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宮﨑あおいさんを応援します

「カラフルな魔女 ~角野栄子の物語が生まれる暮らし」(2021)NHK製作

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8月、2回にわたって放送された、「海と旅」と「見えないものを見るメガネ」。角野栄子さんの自分語りの作品で、宮﨑あおいさんがこれをアシストします。語り口のふたりの相性もみどころです!

魔女の宅急便」をはじめ数多くの作品を世に送り出してきた、86歳の国際アンデルセン賞作家・角野栄子さんは、鎌倉にある「いちご色」の一軒家で暮らしている。「自分にとって気持ちのいいもの」というものさしに貫かれたカラフルな暮らしと、その中から生まれる物語の魅力を伝える番組です。

終戦時10歳の女性がどう生きたか、あれほどの戦争悲劇を体験した少女がこんなにも自由でチャーミングに暮し、魔法を見つけて大活躍。😊それでいて靴を修理して20年も履き、水溜まりの道を歩き、コーヒーの中の砂糖の味を楽しみ、“ぼんぼり”絵を描くというあのころの記憶が魔法に繋がる。これがとても心地よかった。

出演:角野栄子(児童文学作家)、朗読・語り:宮﨑あおい(俳優)、テーマ音楽:藤倉大(作曲家)。

第1回「海と旅」

86歳の角野はこの夏「海とお別れする儀式」をしようと考えている。その心はというお話しです。

40代後半でヒールにお別れして以来、角野のモットーは「ペタンコ靴をはいて自分の足でどんどん歩く」こと。鎌倉の海辺の散歩も日々の楽しみのひとつだ。24歳で海を渡りブラジルで暮らしたことが、作家としての原点だという角野。「魔女の宅急便」の主人公キキも、海が見たいとコリコの街にたどり着いた。「海」は何かが生まれてくる感じがしてわくわくするという角野が、「もう一度だけ海に入りたい」と考えた理由とは…

ヒールを履くのを止めたのは「たった5cm高くしても、疲れるだけ!」と身体と心を自由にしたかったと。

角野さんは24歳で結婚してブラジルに渡り、ここで書いた最初の本「ルイジンニョ少年」で主人公エイコのポルトガル語の先生ルイジンニョ少年のモデル、ルイズ・カルロス・ディアオさん(14歳?)に出会ったことが小説家になるきっかけになったという。彼女のアパートの近くに住んでいて、よく面倒を見たようです。ダンスが出来ない彼女に、ディアオ少年は軽快にタンゴを踊り、「踊れ!」というが私は踊れない。すると「僕のコンソラ(心)のビート音は、エイコの音と同じ、僕が歌い踊るんだからエイコも歌い踊れ!」と励まされ、自然に踊ることができた。「ここはもう外国でない!ふたつの国が出来た」と思った。そしてこの物語を書いていて、「私は一生これをやろう」と思った。書いて行けば気持ちがワクワクするし、生きいきでき、安全でもあると思った。だから一生書こうと思った。いいものを書く、そうではない、“楽しく書く”です。

この作品のなかでふたりは60年ぶりのTV電話で面談します。ディアオさんは「エイコは好奇心が旺盛でアーティストになると思ったが小説家になるとは」と驚きます。(笑)

海に入ると世界に繋がる、波の音が地球の鼓動に聞こえるという、とても生命力に溢れた人だと思うんですが・・。

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今、伝記を執筆中。「イコ、トラベリング」。イコは栄子です。弾けるように解放された女の子を書いてみたい。面白いことを形にしたい。トラベルは86歳まで続いているし、これからも続くと言います。

「私の一生として海に浸かるのはこれが最後だと思っていたが、非公開で来年も来ます!」と。(笑)

第2回「見えないものを見るメガネ」

トレードマークのカラフルなメガネを通して角野が見ているものとは。

老眼鏡が手放せなくなり、メガネのおしゃれの楽しみに目覚めたという角野。その日にかけるメガネを決めてから着るものを選ぶことも。27年にわたり6巻を書き継いだ魔女の宅急便にも、主人公キキがメガネをめぐって不思議な体験をする話が出てくる。「キキは物にこめられた見えない思いも一緒に運んでいる」という角野。「見えない世界の力」を、母を亡くした幼少期から考えてきたという角野が、作品にこめたメッセージとは。

角野さんはメガネを新調することにしました。選んだメガネは視力検査に用いられるようなメガネ?「皆が笑顔になる、笑ってくれる!ちょっと変わっていて顔の皺が見えない」というメガネでした。(笑)さてこのメガネで何をどう見るのでしょうか。

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宅急便というのは物を運ぶ、物というのは見えない世界を持っている。「魔女の宅急便」は見えない世界を見える世界と一緒に運びながら、いろんなことを経験して見えないものが見えるようになる物語。47歳で書き始め26年間も描いてきた角野さんのライフワークです。

5歳のときに母親を亡くし、お盆には母親が帰ってくるという不思議な世界に関心を持った。死んだら人はどこかに行くということ。もしかしたらあるかも知れない、違う世界というものの力、見えない世界が持っている力を知らず知らずに教えられた。心が満たされないと“創造する遊び”に楽しみを覚え、その楽しみが物語を書く楽しみになっていると言います。

魔女の宅急便」が完成したとき、角野さんは「だれでも魔法を持っている。空を飛んだり、姿を消せなくても、好きなことで生きていればそれは魔法になる」と書き記しました。魔法とはその人の喜びを見つけること、見つからない人もいますが、メガネで見つけて欲しい。魔法はひとつ、幾つもあったら魔法でないと。

角野さんは今、「魔女は宅急便」のスピンオフ作品「ケケと半分の魔女」を書いています。ケケの分身15歳の少女タタが母親を早く亡くし自分には何かが欠けているといろいろ人に出会い、見えない部分を探して旅する物語です。見えるものを探すのは簡単。見えないものを見えるようにするのが人の心を豊かします。人は誰でも自分はもっと豊かになりたいと思う。自分に掛けているものを求め、生きていくのは誰しも思うことです。

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角野さんはお盆には“ぼんぼり”を描きます。“ぼんぼり”は幻想的で、この時期の“むっとした湿気”で、向こうの世界に繋がっていて、小さな頃の思い出がそうさせってくれ、「姿がなかったものが現れてくる、なかったものが形になる。向こうの世界からこちらにやってくる」と言います。

角野さんは見えないものを探しながら、新しい物語の姿が現れるのを待っています。

鎌倉八幡宮ぼんぼり祭りの風景で角野さんのお話は閉じられます。

宮﨑あおいさん コメント

もう、角野さんのことが、大好き! になりました。言葉のひとつひとつが、本当に優しくて温かくて。初めてVTRを見たときも、ナレーションしている間も、心が温かくなるような、幸せな時間でした。見ている間、ずっと口角が上がっていたような気がします。本当に透明感があって、すてきな方! 日本中の人、世界中の人が知っている「魔女の宅急便」を、こんなすてきな人が書いているんだと思ったら、よけいに角野さんの作品のことも好きになる気がするし、生きていくうえでとてもポジティブに、前向きになれる言葉が詰まっています。見ていて幸せになれる。そんな番組はなかなかないと思うので、ぜひ見ていただきたいなと思います。

NHKでは最近、宮﨑あおいさんの映像、声の番組がしばしば取り上げられており、そろそろ二児の母となった宮﨑さんの演技が見られるかも知れないとわくわくしながら作品を楽しんでいます。

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