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「ノマドランド」(2020)あなたの人生の見方が変わるかも!

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ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、トロント国際映画祭で観客賞を受賞し、今年のアカデミー賞最有力候補といわれる本作、観て参りました。

ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンドは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに亡き夫との思い出や、人生の全てを詰め込んだ彼女は“現代のノマド(放浪の民)”として車上生活を送ることに。

過酷な季節労働の現場を渡り歩き、毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ねる。誇りを持って自由を生きるファーンの旅は、果たしてどこへ続いているのか――。(映画.comから引用)

アメリカでは家を持たずキャンピングカーなどの車上生活で各地を転々としながら仕事をする人を「ノマド」と呼ぶようです。

原作はジャーナリストのジェシカ・ブルーダーが2017年に発表ノンフィクション小説「ノマド漂流する高齢労働者たち」、未読です。

監督・脚本・編集は中国出身で新進気鋭の女性監督クロエ・ジャオです。初めてお目にかかりますが、マーベル新作「エターナルズ」を手がけることが決まっています。

ここで描かれるのは格差社会とか生活苦などの社会問題を扱うのではなく、そういう世界を越えた話、“人はどう生きたらいいか”、“何に生きる価値を見出すか”を問うものになっています。

社会に出て、自分の能力も見えたと思う人にはうってつけの話で、きっと美しいものが見つかります!😊

撮影監督:「ゴッズ・オウン・カントリー」「ザ・ライダー」のジョシュア・ジェームズ・リチャーズ、音楽:「最強のふたり」や是枝裕和監督作「三度目の殺人」などのルドビコ・エイナウディ。

出演者:俳優は主人公ファーンを演じたマクドーマンドと、ファーンと心を通わせるノマドのデヴィッド役を演じたデビッド・ストラザーンのみで、ほかに登場するノマドたちは実際の車上生活者だそうで、とてもうまい演技ではなく、ありのままのお姿で、彼らの話が違和感なく受け入れらます。

もうひとつの主役:自然。美しい夕日、荒涼とした原野、神秘的な岩石の山。荒々しさ海の映像に、きっと心打たれるでしょう。おそらく放浪の旅の中で見る風景は、全てのものに命があると、自分の運命を変えてしまうほどに感動的なのだと思います。


『ノマドランド』予告編

あらすじ(ねたばれ):

2011アメリネバダ州。USジプシムの工場がリーマンショックの影響から閉鎖し、街ごと消失。そこで暮らしていたファーン(60歳)は家を失った。彼女は手製のキャンピングカー(ヴァンガード)に最小限の生活品に亡き夫ポーの思い出品を積み込み、薄い雪の荒れ野を走って、季節労務者としてアマゾンの配送センターで働くことにした。

配送センターにつき、モータープールに車を停める手続きをする。なんと各地から集まったキャンピングカーが村を成していた。車内に寝て食べて洗濯して、出勤してコンベアーで運ばれる物品を梱包するだけの仕事。かってファーンは代用要員をしていて、子供から「先生!ホームレスになったの?」と聞かれ、「ホームレスでなくハウスレス」と言い返すのだった。f:id:matusima745:20210327163234p:plain

仕事仲間のリンダ(リンダ・メイ)からノマドになった理由を聞かされ、砂漠でのノマドの会同(RIR)、リーダーのボブ(ボブ・ウエルズ)の説話ビデオを見せて誘ってくれたが、そのときは曖昧な返事しかできなかった。

仕事が減ってきて、次々とノマドが去っていく。いよいよモータープールが閉塞。「仕事がしたい」と、リンダに勧められたRIRに参加することにして、砂漠を目指した。

砂漠はキャンプカーで埋まっていた。リンダと再会。ボブを紹介してくれた。

「一緒に!」と食事に誘われ、話の輪に加わった。ベトナム兵だった男のPTDSから心が穏やかになった話を聞き、ボブに「夫を肝臓で亡くしたが人生を無駄にしたくないと旅に出た」ことを話した。ノマドたちの体験談を沢山聞いた。ボブはみんなの話を聞いて「家族の全部を失った。魂を探すのはここだ!自然だ!人生の見方が変わる!」と話した。朝になるとハーレイの一群が消えていった。

次の日はノドマ同士の物々交換で必要な器具などを手に入れ、講習会でノドマとして生活する具体的技術知識、パンク修理や排泄処理などを学んだ。そして未来のRVショーとして、彼らの中の素晴らしいRVを見せてもらった。夜はキャンプファイアーで飲んで歌って過ごした。ファーンはデヴィット(デビッド・ストラザーン)に誘われ踊った。

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ファーンはノマドにコミュニティがあることを知った。

朝になるともうみんなが去って行ったことを知った。ファーンはもう少しここに残ることにして石を売る店でバイトすることにした。タバコを吸っていると「タバコをくれないか」という若い男(ディック)にタバコとライターを渡した。

自分のヴァンに戻るとパンクしている。隣の白いキャンピングカーのスワンスキー(シャーリー・スワンスキー)に助けを仰いだ。「あんた死んだっておかしくないよ!」と怒られ、放浪の旅に必要なことと色々教えてくれた。「絶対にGPSを持て!車がボロ過ぎる、ペンキを塗り直しておけ!」(笑)

ヴァンの中でクラリネットを吹いて、慌ててウンコ!(笑)そこにスワンスキーッがやってきて「気分が悪い!」という。病院に運んだ。肝臓がんで手術して今は脳に転移しているという。そんな彼女は大自然、特に鳥を見て回り、余りにもその美しさに「もう死んでもいい!」という。夜空を見ながらふたりで散歩、そのとき「死んだら石を入れて!」と言った。

このスワンスキーの話はファーンの生き方に大きな影響を与えたように思った!ヴァンの中で夫の写真を見て、微笑んだ!

朝、スワンスキーの髪を梳いて「私は夫を苦しい目に合わせた」と十分に看病できなかったことを悔やむと「そうではないよ!」と声を掛け、彼女は去って行った。😢

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ファーンは放浪の旅を続け、新しい職場「パットランズ国立公園」に清掃員として働くためにやってきた。モータープールにはノマドが集まっていた。ここでまたリンダとデヴィッドに出会った。公園内の岩山の迷路?を歩いてみた。遠くからデヴィッドが見ていた。

リンダが「また別れね!また来て!」と去って行った。

ファーンが蟻に襲われて荷物整理をしているところに、デヴィッドが「これを飲んだら!消化にいいよ!」とリコリスを届けてくれた。そして頼みもしないのに手伝って大切な皿を落として割ってしまった。激しい怒りを見せて、接着剤で丁寧につないだ。

ファーンが食事を作ってデヴィッドを訪ねると寝込んでいた。憩室病だった。病院に入れた。彼は「退院したら公園近くのウォール・ブラックで働く」という。

ファーンはデヴィットと一緒にウォール・ブラックで調理賄いとして働いた。

ふたりは動物園を訪ねたり、星を見たり、料理を作って砂漠を見ながら食事した。

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そんなところにデヴィッドの息子・ジャームスが訪ねてきて、断食会の方が父には合っていると連れ帰そうとする。デヴィッドは「父親らしいことはしてないので帰りたくない」というが、ファーンは「帰ったほうが良い」と勧めた。「一緒に来ないか?」と誘われたが、「そのうちに!」と返事した。朝、デヴィッドが訪ねてきたがドアを開けなかったら、「遊びに来たらいろんな石を見せる」と書いた紙片を残していた。

ファーンは公園を名残り惜しみ、次の仕事場に急いだ。イモ?の収穫だった。顔を泥だらけにして働いた。スワンスキーから鳥を追っかけているメールがきた。

ここの仕事を終えて次に移動しているときに車が故障した。修理に金がかかるためバスでカリフォルニアの妹に会いにいった。妹家族が暖かく迎えて金も準備してくれた。妹は一緒に住もうと勧めてくえたが断った。妹は「ノマドアメリカの開拓者だから」とこれを認めた。

デヴィッドに会いに向かった。休憩所でノマドに出会った。タバコとライターを渡した男ディックだった。「恋人がいるんだけど彼女が田舎を離れない」という。ファーンは自分の結婚体験を話して聞かせた。その夜、自分の生まれてからのアルバムを見た。途中で大樹の森に入り、木に触れて命を感じた。スワンスキーの生き方が分かるようになってきた。

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西海岸に出て、デヴィッドの家に着いた。立派な家だった。彼のキャンピングカーが壊されていた。感謝祭で一族が集まって、ファーンも大いに歓迎された。デヴィッドは孫を抱いてあやしていた。ファーンも抱いたが、しっくりこなかった。デヴィッドが息子とピアノの連弾を楽しんでいるのを見た。ファーンはデヴィットから求婚されたが、夜はヴァンの中で寝た。次の朝、昨夜いた部屋には何もなかった。家を出て雨の中の海岸でたっぷり海の香りを喫って、アマゾンで働くため砂漠に戻った。

そしてRIR(砂漠の集い)に参加しボブに会った。そこでスワンキーが亡くなったことを知り、みんなで焚火に石を投げ入れスワンキーの冥福を祈った。

ボブが「息子を5年前、33歳で亡くした。長い間息子のいない世界になぜ生きているのかと思っていたが、人を助けるのが息子を供養、支えということに気付いた。

ノマドは人の悲しみのかたちだ。この生き方が好きなんだ。サヨナラがない。また何処かで何時か会える、だから大好きなんだ!君も夫ポーと一緒に生きていくんだ」と話しかけてきた。ファーンは微笑みを返した。

夜、ここを発ってエンパイアに戻り、倉庫に預けていたものを一切処分して、夫の働いていた廃墟の工場を見て涙し、薄い雪の荒野に“ノマドとして生きる”とヴァンで走り出た。

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感想:

ストーリーは、過去の思い出を引きずるファーンの心理に寄り添って展開しノマドたちとの旅の中で、彼女はすべての過去を捨て、何を持たずとも夫は自分の中で生きていると、見える物に拘らない自由な生き方格差社会の生き方を見たように思います。飄々としたマクドーマンドファーンの佇まいはファーンそのものだった。

ファーンがノマドとして生きる決心をした背景には、美しい自然に触れながらスワンスキーの自然を愛した幸せに心動かされ、旅のなかで何度も出会いを繰り返すノマドの世界に、しっかりした精神的支柱(哲学)と強いコミュニティが存在することを確認したからで、彼女はもう孤独ではない。極めつけはボブのノマドのさよならの真意”でした。強い自我を持つファーンだからこそ、妹やデヴィッドと暮らすことより、ノマドとして生きる道を選んだと。この生き方に自分はどう生きるかというヒントを貰ったと思うのですが・・・。

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