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「海街diary」(2015)平凡なことの積み上げで家族の絆は作られている!

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是枝作品「空気人形」(2009)を観て、次にこの作品を選んでみました。空気人形でのテーマ“人と人の繋がり”がよく描かれた作品でした!

亡くなった父が駆け落ちした女性に産ませた娘・“すず”を引き取った幸田家の3姉妹が、一緒に暮らして本当の意味での姉妹に家族になっていく姿を、1年にわたる鎌倉の四季のなかで、姉たちの恋模様を絡めながら描いた、心温まるホームドラマ

原作は吉田秋生さんの同名人気コミック、未読です。小説では鎌倉という古風な町で暮す4姉妹のちょっと跳んだ恋愛模様が受けたのではないかと思うのですが?この映画では“すず”が少しずつ心を開いて本当の4姉妹になっていくところが見どころの作品になっています。

何気ない日々の中で、何気ない言葉で“すず”と3姉妹が次から次へと繋がっていくエピソード、とても古風な雰囲気のなかに、今の時代が描かれているという脚本・演出がすばらしい!

そして演じる4姉妹、綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずさんの個性を生かした演技が自然で美しく、いつまでもこの姉妹を見ていたい気持ちにしてくれます。是枝作品の中でも1、2位を争う作品でなはいでしょうか。

監督・脚本・編集:是枝、音楽:菅野よう子、撮影:瀧本幹也

出演者:綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すず加瀬亮池田貴史

坂口健太郎樹木希林リリー・フランキー風吹ジュン堤真一大竹しのぶ

第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作で、第39回日本アカデミー賞の最優秀作品賞や最優秀監督賞など4賞を獲得、特に日本の四季をしっかり撮ったとても美しい映像作品です。


海街diary予告篇

あらすじ:

冒頭シーン、香田家の次女佳乃(長澤まさみ)が恋人・藤井(坂口健太郎)とホテルで過ごして朝帰りするシーンはら始まる。なんとも長澤さんの肢体が艶めかしい。なんでこの作品にこのシーンが“何故必要なのか”は物語が進むにつれ、分かってきます。

朝食時、長女の幸(綾瀬はるか)は「自分は行けないから」と佳乃と三女の千佳(夏帆)に山形でおこなわれる駆け落ちした父の葬儀に参加するよう指示した。父には中学生の女の子と3度目の妻とその連れ子がいるらしい。

佳乃と千佳が山形の田舎駅に着くと、そこに娘の浅野すず(広瀬すず)が迎えにきていて「遠いところ、ご苦労さまです」と挨拶をする。緊張したこのたどたどしい挨拶に、すずがどんな生活をしていたかがよく出ています。瑞々しいすずちゃんの演技と監督の演技指導が垣間見られるシーンでした。ここからどんどん変化してゆくところが見どころです。宿まで、間道を足早に案内するすず。彼女がサッカー選手であることが、後に分かります。

葬儀が始まって、焼香のところで姉の幸が駆けつけます。何があったのか?(“大きな伏線”です)。出棺時の挨拶を誰にするか?義母が「すずにやって欲しい!」と言い出す。これに幸が「私がやります!」と名乗出たことで、義母が「自分がする」と言い出す。この微妙は行き違いが、すずを引き取るという幸の大きな決心になっていった。このときのすずちゃんの表情がとてもいい。

葬儀が終わっての帰り時、すずが「父の残した写真です」と鎌倉の花火大会写真を渡した。幸が「すずちゃん、一番好きな場所はどこか?」と聞くと、すずは足早に周囲のよく見渡せる丘に案内する。姉妹は「山が海なら鎌倉だ!」と魅入った。すずの走る姿に、すずの気持ちがよく出ていて、涙がでました。

電車がプラットホームを離れる瞬間に、幸が「すずちゃん、鎌倉に来て一緒に暮さない!」と声を掛けると、すずが「いきます!」と返事。この時の佳乃と千佳の表情変化が面白い。去っていく電車を追って、すずが大きく手を振りながらホームを駆けて見送った。

この作品のよさ、人が繋がる切っ掛けやその繋がり、感情表現、演出などのすばらしさを描きたいために、すこし詳しく書きました。

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すずが荷物と一緒に香田家にやってきた。部屋の準備は三女・千佳の担当。彼女は勤め先で憧れのスポーツ店長・浜田(池田貴史)を招いていた。

幸は天ぷらを食べさせたいと準備。着いたすずに「もうすずちゃんとは言わないよ、すず」と。すずは香田家の仏壇に挨拶した。香田家では毎朝、仏壇にお参りする。今では珍しいが、こういうケジメのついた生活はいいですね!

お昼は天ぷらそば。“食べ物で人が繋がっていく様”が、ここからしっかり描かれます!綾瀬さんが天ぷらを揚げるシーンがいい。

すずがサッカー選手だったことを知った浜田が地元の少年サッカーチームに入ることを勧めた。すずは転校してすぐに注目され、サッカー部に入った。

叔母の菊池美代(樹木希林)がやってきて、幸に「家庭を壊した人の子だか大変よ、これで嫁に行くのが遅れる!」と言って帰って行った。(笑)

すずはサッカーチームの練習に参加。千佳と浜田が見学して「なかなか素質が良いよ」と。その帰りに馴染みの海猫食堂に寄ると女将さんの宮下さん(風吹じゅん)が「よく似てるね!」と驚く。こうして人の繋がりがどんどんと広がっていく。ちなみに食べたのは天丼だった。(笑)

長女と次女というのはよく喧嘩をするもの。幸と佳乃、風呂の順番とか着ていくブラウスのことなど、どうでもいいことでよく衝突する。千佳は“渓流釣り“の練習をしながら我関せずと決め込んでいる。(笑) すずもふたりのあぶないやり取りにも慣れていく。(笑) 佳乃は「早く好きな子を作りなさい!世界が変わって見える」と幸への当て擦りのようにすずに教える。(笑)

千佳はすずにサッカーシューズをプレゼントし、うまくすずを利用して店長・浜田をサッカー練習に誘いデートを楽しんでいる。すずのうまいパスに、濱田が「あのふたりあれだよね?あれはあれだよ」と言えば「ああ、あれか」と千佳。(笑) 

地銀に勤務の佳乃。ある日。藤井が銀行窓口にやってきて、貯金通帳の全額引き出され、挙句の果てに携帯電話で「いい男を作れ!」と。(笑) 

看護師の幸は小児科医師の椎名(堤真一)と付き合っている。椎名のアパートを訪ね料理を作ってやる。椎名は妻が病弱で離婚は言い出せないようだ。幸には婦長から終末病棟勤務を考えて欲しいという申し出があり、考え倦んでいる。幸には“父親を看取れなかった”という想いがあるようで、このことがすずを引き取ったことにも絡み、物語が深みのある話になっているように思います。

幸が玄関先の南天を採って(南天は幸せを呼ぶ)、部屋に入るとすずが酔っぱらっている!佳乃が失恋の腹癒せに飲ませたらしい。(笑)すずが「洋子さん(義母)大嫌い!お父さんのバカ!」と喚く。(笑) 幸が「あんたそっくりだ!」と佳乃にいう。(笑) すずを寝かせて、3人ですすの顔を覘く。佳乃が「耳があんたにそっくり!」と幸に。(笑) すずと似ているところを探す、「すずは妹だ!」と結ばれていくところが微笑ましい。目覚めたすずに「季節になったら焼酎の作り方教えてあげる」と二階の窓から4人で梅の木を見た。

春が近づいてきて、すずはシラス漁に参加し、家に持ち帰りシラス丼にしてを食べる。障子を張り替える。すずは香田家や土地の人のなかにどんどん受け入れられていった。

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佳乃は「仕事で生きる!」と、転勤してきた坂下(加瀬亮)と融資担当の外勤となった。融資先の海猫食堂を訪ねると「母の遺産相続で店を閉めるかもしれない」と告げられ、先行が心配になった。店を出て都市銀行から転勤した坂下に「どうして地方銀行に?」と問うと「居場所はここでないことに気付いたから!」という。この言葉を佳乃はどう捉えたか!

春になって、すずにボーイフレンド(風太)が出来た。サッカー仲間と海猫食堂でシラストーストを食べた。すずには父と一緒に食べたシラストーストの記憶があるがお姉ちゃんたちには、まだ、言えない!これを風太に話すと、風太はすずの気持ちが嬉しくて、すずを自転車に乗せて桜のトンネルを走る。病院でお父さんと見た桜のことを思い出し、悩みから解放されたすずの顔がまぶしい。

梅雨になって香田家では梅酒を仕込む。すずはお婆ちゃんが仕込んだ梅酒を見て驚く。

夏、お婆ちゃんの法事。1回忌にも3回忌にも顔を見せなかった実母・佐々木都(大竹しのぶ)が来るという。幸は「関係ない!」というが、すずは「出てもいいのかな!」と悩んだ。

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当日、都はすずに何も言わなかったが、「家を処分したら!」と言い出したことで幸が「あんたは私たちを捨てて出て行った人」と反発、これに都が「お父さんが女作ったからよ」と衝突した。

すずは「お母さんが奥さんのいる人を好きになったのはよくない」と幸に謝った。幸は「すずを傷つけてごめん!誰のせいでもない」と。

翌日都が幸に謝り、一緒に先祖墓に参り、幸が作った梅酒を贈ることでふたりは仲直りができた。親子はどこかで繋がっているんですね!

千佳がお母さんの想い出と「ちくわカレー」を作ってすずと食べる。(笑)すずが「シラスをお父さんと食べたことがある」と告白すると「私はお父さんを知らない、これからも話を聞かせて!」という。「よく釣りに行った!」。これに千佳がにんまり、“似ている”やっと父との接点が見つかった!

海猫食堂の融資問題。二宮さんは店を閉めターミナル病棟に入ることになった。

幸は椎名から「先端医療を身に着けるためアメリカに行くが一緒にきてくれないか。妻とは別れる」と誘われた。幸は佳乃と千佳にこのことを明かすと佳乃が「離婚できないのは言い訳!お姉ちゃんはお父さんと同じで弱い駄目な人!」と貶す。すずが二階でこれを聞いていたが、幸がいなくなって、佳乃にお婆ちゃんの法事で幸に「奥さんのいる人を好きになったのはよくない」と話したことで相談した。

佳乃が幸の部屋にやってきて「傷つけて悪かった!すずは私と千佳で育てます!」と謝ると、幸はすでに答えを出していた。

幸は「ターミナルケアをやってみたい。すずに父親の最期を看取らせ可哀そうなことをした」と椎名の誘いを断った。

夏の花火大会。幸がすずに自分の浴衣を贈り、花火大会に行かせた。鈴は仲間と一緒に観光船で花火を見た。花火で真っ赤に浮かび船が美しかった!

帰り道で風太「自分はここに居ていいのかなと思う。仙台でも山形でそう思った、私がいると傷つく人がいる。それが苦しい」と明かした。帰ってきたすずを姉たちが浴衣姿で迎え、庭先で線香花火を楽しんだ。この映像が美しい!

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すずは幸に、幸好みに梅酒を調合。すっかり香田家の味に馴染んだようです。幸は江の島の見える台地にすずを誘い「山形で見た風景と同じでしょう」と。幸が「お父さんのバカ」と海に向かって叫べば、すずは「お母さんのバカ!」と叫び「もっと一緒に居たかった!」と泣いた。幸はすすをしっかり抱きしめた。

二宮さんが亡くなり、香田家の4姉妹が葬儀に参列し見送った。その帰り、片瀬海岸の砂浜を歩く姉妹。幸が「お父さんはダメな人だったが、やさしい人だった。こんなやさしい妹を残して!」と喋ったが、すずには聞こえなかった。

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感想:

だらだらと書いて「なんだ!」と思うのですが、これを書かないと語れない作品。(笑) というほどに平凡な毎日が愛しくなる話でした。

すずが姉たち、友だち、海猫食堂のおばちゃんを通して、本当に妹になっていく過程が、細かいエピソードを積み上げて描かれました。このエピソードの取り上げ方が、料理であったりお洒落であったり、風景や仏事であったりと普段気にしないもののなかから選ばれているのが素晴らしい。こんな平凡なことの積み上げで我々の絆は作られていることを教えてくれます。

会話がとても楽しい。セリフがとてもリアル。言葉が相手に繋がり、変化していく様が丁寧に描かれています。出演者の皆さんの演技も自然で、表情豊かで、よく心情が伝わる物語になっていました。

花火や桜、鎌倉の風景などとても美しく描かれ、これが登場人物の心情変化に取り入れられています。四姉妹が佇むシーンが圧巻でした。

葬儀に始まり、葬儀に終わるこの作品。人と人の繋がりを、生きている人だけでなく亡くなった人との繋がりを大切にした作品でした。しかし、冒頭の佳乃の露わな姿で「生きるための物語」になったと思います。

亡き父で繋がる姉妹の絆。三人より四人姉妹が最高ですね!

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