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「ハルカの陶」(2019)備前焼の温かさを知るものがたり!

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岡山県備前市で陶芸に情熱を燃やす人々を描いた人間ドラマ。故郷が舞台の作品ということで、WOWOW放送で観賞しました。備前焼日本六古窯のひとつと言われますが、岡山にいながらほとんど知識がない状態でした。(*ノωノ)

備前焼とは、

釉薬を一切使わず「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わいや、「窯変」によって生み出される“一つとして同じものがない模様”が特徴。現在は茶器・酒器・皿などが多く生産されて、「使い込むほどに味が出る」と言われ、派手さはないが飽きがこないのが特色と言われています。自分の所持品が世界でひとつというのが魅力ですね!

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監督・脚本:末次成人、原作:ディスク・ふらい、撮影:Yohei Tateishi、主題歌:サボテン高水春菜。

出演者:奈緒平山浩行村上淳笹野高史、村上真希、長谷川景、他。

あらすじ:

東京で毎日を淡々と過ごしていたOLの小山ハルカ(奈緒)は、デパートの展示で出会った備前焼の大皿に強く惹かれ、備前市へやって来る。意気揚々と大皿の作者を訪ねた彼女の前に現れたのは、頑固でぶっきらぼうな職人気質の若竹修(平山浩行)だった。勢いのままに弟子入りを志願するハルカだったが、相手にしてもらえず、見かねた人間国宝の陶人・榊(笹野高史)の計らいにより、どうにか修行見習いの身となる。

気鋭の作家として陶芸と向き合う修には、亡き父・晋(村上淳)との約束があった。ハルカは地元の人に溶け込み、焼物修行を通して、作家の心を開いていく。

テーマは備前焼の良さ、「温かみ!」を描いたもので、すばらしい脚本になっています。

のんびりした風景と岡山弁が醸し出す雰囲気を楽しんでください。みなさんの岡山弁のしっかりしていましたが、もうすこしなめらかかもしれませんね!

奈緒ちゃんの演技、備前焼の心を掴むという演技はおそらく難しかったと思います。しかし、最後には、この物語のハルカのように、成長した女優さんになりましね。😊

感想:

備前焼の特徴を伏線として、師匠と弟子の成長を描くドラマですが、これがよく噛み合って、感動的なドラマになっていました。

備前焼の特徴、製作過程の基本的なものが描かれますが、焼物に最も大切なのが土と火と人間性で、求められる人間性とは何かを描いています。「上を敬う」、「人を愛する」「辛抱」、そして「未知への挑戦」が大切だと教えてくれます。

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何故ハルカが備前焼に魅せられて、備前町の工房を訪ね弟子入りしたか。

 特に夢もなく何かに一生懸命になった覚えがないハルカが、「現代備前焼展」で見た備前大皿に温かいものを感じ、作家の若竹修に会って、不愛想で相手にはしてもらえないし諦めようとするが、榊に出会って1200°で焼物をする男の意思と情熱を聞かされ、引っ返して、ひたすらロクロを廻す修の姿に魅せられる。甘っちょろい気持ちでは人は会ってくれない!

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そんな修にも問題があった。修が認めたわけではないがなんとなく弟子になったハルカ。本当の才能を見極めてから面倒を見るというのがこの世界では当たり前で、修が何かを教えることなどない。仕事の厳しさを知るというよいエピソードです。

ハルカが修を知ろうと隠し部屋を覘き見したことで弟子としての関係を解かれる。この時にも救ってくれたのが榊。榊は修に陶人として何かが欠けているということを感じていた。修の父親は陶人で窯の焼き入れ作業で過労死していた。

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榊は「備前焼が窯の器。作家は使うことをイメージしてドクロに向かう。お前はなんでひとりで向かう膳では使うことのない大皿を展示に出した?大皿に呼ばれたあの娘に関わることで親父・晋の背中に近づける!」とハルカを追い出したことを責めた。「人と人の繋がり、人の優しさを知れ!これが作品に出る!」ということだった。

これでハルカは修から正式に弟子をして認められて、土練りを任される。しかし「やり直し!」と使ってはもらえない。

土練りは2-3年寝かせていた粘土を均一の硬度にし、空気を抜くために土を練ること。手のひらで練ると粘土の形が菊の花びらのようになるので「菊練り」と言われる。

ハルカは農家のお婆ちゃんの畑仕事を手伝って、長時間作業するときの身体の使い方を覚え、これで土を練って、やっと修に認められていく。今の若い人にはこういう根気のいる仕事は出来ないかもしれませんね。「土練り3年、ロクロ6年」と言われるから、まだまだ土練りが続きます。

 10月の陶器市14万人も集まるフアンへのサービス市。

打ち上げ会が大いに盛り上がるが、修はこれに加わらず、陶器市に刺激されたように新作を模索していた。修は徹夜で3枚の大皿を作り上げて眠ってしまった。修の働きっぷりを見たハルカは沢山の豆皿を手作り上げて、これまた眠ってしまった。

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榊はこの状態を見て「良い弟子になった!自分の皿は残らんでも大皿に乗せて焼けば“ぼたもち”として残せる“他を生かす”ということ」とふたりにエールを贈った。陶器は作家ひとりの作業で、出来ているのではない!

大皿の“ぼたもち“という模様は、焼くときに豆皿などをのせてその痕跡が灰にならず発色するために”ぼたもち”になぞらえている。

秋になっていよいよ窯入れ。ふたりの力が試される時がやってきた。失敗すると数千万円の損失が出るという。いやそれ以上に作家の評価に関わること。

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修は眠らずに窯を監視して、ついに倒れ入院してしまった。応援に榊の娘・松崎陽子(村上真希)らが駆けつけたが、「近くで俺を見て来たお前に任せる。失敗しても次へ何かが残る。備前焼はこうやって1000年やってきた!」とハルカに「灰がゴマに代わる1700°に上げるか?」の判断を任せた。

皆が「トックリを残しで全部やられるかもしれん」と反対する中で、ハルカは1700°上げる案を採った。

窯で焼くことがこんなに繊細で厳しい作業だったんだと知りました。ハルカは修の側にいて、彼の生き方や性格をよく知っていたから、“挑戦”を選んだんですね! ラストにふさわしいエピソードでした。

作品のなかで沢山の備前焼に出会いますが、水ようかんと備前焼セット、缶ビールが生ビールになるというジョキーがお気に入りです。😊

焼物は毎日手に触れ、人との関係が希薄になっていくSNS社会の中では感じられない、人の暖かみが感じられます。😊

この種地方発ドラマとしてとても出来のよいドラマになっていて、やはり備前焼きの凄さによるものでしょう。

岡山の風土を紹介してくれるのも、久しぶりに見て、こんなに美しい、すばらしいところに住んでいるんだという気持ちにしてくれました。

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