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宮﨑あおいさんを応援します

「お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方」(2021)

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今の自分に必要な作品とタイトル名で作品を選びました。

結婚50年を迎える夫妻。定年退職した夫が家にずっといることで、妻は夫の在宅のストレス症に陥る。相手への気遣いがまったくなくなり、夫は健康麻雀、妻は健康コーラスに通って趣味仲間にお互いの愚痴をぶつけて鬱憤ばらし、もはや2人は熟年離婚寸前となっていく。よく聞く話、私の話です。(笑)

そんな中で、若い葬儀屋社員が娘に配布した婚活パンフレットに誘われ妻が就活フェアーに参加した。そこでプレゼントされたメモリアル映像サービスが契機となりと、夫婦に大きな転機が訪れるという物語。

就活となると葬式や納骨場所の選定、エンデイングノートや遺言などが話題になりますが、その前に誰に遺言を書くの?誰に葬儀を任せるの?ということが大問題です。これがなければ就活の具体化は進まない!本作は「就活の基本となる、もっとも大切なこと」を説いています。そして死を迎えるまでにどう生きるかという“生き方”、“死生観”の問題に触れています。

ちょっと大げさに表現しましたが、そこがコミカルに描かれ、大部の人が「そういうことだよな!」と納得がいくストーリー展開で、ネタに借り物が多いが、コミカルに描かれ“ゲラゲラ”笑える作品でした。😊

年配の方には自分の経験を重ねながら作品を楽しみ、ちょっとしたヒントが貰えるかもしれません。若い人には、作品のなかにとても機智に富んだセリフが出てきますので、これを味わい「人として大切なことは?」と考えることになります!

監督・脚本:香月秀之、撮影:松尾誠、編集:人見健太郎、音楽:MOKU、主題歌:財津和夫切手のないおくりもの」。

出演:水野勝、剛力彩芽松下由樹、西村まさ彦、石橋蓮司高畑淳子大、橋爪功、他。出番は僅かですがそうそうたるベテラン俳優の皆さんの出演です。😊

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、外資系IT会社が倒産し人間関係に関わりたいと葬儀社に就職した菅野涼太(水の勝)が目覚め、出勤するシーンから物語が始まります。死者を扱う者として何が必要なのかが描かれます。

涼太は延命装置で生かされいた母親を父敬一(西村まさ彦)がそれを断ったことで母は死亡、父親とは絶縁状態にある。

新社員の涼太は上司の桃井梓(松下由樹)の指導を受けながら、終活フェアーを開催して会員募集することになった。大原亜矢(剛力彩芽)が営業しているチキンカーで食事して、終活フェアパンフェレットの紙袋を置き忘れたのが縁で、パンフレットが彼女の手に渡った。

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大原亜矢の父母は来年結婚50年を迎える熟年夫婦。父真一(橋爪功)は定年退職して10年、典型的な亭主関白。妻千賀子とはことあるごとにすれ違い喧嘩ばかり。喧嘩しているうちに離婚はない!(笑) ふたりにいつ会話がなくなるか?という状態。

千賀子は健康コーラスで唄って、ランチ会で仲間と亭主の悪口を喋ってストレス発散。(笑)一方の真一は健康マージャンでこれまた女房をネタに憂さ晴らし。(笑)

ここでの会話は黒川伊保子さんの「定年夫婦のトリセツ」から持ってきたもので機智に富んでいてべらぼうに面白い!麻雀仲間の大和田(大和田伸也)が喋る女性論、これが本作での夫婦円満策になっているんです。😊

女性は愚痴を聞いてもらいたい!共感してもらって問題を解決する脳を持っている」。

真一はこの教えを家に持ち帰り千賀子相手に実行してみるがもう千賀子には通じない!(笑)

黒川さんは「人生なんて、本当に言葉ひとつ」と言う。なるほどと思えるからぜひ読んでみたいと思います。

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千賀子が就活フェアに参加し、桃井から亡くなってからの戸籍の除籍や、銀行、パスポート返納のことなどのレクチャーのあと「生きているうちに人生の整理し新たな気持ちで残りの人生を明るく謳歌する塾春”の時代を迎えましょう」と説かれた。そして入棺体験し、メモリアル映像サービスの抽選に応募した。

メモリアル映像サービスに当選して、涼太が大原家を訪ね千賀子にアルバムを借用にやってきた。アルバムの古い写真を見ていると心が不思議と癒されてくる。そこに真一が麻雀から戻り、涼太に会い「葬儀屋がくるとは不吉だ!」と言い、「自分はネジ一筋で生きてきたことに誇りを持っているが君に誇りがあるか」と聞く。涼太は返事ができなかった。

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涼太はまだ新米で葬儀の現場に関わったことがなく悩んで桃井に相談した。彼女は「葬儀屋と蔑まれたが、人が死ぬと頼られる存在に“誇り”を感じている。人は死者を現実と受け入れられず遠いところにしまっておきたいの。だから天国はあると信じている。愛がなければ務まらない。そのうちわかります」という。

10年も会わなかった父啓一がやってきて「今は介護施設で働いている。お前がやっている仕事は人の役に立っていい仕事だ。再婚するので相手に会ってくれ!」と話して帰っていった。涼太は返事しなかった。

ある日、千賀子が髪を染めているところに真一が麻雀から戻って{飯は!}と急がせた。千賀子は斬れて物も言わず健康コーラスに出掛け、その後ランチ会で仲間のお喋りを終えて帰ろうとしたとろころで脳梗塞に倒れた。

真一は病院に駆け、千賀子の精密検査が終わるまで廊下で待っていた。亜矢が駆けつけ「毎日一緒にいるのに気付かなかった!」と悔やみ、これを聞いて真一は「口喧嘩か!切れていたから」と初めて悔やんだ。家に戻っても冷蔵庫に何があるかも、印鑑がどこにあるかもわからない有様。70年のメモリーが消えるかと不安になった。

真一は葬儀屋にアルバムを持って涼太を訪ね、謝って、メモリアル映像を作ってくれるよう申し出た。涼太はこのアルバムを見て、自分と父との楽しかった記憶を思い出していた。

真一の兄は突然亡くなったという知らせが義姉からあった。家族で熊本に帰省して兄の葬儀に参加した。そこで聞く義姉の「こんなにあっけなく亡くなるとは思わなかった!先週感謝の会をやろうと言っていたのに!」という言葉に、死を覚悟した生き方が必要だと悟った。

家族で改修中の熊本城や阿蘇山麓を旅し、家族の有難みが分かった。亜矢の発意でこれを記録に残し、終活の一環として銀婚式を行うことにした。この話を葬儀屋の涼太に申し出ると、「葬儀屋がやるのか」と社長がびっくりしたが、ホテルを借りて行うことにした。ホテルで?(笑)

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健康コーラスメンバー、健康麻雀メンバーに集まってもらっての銀根式。夫婦にとってこれまで知らなかったことが明かされる。かっての仕事仲間・山田(石橋蓮司)の「結婚とは・・・」という名言紹介には“なるほど”と笑い、我慢・忍耐こそが夫婦であるための秘訣であることを知らされる。(笑)そしてメモリアル映像が披露された!真一と千賀子は涙した。

真一の挨拶のなかに「仲良くする」と相手を思いやることの決意が語られ、亜矢の両親に贈る言葉には愛されたことへの感謝の気持ちが込められていた。

そこにフィリッピンから「パパ!」と親子がやってくるなんぞ想像もしなかった。千賀子が“やっぱりそうだったか”と仰天した。(笑) 

式が終わって、企画の涼太は「人と接するには相手を赦すことだ!」と感じた。

涼太は父親の再婚の相手に会う気はなかったが、会うと伝えた。

感想:

真一は妻千賀子が病で倒れて孤独の恐ろしさを知り、兄が亡くなり義姉の悲しみを見て、これらは誰の人生にでも起こりうることですが、終活を準備しておかなければならないと気付いた。早く気付いてしっかり準備して、残された人生を謳歌することが大切だと教えてくれます。この作品では“塾春”と呼んでいます!

終活といえば葬儀のこととか、遺産、遺言などの手続きが話題になりますが、こんなことは葬儀屋さんや弁護士さんに任せておけば全てやってくれます。しっかりやっておかねばならないのは夫婦の絆、家族の絆です。

年取ってくると、若いときと違って、真一に見るようにこれが拗れている!どうこれを元に戻すか。それの特効薬は「相手の事情を慮り、相手の気持ちを慰撫する言葉」。この映画のメモリアル映像シーンを見て感じるように、過去の記憶を辿ることです。

金婚式は、相手の良いところを再認識するとともに参加者みなさんが未だ見ていなかった、気付かなかった相手の姿を知る好機でした。真一が「里親になっていた!」、こんなこと想像だにしなかったでしょう。誰にも見せなかった優しさを見せてくれます。(笑) 

娘の彼氏が葬儀屋さんだったとは、これは最大の親孝行です。(笑)くだらないと思えるところがある作品ですが(笑)、良いところも沢山ある作品。橋爪さんと高畑さんにこの役を演じさせるのが憎い!(笑)そして水野さんのフレッシュさがとても生かされた作品でした。

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