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「竜とそばかすの姫」(2021)優しさに溢れ、ぶっ飛んだところもあるが、感動的な物語!

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どんなテーマでやってくるかと毎度楽しみにしている細田守監督作品。「未来のミライ」以来三年ぶりの公開です。公開初日、初回で観ましたが盛況でした!

高知の田舎で暮らす主人公の女高生・すず。幼くして母を失って、そのショックで大好きな歌が唄えなくなり、人との関係もうまく築けない。そんなすずがインターネットの仮想世界に入って歌手ベルとして人気者になります。

ところが彼女の最大歌イベントがアバター竜によってめちゃめちゃにされてしまった。ベルは何故かそんな竜に惹かれていくのですが、ある日竜が仮想世界から追われてしまいます。50臆人もいる仮想世界で果たして竜が見つかるのか。仮装世界と現実世界を行き来しながら、リアル竜を探し出し、すずにとっての人生の宝物を発見するというSFファンタジー・アドベンチャー・アニメです。

原作・脚本・監督は細田守さん。サマーウォーズ」で描いた得意のインターネット仮想世界の物語と思いきや、ド田舎の青春物語でありながら社会派ドラマ、それをミュージカル「美女と野獣」テイストで描くという、とんでもない作品です。(笑) 結論を先に言っておきます。細田監督作品の最高傑作です!50億人のなかからどうやってリアル竜見つけるか?これがテーマでした!😊

作画監督:青山浩之さん、CG作画監督山下高明さん、ベルのデザインは「アナと雪の女王」のジン・キムさん、メインテーマの作詞/作曲は「King Gnu」の常田大希さん、仮想空間デザインは建築家のEric Wongさんら。スタッフが世界的な広がりを見せているところに特色があります。

声の出演はスズ/ベルにミュージシャンで声優初挑戦の中村佳穂さん。全く中村さんを存じませんでしたからその歌声に“誰だ?”と驚きました。圧巻でした!共演に佐藤健成田凌染谷将太玉城ティナ・幾田りら・役所広司さん、さらに驚いたのは森山良子・清水ミチコ坂本冬美岩崎良美・中尾幸世さんらおばさんグループの参加。ネット世界には存在しない“愛”の象徴なんです!(笑)

感想(あらすじを追いながら):

「とても美しい田舎風景」。これも細田作品に欠かせない風景描写です。

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高知の田舎に住む高校生のすず(中村佳穂)。坂を下って、名越屋沈下橋を渡ってバスに乗り、電車に乗り換えて高知市の高校に通学するという毎日。

友人たちはそれぞれ部活で高校生活を楽しんでいますが、すずには何かに熱中している感覚がない!小さなころ、大雨で送水した川でおぼれる子を助けに飛び込んで帰ってこなかった母親に「何で私を放っておいて!」という想いがあって、寂しさを抱えて生きていた。高校で出会ったのがインターネットの達人・ヒロ(幾田りら)。

ヒロの勧めで、実世界とは全く違った別の人生を生きることが出来るとAs(アス)という分身・ベル(中村佳穂)を作って、インターネット上の仮想世界U(ユー)に参加した。すると今まで歌えなかった歌が唄える!

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「中村佳穂さんの歌声」がすばらしいです。その歌詞が文脈にそっていて、これがまたすばらしい。ミュージカル仕立てです!

当初フォロワーもなくがっかりでしたが、瞬く間に増えて、歌姫としてこの世界の人気者になっていく。これがネットの特色。しかし「たいしたことない!」「努力してない!」等の無責任な批判がすずを苦しめます。ヒロに不安を漏らすと「元々ウソから出発しているんだから自信を持つんだ!ド田舎のベルがこんなデカいことしているんだから」と励まされ、歌いまくっていた。

「ネット世界のネガティブな面」も描きながら物語が進み、ネットでは絶対に伝えられない壁にぶち当たって、すずがどうこの問題を解決するか。

母をよく知る合唱団のおばさんたちはすずの変化に気付いて「この歌、唄って!」とせがみ、「お母さんも幸せよ!」という。このとき、すずは「母が幸せ!」という意味が分からなかった。

すずのことをいつも気遣ってくれるのが幼なじみの忍(成田浚)。「何かあったら言ってみろ!」と変化に気付いていた。これはネットにはないコミュニケーション。このことの大切さを説いた作品です。

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「歌よし映像よしで圧巻!」の数億人が集まるベルの大規模コンサート。そこに乱暴で傲慢な竜(佐藤健)が現れ、コンサートは大混乱。ここにジャスティスという仮想世界の安全維持のための自警団が出現して「もう許さない、倒さなければならない」と竜を追いかける。「アンベールして!」の大衆の声に「オリジン」を暴く」と強い決意を示した。

すずは「竜は誰なの?なぜ追われるの?」と惹かれた。

5億人のなかで出会った彼は“運命”の人だった😊 すずはヒロと一緒にSNSで竜と戦ったことのある人の話を聞きますが、皆さんの竜像はどこまでが本当なのか分からない。が、身体に傷があるというのが気になった。

すずはU世界の中で自分で竜を探すことにしました。天子と呼ばれるアバターに「城に居る!」と案内してもらった。竜はうずくまっていて「出て行け!」と怒鳴るが「もう大丈夫だ!」と出て行った。本当の姿がわからなかった。

ベルがラブソングを作って竜に会いにいった。竜に「俺の醜さを笑いに来たか、帰ってくれ!」と言われ、ベルは取りつくしまもなく戻っていると、ジャスティスたちに捕らわれてしまった。そこに竜が現れ救ってくれた。

ベルは「ひとりにして欲しいとあなたは突き放すけど、本当は胸の中にあるものを除かれたくないないのでしょう?」と歌った。満点の星を仰いでふたりで踊った。美女と野獣でした。😊

「すずと竜の恋バナ」に絡むように、カヌー部のカミシン(染谷将太)と吹奏部のルカ(王城ティナ)の田舎らしい恋バナが描かれ、ネットでは味わえない恋にほのぼのとした気持ちにしてくれます。このふたりに刺激されて、すずが「好きです」と忍に打ち明けようとするが、先に忍が「すずはベルだろう」と明かしちゃった。すずは「違う!」と言ったが・・・。(笑)

Uでは「竜をアンベールせよ!」と大混乱が起こっていた。ベルが竜を訪ねるとジャスティスによって城に火が放たれ、「一緒に逃げよう」と誘ったが「本当のことは言えない!」と竜は消えていった。

ヒロが竜をSNSで追っていて、「竜をもてなしましょう」ブログを見つけた。観ると、父親は竜と弟を虐待する映像だった。すずが「私はベル、そこに行きたい!」と話すが「口先だけだ!」と映像が切られた。

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ヒロが「顔を隠しただけでは何も伝わらない」と言い、忍と合唱隊が「素顔で唄え!」という。アバターでは本当の気持ちは伝わらない!

ベルはすずの姿で「ひとりでは生きられない、会いたい!もう一度!」と唄った。沢山の人に届き、大合唱になって行った。そこにクジラが現れ、これに乗って歌った。細田監督にとってクジラはトラウマだ!(笑)

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このとき竜のブログに繋がった。父親に虐められている。部屋の向こうにビルが見えた。東京のあそこと分かった。

すずは亡くなった母の気持ちが分かった。父(役所広司)に断りひとりで東京に発った!

細田監督の我が子への願いでしょうすずは相手の痛みが分かり、行動して手を差し伸べる娘に育っていました。親ならこういう風に育って欲しいですね!涙が出ます。これまでの作品に比べて優しさに溢れ、ぶっ飛んだところもありますが、感動的な物語になっていました。

 SNSだけでは実像は伝わらない!ここでは自身の人間性を晒すという手段に訴え、実世界での生活がいかに大切かが描かれました。自然豊かな高知の田舎とネットにはないおばちゃんたちの暖かさが生かされました!

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