン検事に電話した。

ヒュンジュン検事がジウの再出廷を促した。母親が反対したがジウは「証人になりたい。私は読むのも表現するのも上手いが弁護士さんが慣れないと無理。本当のことを喋りたい!」と出廷を望んだ。このことをイ検事がスノに伝えた。

 父からの誕生日カード。「法律家になったときは嬉しかった。世の中は非情に矛盾だらけで失敗して辛いが、失敗しない者はいない。自分を愛して欲しい!」を読んで、再審に臨んだ。

 再審。ジウを証言者に呼んで再審が始まった。所長ビョンウが「ジウは証人として不適切!」と発言。スノは「普通とは違うが必ずしも劣るということではない!」と自分が着けていたネクタ柄の星数(108個)を読み取らせ、ジウの瞬間的な解読力を展示して、あの夜ジウが見た光景を文章にさせた。ジウはミランがウンテクにビニール袋を被せて殺す際喋った言葉を語った!

 スノは「自分の恥ですが、証人を違う人間だと決めつけていた」と告白して、ジウへの尋問を終えた。

 裁判が終わってジウは特別児童養護学校に転校、「普通の人になろうと無理をしていた」と告白した。

 感想:

第1審と2審で判定をひっくりかえし、その理由を、自閉症就中アスペルガー症候群者の証言に偏見を持たず信じること、そして裁判における弁護士の正義とし、簡潔にして明瞭裁判における正義を訴えています。サイドストーリーとしての「発がん性ナプキン被害者」訴訟。強者が弱者に勝つという裁判の実情。これと比較しながら描き、現在の社会に繋がる作品という上手い脚本でした。

弁護士としての強さと優しさを持ち、特にジウに寄り添っていくチョン・ウソンの演技、見事でした!

この映画の立役者はキム・ヒャンギ自閉症アスペルガー症候群を見事に演じ、自閉症者を健常者より劣るという視点でみてはならないとことをしっかり訴えました!今後の活動に注目です!

                              ****