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「アジアの天使」(2021)

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石井裕也監督作。監督作には欠かせない池松壮亮さんとオダギリジョーさん出演、これは「コングvsコング」に優先ということで観てまいりました。

監督・脚本石井裕也、プロデューサー:パク・ジョンボム、永井拓郎、撮影監督:キム・ジョンソン、音楽:パク・イニョン。

出演者池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョーキム・ミンジェ、キム・イェウン、佐藤凌、芹澤興人、他。

舞台は韓国。妻を病気で亡くした剛(池松壮亮)は、ひとり息子の学(佐藤凌)を連れて兄の透(オダギリジョー)の住む韓国に渡ったが、早々に兄の商売は失敗。どん底に落ちた三人は、ワカメ商売で一旗当てようとソウルから江原道(カンウォンド)へと向かう列車に飛び乗った。偶然そこで知り合ったのは、同じように人生に行き詰まった韓国の三兄妹だった。言葉が通じないにも関わらず、彼らは旅を共にすることで、エンゼル(芹澤興人)を見つけるという、ぶっ飛んだはなしです。(笑)

生きる目標を失った日韓の家族が旅で触れあって再生されていく物語で、今日の日韓関係を見ると、まさに“今の時代に挑戦する”という作品です。

石井監督自身が裸になって韓国映画界に飛び込み、韓国スタッフと仕事をし、そこで“見つけたものは何であったか”という自伝作ではないでしょうか。ちなみに構想は”17年に始まり”19年に脚本を描き終え、半年間の韓国滞在を経ての作品とのこと。

それだけに悩める韓国と日本家族の生き様がリアルで泣けて、言葉なんか分からなくても、メクチェ・チュセヨ(ビールください)とサランハヨ(愛してる)だけ知っていれば感じ合え、その先にきっと“エンゼルが見つかる”と感じさせてくれる作品でした!

あらすじ(ねたばれ):

小説家青木剛は妻をガンで亡くして失意の中にあったが、兄・透の勧めで、全てを整理し息子・学を伴って、讃美歌が流れる、ソウルにやってきた。透のアパート(兼事務所)を訪ねるが不在で、応対に出てきた韓国人男とトラブルになるが、言葉が通じず「相互信頼」と我慢、我慢。戻ってきた透は「何で来た?」と問う。ちゃらんぽらんの兄貴ですが実はそうではない、優しさの詰まった男。石井監督独特の優しいユーモアある描き方です。これにオダギリジョーさんがよく応えていてユーモアのある作品になっています。

化粧品を廻してうまく稼ごうとしますが、相棒の韓国人に持ち逃げされて破産。(笑)しかし、この韓国人を一切批難しないところが偉い!次は“わかめ”の輸出で儲けようと江陵(カンヌン)の海を見ようと江原道行きの列車に乗った。

剛は透の商売を手伝っているとき、ソウル風物市場でライブ中のソル(チェ・ヒソ)と目が合い強い印象を持ち、クッパ食堂で泣きながら酒を飲む彼女にばったり出くわしていた。言葉は分からないが悲しみの目は分かるということ。

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列車にはソルの家族が「江原道にある母の墓参り」のために乗っていた。兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)は無職、妹・ポム(キム・イェウン)は公務員を目指して勉強中。生活費はソルの稼ぎに頼らざるを得ない。そんなソルはCDも出せず、社長から解雇を言い出され、身体を求められる関係という状態にあった。韓国の貧富格差を垣間見る映像でした。

ポムが「勉強し、稼がねばならないのに何で墓参り?」とソルに食って掛かりますが、実がソルは広津橋で“父母の思い出・エンゼルの羽”を拾い、大きな決断をしようとしていた。

列車の中で学がトイレに入り迷子になって、「お母さん何処なの?」とソルとポムが剛のところに連れて来たのが、両家がつき合う動機でした。

ソルたちはムッコ駅で下車、ここで1泊して、トラックに乗り換え江原道の墓場に向かう予定。ところが、透がソルを見初めたためにここで下車。(笑)両家は中華店で食卓を囲むことに。先ずはと、缶ビールCass Freshを飲む。これで話が弾み、ジョンウが「韓国の日本嫌いは69.4%、これで恋の可能性はない。それに親戚が許さない!」と気勢を上げる。剛は何を言われているか分からず、透に通訳してもらうと「俺とソルはロミオとジュリエットにはならないらしい」と。(笑)

夜、ホテルの外で泣きながら歌詞を作るソルに剛が言葉を掛けるが通じない。英語が少しできるというので英語で「私は作家だからあなたの悲しみが分かる、あなたの目を見たい」と話すと?「意味が分からない」とサングラスを外した。(笑)

ところがとんでもないことが起こった。ソルの身体を求めてやってきた社長をソルが拒否したことで掴み合いになり、これを見た剛さらに透が加わり乱闘になった。が、ソルの蹴りで騒動が収まるという(笑)剛にとっては情けない結果であったが、言葉よりこちらで、ふたりの距離は狭まった。(笑)

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翌朝、トラックに剛たちも同乗し江原道の墓地に向かった。途中で学が模様してきた。(笑)気付いたのがポム、停車してツレション。 (笑)ガソリンスタンドの店員に勧められるオイル交換を皆で拒否し、休憩所でソルのCDを見つけて喜ぶという何気ない出来事で親密感が出てくる。

夜間、山中を走っていてエンスト。あろうことかソルが腹痛で苦しみだし、みんなの協力で病院に運び込む。ここで剛の妻がガンで亡くなったこと、ソルの母も胃がんで亡くなっていたことが明かされ、同じ病で身内を失ったという悲しみを共有します。学が亡くした母の記憶でソルに優しい手を差し伸べるところが良い。

ソルたちの墓参。ジョンウはソルのCDを墓に供え、ソナへの感謝とこれからの頑張りを、ポムもうるさい姉と敬遠していたがソルへの感謝を述べた。こんな情景を見て剛たちも貰い泣きした。

これで終わりかと思っていたら、皆でソルの叔母の家に泊まることになった。大変な御もてなし料理で歓待された。

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美しいソルの従妹・テヨン(チャン・ヒリヨン)に透はすっかり熱を挙げて、「俺はもういいからお前、ソルに告白しろ」と勧める。「この国ではメクチェ・チュセコとサランハヨだけ話せればいいんだ」とけし掛ける!(笑)

テヨンがソルにもらったエンゼル人形に感謝すると、「私は両親に可愛がられた?」と聞き返している。今の彼女には“親の愛がなかったのではないか”という不安があるらしい。

“エンゼル”と聞いた剛が「子供のころエンゼルを見た。変な顔でアジア人だ。これに噛まれて痣がある。兄と一緒だ」と告白した。(笑)するとソルが「私が見たものと同じかもしれない、あなたは私の運命の人」と言い出す。剛の話の意味通じたのかな。(笑) 剛は慌てて「学!」と駆け出した。

ところが学がいない。大騒ぎなり、皆で必死に探した。学は母恋しさで海を見に行って警察に保護されていた。「しっかりした親御さんの子だ」と警察官が剛とソルの前で言った。剛はしっかり学を抱いてやった。

早朝、日の出前、皆で浜辺に出た。日の出に感動した!透が「わかめの話は嘘だ!」と謝る。剛は「なんとなく分かっていた」と答えた。透にとって、「嘘も愛」だった。

ソルが浜辺でひとり「このままでは生きていけない、本当のエンゼルが見えない!何故ですか?」と(両親に)叫ぶとエンゼル(芹澤興人)が現れた!(笑)

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剛が駆けつけ「この世はおかしなことで一杯だ。どんな人生を考えるか、自分で決めればいいんだ。サランハヨではないがそれに近い感情だ、それになるかもしれない。言葉が見つからない!」と話すとソルが「エンゼルを見た、あなたと学!」と泣いた。

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ソウルに戻った剛たちとソル一家。透は「行くとこがある」と途中で姿を消した。ポムの言い出しで「ご飯にしよう」とアパートに戻って、皆で物も言わずカップメンにブルコギ、キムチにぱくついた。ソルがそっと学の茶わんにご飯を盛った。

感想:

冒頭の江陵(カンヌン)の海、ソル、ソルのエンゼル人形。ソルが剛一家と触れることでこのエンゼル人形がどう変わったか。言葉はいらない、過去に囚われない、いびつでもよい自分のエンゼルを探せというテーマ。

マジックアワーのなかで、ソルに見えてきたとんでもないエンゼル(芹澤興人)が“サランハヨ”しか喋れない剛になっていくという“とんでもない”映像に、監督の渾身の気持ちが込められています。

韓国題が「あなたは信じないだろうけど」とエンゼルの出現を認めています。韓国にも受け入れる和製韓国映画これでいいんです!😊

言葉はいらない!沢山のエピソードが描かれました。どのエピソードも、とってつけたようなものでない。思い遣りと誠意、良心だけです。なかでも料理、同じ釜の飯を喰う、同じ缶ビールを飲むことの大切さ。韓国料理を食べたくなりました。😊

剛の息子・学の存在。ひとことも喋らなかった!しかし、両家が触れ合っていくなかでの存在感は大きかった。これ最高でした!

監督はこの作品でひと回り大きくなった感じです!

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