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「ビューティフル・ボーイ」(2018)ティモシー・シャラメの進化を確認!

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「DUNE/デューン 砂の惑星」を観て、ティモシー・シャラメの進化を確かめようとWOWOWで鑑賞しました。

原作Netflix「13の理由」の脚本家として活躍する父親:デヴィッド・シェフが書いた「Beautiful Boy」と、息子:ニック・シェフが書いた回顧録「Tweak」と「We All Fall Down」。父親と息子それぞれの視点から描いた2冊のベストセラー回顧録です。

タイトルジョン・レノンの名曲「ビューティフル・ボーイ」、デヴィッド・シェフがレノンの最後のインタビュアーだったというから、レノンに捧げた作品かもしれませんね!

監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン。脚本:「LION ライオン 25年目のただいま」のルーク・デイビス美術:「ルーム」のイーサン・トーマン、衣装:エマ・ポッター、編集:ニコ・ルーネン、音楽監修:ゲイブ・ヒルファー。

出演者:ティーブ・カレル、ティモシー・シャラメモーラ・ティアニーエイミー・ライアン、ケイトリン・デバー、他。

8年もの長い期間を経てドラッグ依存を克服した息子と、彼を支え続けた父親のヒューマンドラマ。

8年間をどう描くか?時期を「1年前」「大学生のニック」「今、」の3つのパートにわけ、過去の記憶を張り付けて、麻薬は一度やると決して元に戻らないことを描くといううまい脚本・演出でした。特に過去の記憶を張り付けるとき、数多くの曲で繋ぐという音楽の使い方が絶妙でした。しかし、各パートの繋ぎ、回想シーンが分かりずらかったですね!

テーマはタイトル通りで分かりやすいです。カレルとシャメラの親子の関係に泣かされますね!

物語は文筆家のデヴィッド・シエフ(スティーブ・カレル)がカウンセラーを訪ね、どうしようもなくなった麻薬常習者の息子・ニック(ティモシー・シャラメ)のことを相談するシーン、今!から始まる。相談しながら1年前の状況に移って行きます。

ニックはデヴィッドと前妻ヴィッキーの子。離婚して親権はヴィッキー。デヴィッドは画家のカレン・バーバー(モーラ・ティアニー)と結婚し、ふたりの子をなしている。ヴィッキーはロサンゼルスに、デヴィッドはサンフランシスコに住んでいる。

〇1年前のニック

大学がいやになってデヴィッドの元に帰っていたニックが、夜いなくなった。前妻ヴィッキーに居なくなったことを話すと「あんたのせい!」という。

18歳になったからやらない」というニックを治療施設に預けた。ニックはスポーツも万能、文学、音楽に優れた才能を持っていた。異母姉妹をとても愛するケチのつけようのない子だった。

4週間の治療を終えて、迎えに行くと「もうすこしここに居たい」と施設に残ったが、ある日突然施設を抜け出し行方不明。施設から出れば捜索は家族の責任と言われ、デヴィッドは雨の中、車で必死に探す。これまで何度もあった、確保したニックが車の中で暴れる姿を思い出す。濡れそぼったニックを家に連れ戻した。「みんなやっているんだ、くだらない現実を忘れるんだ!」と、やっと止めた麻薬をやりはじめる。うんざりするデヴィッド。

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デヴィッドはクリスタル・メタル使用の兆候や症状を調べてみた。ニックは「クルスタルメタルは特別だ、失望したか」という。この言い方にデヴィッドは「もう親子じゃない」と嘆いた。ニックが子供の頃、サーフィン中に沖に流され、見えなくなったがうまく波に乗って帰った記憶が戻ってきた。ニックは戻れる!!

「書くことが好きだから、ューヨークの大学に行きたい」と電話してきた日のことを思い出した。「なにしに大学へ行ったんだ!」と。

〇大学生のニック

デヴィッドはニューヨークの大学寮までニックを送って、部屋を点検して戻るほどの親バカだった。

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ニックはすぐに文学的能力を発揮して、学友の中でも目立ち、寮のパーティーでローレン(ケイトリン・デバー)と知合った。トイレに薬が置いてあり、これで味を覚えた。デヴィッドは「どうだ?」と電話し、ニックの声を聞いて安心していた。が、ニックはローレンと恋に落ち、薬の世界に深く入って行った。そして虚ろな目で街を彷徨するようになった。ここでのシャラメの表情は秀逸です!

休暇でデヴィッドの家に戻った。義理の姉妹と楽しそうに遊ぶニック。父の車を借り、薬をやって運転。帰宅し眠った。朝起きると「姉妹の小遣いを盗んだ。ハイなのか?」「原因はお前だ!お前にしか止められん」とデヴィッドから注意され、嫌になってニックが出て行った。

この夜、ニックの断禁状態を思い出しながら、デヴィッドはニックが記録していた“麻薬日記”を読んだ。そこには余りにもおぞましい症状と「戻るのはあまりにも遠い旅だ!」と書かれていた。

カフェでニックに会った。ニックは「200ドル欲しい、ニューヨークに行く」と言った。「家に帰って来い」と言ったが、「無理だ。あんたはいつも管理したがる」と怒って店を出ていった。家に戻ると「あなたはニックにばかりに拘わる、娘たちが待っているのに」と妻のカレンがヒステリックになる。

 ここからねたばれ(取り扱い注意!)

〇今、

デヴィッドはカウンセラーからニックの状態は「戻る確率は一桁だ!」と聞かされた。

夜、ニューヨークのベルビュー病院から連絡があり、駆けつけた。病院で薬の過剰摂取だと言われたが、本人がすでにどこかに消えていた。空港の待合室で会った。「もう止める」と泣くニック。寮に戻り、前妻のヴィッキーに電話して病院を探した。LAに見つかり「私が引き取る」という。

幼かったときのように、眠るニックに毛布をかけて、「ビューティフル、ビューティフル、ビューティフルボーイ」と歌った。そして、幼いころ、空港で「愛している世界中の言葉を集めても伝えきれない、お前を思う気持ちが全てだ!」とヴィッキーの元に送り返した日のことを思い出した。こんなダメ息子の姿に一層愛しさがこみあげてきた。

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ロスの施設で治療に励んだ。ヴィッキーの支援を受けた。すっかりやせた(シャラメは9kg減量をしたという)。施設の反省会で「薬のない人生が最高だ。父も母もすばらしい、僕を誇りに思っている」と自己反省するまでに回復した。

父のいるサンフランシスコへ。ドライブ中に窓から手を出して風を受けるのが気持ちよかった。父が結婚式で「息子を愛してくれてありがとう」とカレンに感謝する姿を思い出した。

家に着くと家族が暖かく迎えてくれた。デヴィッドはしっかりニックの症状を把握していて(カウンセラーから知識を得ていた)「2年はかかるが大丈夫だ」と励ました。しかし、ニックに尿検査を求め、これがニックには気に障った。

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翌日、家族でサーフィンに出掛けた。波が高く子供たちに海に入ることを禁止した。ニックも海に入らず、子供たちの相手をして遊んだ。

ひとりでドライブしていると施設のカウンセラー・スペンサーから「一歩づつ現実社会に戻るんだ!」と連絡が入った。「現実社会なんて嫌だ!」と夜の街に出て、ローレンに会った。ホテルにしけ込みふたりで薬をやった。

デヴィッドが帰ってこないニックを心配しヴィッキーに「何でこうなるんだ!」と電話した。ふたりは喧嘩になった。

カレンが「ロスでなくサンフランシスコにいるんじゃない」と言い出し、カレンとも言い合いになった。薬というは本人だけでなく、家族を破壊していく。デヴィッドは車で海岸付近の捜索に出た。

デヴィッドは子供たちの水泳大会に参加していた。が、子供たちの水泳を見ず、ニックのことばかり考えていた。

その頃、金欲しさにニックとローレンが家にやってきたが、誰も居ない。家に入って物色しているところに家族が戻ってきた。ニックとローレンは車で逃げた。カレンは必至に車で追ったが見失った。カレンは義母であることの自分の無力に泣いた。

夜、車の中でローレンが薬の過剰摂取で倒れ、救急搬送された。ニックはデヴィッドに「家に帰りたい!」と電話したが、デヴィッドは「頑張って人生をやり直せ!」と突き離した。デヴィッドは部屋に飾ってあるニックの写真を取り外した。ヴィッキーに「面倒みきれない」と連絡すると「私は諦めない!あなたの力が必要」と諦めなかった。

カレンと一緒に麻薬家族会の集まりに参加し、薬で娘を失った母親の話を聞いた。「娘が生きていても喪中だった、でも何かしようと思っていた。今は何もすることがない」と悔やむ言葉に強く打たれた。ニックを放って置けない!デヴィッドはニックを探しに出た。

ニックは父の言葉に絶望し、大量の薬を飲んで意識を失っていたところを救助され、病院に収容されていた。

デヴィッドが駆けつけるとヴィッキーが居た。

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感想:

ラストシーン。病院のベンチに掛ける父とニック。ニックが父に寄り掛かかり泣き始める。“これで決して元に戻ったわけではない”ことを、この作品で嫌というほどに見せられました。これが本作の狙いでしょうか!

ニックはナレーションで8年後もやっていないと示された。元に戻ったとはいわない!!

薬中毒は一度やると元に戻るのが難しい、どうにもならないことを教えてくれます。よくなって家に戻っていても、ひとりになると突然薬が欲しくなり、その欲望が押さえられない。これを止めるには家族の他に多くの人の手が必要だということを教えてくれます。

麻薬という病を癒す薬は愛しかない。ティーブ・カレルがたっぷりとこの愛の姿をみせてくれました。すばらしい演技でした。

病めるニック、とんでもない姿からとても美しい姿まで、これぞティモシー・シャラメとばかりに見せてくれます。フアンには堪らない作品ですね!ティモシー・シャラメのための作品でした。😊

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