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「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」(2019)ドンデン返しに、どんでん返し。犯人捜しだけのミステリーではない!

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犯人捜しが9人の中からだと、これは堪らないとWOWOW公開を待っていました。やっと公開されての観賞です。1回で理解するのはちょっと大変でした。(笑)

キャッチコピーは「あなたは、『この結末を“誤訳”する』」ですが、誤訳してなければよいがと思っています。(笑) 犯人捜しだけのミステリーではないぞ!でっかいテーマが隠されていました。

この作品を観る場合は作品のホームぺージに目を通しておくとよいと思います。キャラクターの名前がしっかり頭に入ると本当の面白さが分かると思いますから、9回は観る必要がある作品だと思います。(笑)

作品は世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をモチーフにした作品とのこと。

監督:「タイピスト」のレジス・ロワンサル。脚本:レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパン、撮影:ギヨーム・シフマン、音楽:三宅純。

出演者:

出版社社長:エリック・アングストロームランベール・ウィルソン

エリックの個人秘書:ローズマリー・ウエクス(サラ・ジロドー)

書店経営者:ジョルジュ・フォンティーヌ(パトリック・ボーショー)

英語の翻訳者:アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)

ロシア語翻訳者:カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ

デンマーク語翻訳者:エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)

スペイン語翻訳者:ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ

イタリア語翻訳者:ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)

ドイツ語翻訳者:イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)

中国語翻訳者:チェン・ヤオ(フレデリック・チョウ)

ポルトガル語翻訳者:テルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)

ギリシャ語翻訳者:コンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マヴロマタキス)


『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』予告編

あらすじ:

舞台はフランス。大ベストセラーミステリー三部作の完結編「デダリュス」(400ページ)を短期間で翻訳し世界同時発刊して大儲けしようと企んだ出版社社長が、9か国に堪能な翻訳者を、絶対に秘密がバレないようにと豪邸の地下シェルターに集め、厳重な監視のもとに翻訳作業を始めた。ところが20ページ翻訳したところで漏洩し、24時間以内に要求額が支払われない場合にはさらに100ページを公開するという脅迫メールが届く。

社長はたかを食って翻訳を止めて翻訳者9人への徹底的な私物検査、脅迫で自供を促している中で、自殺者、仲間割れが現れ、さらに200ページを公開するとのメールが入る。この状況で翻訳者のひとりが名乗り出た。お前は何者か?何のためにやったか?


『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』予告編

感想(ねたばれ含む):

冒頭、ロンドンにあるフォンティーヌ書店が火災で焼失するシーンから始まります。その原因は明かされない。アングストローム社長・エリックがフランクフルトのブックフェアで「デダリュス」完結編「死にたくない男の話」を12月に翻訳して3月に発刊すると派手に公表。これにより、翻訳者たちの招集が始まる。

 エレーヌは空港で小さい子供を夫に託して「小説を書いてくる!」とコペンハーゲンを出発。リスボンではテルマが「正業では食えないからパリで働く」と出立。ここでのテルマ:マリア役のレイチはゼンダーで、とてもチャーミングです。カテリーナ役オルガ・キュリレンコの優雅なファッションにも注目です!

ダリオには出版社から空港に出迎えが来ている。アレックスはパリ駅前のベンチで小説「デダリュス」を思い出しながら寝ていると出版社の車にピックアップされ、次々と9人の翻訳者がパリの大邸宅に集められた。秘書のローズマリーに導かれて警備員と厳重なセキュリティに守られた翻訳室に入った。

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いよいよ翻訳作業の開始。エリックの指示で作業が始まると、ケドリノスは部屋で作業したいと申し出るが不許可。ハビエルの作業が早い、テルマは翻訳に手を付けず悠々とタバコをふかし注意される、アレックスに至っては持ち込んだスケボで遊んでいる。チャンがその若さでなぜ参加とアレックスに問うと、一度インターとして参加していたという。

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翻訳者たちのどの行動にもテーマに絡むとても大切な情報が含まれていて、“キャラクターの描き方”がとてもうまいです。何度も見たくなります!

作業が始まって2か月後の状況に突然跳ぶ。

エリックが刑務所に面会にやってきて「お前の行動(漏洩)で大損害を被っている。この書物「デダリュス」の中に答えがある。君はどんな手を使ったか?」と問い詰める。犯人は翻訳者のひとり、姿を見せてくれません。これにはびっくり! ここで犯人は分かったという人がいるかも知れません。しかし、この物語はそんなに軽いものでなく、最後には頭をぶん殴られた感じになります。(笑)

ここからセルター内での翻訳者の行動と刑務所での犯人とエリックのやりとりを交差させながら、誰が?どうやって漏らしたか?その目的は?と探っていく展開になります。囚われの身が途中で逆転するという大どんでん返しがあるという、絶対に予測できない展開が面白です!

作業は朝9時からよる8時まで。稼業外はプールや映画、読書などで過ごす。

食事時にはアレックスやテルマの太々しい態度や翻訳文のヒロイン・レベッカの死因、主人公デダリュスの行動、これからの物語の進展が話題となる。デダリュスの物語が“事件に絡んでくる”から怖い。“デダリュス物語”の会話が延々と続き眠くなりますが、ここが我慢のしどころです。(笑)

エリックに呼ばれたエカテリーナ。隙を見て彼のバックから翻訳文を盗もうとするが失敗。彼女は熱烈な「デダリュス」フアン。先を知りたくてうずうずしている。そんな彼女をレベッカに似ていると小説発刊時のキャンペンガールに指名する。

こんなエカテリーナは夜、レベッカが溺死した心境を知ろうとプールの底に沈んで居るところに、危ないとアレックスが飛び込んでくる。アレックスは「“耐えがたい喪失と悲しみ”を描いた物語だと教えると、エカテリーナが「アングストロームはそんなこと知らずメディアに低俗なものを紹介をしている。金儲けのためなら何でもやる人だ」と非難する。こうして、翻訳者たちのあるべき姿が語られ、エリックの行う翻訳作業に疑念をもっていることがわかる。

クリスマスの夜、晩餐、ボーリングで盛り上がり、「デダリュス」の冒頭の一節をチャンが歌い始め、全員で唄ってはしゃいだ。

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そこにエリックの携帯に「デダリュス」の第3巻冒頭10ページが流出したというメールが入り、警備員はテルマを襲い、チャンに疑惑が掛かる。翻訳者たちの私物が徹底的に調べられる。遂にエリックが拳銃で脅して自白を促す。

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エレーヌのスーツケースからオランダ語で手書きの文章が発見された。エレーヌは「デダリュス」とは全く関係のない今自分が書いている小説の一部だと釈明したが、「あんたにその能力はない」と全員に前で罵った。「子育てで書けなかった小説が書ける、人をこれで喜ばせる」と考えて参加しただけにエレーナのショックは大きかった。

翻訳仲間の中でも誰だ?と疑心暗鬼になっていく。カテリーナがアレックスの翻訳にはエリックの翻訳本と違うところがあると疑念を持った。アレックスに「なぜ違うの?」と尋ねた。

実はアレックスは海賊版出版の罪で逮捕され、エリック翻訳が不適切とクレームをつけたことで、ふたりはロンドン警察でやりあっていた。アレックスが自分の翻訳の方が読者には受けているから次作では雇って欲しいと、第3巻の冒頭は予想して喋ると、これを聞いてエリックは彼を雇うことにしたのだった。「だからエリックは俺を犯人だと思っている」とカテリーナに語った。

エリックはローズマリーに「お前の文学への愛を証明しろ」とロンドンのアレックスの住み家捜査を命じた。ローズマリーはそこでパソコンと、アレックスとジョルジュが伊予に移っている写真を見つけた。

そこに「エリック時間切れだ!残りを救いたけれ8000万ユーロ払え!」とメールが入り、エリックは皆を裸にして検査するという行動に出る。これに仲間の中で犯人捜しが始まった。カテリーナの言動、レベッカファッションに疑念を抱いたダリオがお前だ!と襲い掛かり、これを止めに入った仲間と大乱闘になった。この騒動でエリックは照明と食事を断つという行動に出た。エレーナが自殺。皆が泣いた。

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刑務所でのアレックスとエリックのやりとり。

アレックスが「刑務所にいるのはあんだ!」と言えば、エリックは「あの出来事は正当防衛だった」という。アレックスは原作者オスカル・ブラックに会わせろとエリックに迫る。

なんだ!“犯人がエリック”になっている!エリックが犯人となりアレックスは面会に来ていた。このどんでん返しには驚きました。予測不能です。

アレックスが原稿漏出のトリックを喋る。

セルターに集まる前に、エレーネ、ダリオ、ケドリノスを覘く6人に、エリックの言いなりでない創作作品としての翻訳をすべきだと説いて、盗めるチャンスのある通勤電車のなかで原稿を盗むことを説き、彼らは実行した。そこにはもうひとつのトリックがあった。原稿のコピーにはアレックスが持っている原稿を使った。そして6人がこれを読んだ!

なんだ、これは!何を見せてくれていたんだ監督は?エリーナが亡くなるまでの行動は6人による共謀だったのか!

亡くなったエレーナへのエリックの非常な取り扱いに、翻訳者たちと警備員が怒り出し、翻訳者たちがそれぞれの“母国語で会話し連携”して反抗するので、もはやエリックは彼らを押さえることができなくなり、カテリーナ、アレックスを撃った。カテリーナは入院、アレックスは胸に入れていた「デダリュス」で難を逃れ、エリックは警備員に捕らわれ、警察に渡されたというわけ!

 

“アレックスこそが「デダリュス」の原作者オスカル・ブラックだった”。彼を小説家として育ててくれたのがジョルジュで、冒頭の火災はエリックがジョルジュを殺害して火を点けたものだった。

エリーナが亡くなるという突発事件以外は、アレックスによって仕組まれた恩師ジョルジュを殺したエリックへの復讐劇だった!ちょっとやり過ぎ感ありのどんでん返しでしたが、先の読めないうまい筋運びでした。

どんなトリックを使ってくるか、アクションは?怖いシーンは?と期待したが、これがない!大部がシェルター内での会話劇で眠くなる(笑)。ところが彼らが喋る感想が小説「デダリュス」のストーリーで、このストーリーを実行してエリーナを貶めたというアレックスのエリック復讐劇の“筋立て”が凄い!

エリックを貶めたのは、翻訳者を閉じ込め家畜のように扱い、翻訳者としての創作意欲を、さらに原作者の尊厳を無視したことへの抗議だった。大きなテーマのあるミステリーというところがすばらしかった。

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