映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「BLUE/ブルー」(2020)試合に負けても、やり続ければ人生の負けではない!

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吉田恵輔監督作品は人生の応援歌だと思っていますので、楽しみにしておりました。

人一倍ボクシングに情熱を注ぎながらもなかなか報われない、というか一度も勝ったことのない男のボクシング人生を描くというもの。

まさに監督にうってつけの作品だと思いました。😊「馬車馬とビッグマウス」(2013)に近い作品ですが、こちらはボクシング歴30年の監督自らが、体験を活かして書き下ろした脚本です。

BLueはボクシングでの青コーナー、挑戦者席。この席が、実は人生のブルー席であったという物語。「ボクシングに負け続けても、やり続ければ人生のブルー席になる」という応援歌になっています。私にとっては自分を育ててくれた先輩たちを思い出して感謝し、後輩たちにエールを送りたくなる、とても感動的な作品でした。

試合に負け続ける主人公の日常を描く前段、穏やかで親切、自分の近くにあるジムの物語のようで、ちょっと入会したくなるようなボクシング風景。しかし、後段になって後楽園ホールでのボクシングシーンになると、殴り合うのではなく、人生を賭けた本物のボクシングを見せてくれます。😊

監督・脚本・殺陣指導吉田恵輔撮影:志田貫之、ボクシング指導:松浦信一郎、音楽:かみむら周平主題歌:竹原ピストル「きーぷ うおーきんぐ!!」。

出演者:松山ケンイチ木村文乃柄本時生、守谷周徒、吉永アユリ竹原ピストル、よこやまよしひろ、東出昌大、他。

 あらすじ(ねたばれ):

大牧ボクシングジム。瓜田信人(松山ケンイチ)は一度も試合に勝ったことのない選手、それでいてトレーナーを兼務。ボクシング好きで理論家。基本が出来ていても弱いとジムの後輩たちからは軽んじられている。

瓜田の勧めでボクシングを始めた小川一樹(東出昌大)は瓜田の高校時代の後輩、抜群のボクシングセンスと才能の持ち主で日本チャンピオンを目指している。瓜田は小川のスパーリング相手に立ち技術的なコメントはするし、酒は慎めと私生活にも口を挟む。小川は瓜田の試合に付き添って「今度は勝て!」と靴紐を結ぶ仲です。

ゲームセンターで働く楢崎剛(柄本時生)が、彼女の多恵(吉永アユリ)に「俺はボクサーだぞ」と恰好いいところを見せたと、なんとも不純な目的でジムを訪ねてきます。(笑)

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楢崎を見た瓜田は「やってみるか」と気さくに声を掛け、縄跳びから教え始めます

監督のボクシング体験、ボクシングの面白さを伝えるように楢崎のボクサーとしての成長が描かれます。楢崎のキャラが面白いですから、笑いながらボクシングドラマを楽しめます!

瓜田は美容院に行き、小川の彼女・天野千佳(木村文乃)に整髪してもらいながら「あいつ病院で診てもらえ!」と勧める。千佳と瓜田は幼友達、千佳の勧めで瓜田はボクサーになった経緯があります。小川、瓜田、千佳の三角関係はボクシングの試合のようにさっぱりしたもの。(笑)瓜田が小川の才能を知って譲った?(笑)

小川は病院で脳を検査してもらうと「最悪の場合、痴呆症」と診断が下された。瓜田は小川の異変に気付いていた。小川は千佳に「ボクシングを辞めない」と伝えた。

大牧ジムにはもうひとり特異な練習生、赤に髪を染めた洞口(守谷周徒)がいた。練習嫌いだかめっぽうプライドが高く、新入りの楢崎が気になる。

会長(よこやまよしひろ)から小川に対戦相手が「石橋拓」、瓜田には「その前座だ」と告げられ、小川と瓜田の練習が開始された。瓜田はトレーナーを兼務しており毎日夜遅くまでジムで過ごし、シャドーボクシングをしながらアパートに帰ってひとりで飯を食べる。

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一方、小川はアルバイトで車での配達業務をやっていたが、配達ミスの連発。

瓜田は小川の減量につき合って「タイトル戦で引退するか?」と聞くが返事はなかった。

瓜田は1回でノックアウトされ、千佳と一緒に小川の試合を見るんですが、千佳がお茶を買ってきたところで試合はカット(笑) 映像では見せてくれない、小川が勝に決まっている、後段のタイトル戦に取って置いたようです。この演出はよかったと思います!負けた瓜田が千佳に見せる明るさ、一体これはなんなんだ!しかし、洞口から「あいつは逃げている!精神的に弱い」と、小川から「また負けると思っていたか!」と批判される。

小川はアルバイトでミスが出る、自転車で転ぶ、物忘れが激しい。千佳がしっかり支えているが心配になり、喫茶店に瓜田を呼び出し「引退を勧めて欲しい」と相談する。瓜田は「出来ない!日本タイトルだよ、あいつの夢だ!」と断った。

洞口が楢崎にスパーリングを持ち掛けた。楢崎はびびって断る。会長の許可で始めた。洞口に「打って来い!」と挑発されるが楢崎は1発も打てなかった。楢崎は悔しさでベンチに横になって泣く。これに瓜田が「よかった!」と励ます。楢崎は起き上がって周りの選手たちの練習を見て、「やったるぞ!」と決意。ボクシングでは1発喰らうことで強くなる。「気にするな!」という瓜田の指導も上手かった。これを契機に楢崎は瓜田の指導で腕を上げ、プロテストに合格。一方の洞口は我流ボクシングで基本ができていないと不合格になった。

瓜田が大坂の試合で負け、夜行バスお帰りに小川に電話。千佳に代わるの返事。この悔しさ!バカにするな!だったでしょうね。

口はプロテスト不合格に不満で、「勝てない瓜田の指導のせいだ」と罵る。遂に楢崎がこれに耐えられずスパーリング対決となった。楢崎が圧倒的に試合を進め、終了後洞口が倒れて痙攣をおこし、緊急手術を受けるという大牧ジムにとって大変なことになった。楢崎は泣いて謝った!洞口は笑ってこれを受け入れた。

ここでも瓜田は楢崎に「頑張ってやれ!大丈夫だ!」と声を掛け、この言葉で楢崎は救われボクシングを続けることになった。

ボクシングでの基礎訓練が如何に大切であるかということ、試合の厳しさを教えられます。監督はこのエピソードをどうしても取り上げたかったんだと思います。小川が脳に異常をきたしていることが如何に危ないか。

小川のタイトルマッチ戦相手が決まった。瓜田、楢崎も前座で出場が決まった。瓜田の相手はこれがレビュー戦だという笹崎。

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その夜、瓜田は小川のアパートを訪ね、ふたりで戦術を練った。小川が「この試合が終わったら千佳と結婚する」と宣言した。

小川は新しいアパートに引っ越しすることにした。瓜田は引っ越しで怪我した千佳に包帯を飽きながら「千佳が勧めてくれたボクシングで俺の人生は変わった、俺の恩人だ」と伝えた。

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小川の公開スパーリングは「良い選手だ!」ととても好評だった。

楢崎は一緒に住んでいるお婆ちゃんがスーパーで万引して捕まり、これを引き取っての帰り、婆ちゃんに「俺は明後日プロレビュー、勝ちてえ!」と話しかけていた。(笑)

試合当日、

先ずは瓜田。ここから試合をちゃんと撮ってくれます!相手はレビュー戦とは言え、元キックボクシング選手でキャリアーがあった。瓜田を挑発し、時間稼ぎで試合を引っ張るという最悪の試合展開。4回ノックアウトされて試合は終わった。控室に戻り相手が「もっといい相手を見つけてくれ!」と抗議しているのを楢崎が見ていた。

次いで楢崎。緊張していてトイレが気になる楢崎、1回でノックアウトされた。(笑)

小川のタイトルマッチ戦。瓜田はリングサイドで声を掛けることにしていた。「距離を取れ!」「アッパーで責めろ」と声援するが打たれっぱなし。千佳が泣き出す!次第に夜研究したとおりの小川の試合運びになってきて、小川のノックアウトでゴング。

インタビューで勝因を聞かれ「阿沼の分析です」と相手の選手の名前で回答。彼の頭は混乱していた。(笑)

戦勝祝い。「なんでヘラヘラ笑って試合に負けて、そんな人にアドバイスされても」という瓜田批判が出たが、これを千佳が止めた。早々に会を引き上げての帰り、瓜田は「お前が敗ければとずーと願っていた」と小川と千佳に突然告げた。小川は「分かった!」と答えると、「じゃ!」と振り向くことなく瓜田は去って行った。小川はこれに深く頭を垂れた。

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瓜田はこの夜から、ジムに現れることはなかった。ジムには小川のチャンピオンベルト姿の写真が掲げられた。小川は千佳と結婚式を挙げた。そこに瓜田の姿はなかった。

次の試合に向けて小川と楢崎のトレーニングが始まった。楢崎は瓜田を倒したキックボクサー上がりの笹崎を対戦相手に選んだ。ゲームセンターの多恵と縁を切り(切られて(笑))「おれにはこれしかない!」とサウンドバックを叩く。まるで瓜田そっくりになってきた!(笑)

小川が吐血するのを見て、千佳が「もう止めたら」と勧めるが「止められん」と意地を張る。

小川と楢崎は蕎麦を食いながら、「ボクシングバカだった」と瓜田を偲んだ。楢崎が自分のために書き留めていた小川のノートに見せた。「あの人は本当に強い人だった。試合で返せよ!最後の主役だから!」と小川。

試合の当日、瓜田は2階席で試合を見ていた。千佳は試合を見に来なかった。楢崎は瓜田に教わった通りに「コンパクトに早いパンチ」で自分のボクシングをして判定勝ちした。

 小川は壮烈な撃ち合いで目を傷めるが、相手のパンチが有効打と判定された。試合が再開され、小川が我武者羅な反撃に出たがドクターストップがかかった。「出来る!」と小川が食い下がったが受け入れられなかった。瓜田はうつむいたままだった。見てられない戦いぶりだった。

 小川は仕事もやめて、シャドーボクシングとランニングの毎日。楢崎に出会って「もしかして!」「うるせえ!」とふたりでランニング。

瓜田は魚市場で働いていた。休憩時間に、シャドーボクシングで軽快にステップを踏んでいた。これからが人生スタートだ!

 感想:

この作品の肝は小川がチャンピオン戦で勝利したあとの瓜田との別れのシーン。

瓜田は積年の小川に対する嫉妬をぶつけた。長い間の彼の苦しみ、忍耐は想像を絶するものでしょう。しかし、瓜田にとっては小川がチャンピオンになることが彼の夢となっていったのも確か。こうして彼の夢が達成でき心置きなくボクシングから身を引くことができたのではないでしょうか。

 瓜田のボクシングを通して身に着けた抱擁力と忍耐力に、人物の大きさを感じます。目に見える形で結果が求められるボクシング選手としては何の成果も得られなかったかもしれないが、目には見えない長きにわたる辛抱と努力はボクシングの世界を越えた、人生で大切なものを手に入れたと思います。松山さんの達観した笑顔がすばらしかった。あの笑顔です。この青春は決して無駄になることなく次の人生で花開くでしょう。

 小川は瓜田との別れに深々と頭を垂れたこと。そして瓜田を失ってのタイトル保持戦での無残な敗戦。人生を才能と技能、己ひとりだけでは乗り切れないことを知って、人の痛みのわかる人になるでしょう。

 楢崎はいい加減な気持ちでボクシングを始めたが、瓜田に出会い、試合を積むごとに成長して、瓜田そっくりになってきました。持ち前の明るさと素直さ、練習好きで、小川を越えられるかが楽しみです。これが瓜田の大きな功績です。主題歌に「もはや足跡を残したいわけじゃない」とありますが、しっかりした足跡が残っていました!

 ボクシング好きという監督だからのエピソード満杯で面白く見せてくれました。そして松山さん、柄本さん、東出さんのボクシング演技、大変だったろうと推察します。とても力の入ったすばらしい演技でした。

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主題歌