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「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019)男性優位社会のなかでの女性の生き方・生きづらさ!

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とても評判のよい韓国映画WOWOWで鑑賞しました。原作は日本でも話題を集めたチョ・ナムジュの同名ベストセラー小説。男性優位社会のなかでの女性の生き方・生きづらさが描かれ読者の心を捉えました。未読です!映画化にあたってかなり脚色されているようです。

1982年ソウル生まれの31歳の女性・ジヨン。現在、夫・デヒョンと1歳の娘アヨンと3人暮らし。出産後から日々のストレスからおかしな言動が見られるようになった。それには韓国社会が抱える男性優位の社会制度が深くかかわっていたが、精神科医・ソヨンのカウンセリングで受けて、自分の生き方を見出していく社会派ドラマです。

男性優位の考え方は、韓国だけの問題ではなく元オリンピック組織委員会会長・森喜朗氏の女性蔑視発言に見られるように我が国においても根深い問題です。それだけにこのテーマは日本女性の心を捉えたようです。😊

監督は本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。撮影:イ・スンジェ、編集:シン・ミンギョン、音楽:キム・テソン。

出演者:「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチョン・ユミとコン・ユの共演、キム・ミギョン、コン・ミンジョン、キム・ソンチョル、イ・オル、イ・ボンリョン、等。

チョン・ユミとコン・ユの名演技で、リアルな作品になっていて、小説では伝わらない感情が伝わるのではないでしょうか。まるでその場に立ち会っているようで、ヒリヒリしながら、ふたりの会話を聞いていました。ジョンが社会や人のせいにすることなく自分で解決しようとする姿にほっとしました。

あらすじ:

妻ジョン(チョン・ユミ)は1歳のアヨン(リュ・アヨン)をあやしながら、テキパキと家事をこなしますが、夕暮れになるとアパートのベランダで深いため息をついていた。

こんなジョンに何が起こったかと夫・デヒョン(コン・ユ)は「妻に何が起こっているのか先に知りたい」と精神科医・ソヨン(キム・ジョンヨン)を訪ねたが、「本人を連れて来なさい」と言われ、戸惑うばかりでした。デジョンのこの唐突な行動には驚きましたが・・。

ションは乳母車にアヨンを乗せて散歩していて、「いいご気分だ、羨ましい。俺も夫の稼ぎでのんびり過ごしたい!」と揶揄する言葉が耳に入って来て、苛立つのでした。

正月、ジョンが嫌がったが、家族で釜山のデヒョンの実家に帰省。ジョンはデヒョンの家族のために沢山の料理を作って尽くすのですが、家族の楽し気な様子に耐えられなかった。実の母ミスクの口調で「娘を実家に帰してください」と義母(キム・ミギョン)に訴えた。義母は激怒。韓国は血縁での結び付が強い国だからか、夫の実家での嫁の地位というのは日本では考えられない厳しいものだと思いました。

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このシーンは、韓国における男性優位の実態を明らかにし、ジョンの症状、夫婦関係が見てとれるという、作品全般にかかる問題を提起しており、うまいシーンだと思いました。

急遽、デヒョンはジョンをジョンの実家に連れて行きました。実家は父・ヨンス(イ・オル)、母・ミスク(キム・ミギョン)、弟・ジソク(キム・ソンチョル)、祖母の4人家族。正月ということで教師をしている独身の姉・ウニョン(コン・ミンジョン)が帰省していました。

ジョンはぐっすり休むことができました。母や祖母の優しさに触れ、弟の持っている万年筆が欲しかったことを想いだし“自分は小説家に憧れていた”ことを思い出して、アパートに戻っていきました。

アパートに帰って来ると夫デヒョンから「突然憑依するから、精神科医に見て貰ったら」と勧められ、自分は精神病者なのかと悩み始めました。ここではデヒョンの詳しい説明が必要だったと思いますね。

ションはアヨンを連れて散歩しながら、かっての職場テハン企画社にいたころ企画チームに能力があるにも関わらず、男性優先や女性の結婚や子育てで長期勤務が難しいという理由で選抜されなかったこと。尊敬していた上司キム・ウンシル課長(パク・ソンヨン)に「結婚後も頑張ります」と告白したことを想い出していました。課長は結婚し、母親の援助を受けて子育てをしながら、男性のパワハラ・セクハラをうまくかわして、情熱的に仕事をする人でした。

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散歩中にベーカーリーの店舗に貼られたパート募集のポスターを見ていて、店員に誘われパートの仕事でもしてみようかなと思っているところに、かっての同僚・ヘス(イ・ボンリョン)から「ウンシル課長が辞めて新しい会社を立ち上げる」と聞かされた。この会社でバイトなら出来るかと思ったが、ヘスから子育も立派な仕事と積極的な勧めはなかった。

ジョンは就職サイトでパート職を探したが自分に合うものが見つからない。「憑依」が気にかかり、精神科医のブログで相談者の悩みを調べてみた。「祈祷でもやったら!」というものがあった。(笑)夫デヒョンも職場で同じブログを見ていました。

その夜、ジョンは「ベーカリーでアルバイトしたい」とデヒョンに話すと「止めとけ、それが望む仕事か、子育てが大切だ」と返事した。これにジョンは失望しました。これはひどい

ジョンはビールを飲んで、ソファーで休んでいるデヒョンに、実母ミスクの口調で「ジョンが可哀そう、身体が楽になっても焦る時期よ。ご苦労様に言ってあげて!」と声を掛けた。さらに「私はもうあなたに告白したスンヨンじゃない」と喋って泣いた。

翌日、ジョンはお酒が入っていたからと断って、デヒョンが勧める精神科クリニックに出掛けたが、35万ウォンと聞いて、もったいないと止めた。(笑)

その帰り、ヘスに電話すると「チーム長に繋ごうか」と言われ、断わった。彼女にはトラウマがあった。社にいたころのトイレでのセクハラ事件や高校生のときのストーカー事件を思い出していました。

夫デヒョンが研修で出張することになった。ジョンはこの機会に母の誕生祝いを兼ねて実家に戻ることにした。電車の中でアヨンがウンチを漏らし、隣の夫人に嫌味を言われ、トイレに入るとセクハラ事件を思い出し大変だった。これはもう男性には分からない苦労ですね!

母の誕生日に母の姉妹たちが集まり、母が先生になることを諦め家族のために工員になって働き家族を支えたことが話題になった。

姉ウニョンから「あなたはお母さんが苦労して育てた娘、小説家か記者の夢を諦めたの?人生折り合いをつけたら!」と促された。テヘン企画の採用通知が、男性優先で、なかなか届かなかって、父ヨンスが「嫁に行け!」と言うのを母が「こんな時期だからこそ存分に出歩きなさい」と言ってくれたことを思い出していました。

一方のデヒョンは仲間の中で育児休暇が話題となっていた。「妻に取れと急かされている」という者がいれば「取ったらバイバイ、肩身が狭いぞ!」と脅す者もいた。

実家からの帰りヘスに電話すると「チーム長が辞めて、会社を作る」と教えてくれた。アパートに戻ったジョンは「就職祝だ!」とケーキを買って夫の帰りを待っていました。

デジョンが「育児はどうする」と問うので「ベビーシッターを雇う」と答えると「アヨンが心配だ!それで君が幸せならならいいが」という。アヨンは義母が子供を欲しがり、デジョンが「ひとりでいいから、人生が変わる!」と望んで出来た子だった。😊

ジョンはベビーシッターを探したが見つからなかった。デジョンが「育児休暇をとる」と言い出し、ジョンは喜びました。

ところがこのことが義母に伝わり、「息子の将来に邪魔するのか」と激しい剣幕でジョンを、実母のミスクに「身体の悪い者がとんでもないことをする」と抗議してきた。ミスクはジョンが病気であることを知らなかった。慌ててジョンのところにやってきた。

ジョンは塞ぎ込んでいた。これを見たミスクはジョン」を抱きしめて「私の近くに戻って働けばいい」と帰ろうとすると、ジョンが実の祖母の口調で「あなたが工場で怪我して戻ったときは身を切られる思いで、あのとき抱きしめてやれず、感謝の言葉しかなかった。ごめんね!」と喋った。今のジョンに頼れるものは母の優しさしかなかった。母もこれを聞いていたデジョンも泣いた!

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夜、ジョンは「今は働けない、チーム長に伝える」と話すとデジョンが「今回は見送ろう。育児休暇を取ることも」と同意した。しかしジョンは「あなたは再就職も育児休暇も望んでないように疑ってしまう。全てがひと様のように考えていて、私ひとりが戦っている」と苦しさを吐き出した。デジョンが「君は病気だ、病院に行こう」と勧めるが「私の何処が病気?」と食って掛かる始末。が、話したあとに夫婦になって楽しかった思い出が頭をかすめ、「心配を掛けたわね」と笑った。

デジョンが「僕は君を失いそうだ。僕がここまで追い詰めた!」と泣いた。妻を失うと思ったときに“人生で何が大切か”が分かった。

ジョンの家族が懸命にジョンを支えた。弟のイソクが見舞いにションのあの万年質を贈った。そこにはキム・ジョンとサインが入っていた。「作家を目指せ!」だった。

ジョンが精神科医・ソヨン先生を訪ねカウンセリングを受けた。先生に「問題を指摘されて驚いたでしょう。しかし、治療で一番大切なのは患者に来院させること。それで中半成功です」と言われ、「気が楽になりました」と感謝しました。

チーム長の起業の日。お祝の花をもって訪ね、「再就職は無理です。回復したら連絡します」と伝えた。

カウンセリングで、「こんな生き方も悪くないです。妻として母として時に幸せを感じます。しかし、とじ込まれた壁にぶち当たり越えられないことに腹が立ちます。自分が悪いんです、超える人もいるのに私は越えられなかった。結局、私は脱落したんです」と話すと、先生に「あなたは悪くない!腹が立ったらどうします!」と聞かれた。これでジョンは何をなすべきかが決まった!

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ジョンは小説を書き始め、デジョンがアヨンの育児を見ていた。街に出て「ママ虫」と言われても全く気にならなかった。そして書き上げたのが「「82年生まれ、キム・ジヨン」だった。

感想:

韓国の男性優位社会、韓国特有の家族制度のなかで、女性の社会進出の難しさが描かれました。問題が一杯あって当事者たちだけでは解決できない問題が圧倒的に多い。それだけに社会改革、啓蒙が叫ばれます。前出の元総理森氏の発言はとんでもないもので「思い違いをした」などでは許されないでしょう。

しかし、ここで止まってはらない!これを突き破ったのは苦労を重ねた母親の愛情、そして夫婦がお互いを失うかもしれないと思ったときに見出した“愛”、そしてカウンセリングでしたカミングアウトは力になります。

ジョンとデヒョンが交わす会話に、自分ならこうするぞ!と考えさせられる作りになっていましたが、現実と回想の繋ぎが悪く、分かり辛いところがあり、これが気になりました。

俳優さんたちが力のある演技で見せてくれ、感動的なドラマになっていましたね。特にチョン・ユミは感情に変化のある役で、高い演技力が求められ、これによく応じていました。

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