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「キャラクター」(2021)漫画家の描くキャラクターで殺人を続けるサイコパスが漫画家を追い詰め、その行きつく先は!

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永井聡監督作で予告編の映像がとてもきれいだったこと、そして菅田将暉さん主演ということで観ることにしました。

画力があるが真っ正直で人の良さが災いしてか、リアリティなカルト漫画が描けない若きカルト漫画家。ある深夜、師匠に頼まれ住宅街を描いていて一家4人殺人事件に遭遇。壮絶な殺人現場で見て描いた“殺人犯のキャラクター”で一気に人気漫画家になった。ところ描く連載漫画が次々と発生する連続殺人事件にそっくり。犯人が接近してきて遂にふたりの共同製作となり、その行き着く先は・・・。事件を追う刑事が捜査活動を通して「キャラクターとは何か」を問うサスペンス作です。

原案・脚本:浦沢直樹作品に数多く携わってきた長崎尚志さんのオリジナル企画、監督・脚本:永井聡。企画:川村元気、脚本:川原杏奈、撮影:近藤哲也、美術:杉本亮、音楽:小島裕規、主題歌:ACAね)・Rin音 Prod by Yaff「Character」。

出演者:菅田将暉Fukase高畑充希中村獅童小栗旬中尾明慶松田洋治小木茂光、他。

目を覆う猟奇事件。ところが絵がとても芸術的で、“キャラクターが犯人ではない”と事件を追う刑事の目線が温かく、いい塩梅の恐怖サスペンスになっていて、永井監督作のベスト作品と言っていい。もうひとつ、俳優デビューとなるSEKAI NO OWARIFukaseさんの圧巻の演技です。観てください!

あらすじ(ねたばれ):

オカルト漫画家本庄のアシスタントを務めている山城圭吾(菅田将暉)はプロデビューしたと徹夜で描いた漫画を出版社編集者・大村誠(中尾明慶)に見て貰った。

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「絵は良いがキャラがない!売れない!」と言われて、「漫画家は辞めて仕事を探す」と同棲している川瀬夏美(高畑充希)に告げるが「援助するから続けたら」と励まされ、先生のところに顔を出すと、幸せそうな家の絵が欲しいという先生の要望で、深夜、絵を描きに住宅街に出た。描いている家主から「臨家の音楽がうるさい!止めてくれ」と言われ、人の良い山城が隣家に入ると、リビングにローブで縛られメッタ斬りされた殺人現場に遭遇、「船越一家殺害事件」。腰を抜かしていると逃げる犯人と目線があった。

所轄警察署の刑事・真壁孝大(中村獅童)と清田俊介(小栗旬)らが現場確認した。

山城は第一発見者として刑事の真壁、清田の尋問を受けた。「犯人の似顔絵描け!」に「見ていない」と返事した。山城はアパートに戻り、一気に漫画を書き上げた。

警察は事件現場近くに住む辺見敦(松田洋治)に殺人歴のあることから引っ張り出して、荒っぽい尋問で「私がやりました」と自供させ真犯人とした。(笑)これに真壁は仕方がないと言い、清田は驚いた!

山城が真犯人の顔をTVで観て「これは違う!」と。しかし、このことが「なんぼ描いてもよい!」と山城の荘作意欲を掻き立てた。

山中の一本道でキャンプ地に急いでいた4人家族が車の中でロープを巻かれ斬殺され車ごと崖下に放置されるという事件が発生した、「原一家殺人事件」

管区外だが真壁、清田刑事が駆けつけ現場確認をした。清田が車の天井を調べて凶器の包丁を発見。真壁が「どうして分かった!」と聞くと、「この漫画、“34(さんじゅうし)”だ!」と山城圭吾の人気漫画を示した。

署に戻って清田は「犯人は漫画を見た模倣犯か、作者。船越一家事件と原一家事件は同一犯。辺見は誤認逮捕だ」と推定し、山城に会うことにした。

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売れっ子漫画家になった山城はセキュリティのしっかりした豪華マンションを購入し、産まれてくる子のため家具を買い揃え、夏美を両親に合わせ結婚を報告した。母親は再婚者で連れ子の妹がいた。そんなわけで山城がこれまで親とは疎遠であった。

今では山城の担当編集者となった大村の案内で、真壁と清田が山城のマンションを訪れた。原一家事件は漫画34にそっくりで、この事件は船越一家事件によう似ている。キャラクターは同じでは?」と話を持ち出すと山城は「キャラクターは自分のオリジナルで関係ない」と言い切った。清田は「車の天井にあった包丁はどうなるんですか?」と投げ掛けると「まだ決めていない、考えておきます」と返事があった。

刑事は帰って、山城が「連載していいのかな?」と大村に話すと「家賃のこともある。売れているから、このままやりましょう」ということになった。山城は刑事があさり引いたので「まだ行ける」と判断した。

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山城が作業の疲れを癒すためよく使うガード下の居酒屋で飲んでいると、清田がやってきた。「つけているんですか?」と聞くと、「偶然だ!」という。つけていたんです!清田は「漫画34のフアンだ、しっかり描いて欲しい」と励まし電話番号を交換して一度店を出た。

清田は外に出て真壁からの電話「俺なしで行動してないか」を聞いていた。

そのとき船越事件で観た犯人が近付いてきた。怖い!「34読んでいます。両角(Fukase)です。主人公が僕に似ていますね!家族が4人、僕のために描いてくれ先生の作品を再現しています。包丁車に入れましたよね。考えてないでしょう、いいストーリー考えついたんです」と山城に耳打ちした。そしてそこにあった清田の名刺を持ち帰った。

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山城はコースターに両角の似顔絵を描いてバーテンに見せ、「何者だ!」と聞くが「知らない、それ頂戴」と言い、壁に貼り付けた。山城はマンションに戻り、警察はまだ大丈夫だと安堵して漫画を描き始めた。

両角がキャンプ場で4人家族をいつものスタイルで殺害した「松村一家殺人事件」。この事件、山城が最新版で描いたものと同じで清田は驚いた。

抑留中の辺見を釈放され、記者会見が行われた。

津田が山城に会いたいと電話するが出ない。大村に電話するとガード下の居酒屋だという。清田が居酒屋で出向くが山城はいなかった。が、バーテンが山城と話していた男の似顔絵だという絵を見て、「漫画の主人公だ!」と思った。

山城は夏美の胎児健康診断に付き添っていて、病院地下の駐車場で両角に会った。「先生!包丁の絵、リアルでした。奥さんですか、両角です。共作者です!僕のアイデアを買ってもらっています。子どもさん、幸せの象徴です。ベビーベット買ったんですね」と話しかけた。山城は「これは危ない!」と感じて、夏美を車に乗せ急発進でその場を離れた。両角は山城の態度を訝った!

マンションに戻った山城が「あいつは俺がみた犯人なんだ、連載を辞める!」と夏美に話し、清田に電話した。

清田が山城に電話で「両角という名以外のことは知らない。あいつを見て私が求めた。しかしもう耐えられない!」と話した。「俺はあの主人公は好きだ。必ず捕まえる。両角のことは後にして新作を考えて欲しい」と山城。これで清田は救われた。夏美はこれを聞いて「あなたの漫画は好きよ、才能ないなんてない」と諭した。

山城は出版社編集長に連載中止を求めると、「休載にしよう。描き切るということで事件解決をするように」と求められた。

山城が書店で漫画34を見ていて、最終編の予告を目にしているところに両角が現れ、「何で休載にするの?」と聞くから「人殺しに加担したくない!」と答えると「先生は漫画の中で人を殺して楽しんでいる先生家族いるでしょう最終回をやろう!」とけしかけてきた。

清田は山城が描いたスケッチブック(押収していた)を点検し、描かれていた配送会社の車から犯人の勤務先を訪ね、彼の履歴を入手した。

両角は自分のアパートに戻ってきた。部屋は漫画34の殺害現場拡大写しと殺害現場を自ら撮影した写真で飾られていた。両角はそこで34を読む!恐怖の部屋だった。

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真壁と清田は両角の母親を訪ねると「たまにしか帰ってこない。あの子はウンコだから足をいかれている」と言い、写真を見せると「違う!」という。両角は戸籍を買っていたことが分かった。

両角は住宅街を物色し、窓越しに中を見て幸せそうな4人家庭に包丁を持って入り縛って殺害し現場を撮影した。アパートに戻り漫画の現場写真に撮影した写真を貼りつけた。

清田は犯人像が分からなくなり「お前は誰だ!」と呟いた。原一家殺人事件現場の道端の「九条村」と書かれてある看板まで漫画とそっくりな事に気付き、山城に詳しく聞くことにした。

山城は資料記事を見せて「4人家族殺害に興味を持って調べたら、廃村になった村で、20組の4人家族が住んでいた。4人家族が幸せの象徴であると言うコニュニティーがあってこれを事故現場にした。」と話す。清田は「家族を引き裂かれた恨みか?」とこの資料を借り、「新作を楽しみにしているよ」と微笑んで帰った。

夜道、清田が真壁に「コニュニティーの話が気になる」と話しながら歩いていたところを“どん!”と辺見に刺された。ふたりは激しく争ったが、清田が動かなくなった。これを陸橋の上から両角が見ていて「もう少しなのに!」と微笑んだ!清田の死を知った山城は大きな支えを失ったと思った。

清田の葬儀後、真壁は山城を呼び止め「注意しろ!」と忠告し「上は連続犯人を辺見と見ているが、俺が見つける」と言い、「清田が暴走族で自分が面倒みていた。人のせいにしない良い奴だった、あんたの漫画を楽しみにしていた」と話す。山城が「想像できない!」と言うと「分からんよ!だから社会が恐ろしいんだ!」と。山城はこれで最終編を描く意欲が出てきた。

一気に「先生を後ろから刺す」というストーリー画を描き上げ夏美に見せると「このままでは危ない!」と“びびった”が、原稿を編集長に見せ「やらせてください」と申し出て発刊された。

両角はこの発刊本を目にして「そうきたか!」と・・・。

漫画は父母、妹と4人の幸せ家族を演じてここに両角を呼び寄せ現行犯逮捕しようというもの。山城が父母にこんな危険な役をやらせて申し訳ないと丁寧に詫びを入れて防刃衣をつけて両角を待っていた。そこに両角から「先生これは違う!幸せな家族を殺すというのを守ってよ!」と電話が入った。マンションの夏美に電話で「俺たちは4人家族か?」と聞くと「お腹にいるのは双子よ」と返事がきた。山城は慌ててマンションに戻った。

両角が待っていて、ドアーを開けさせ、その手を斬ってくる。両角が居間に飛び込み夏美を斬りつけロープを巻く。山城が“ぼけっと”見ていた!彼はまだ漫画家だった。

両角が作業室に入り「ワープロを断ち上げろ!」と指示してきた。山城が夏美に「隙を見て逃げろ!」と声を掛けワープロに近づくと、両角が包丁で刺してきて二人がもみ合い、山城が落ちた包丁を拾い興奮して漫画キャラクラーになって両角を刺そうとしたところに、真壁刑事が駆けつけ拳銃で撃って山城の行動を制止した。崩れ落ちた山城に両角が覆い被さり、漫画絵そっくりだった!

山城は病院で療養生活。両角の裁判が始まった。両角は裁判長から名前、生年月日を聞かれ「だれとして裁かれているの、“僕は誰なんだ!”」と聞き返した。

感想:

漫画家が作ったキャラクターが犯人に使われ、犯人から共作を持ち掛けられ、豪華な生活を維持するためにこれに乗る。が、共作関係がエスカレートして漫画家自身に危機が迫ってくる。犯人に自分を殺させたと思わせて決着をつけようとするが、最後には自分がキャラクラーになってしまうというストーリーの面白さテンポよい展開で、楽しめる作品でした。

観る者が漫画家として劇中に吸い込まれていくような感覚になり、サイコパスと化した殺人者に出出会うときの心理的ドッキリサイコパス殺害現場に立ち会う恐怖。画面には常に狂気が走って、よく出来ていました。美術もしっかりで、殺人現場や両角のアパートの異様さに圧倒されました。

サイコパスFukaseさんの狂気。美しくって透明感で予測不能な人物像を見せてくれます。どのシーンも圧巻の佇まいでした。ラストシーン、無表情で「私は何者だ!」と呟くシーンに震えあがりますね!

こんな環境の中で、キャラクターと人間の本性は別物と、漫画家を支援してくれる刑事の温かさにほっとします。小栗旬さんの柔らかい抑えた演技が光っていて、これが作品全般に良い雰囲気を醸し出していました。

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最期の漫画家とサイコパスの対決シーン。漫画家・山城が両角と戦ううちに殺人鬼キャラクターになっていく山城。演じる菅田将暉さんの目の色が替わって行く演技に恐怖。これから漫画家としてやっていけるのかという病院のシーン、無表情で“清田の似顔絵”を描いたことに“ほっと”しました。

CM監督として培った瞬発力のある映像、どのシーンをとってもすばらしかった。

キャラクラーは暴走する。漫画本や映画を模倣した殺人が実際に起きていて、貧富格差やSNSの社会では一層この危険性は大きくなると思うと“ぎょっと”します。

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