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「ホムンクルス」(2021)俺は何を見ているんだ・・と脳に刺激を受けました!

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原作は山本英夫さんの同名カルト漫画。山本さんを全く存じあげない。監督が「呪怨」シリーズの清水崇さん。これまた存じあげない。主演が綾野剛さんで共演に成田凌内野聖陽岸井ゆきのさんという布陣。もうキャストで観ることにしました。結果は「自分の脳は大丈夫か!」と思える作品でした!😊

過去の記憶も感情も失い、社会から孤立して車上生活を送る主人公。謎の研修医による「脳を活性化する」という手術実験につき合うことになる。手術で他人の深層心理が異形のイメージが見え、それぞれが抱えるトラウマであることが分かった。彼の指摘でトラウマが癒されて行く様を知り、自らの失った記憶と向き合うことになる。そこで見た記憶は・・・、そして研修医はなにものか。

監督:清水崇、脚本:内藤瑛亮、松久育記、撮影:福本淳。

出演者:綾野剛成田凌内野聖陽岸井ゆきの石井杏奈、伊藤茄那、他。

あらすじ(ねたばれ):作品未観賞の方は見ないでください!)

ホームレスの名越満(綾野剛)が車上生活。とはいえ飯はホテルで美味い物を食べ、洗面所を使う。ホームレスたちのところには顔を出すだけ。仲間は「こいつ記憶喪失だ」と言い、「ノマド」のような生きることへの真剣さが見られない。(笑)なんでこうなったかは分からないので、物語は浅くなります!しかし、綾野さんのフィルモグラフィーで分かるように、この役は適任でした。

名越が今では見ることができない中古のマツダキャロルで出掛けようとして、ダッシュボードから“キー”が飛び出る。これを元に収めているところに、「額に穴をあけ、40%の脳の力を引っ張りだしたらどうなる、あなたでなければならない。実験は1週間です」と言い寄る脳外科医師の伊藤学(成田浚)。この男に記憶のない名越は不信感を持ちながら70万円の謝礼に惹かれて引き受けた。

伊藤は銀髪、鼻にリングで化粧という奇抜なファッション。成田さんは「窮鼠はチーズの夢を見る」(2019)で見せてくれたものよりう~んと美しく謎深い。なんでこんな風体になったかは明かされない!ふたりの関係がどうなるのかな?と思ったのですが、・・。とにかくこの物語におけるふたりの演技は見所でした。

1日目、名越に対するドリルで穴をあけるトレパネーション手術。異様な音。いやなシーンでした。伊藤の部屋がそれらしき雰囲気だった。

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2日目。「左目に集中して物を見ろ!」という伊藤の指示に従って、新宿歌舞伎町を闊歩。すれ違う人が異形に見える(ホムンクルス現象で「心の歪み」だという)。下半身がグルグル回る女性、全身が木になっている女性、体が半分ずつで手をつなぐ男たち、頭が豆電球の女性、全身サングラスを纏ったヤクザなど。こいつらがどんな心の歪み(トラウマ)も持っているかを映像から読み取るところが面白い。大笑いです!ロボット姿のヤクザの親分(内野聖陽)に絡まれ指をチョン斬られそうになる。ロボットは何を意味する?

3日目、女性キャッチ店で女性を見て、客がつかない1775番号の女高生石井杏奈)を喫茶店に誘い、伊藤が口説く。これを名越が左目で観察。伊藤が透明になった。女高生は左足首に傷はあり、その足が消えた。伊藤が水柱になり泡が立っている。女性は帰ってしまい、伊藤は「逃げられた」という。

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目に見える映像は脳で意味のある感情に変換された像であるというのがこの作品の面白さです。これ、解読できましたか?(笑) 

名越はキャロルの中で伊藤が女性から取り上げた携帯の中味を見た。名越の左目には色々な文字に見えた!「あなたとひとつになると形が変わる。はやくひとつになりた~い」と。(笑)

そこにヤクザの子分が迎えに来て、親分の部屋を訪ねた。親分が名越の指を切り落とそうとするが腕が動かない!名越にはそこにあったオモチャのロボットからすべてが読めた。「親分は子供のころカマで子供の指を切り落とした記憶がトラウマになっている」と指摘すると、親分は泣いて「ヤクザを辞める」と言い出す。このエピソードはあまりにも子供っぽい!内野さんが可哀そうでした。(笑)

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夜、キャロルに「携帯、見たでしょう!返して!」と1775番がやってきた。左目で見ると砂になり、物を言い、股を開き絡んでくる。砂は何を意味するか。名越は虚構と現実の間を行ったり来たりしながた犯した。このシーンはとてもエロッぽくて、話も映像も面白い。PG12は軽すぎます。(笑)彼女は処女だった。母親は駆けつけてきた。「車を汚しやがって!」と女を追い出した。(笑)

4日目、名越は報告に伊藤の勤務する病院を訪ねた。待合室で自分の腕がロボットに見えた。そして前にいる女性(岸井ゆきの)が透明になった。名越は何が起きたか?と驚いた。

伊藤は「あなたは女性を救った、快挙です。あなたは相手と同じ悩みを持っているから惹かれる。ホムンクルスは貴方自身だ」と言い、彼が集めたホムンクルス女性の映像を見せた。名越はその映像の中のある女に「今どうしている」と聞くと伊藤は「自殺した!」と言う。名越は「知っていたのか。もう化け物と心中する気はない!」と激しく抗議した。伊藤は「代わりに自分のホムンクルスを見てくれ!」という。これが伊藤の研究目的だった。

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名越はキャロルに戻って洗濯ものを整理しながら奈々子の思い出を探した。ここから名越の“自分探し”が始まった“

彼は車上生活の前はホームレスに値段をつけていたから損保社員?キャバレーで奈々子を見初め名刺を渡すと「空っぽ!」と言われた。去っていく彼女を追って捕まえ、キャロの中にいたことを思い出した。

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5日目、名越はキャロルの中から、出てくる女性を左目で見ると顔に目鼻がない“能面”だった。「奈々子!」と呼びかけても「記憶がない!誰ですか?」という。名越は自分の観賞植物も朽ちたマンションに連れてきた。赤い服のこと、一緒に暮していたことを話すが全く反応がない。「私が奈々子?」と言い出す始末。

このころ伊藤がいくら電話をしても名越が出ない。伊藤が焦って腕に文字を書くと?、金魚が跳ねる記憶が出てきた。彼は狂っているのか?いきなりこんな映像が出てきて意味が分からなかった。

6日目、名越は朝、目覚め奈々子を見て「おかしい」と“あのキー”で奈々子のマンションに入ると赤い服と写真があった。

自宅マンションに戻ると伊藤から、電話が掛かってきた。「“あの子”にトレパネーションやったろう」と問うと「そうだ!」という。名越は「もう記憶が戻ったからこの仕事辞める」というと「それ幻!思い込みだ。彼女は実験できなかった。あんたはホムンクルスも見えず、彼女も見えずあんたの心が歪んでいるだけ!」と伊藤が言い返してきた。

名越が混乱しているところに伊藤が訪ねて来て、奈々子を見て「チヒロさん」という。

「こんな馬鹿な!」と名越は伊藤の実験室に入り、自分でトレパネーション手術をして、“円形階段”を駆け上ってマンションに戻り、チヒロを見た。能面でなくちゃんとした顔に見える。「奈々子か?」と聞くと「違う!」と言い「私が奈々子さんを殺した」という。チヒロ(岸井ゆきの)は夜間女性を跳ね、大量の出血で亡くなったことを思い出していた。

名越が「奈々子、奈々子!」とチヒロを揺すると“能面”になってきた。クラブで会った時、「空っぽ」と言ったことを思い出しながら、ベランダで金環日食を見ると二つの空っぽが重なって円環となり、チヒロを掴まえていた。「奈々子落ち着け!」というのに「私は死んでも泣かない。変わらない!」と奈々子がアパートを走り出て交通事故に遭ったことを思い出した。チヒロも事故のことを思い出していた。

名越が「奈々子を捕まえようとしていた。謝りたい!君の名は?」と問うと「チヒロです」と泣き崩れた。チヒロの髪を撫でてベッドに寝かせた。名越は現実と虚構を行き来していたが、現実に戻っていた。

チヒロ役の岸井ゆきのさんがとても美しく撮ってあって大満足でした。しかし、演技をさせねば勿体無い!

別室で名越と伊藤が対峙。伊藤が「加害者の彼女を探し出す名越さんの気持ちは私の虚構、傷の舐め合いです」という。名越は「舐め合っているけどいいの。なんでむきになる。なんで俺を否定する!お前は水で出来ている透明人間で、興奮すると泡がでる」と伊藤のトラウマ映像を話すと「違う!それは親父だ!」と否定。金魚が飛び出した!

名越が「親父さんはこの金魚とお前のどちらを可愛がった?目がない、見えない、見てくれない」と伊藤を煽った。伊藤は子供のころ父親に愛されず、父親の飼育する金魚鉢を壊したことを思い出していた。

「名越さん、しっかり俺を見てください!」と懇願する伊藤に、名越は「ホムンクルスは消えた!」と伊藤を抱いて慰め、去って行った。

7日目、伊藤が自分の額にトレパネーション手術を施した。伊藤の負け、言いようのない微笑みの成田さん。うまい演技でした。

名越はキャロルにチヒロを乗せて、菜の花の一本道を走りだした。チャップリンの「殺人狂時代」のラストシーンだった。(笑)そしてトレパネーションのドリルの音!

感想:

サイコ・ミステリーと言われるが、そんな感じがあまりしなかった。

前段、絵の発想や色彩がおもしろかったが、後半はキャッチコピーのとおり「俺は何を見ているんだ」という、よくストーリーが分からなかった。私自身が名越になって大混乱でした。もっと分かるように描いた方が怖くなると思うのですが・・。脳は小宇宙。分からないことだらけ。自分の脳を覘いてみたくなります!

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