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「明日の食卓 」(2021)親子が目をそらさずに向かい合えるには?

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監督が瀬々敬久さんに出演者が10年ぶりの映画主演になるという菅野美穂さん、さらに高畑充希さん、尾野真千子さん出演ということで観ることにしました。😊

原作は椰月美智子さんの同名ベストセラー。監督:瀬々敬久、脚本:小川智子、撮影:花村也寸志、編集:今井俊祐、音楽:入江陽。

出演者:菅野美穂高畑充希尾野真千子、柴崎楓雅、外川燎、阿久津慶人和田聰宏大東駿介、山口沙也加、大島優子、藤原季節、他。

石橋ユウ、10歳。同じ名前の子を持つ3人の母親たちがそれぞれ子育てに奮闘しながらも、息子を心から愛している幸せな家族のはずだったが、仔細なことがきっかけでその生活が崩れていく。どこで歯車が狂ってしまったのか。「ユウ」の命を奪った犯人は誰か、そして3つの石橋家がたどり着く運命はという緊張感のあるミステリー群像劇です。

群像劇で何が繋がっていくか。3人の母親の物語を交互に描きなから、三人の母親が子育ての苦しさというひとつの渦の中に巻き込まれ、足掻き、ラストで同じ空の下で希望、生きる力を見出すという絶妙な繋がりが感動的でした。脚本、演出、編集がすばらしい!

現在社会の子育てが如何に難しい問題を抱えているかと子育ての現状をあぶりだすだけでなく、そこにある社会の問題をも提示するというまさに今、求められる社会派ドラマです。

この頃の母親を思い、自分の子育てを振り返りながら、改めて母親や家内に感謝したい!

子育は不安で分からないことが一杯あるが、“抱きしめてやる“ことの大切さを教えてくれます。若い人にはぜひ観て欲しい作品です!

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、母親と息子が口論し、なんで!なんで!と泣く母親。息子がぐったりとしている。どの母親が殺したか?それは“あなた“というミステリアスなテーマの提示です!

神奈川に住む石橋留美子の場合:

42歳の留美子(菅野美穂)はライターで二児の母親。夫豊(和田聰宏)はカメラマン。次男が発達障害のため在宅で仕事。長男の悠宇(外川燎)は母親の関心が次男に行くせいか、なにかと次男を虐め、留美子とのトラブルが絶えない。子どもたちがガチパパが遊んでくれるから好きという。子どもたちとのトラブりをブログ「鬼ハハ&アホ男児Diary」で発信して、鬱憤ばらしをしている。(笑) 

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そんな生活も夫豊が失職して生活が一変した。お金が必要と先輩の成田依子(渡辺真紀子)を頼って仕事を増やし、夜遅くまで仕事で夫に応じることもままならず、遂に夫は酒に溺れ、浮気を始め、夫婦関係が壊れていく。悠宇に当たることも多くなっていく。仕事で外に出ていて、次男が熱だしてもほっておく夫が「ライターは替わりがいるが母親の替わりはない」と言い、悠宇は「誰の責任か!オカンに言われることが増えていく」と宣う。「もうたまらん!」と留美子。(笑)

悠宇が「お母さんの目が恐ろしい」と感じ出した。

そんなある日、目を覚まして子供たちの部屋を見ると居ない。自分の作業室にビニールプールを作り、夫がビールを飲みながら「レジャーだ!」と遊んでいた。留美子が怒りで悠宇を掴めば夫が殴り掛かり、仕事部屋は修羅場と化した!

留美子は・・・・。

大坂に住む石橋加奈の場合:

30歳のシングルマザーの加奈(高畑充希)は朝食と弁当を息子の勇(阿久津慶人)に作って化粧もせず仕事に出掛ける。仕事はスーパーとクリーニング工場の掛け持ちで日夜働き、時間があればボール遊ぶ勇を見るのが楽しみだった。たまに留美子のブログを覘く。こんな母親を勇は「よう働くかあちゃんだ!ひとりでいるときは疲れている」と心配していた。加奈は「息子が生甲斐、強い絆で結ばれている」と自負し、加奈は勇が6年になったらサッカークラブに入れて、何としても大学に行かせたいとお金を貯めていた。

そんな生活の中で、フウテンの弟・正樹(藤原季節)が訪ねてきて金をせびり、加奈が渡すのを勇が見た!なんで俺に喰えないのと勇が学校で盗みをし、加奈は「給食費が払われてない」と学校に呼び出され先生から「ちょっと勇君に無理し過ぎていませんか」と注意された。スーパーでは「あんたの息子にうちの子が給食費用を盗まれた」と言いがかりをつけられる。勇を疑い家に戻って貯金通帳を調べるようになった。勇が「オカンが口を開かんようになった。僕を産んだことを後悔している!」と思うようになった。

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加奈がウリーニング店を首になった。働き過ぎで周りの反感を買ったものらしい。

ある日、貯金通帳がなくなっていた。加奈は「なにやった?」と勇に聞くと。勇は「正樹だ!」と思ったが返事しなかった。加奈は「怒らんから言うってみ」・・・・。

静岡に引っ越してきた石橋あすみの場合:

36歳の専業主婦のあすみ(尾野真千子)。夫・太一(大東駿介)の地元で親に立派な家を建ててもらい、義母・雪絵(真行寺君江)はひとり別棟で生活。夫とひとり息子・優(柴崎楓雅)と住み、東京で働く夫を車で新幹線駅まで送り、書道教室に通うという恵まれた生活を送っていた。

夫はマザコンでお家第一と近所の目を気にし、優を育てることには関心がない。あすみは近所、義母の目を気にしてすべてうまく行っているよう虚勢を張って生きていた。こんなあすみに習宇教室仲間の菜々(山口沙也加)が家に来て「御主人とはどうなの?」と馴れ馴れしく近付く。これを目にした優は母親に嫌悪を抱いた!

先生の家庭訪問で「成績は優秀だが虐められてないか」と聞かれる。「そんなことはない」と答えたが、後日呼び出されて優が指示してやらせたと聞き、虐めた父兄からサイコパスと罵られた。あすみにはとても辛いことだった。

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夫に相談すると「お前が悪い!」と取り合わない。優に問いかけると「試しただけ、人は人を支配できるか。母さんはお父さんのロボットで、言われたことをやっているだけ!」と返事し、夫と取っ組み会いになった。夫は「こんなこと恥だ!近所に知られたら母に恥かけることになるぞ」と。優は「母さんは何も気づいてない」とがっかりした。

あすみは菜々に相談すると「信愛の会」教団に入るよう勧められた。彼女は教会の人だった。家に帰ると庭に小便をしたと優が義母を蹴とばし馬乗りに、それを見た夫が優に掴みかかり大騒動になった。あすみは・・・。

こうして3人の母親。

璃子は息子・悠宇が「俺たちが嫌いで捨てるか!」というのを聞いて悠宇の首に手を当て、泣いた!激しく泣いた!

加奈は息子・勇が「正樹だ、オカンは僕のことが嫌いか!僕は良い子ではないお母さんもよくない、全部よくない!」と言うのを聞いて、勇を首に手を掛けて泣いた!激しく抱きしめた。

あすみは息子・優が「くそババア!」と義母を殴るのを「止めて!」と首に手を掛けて泣いた。

その後の留美子、

どうしても会いたいという収監されている女性・石橋燿子大島優子)を訪ねた。「同じユウという名の子を持ってすいません、あなたに話を聞いて欲しかった!ユウに会って抱きしめたい!私を殺してもらいたい」と泣いた。留美子は「その姿は私だ!」、いや誰にでも起こり得ると思った。

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夫と別れることにした。子供たちが止めたが夫は出ていた。悠宇が「子供を産むな!結婚するなら俺たちは生まれて来なければよかった」と叫ぶ。留美子は「こんなことになるとは分からなかった。確かなことはパパがいなければあなたたちは生まれなかった。パパには感謝している。ママはひとりでは生きていけない!見守らせて欲しい、お願いします」と話すと悠宇が抱きついてきた。

もの書きをしていると、夫のところに行っている悠宇から携帯で「ママ空を見て飛行機だ!」と言ってきた。外に出て空を見ると・・・

その後の加奈、

加奈から金を盗んだと知った母親よしえ(烏丸えつこ)が訪ねてきて「悪かった!」と金を返済した。そこにしょんぼりして帰ってきた勇を「ごめんね!」と抱いた。

「あんたならいける!」と風俗に誘われたが「バカにしないで!」とピシャリと断った。(笑) 勇が見たいという海に連れてきた。そこで空を見ると・・・。

その後のあすみ、

駆けつけた警官に「息子は母は庭におしっこするのを止めて、何もしてない」と説明してことを収めた。夫・太一が母を部屋に連れて行って、部屋が食べ物のゴミの山であることに泣いた。

あすみは勇に「お兄ちゃんになるよ}と母子手帳を見せると、「お母さんには合いたくない、可哀そうだ!」と家を出て行った。菜々の車で病院に送ってもらっていて優に出会った。車を停めてもらい、歩道橋を駆けあがったところで転び傷を負いながら優を懸命に追った。追いついて「聞きたいことがある!人を使って実験してみて何が分かった?教えてよ!」と言って、痛みに耐えられずしゃがみ込んだ。優が手を出すので「もう治った!」と笑った。泣く優をしっかり抱いた。そして上を見ると・・・

青い空に飛行機が飛んでいた!

感想:

どこにでもいる三人三様の母親が抱える子供との葛藤。この時期特有の子供のあやふやな心理を絡めながら、仔細なことで信頼感が崩れ遂に手を上げ、親子の絆が破滅していく過程が繊細でリアルに描かれています。仕事の忙しさや見栄など自分のことに一杯で、子どものサインが読み取れない!誰も責められないが誰かに相談できたらと母親の苦しさが分かります。

冒頭の殺したのは誰か、ここでは石橋留美子が会いに行った受刑囚の石橋燿子でしたが、あなたであっても可笑しくないというメッセージが重い。

父親になれない留美子の夫、母親に依存するあすみの夫を描いて家族や家庭での男性の役割を問うたのもよかったと思います。悪すぎる夫ではあったが。(笑)

虐待、認知症発達障害、いじめ、ママ友トラブル、貧困、ダメ亭主などの多様な要因を絡めながら描かれ、家族だけでは解決できない社会問題として問うているのが良い。

なによりも3人の母親を演じの菅野美穂高畑充希尾野真千子さんの悩み悲鳴を上げる演技に圧倒されました。

菅野さん演じる留美が母親再生を期して「お父さんがいてあなたたちがいる感謝している。世話をさせて!」という子供が持てたことへの感謝の気持ち。これが母親の気持でしょう。こんな母親を追い詰めた夫がなんとも府外なかった。(笑)男として申し訳ない思いです!

高畑さんが演じる大坂弁で子供が生甲斐に強く生きる加奈。カフェで風俗に誘われ、バカにするなと席を立ってコーヒー代を払いかけ、後戻りしてコーヒーを飲み干して、「私はしない!」と断るド根性母親。(笑) 誰かに繋がりたい孤独な母親、これも見逃せない。

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尾野さん演じる理想の家庭でロボットのように生活している主婦。自分を隠して生きているから、困ったとき子供にどう接してよいか分からない、ただ謝る母親が一歩踏み出す勇気。

これに応じる子供たちの熱演が凄かった!

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