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「仔鹿物語」(1946)野生動物にどう向かい合うべきか!

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フロリダ北部の森林地帯で暮らす一家を主人公に、自然の猛威、隣家との確執を交えながら、ひとり息子の少年と子鹿の触れ合いを描く成長譚、テクニカラー色彩映画作品です。

原作はピューリッツァ賞を受けたマージョリー・キーナン・ローリングスの自動文学小説。

監督:クラレンス・ブラウン、脚本:ポール・オスボーン、撮影:チャールズ・ロシャー、レナード・スミス、アーサー・E・アーリング。音楽:ハーバート・ストザート

出演者:グレゴリー・ペックジェーン・ワイマン、クロード・ジャーマン・ジュニア、チル・ウィルスス、マーガレット・ウイチャリー、ヘンリー・テラヴァー、フォレスト・タッカー、他。

仔鹿を可愛がる作品という予想と全く違う結末!という感想を耳にしますが、70年経って、こんなに野生動物に対する感覚が変わっていることに驚きました。野生動物は野生でしか生きられない。人間の役割が問われる作品で、この作品は今観るべき作品だと思います!

当時の日本の状況を思うと、自然の中で熊との格闘、小鹿との駆けっこなどテクニカラーでどうやって撮ったのかと、驚きました。日本で最初の長編カラー作品は「カルメン故郷に帰る」(1951)でした。

 

あらすじ:

開拓民への感謝で始まるこの物語、

1878フロリダ州北部ショージ湖から入植し原野を切り開いたばかりの開拓村。このカラー作品、日本では’49’ですが、美しさにびっくりしたでしょう。

ここで一家を構えるバックスター家。父親ペニー(グレゴリー・ペック)と母親オリー(ジェーン・ワイマン)、息子ジョディー(クロード・ジャーマン・ジュニア)の三人暮らし。ジョディーは動物たちと遊ぶのが大好きな子だった。

夫婦はこれまでに3人の子供を亡くしており、ペニーはジョディーに甘い父親だったが、一方のオリーはジョディーが野生の動物に接するのを嫌がっていた。

ある日、子牛が襲われたことでペニーが熊撃ちに。オリーは反対したが、行きたがるジョディーと犬3匹を連れて出かけた。熊と犬の争いが凄い!どうやって撮ったのか?

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銃の暴発で熊を仕留められず、隣人フォレスター家の息子レム(フォレスト・タッカー)と交渉して新銃を手に入れた。

再び畑が合わされ豚が襲われ、熊撃ちに出かけた。ところが途中でペニーがガラガラ蛇に噛まれ、応急処置として雌鹿を撃ってその心臓で毒気を抜き、ジョディーを医者に走らせた。ジョディーの活躍でペニーは助かった。雌鹿には小鹿いて「可哀そう」とジョディーは飼いたがる。オリーは大反対だったが、ペニーは雌鹿の心臓で助かったのだからと家で小鹿を飼うことにした。小鹿の名前は尾っぽが旗に似てるとフラッグに決まった。

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一人っ子のジョディーは毎日がフラッグとの生活。自分でミルクを与え、一緒に野山を蹴気巡って、とても元気で活発な子に育っていった。

そんなときに大きなハリケーンに見舞われ、畑のものが全部失われた。「人間は徹底的に打ちのめされると立ち上がる力を失う、やり直す気力も失ったと思いがちだ。でも違う、残されたものが少しでもそれに感謝しよう!」と立ち上がったバックスター家。

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種を撒く季節が来た。ジョディーも父と一緒に田を耕し、種を植えた。

やっと芽が出てきたときにフラッグが食べてしまった。オリーは激怒した。ペニーとジョディーは枯れ木で柵を作ることにした。そしてオリーを喜ばせるために森林を切り開き綿花を作ってお金を貯め井戸を作ろうと木の伐採作業に取り掛かって、ペニーが腰を痛め臥せってしまった。

トウモロコシ芽が出て来たがフラッグが食べてしまった。ペニーは「野生動物はダメだ」と厳重に注意したが、ジョディーが自分の脚に括りつけてでも畑を守ると言い張った。身体を動かせないペニーは「ジョディーがもう一度種を蒔き、高い塀を作るなら」とフラッグを飼うことを許した。

動けなくなったペニーは高い塀を作ってもう一度種を撒くことを条件に、ジョディーがブラックを飼うことを許した。

ジョディーはひとりで田を耕し、トウモロコシの種を蒔いた。雨の中でもひとりで懸命に廃材を組んで塀を完成させた。ひとりで働くジョディーにオリーも見かねて手伝った。オリーはジョディーの力を認めた。

子供にこんなこと出来ないと今の人は言うでしょう。違いますね!終戦時の日本の子供たちはもっと働いていました!

再び芽が出てきた。しかし、フラッグはもっと成長していて、楽にその塀を越えて、芽の出たトウモロコシを食べてしまった。母はフラッグを野生に戻しなさいと言うが、ジョディーが出来なかった。

ペニーは撃って処分しろと命じた。しかし、ジョディーはフラッグを森に連れて行って逃がすことにしたが、フラッグが逃げなかった。

代わりにオリーは銃を持ち出して戻ってきたフラッグを撃ったが傷を負わせるも死なせるには至らなかった。ペニーはジョディーに「楽にしてやれ!」とフラッグを処分するよう命じた。ジョディーは母オリーを罵ってフラッグを撃った。泣いた!

ジョディーはその悲しみに耐えられず家出。森の中を彷徨し疲れて川舟で眠り、その舟が大河に流され、船長オリヴァー(ジェフ・ヨーク)の汽船に助けられた。

家に戻ってきたジョディーは何よりも父母が大切だということが分かるジョディーになっていた。ペニーは「飢餓の怖さが分かったか!熊の怖さより怖い。人生はすばらしいものだが厳しい。孤独を紛らわすために鹿と楽しく過ごさせてやりたかったが、人はみな孤独だ。孤独に打ちのめされた時には前に進むしかない。耐えなければならない!」「これからの人生、外に出ていくかここに残って母のために井戸を掘るか?」と問うた。「ここに残る!」とジョディー。オリーも疲れて帰ったジョディーを優しく抱いた。

感想:

ストーリーの分かりやすさ、印象的なエピソード。そして分かりやすいテーマ。感想はこれに尽きます。😊

野生動物をどう扱うかというテーマ。

野生の動物をどう扱うか?可愛い、遊び友達、しかし穀物や家畜を荒らす、ハリケーンという自然に自分たちも食べるものがなくなる。可愛い、孤独を癒すためではどうにもならない、どうするのが良いかと判断を迫るようを丁寧に描いている。

父母のジョディーに対する愛情がそれぞれ違った形で描かれ、これがまたよかった。

ペニーはフラッグを飼うなら柵を作れ、それでもだめなら自分で処分しなさいと“責任を求める”「失敗させて教える」。オリーはフラッグを飼うことに反対ばかりでしたが、先の結果が分かっていての反対。子供にとって“厳しい人は嫌い”ですが、その人の言うことを考えてみなさいと教えている。これが分かるようになって一人前の男の子! 母親の愛情は深い!

1880年代の農業。日本の敗戦直後の農作業にほぼ同じでした!農業には大家族の必要性。大家族のフォレスター家。家族内の諍いが絶えない。(笑)実はこれが家族の絆になっている。

船長オリヴァー(ジェフ・ヨーク)に憧れるエピソードも、この時代ならではの憧れの人だった。だがジョディは父母の辿った道を選んだ!これも感動でした。

レムとオリヴァーの喧嘩にオリヴァーに助っ人するペニーとジョディー。 (笑) こういうのが懐かしいですね!

熊と犬たちの格闘。熊は実物?よく出来ていました!このカメラの動きが凄い! すばらしい作品でした。

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