今泉力哉監督の「愛がなんだ」「アウネクライネナハトムジーク」に次ぐ作品(製作年次)。コロナ禍の中での公開。監督がツイッターで「絶対にネタばれしないで!」「見てください!どうか!」と叫び続けている作品!やっと当地で公開となりました。全くネタなしで観ました。抱腹転倒!プロットの確かさ!これまでの最高傑作だと思います。
感想を読まないで劇場で観てください。😊
「街の上で」のタイトル名はマルク・シャガールの絵画「街の上で」から採ったもの。ヴィテブスクに代えて、ここでは下北沢を舞台に1人の青年と4人の女性たちとの出会いが描かれています。監督の描く不器用な恋バナですが、今回は主人公に感情がよく乗り“ぐっと”きますね!結末が見事でした。😊
下北沢を全く知らない者が観た感想ですが、主人公はきっと下北沢“人“なのかなと、作中で出てくる魚喃キリコ邸周辺をぜひ訪ねたいですね!(笑)
監督・編集:今泉力哉、脚本:今泉力哉、大橋裕之。大橋さんとの共同脚本が作品を面白くしています。撮影:岩永洋、音楽:入江陽、主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」。
出演者:若葉竜也、穂志もえか、中田青渚、古川琴音、荻原みのり、成田浚、他。
あらすじ(ねたばれ:最小限に(笑)):
冒頭、美大生の映画監督による撮影現場。老人、メガネ美人さん、俳優さん、古着屋さんが街中で“本を読む”姿が映し出され、監督の「これが私の見たかった映像です。しかし誰も観ることはないが、確かに存在している街の上で!」とナレーションが入ります。誰も携帯を見ない映像が良い!しかしこれが下北沢?作品のテーマです!
古着屋“ひっこりー”の店員・荒川青(若葉竜也)。店が終わって“泯亭”でラーメン食べていると、ラーメン食べてる可愛い女性と目が会った。“元気!”と目で挨拶。(笑) この女性は何者か?“伏線繋がり”がとても楽しめる作品です。
チーズケーキを買ってアパートに戻り、恋人の川瀬雪(穂志もえか)の誕生日を祝おうとするのに突然「好きな人ができたから分かれてください!」と言い出す。“誰だ?”と迫るが明かさない。「俺は別れたくない」と青。誰だ!誰だ!。
雪への想いを諦められない青。古着屋の番台で“小説を読みながら”の勤務。若いとんでもないカップルを見て「これはひどい!!」と。仕事が終わるとライブハウス“THREE”でマヒトゥ・ザ・ピーポーの「END ROLL”を聴いて、ちょっと素敵な女性にタバコを貰って、「俺に気があるのかな?」と思ったが向こうの男たちのほうに。(笑)。小劇場“ザ・スズナリ“の前でポリス(左近洋一郎)に喫煙歩行で捕まって「好きなんだけど姪だから結婚できない!」と泣きごとを聞かされる。俺の辛さが分からないのかと!(笑)
馴染みのマスター(小竹原晋)がいる飲み屋“水蓮”に寄る。しばらく見ないうちに太った小説家の五叉路(広瀬祐樹)に会う。映画出演で役つくりだという。マスターが雪のことを聞き、「もう連絡やめとけ!」という。「相手は誰ですか?」と聞いたが返事はなかった。酔ってアパートに帰って雪のことを思い出した。
次の日。貸本屋“古書ビビビ”に顔を出す。店員の田辺冬子(古川琴音)が「音楽やってたの!」と聞くから、調子に乗って「(亡くなった店長)カワナベさんとできていたの?」と聞いた。これが拙かった、田辺を怒らせてしまった。(笑) 「金沢の女の子」という赤表紙の単行本を買って店に戻っり、カワナベさんの留守電に、まだカワノベさんの声が残っていて、田辺への謝りの電話を入れておいた。青は素っ頓狂なようで思い遣りがある。今の世にはめずらしい!😊
青は昵懇の店主(芹澤興人)のカフェ“CCC”でパスタを食べながら、客の話を聞いていた。ここでヴィム・ヴェンダースが撮影したらしい。女性が魚喃キリコ邸周辺を散策したいと言っている。
店主が「文化は良いね、残るから。人も街もどんどん変わる。カワノベさんが死の前に来たのに満席で何も出してやれなかった」と悔しがる。青は店長とこうして取り留めもない話をする。これがまた良いんだな!😊
こうして下北沢の空気を描いてくれます。街も人も変わっていく、古着や古本が売れる若者の町、映画や音楽、小説、マンガ、写真が身近にある芸術っぽい街、馴染みの店で癒されるゆるい空気が流れている街。
青が店の外でタバコを吸って店の中に入り番台で本を読んでいると、美大4年生の高橋町子(荻原みのり)が映画撮るので出演してくださいと脚本を渡す。青が断ったがセリフなしで座って本を読むだけでいいというのでこの役を受けた。
“水蓮”でこの話をすると「監督の告白だぞ!」と言われる。ならば雪のこともあるから断ろうかと思ったが出演することにした!
青は自撮りで本を読む姿を観たが不安。夜、田辺に店に来てもらって撮ってもらうことにした。田辺に撮ってもらった。すると田辺が黒いワンピース姿になって「撮って!」という。なんで田辺が・・。ネタバレになるので止めます。泣く田辺さんに青がカワノベさんの留守伝の声を聞かせるんです!😢
撮影日。青が撮影現場にやってくると控え室(アパート)に案内される。そこで耳の遠いエキストラの老人に会うが、丁寧に挨拶し会話がはずむ。美術担当の城定イハ(中田青渚)から衣装を渡された。この女性は良い感じ!
着換えようとするとそこにメガネ美人(中川有伽)が部屋に入って来て本を読み始めた。別室で着かえた青。彼の椅子に男が座っていた!青は椅子がないので床に座って自分のバックを引き寄せ、「朝ドラに出ている間宮さん(成田浚)ですね?」と話しかけ、「彼女がフアンです」と話しかけた。朝ドラ俳優というのは随分と横柄な態度なんですね!
青の撮影。青は緊張しまくって何テークも撮って、終った。監督がカメラマンとひそひそ話をしていたので気になって「大丈夫なの?」と聞くと「つないで見て決めます」という返事だった。
撮影が終わり、“にしんば”で打ち上げ会。青の耳には「あんなやつ何で使った!」と監督に詰め寄る声が聞こえる。青はもうおろおろするばかり。(笑)イハが寄って来て「あの人たちは会ったり別れたりです。お疲れ様!」と挨拶。
二次会には参加せず帰ろうとすると、イハに「ホームでつき合わない」と誘われ、彼女のアパート(撮影時の控室だった)に上がり込んだ。どういうことになるのかと・・・。お酒でなくお茶が出されて(笑)話がはずみ、青は「あたたには嫉妬心がないから!」と雪とダメになった話や風俗嬢の話をする。(笑)これにイハが二番目の男だという、関取との恋バナを話す。(笑)このふたりの話はこの物語のハイライトと言えるほどに濃いシーンでした。爆笑でした。
朝、青は何事もなく眠ってイハに起こされ、帰宅・・・・。ここからが本番です!
ネタバレ禁止ということで止めます。はたして青の撮影はうまく行ったのか?
雪の浮気相手は誰か?ふたりの先行きはどうなるの?いや、イハや田辺との関係は・・・。
感想:
青とまわりの女性たちの関係は予測不能、ミステリアス(笑)、最後に大円団で終わるといううまい脚本・演出でした。
4人の女性は青をどう見たの?これを観客が映像の中に入ってそれぞれの女性の気持ちを推し量るという演出が冴えています。
町子は青が好きなの?作品に青が載らなければ「下北沢の上で」にならない! (笑)
雪は青のアパートで別れたあと全く姿を現さない。このふたり元の鞘に戻るのでしょうか?雪が青をどう見ていたか?青のなんとも言えないバカっぽさのなかに絶対に外さない良いものがある。若葉竜也さんの演技がうま過ぎてこんな青は大好きですね!最高でした。😊
イハと青はとてもお似合いだと思います。どうなるんですかねこのふたり!イハは大阪弁の混じった東京弁で肝の据わった、親しみがあり、どんどんこちらに入ってくる人。ちょっとネタバレになるんですが彼女の元彼の関取(渡辺紘文)が“水蓮”にやってくるんです!(笑)体は大きいですが心は青に似てた!
イハ役の中田青渚さん、役に嵌っていました!関取との恋バナ語り、青とのやりとりは長回しの中で、自然な演技が最高でした!これからの活躍が楽しみです。
田辺もカワナベさんの留守電を聞いて画面から消えてしまいましたが、また出てくるんです。なんで出てくるの?これが堪らない!😊 水蓮のマスターって雪と出来ていたんですかね?また出てくるんです!
平凡な日常のなかで大切なものは何か?これが下北沢に、そして青にある。優しい居心地の良い映像で見せてくれました。特に下北沢の風景!
チーズケーキって、時間を置くと美味くなるんですかね?チーズの味の利いたいいラストシーンでした。
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