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「MINAMATA ミナマタ」(2020)久しぶりに涙が止まらなかった!

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水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスアイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」を題材に描いた伝記ドラマだという。ジョニー・デップが製作・主演を務め、日本からは実力俳優の真田広之國村隼、美波さんらが参加、坂本龍一さんが音楽を手がけた作品です。

監督:アンドリュー・レビタス。脚本:デビッド・ケスラー、スティーブン・ドイターズ、アンドリュー・レビタス、ジェイソン・フォーマン、撮影:ブノワ・ドゥローム音楽:坂本龍一

出演者:ジョニー・デップ真田広之國村隼、美波、加瀬亮浅野忠信、岩瀬晶子、キャサリンジェンキンスビル・ナイ、青木柚、他。

1970年、ニューヨーク。かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミスは、現在は酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市チッソ工場が海に流す有害物質によって苦しんでいる人々を撮影してほしいと頼まれる。そこで彼が見たのは、水銀に冒され歩くことも話すこともできない子どもたちの姿や、激化する抗議運動、そしてそれを力で押さえ込もうとする工場側という信じられない光景だった。衝撃を受けながらも冷静にカメラを向け続けるユージンだったが、やがて自らも危険にさらされてしまう。追い詰められた彼は水俣病と共に生きる人々に、あることを提案。ユージンが撮影した写真は、彼自身の人生と世界を変えることになっていくというもの。

水俣チッソ垂れ流し事件はまだまだ記憶から消えることはありません。作品の中で、水俣病の我が子を「私の宝もの!」と抱く母親の姿に「こんなことがあってはならない!」と涙しました。そしてこの写真を撮ったユージン・スミスの生き様に・・・。

ユージン・スミスは“LIFE誌”を代表するカメラマンではあったが、今はただの酔っ払いのよれよれカメラマン。水俣水銀被害者を前にして、過去の栄光だけではどうにも撮れない。水俣の被害者や支援者に助けられ、彼らの心を掴んだ入魂の一枚「入浴する智子の母」。母の願いを聞き、子を抱いて、ユージンの心が母と子の心に繋がっていくところに「この写真に偽りなし!」と涙しました。

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、脳性麻痺の子を“五木の子守歌”を唄いながらあやす母親の映像から物語が始まります。この母親と子供をユージン・スミスアイリーン・美緒子・スミスがどう撮ったかというのがテーマです。

この母親と子供が物語の中に、3度、酔っ払いのユージン・スミスが写真家として生き返る過程に合わせて出てきます。

1970年ニューヨーク。ユージン・スミスジョニー・デップ)は“LIFE”の編集長ボブ(ビル・ナイ)に自分の回顧展のオープニングで「LIFE史上最高の写真家だとスピーチしてくれと頼むが「君は史上最も厄介な写真家だ」と断られる。「あんたをその席につけたのは俺だ!」と皮肉って自分のスタジオに戻った。

今でも腕は一流だと思っているが、輝かしい時代は去り、金もなく酒に溺れる日々を送っていた。

そこに富士フィルムのCMを撮って欲しいとアイリーン(美波)がスタジオにやってきた。「カラーはやらない」と断った。アイリーンはユージンをジャズクラブへ誘っていい気分にさせて、翌日スタジオに現れて「日本で今、海の沈殿物チッソで人々が苦しんでいる。これを世界に広めたい」と申し出た。ユージンは「興味ない!と断った。アイリーンが去って彼女が残していった写真をみて、衝撃を受けた。ユージンはアイリーンにうまく嵌められましたね!(笑)

ユージンはボブを説得し日本行が決まった。ボブは「いいストーリーを作れ!」と送り出した。

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ユージンはアイリーンと共に水俣にやってきた。松村夫妻(浅野忠信、岩瀬晶子)に温かく迎えてくれた。タウオは言い難いが長女アキコが水銀中毒により目が見えず話せない胎児性水俣病だという。シッソ側は脳性麻痺だと主張してなんの保障なく、家計は行詰まっているという。「写真を撮りたい!」と申し出たが断られた。妻のマサコは「ずっと黙っている子だけど、宝ものです」と言った。

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翌朝、ユージンはアイリーンから補償を求める(自主交渉派)メンバーのひとりで、カメラマンのキヨシ(加瀬亮)を紹介された。彼の息子も胎児性水俣病で、自身も手の震えと視野狭窄の症状が出ているが、「子供のために社長に訴え、それでもこの事実を否定できるかを聞きたい。あなたがいると力強い」という。

窒素水俣工場前で自主交渉派のリーダー山崎ミツオ(真田広之)が同士に「世間体を考えて息子のことを考えているだけではダメだ。会社に責任を問う!原因ははっきりしている。声を上げて世界に訴えよう」と呼びかけていた。これを写真に収めた。

工場長の野島ジュンイチ(國村隼)はユージンが現れたと報告を受け関心を持った。

ユージンはサッカーをする子供たちを見ている少年に会った。彼は両脚をギブスで固定し、サッカーに参加できない。この事件にどう取り組むべきかと不安が襲ってくる。「覚悟しろ!ジャズは写真と同じだ!即興だ!子供でも出来る!写して見ろ!」とこの少年にカメラを渡した。

スタジオに戻るとアイリーンに「何故カメラを離した」と問われ、「次世代に渡した!おれの人生は失敗だ!」と話すと、キヨシが「見てくれ!」と準備されたカメラ、暗室、投影機を見せた。ユージンは「ありがとう!」と覚悟が決まった。

あの少年が撮った写真を見たいと訪ねてきた。フィルムの現像から丁寧に教えながら病んでいた心が癒されていった。アイリーンが現像作業を手伝い始め、「写真家は被写体の魂を奪うし、奪われる。耐えられなくなるぞ」と教えた。

ユージン、アイリーン、キヨシは窒素水俣工場付属病院に医療関係者に化けて侵入し、写真を撮ることにした。病室は痩せ衰えた、背中の骨の曲がった患者らで満杯、まるでアウシュビィッツの映像を見るようだった。写真を撮らせてくれと頼むと「顔はダメ!」と断られた」。「目に真実がある!」が、ありがとうと顔を隠した写真を撮った。患者から話も聞いた。

ラボで山下博士の猫の実験フィルムが見つかった(踊るネコ)。15年前から毒害を知りながら水銀を流し続けた!

現像室でユージンはアイリーンと現像作業を続けた。印画紙に「愛情を持って触れろ!対象が見えてくる」と教えながらの現像作業。いつしかふたりは愛を感じ始めた。

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ユージンは窒素水俣工場前の山崎が指導するデモ行動を撮影していた。すると社員にカメラを取り上げられ社長室に連れて来られた。社長の野島が「窒素は肥料として日本の食を支えており極めて大切な製品。汚染吸いに反対しているのはほんの僅かで無視できる数値だ!手を引いて欲しい」と5万ドルを渡した。ユージンは「ふざけるな!」と受け取らなかった。

住民は訴訟派と会社一任派に別れ激しく衝突する。山崎が必死に訴訟の必要性を説き、一任派の拠り所“署名名簿”のインチキを明らかにする。ユージンはこれをカメラに収めた。

ユージンが松村の家に寄ると、妻のマサコがアキコを入浴中だった。マサコが「抱いてみる?」と言うが、ユージンは子供を抱いたことがなかった。アイリーンが「ちょっと買い物」とマサコを誘い、ユージンが抱いて面倒をみることになった。彼は「星に繋がる梯子が・・」と歌いながらアキコをあやしてみた。

山崎の家で談笑していて、突然警官の捜索を受けた。事態が緊迫してきた。ボブからストックフォルムの展示会までに記事を送れと急かされていた。

夜、風呂で“社長の言ったこと”考え、これまで撮影したフィルムを一気に編集することにした。現像!現像!に追われ、やっと終わったところにで、スタジオに火を掛けられた。飛び込んだが救いだせなかった。

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ニューヨークは夜。ボブを起こして「帰国する!俺のやっていることは人を苦しめるだけだ!」と伝えると「この30年でもっともいい仕事だ!皆が期待している」と帰国を許さなかった。

あのギブスを付けた脚の悪い少年がカメラを持ってきた。写真の撮り方を教えながら、こんな子でも頑張っているともぅ一度挑戦することにした。

民集会。ユージンは「1000の言葉より1枚の写真。皆さんの役に立ちたい!家族の大切な時間を共有したい。親密な時間を分かち合い、最大限の配慮と尊厳をもって撮ります。写真を撮らして欲しい」と訴えた。参加者が賛同してくれた。

震えながら飯を盛る子供、苦しむ子を介護する母親・・と苦しむ家族の写真を撮りまくった。

1871年3月7日、大規模デモを取材。激しい投石が飛び交うなかでの取材だった。ユージンはデモ中にいて、捕らわれ、殴られ、大怪我で入院に身となった。

山崎ら自主交渉派は会社に乗り込み、社長と直接交渉していた。娘を介護する母親が「ふたりの娘は病気。長女は何度も痙攣し、泣くことも出来ない。私たちがいなくなったら娘たちはどうやって生きていくのか?社長さん教えてください」と訴えた。山崎は社長の机に乗って「社長も人間!同じ人間がこんなことしていいのですか?」と詰め寄る。社長は席を外し弁護士に「払えるか?」と検討した。

入院中のユージンの元に男が訪ねてきて「申し訳なかった。許して欲しい」と封筒を残して帰って行った。中味は火災で消滅したと覆っていた写真の一部だった。

ユージンが退院して、松村の家を訪ねると、五木の子守歌が聞こえた。マサコがアキコを入浴させているところだった。アイリーンがカメラを据えていて、ユージンに撮れと促した。ユージンは怪我で動かない手でアイリーンの助けを借りてシャッターを押した。

写真「入浴する智子の母」はボブのところに送られ、LIFEに載った。この写真を野島社長が見た。

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1973年、熊本水俣病第1次訴訟判決で原告「勝訴」となった。

感想:

久しぶりにエンデイングを見て、涙が止まらなかった!

物語はちょっとミステリアスでテンポよく、ユージンとアイリーンのラブロマンスを交えながら水俣公害闘争を追い、「入浴する智子の母」写真がその闘争に与えた意義が浮かびあがるという、うまい脚本でした。

害者たちの生き様、被害者救済をする人達。決してあきらめない!自分たちの時代で終わる問題でないと世界に抗議する姿に感動しました。決してこの惨状を起こしてはならない。しかしながら、世界には次々と海水汚染問題が起こっている。ジョニー・デップの怒りの声が聞こえるような作品です。

ジョニー・デップがこんな役を?と思いましたが、まさにユージン・スミスに成りきって、すばらしい演技でした。この演技をしっかり支える日本人俳優の皆さんの演技も見事でした。特に真田広之さんが演じるヤマザキ・ミツオの声は世界に届くでしょう。

美波さんの流暢な英語での演技、見事でした。アイリーンが主役といってもいい活躍でした!

撮影は日本ではないということですが、違和感なく美しい映像でした。

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