映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「護られなかった者たちへ」(2021)少しの勇気でよ い、 声を上げよ!

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監督が瀬々敬久さんで佐藤健阿部寛さん出演作ということでこの作品を選びました。客は「007」でこちらは空いていると思っていましたが、よく入っていました。(笑)大半が女性!男性は「007」だったんだろうと思っています。「王様のブランチ」でリリコさんが熱っぽく作品を紹介しましたが、さほどに女性にはぐっとくる作品かもしれませんね!😊

東北大地震を背景に、仙台で起きた不可解な連続殺人事件の捜査の行方と、事件の背後に浮かび上がる社会福祉行政の矛盾をミステリアスに描き出すというもの。

原作は中山七里さんの同名ベストセラー。未読です。監督・脚本:瀬々敬久脚本:林民夫、撮影:鍋島淳祐、音楽:村松崇継主題歌:桑田佳祐「月光の聖者達」。

出演者。主演は佐藤健阿部寛さん、共演に清原果耶、林遣都永山瑛太緒形直人吉岡秀隆倍賞美津子さん、他。

東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され餓死させられるという前代未聞の連続殺人事件が発生する。その残忍な殺し方から怨恨の線が有力視されたが、被害者はいずれも人格者として知られ、怨恨の可能性は低いと見えた。そんな中、事件を追う笘篠刑事(阿部寛)は、被害者がかつて同じ福祉保健事務所に勤務していた事実を突き止める。その容疑者は別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根(佐藤健)という男。笘篠は利根を追い詰めていくが、決定的な証拠が掴めないまま、第3の事件が起きようとしていた・・・。

東北大地震を背景にして登場人物のキャラクターに深みを加え、バディ刑事で事件を追い、社会福祉行政の矛盾を考えるという、ヒューマン・ミステリーにして社会派ドラマ。地震被害者の絆の深さに泣かされ、あっと驚く事件の結末、そして生活保護費の矛盾を考えさせられる。

東北地震という大自然災害を乗り越えた人々が、貧困で生活保護費が受けられず亡くなるという人災にどう対応すべきかというテーマ。登場人物の人物像が物語の進展に応じて深まり、それがしっかり絡まりながら、感動的な結末に向かう脚本がすばらしいです。

 演じる佐藤健阿部寛、清原果耶さんの深い感情表現が物語に深みを与えてくれます。さらに悪イメージ?の社会保険福祉センター(事務所)職員をベテランの永山瑛太緒形直人吉岡秀隆さんが演じテーマの重厚性を感じさせてくれます。そして最期に桑田佳祐さんの「月光の聖者達」で物語の余韻を味わうことになります。

物語はコロナ禍の今に通じるもので、とてもよい時期に公開されたと思います。

あらすじ(ねたばれ、最小限に):

東北大地震で設置された小学校の避難所。自宅から遠島けい(倍賞美津子)、母親を探しにカンちゃん(石井心咲)がいた。利根がここに避難してきた。笘篠刑事が妻と長男を探しにやってきた。夜、彼らは満点の星空を見て、生かされていると思った!

地震から復興していくなかで、この4人がいかなる運命に巡り遭うか?

寒さに、遠島けいはひとりぼっちのカンちゃんに毛布を掛けてやる。これでカンちゃんは遠島から離れられない。利根は暴力男と格闘して泥水の中に顔を押し付けられながらカンちゃんを守ったことでカンちゃんと遠島さんと繋がっていく。笘篠はカンちゃんが息子と同じ色、黄色いジャケットを着ていたカンちゃんに声を掛け、息子を偲んだ。

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ここから物語は9年後の現在に移る。

利根はあることで放火事件を起こし、2年の服役を経て、保護司(三宅裕二)の紹介で某鉄工所に就職。

前代未聞というおかしな殺人事件が発生。これを県警の笘篠と蓮田刑事(林遣都)が現場に向かった。現場に名刺が落ちていて、身元はすぐに割れた。名前は三雲忠勝(永山瑛太)と言い、生活保護保健所勤務だった。妻は「恨みを買うよう人でなく、度が過ぎるほどの人で、震災時倒れた墓を元に戻すのに、周りの墓全部も一緒にやるような人だった」という。彼の人柄を知るうえで大きなヒントがあります。

笘篠刑事と蓮田刑事の凸凹刑事が犯人を追っていくことに合わせて、被害者と犯人像の過去が挿入され、事件の動機や犯人像が具体化していく様がミステリアスで絶妙、物語がスリリングに展開しますすばらしい脚本です!映画「マスカレード・ナイト」(2021)は比較にならない!(笑)

震災では、なにげない相手を思う心で繋がり、これが大きな絆へと育っていく。

利根とカンちゃんは半壊の遠島の家に招かれ、3人でウドンを食べたことで、もう離れられない疑似家族となっていった。ここは丁寧に描かれ、倍賞さんの演技に泣かされますね!物語の核となる部分です!

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そんな中で、利根は栃木に仕事を求めて去り、カンちゃんは孤児院に引き取られた。その後カンちゃんは養母に引き取られていった。

笘篠刑事と蓮田刑事は三雲の生活保護保険勤務で恨みを買うようなことはないかと、仙台市青葉区の保険福祉センターを訪ね円山幹子(清原果耶)の勤務現場を見せてもらう。

娘を塾にやるために臨時パートで稼ぐ、そうしないと娘が学校で虐めに会うという。反社会勢力に属する者で自家用車を持つ不正受給者。これらに毅然と対応する円山の勤務実態を見る。円山は不正受給者が震災で増えたと説明した。

円山は生活困窮者で「世間体があるからいらない」という人には、「これは権利!」と強引に申請させるという正義を持っていた。

ここでの清原さんの保護者演技はこれまでにない、落ちつきと強い意思が感じられるもので驚かされました。彼女は本当に凄い人ですね!

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三雲の事件がTVで報じられ、これを観た利根は鉄工会社を辞めた。

三雲が勤務していた杜浦市福祉保健事務所の元所長城之内猛(緒形直人)が三雲同様の奇怪な殺害者となった。笘篠は県警本部の許を得て、保険事務所の全生活保護案件文書を調べトラぶった案件はないかと、署を挙げて実施した。

さらに三雲の勤務対応について、仮設住宅を訪ね申請者から意見を聴取した。「三雲はのらりくらりとはぐらかす!」などと評判がよくなかった。

見つけた案件が遠島けいとこれに絡んだ利根のものだった。笘篠と蓮田は利根を追った!

このころ利根は塩竈市桂島のカンちゃんの養女先を訪ねていた。彼が放火の罪で服役していて2年間会ってなかった。養母さんがカンちゃんの務め先に電話がしてくれたが、ポストにカンちゃんお手紙があり、居場所が分かったので仙台に戻った。

利根は雑貨店でナイフを買って、フードを被り、雨の中、貨物駅歩道卿を歩いていた。これを笘篠と蓮田が追っていた。走る!走る!利根。ちょっとした見せ場です。利根は逃げ切った。そして、野外舞台のある公園でカンちゃんに会った。カンちゃんは円山家の養女となり円山幹子となっていた。

円山は「もう出れたの!」と驚いたが、利根は「模範囚だったから」と2年ぶりの再会をした。このあと利根は円山に何も告げずある場所に向かった。

ここから利根が笘篠に追われるまでの経緯が描かれます。

利根は栃木の仕事に慣れ、カンちゃんのいる桂島に会いに戻った。利根はすっかり明るい子になっていた。ふたりで自転車に乗るシーンがふたりの関係をよく示しています。カンちゃんとふたりで遠島を訪ねた、遠島は持病で臥せっていた。起き上がって、ふたりが初めてこの家に来た時のようにウドンを振舞って喜んだ。利根は遠島が生活に困っていることを知った。

国に迷惑をかけるから、他人に口出ししないで!」と生活保護申請を断る遠島に「俺は本当の母親だと思っている」と説得し、申請のために本人とカンたんと共に杜浦市福祉保健所を訪ねた。対応に出た職員が三雲で「あんたがお婆ちゃんの関係者なら面倒見てあげて!」と申請を受け付けないことを前提にしたような物言いをした。利根が激怒した。これを見た担当者の上崎岳大(吉岡秀隆)が「一度だけやってみるか」と申請書を受け取った。遠島はとても喜んだ!

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今から2年前、利根が遠島を訪ねると誰も看取られることなく、餓死していた。利根は保険事務所前で上崎を呼び止め、「何故生活保護を止めた!」と食って掛かった。

家崎は「本人が辞退した。死ぬときは人間らしく死にたいが、それは難しい」と平然と言い放った。利根の激しい怒りに、所長の城之内が「国の方針が厳しいものに変わったんだ!君たちに言ったって分からんよ」と口を挟んできた。「見殺しにするのか!」と利根の怒りは収まらなかった。これをカンちゃんが見ていた。

遠島を送る火葬場に上崎がやってきて「死んでしまっては何もできない」と弔って帰っていった。「なぜ生きてるときにしてやらぬ!」という利根の怒りは収まらず、福祉保健所に火を放った!

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笘篠と蓮田は遠島と利根の関係を洗っていく。遠島は利根とカンちゃんという子と仲のよい家族のように見えたという話を聞く。そこにカンちゃんという子の存在を知った。まさか自分が義難所で会った少女であったとは気づかなかった!

さらに遠島が生活保護を辞退した理由も分かってきた。彼女には幼いころ捨てた娘がいた。今は学習塾を経営していた。その娘(西田尚美)にも会って話を聞いた。遠島は「娘に迷惑を掛けたくない、さらに三人で家族になりたい!」と辞退した事実を知った。

笘篠と蓮田は「利根は間違いなくここに来る」と今では国会議員になっている上崎の講演会場にやってきて、利根の現れるのを待っていた。講演が終わって駐車場から車で去っていく上崎。駐車場の出口で突然利根が踊り出てきた。笘篠と蓮田が取り押さえた。

利根の尋問は笘篠とは違う刑事が担当した。利根は黙秘して何も発言しない。笘篠は「俺にやらせてくれ!」と申し出たがやらせてもらえない。第3の犯行を防止したかったが、それだけではなかったのではないでしょうか。彼には利根に伝えたいメッセージがあった。

遂に笘篠が尋問を担当することになった。その時、「上崎が消えた!」と秘書から連絡が入った。笘篠は利根に「連れて行け!」と命じた。ここからは伏せます。劇場で確認してください。

感想:

犯人は誰?これは言えないですね。ということでとても曖昧な感想となります。

利根とカンちゃんは兄妹ではないですが、震災で出合って、これ以上ない兄妹になりました。その愛に泣きました!佐藤さんの笑わない孤独な演技、彼にはよく合っていますね。😊

遠島と利根、カンちゃんは本当の親子のようになりました。遠島けいが生活保護を断った理由は「三人で家族になりたい」と死を選択した家族愛にも泣かされます。これが本作の見どころで、説得力のある脚本でした。

 遠島の生活保護辞退に誰かが声を上げることができなかったか?「決まった通りにするなら誰でもこの職は務まる」と職員を責めたいですが、震災で混乱し生活保護申請が余りにも多かったことを考えるとこれも難しかったかも知れない。三雲のような平等主義を貫く気性の人には難しい仕事だった。所長は何を判断するためにその職に就いていたのか、国会議員は何をしていたか。どこに怒りを持っていけばいいのでしょうか。新種コロナで入院できず亡くなった人のことが思い出されます。

最後に紹介される円山のSNS投稿文生活保護は最後の手段、突破してください。護れない人のために声を上げてください。私も責任を取ります」、こうありたいですね!

ラストシーン。笘篠は妻が遺体で発見された海岸に利根を連れてきて「息子はまだだ!君は守ろうとした!」というと「黄色いジャケットの男の子が流れていくのに飛び込めなかった。その子を見捨てた」と利根が後悔を示した。すると笘篠は「ありがとう」と答えた。「ありがとう」と声を上げてくれ、これに救われたということだと思います。笘篠刑事の仕事っぷりは刑事の粋を越えていた。「護られない人を守る!」だった。蓮田は警視庁から流れてきた刑事で笘篠とまさに正反対の刑事だった。いいコンビでした。

震災復興がまだまだ残されたままの映像に心が痛みます。

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