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「アウトポスト」(2020)“こんな馬鹿なところに!“というアウトポストだから見る価値のある戦争映画!

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アフガン紛争の実話にもとずくミリタリー・アクションもの。特に2009年の戦闘実話(オバマ大統領の戦い方)ということで観ることにしました。

アフガニスタン紛争のなかで最も過酷な戦闘であったといわれる、アフガニスタン北部の要衝カムディシュの戦闘を描いたものです。ここに配置された前哨(アウトポスト)は四周が険しい岩山に囲まれ、なんでこんな低地に作ったかと戦争を知らない人でも分かるというバカな前哨で起こった戦闘です。「こんな馬鹿な!」というところに、この映画の面白さがあります。

2009年10月3日アフガニスタンのカムディシュで、数百人のタリバン兵がアメリカ陸軍のキーティング前哨基地にいた僅か50名ほどの兵士に総攻撃を仕掛けた。配置されていた部隊は歩兵第師団61騎兵連隊ブラボー第3中隊。戦闘が始り、銃撃戦は12時間以上に及ぶ過酷な戦闘となった。航空支援が到着する前に、8人の兵士が死に、多数の負傷者を出す悲劇となった。ところがこの部隊の兵士がアフガニスタン戦争で最も多くの名誉勲章を手にしたという戦闘です。

原作はジェイク・タッパーの「The Outpost: An Untold Story of American Valor」。監督は「ザ・コンテンダー」のロッド・ルーリー

思っていた以上に当時の米軍の戦法がよく描かれ、ここで戦った兵士たちの気概に心打たれ、ベトナム戦の教訓がしっかり生かされているなと感じる作品でした。実戦感覚のある監督が作った作品で、とてもリアルな映像でした。兵士を讃えるが決して戦争を賛美する作品ではないことを言い添えておきます。

出演はスコット・イーストウッドケイレブ・ランドリー・ジョーンズオーランド・ブルーム、マイロ・ギブソン。ジャック・ケシー他、ということで豪華です。

沢山の兵士が出てきて、分けわからんというところがありますが、これがこの映画の狙いのひとつ(「仲間」)であるように思います。


映画『アウトポスト』予告編

あらすじ(ねたばれ):

物語はこの前哨に着任するロメシャ曹長スコット・イーストウッド)らの空輸ヘリシーンから始まる。ここはもっとしっかり実際の地形を見せて欲しかった。(無理だったのかな?)

前哨に着いて最初に目についたのが、黄色に塗装された装甲戦闘車両(LMTV)と長距離偵察監視車(LRAS)、トラックを見て驚く。国連の「白」に対応するもの?そして迫りくる四周の山だった。

突然の射撃を受ける。兵士はいつものことと持ち場に走り対応。「白黄燐弾撃て!」「迫撃砲を撃て!」、これで戦闘は終わり。相手の射撃は何を意味するか?射撃でストーリーを語るなどうまい演出です。

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隊舎(しっかり防弾対策がなされている)に入ると、糞尿を処理している兵士がいた(笑)。この兵士が特技兵のカーター(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)。戦場での糞の処理を描いた映画作品などないから、まさに“これが戦場だ!”と唸りましたね!(笑)

翌日、隊長のキーティング大尉(オーランド・ブルーム)が兵士を集め、「現地人と仲良くなり、敬意を払え!俺たちを狙っているかもしれないが穏やかに話せ!これで勝利を勝ち取る」とこれから始まる村の長老たちと話し合いでの注意をする。

テントに彼らを迎え話合いをする。「タリバンと離れてくれ!金を払う。これで開発しろ!分かったら武器を捨てろ!」と話す。彼らは武器を捨てた。隊長は契約書を交わし、金の支払いは結果を見てとした。

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契約が出来たとうことで、夜会のバーベキューで大騒ぎ。あいつらは暗視装置を持ってないからだという。一緒に糞の始末!焼却する!(笑)

朝になると射撃をしてくる。兵士に移動があると射撃してくる。射撃が収まったところに、連隊から「物資をナレーまで取りに来い!」という指示が入った。隊長は情況報告を兼ね?自らがLMTVとトラックを率いて、夜間険しい崖道を走っていて、転落死。これでオーランド・ブルームの出番は終わり!(笑)

基地で丁寧な葬儀が行われた。ずいぶんと兵士に慕われた隊長だった。

後任がイエスカス大尉(マイロ・ギブソン)。着任祝いに「キリレンコ」の下着が贈られた。イーストウッドギブソンの2世役者対決です。(笑)

ロメシャが新任隊長の施設案内をしていると突然の相手の射撃。いつもの挨拶射撃だが少しひつこい、隊長の度胸試しでしょう。運悪くこのときシャワーを浴びていたのがベテラン軍曹のカーク(ジャック・ケシー)。フリチンでライフルを持って戦闘加入。(笑)

昼間、ロメシャが崖の偵察をした。真下に前哨陣地を見て、迫撃陣地、武器・弾薬庫が脆弱と見た。そして敵は正門に押し寄せると判断。「この陣地を守るには爆撃機B-1Bが必要だが時間がかかる。俺たちは連隊と孤立分断されて終わりだな!」という所見を持った。

現地採用の通訳がスマホで写真を撮っているのを発見し掴まえて審問する。写真を村人に送っていたことが分かったが、隊長は「協力してくれる!」と信じて、この通訳の罪を問わなかった。

通訳の言う「タリバンの攻撃がある」の徴候を調べるための、対岸の森林内を調査する作戦を開始した。が、隊長が吊り橋に仕掛けられた地雷に接触して亡くなった。これでギブソンの出番も終わり!」看板に偽りありです。(笑)

フロワード大尉(クワメ・パターソン)が隊長として着任。イエスカス大尉を殺した男の身分証明書を示すが、7日後には撤退だ!」と言い、捕らえようとはしない。ロメシャは「これを知ったらやつらは攻めてくる」と思った。この時期に部下に撤退を漏らすなど考えられない!

いつもの敵の射撃が始まると「よく確認して撃て!あやしいだけで撃つな!」と指示する。こんなことが出来るか?外に出ると狙撃されると、小便は部屋でコップにとりこれをカーターに始末させる。実戦経験のない、臆病な隊長のようだった。兵士のなかに“不満が出始めた”。

相手が夜間に射撃してきた。彼らは暗視装置を手にしたようだった。

長老たちが「若者が殺された」と抗議にやってきた。「金欲しさだ」とロメシャは隊長に耳打ちした。そのとき前哨で飼っている愛犬が長老に噛みついた。これをネタに金をせびる長老を見て、隊長は犬を拳銃で撃ち殺し、「機密費で払っとけ!」と指示した。隊長は更迭され、ポーティス大尉(トレイ・タッカー)に代わった。

兵士たちに本国への電話が認められ、家族との電話団欒を楽しんだ。

2009年10月3日、早朝。いつものように村の祈りの声が聞こえる。ロメシャ

が起きてLRASの情報を確認にしていると、通訳が「村人が消え、タリバンが一杯だ!」と報告する。まさかと思って周囲を見るとタリバンだらけ。「まずい!」と声を挙げた。5時56分で、兵士たちは寝ていた。「起きろ!」、皆は慌てて配置に着く。「RPGを狙え!」と叫ぶ。これほどにRPG―7の射撃が激しかった。

次々に負傷者が出る。必死で戦いながら、負傷者を収容して医療棟に担ぎ込む。ひとりに7人が関わることになる。

ロメシャはLRASに乗り、M2重機で撃ちまくった。本部にヘリ要請するが「自分の持ち場を守れ!」と追い返えされる。まだ本格的なタリバン攻撃という感覚がなかった。

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弾切れとなり「弾持ってこい!」と声が上がる。カーターがパンツ姿で弾薬ベルトを肩に、駆け回る。なんで弾薬を分散堆積してなかった?プライベート・ライアン」(1998)におけるミラー大尉の拠点守備部隊戦闘を知らなかったんですね。(笑)

カークが撃たれて身動きできない。ロメシャがカークの収容をカーターに指示した。敵の射撃の中、果敢にカークに近づき収容し、衛生兵を呼び医療棟に運び込む。カークは応急処置でヘリによる野戦病院への救出を待つことに。

タリバンが陣地内に侵入し、接近戦闘となる。2台あるLRASから兵士は下車して近接戦闘に加入。

ロメシャは正門で敵を撃破する許可を取って、兵士を募り、LMTVで正門に急ぐ。兵士の中のひとりメイスが負傷。カーターが一人でメイスを担ぎあげ、LMTVに収容した。カーターの活躍が目を引くのは、後に分かりますが、彼が名誉勲章を受章したひとりだからです。

ロメシャのM203ランチャーの弾薬が尽きて、「敵が多すぎる!」と上を見たところに戦闘ヘリ“アパッチ”が現れた!「終わりじゃない!」と女性パイロットの声!隊長から「全員伏せていろ!」の警告が出た。F-15EからのJDAM弾発射だった。次から次へと航空機による波状攻撃。

オールディン大尉が率いる救援隊が駆けつけ、山の上から航空機に爆弾投下位置を指示する。

夜、戦場は静まり、ロメシャはカーターと焚火で暖を取り、カークのヘリ後送を見送った。カーターはひとりになって沢山の遺体と一緒に眠った。基地を徹底的に焼き、翌朝基地を後にした。輸送ヘリのなかでメイスの死を知った。

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カーターが目覚めたとき、そこに美しい女性がいた。カウンセラーだった。カーターは何があったか思い出せず「彼を救えなかった、メイスを!」と泣くばかりだった。

感想:

後半の戦闘アクションが売りの作品ですが、前半のまどろっこしい描写があっての作品です。戦争という時間は毎日が糞の時間で、戦闘は一瞬です。(笑)兵士の強さは糞の時間で作られたものでした。

バカな陣地の意味が分かるのは前半、村の長老たちとの話し合いのシーンに出ているように思います。

映像から分かるように、この谷は水の源あり、村人たちにとってのオアシス、村人が集まってくる場所。前哨を潰す計画はあったが、オバマ大統領の力でねじ伏せるのではなく話合いで住民の心を掴み解決しようとする政策を生かそうと、谷底の陣地という戦術上の欠陥を圧倒的な航空攻撃力でカバーできると考え、あえてこの前哨を残したのではないでしょうか。ベトナム戦争の教訓を生かした戦い方でしたが、大尉クラスの部隊長には、この任務を全うするには荷が重かった。

決まったような相手の射撃。中隊長が変われば射撃。この射撃でこちらの出方を探るという威力偵察で、前衛隊長の出方を探っていた。中国が尖閣列島に巡視船で接近してくるのと同じ。10月3日に何故前哨が攻撃されたかが分かるストーリー展開は見事でした。

戦闘描写は、近接戦闘を主体で、迫力満点で見事でした。カメラの動きがとても良かった。弾薬切れと負傷兵救出をしっかり描いているところが本作のテーマに合っていました。

前衛からヘリによる脱出は「プラトーン」(1986)のラストシーンを彷彿とさせるものでした。その後のカーターがカウセリングで泣くシーンはこの男がこんなに優しい男だったのかと涙が出て、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの光る演技でした。

この厳しい条件下で懸命に任務に励む兵士を讃えた作品。「なぜ彼らは戦うことが出来るのか」を追う作品でした。エンデイングで生存者たちが登場し戦闘を回想しますが、彼らは「友を助けるために戦った」と誇らしく話します。勲章なんかではない生きることに必死で、友を助けるために闘ったと。「友情だよ。“4年間の付き合い”が必要だった」という言葉が耳を離れない!この結末は「イーストウッドの「父親たちの星条旗」(2006)にも描かれています。

主役はスコット・イーストウッドでした。親父さんに似ていて、終始落ち着き、寡黙なベテラン曹長の演技はみごとでした。

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