映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「クライ・マッチョ」(2021)マッチョというのは過剰評価。人生にはこれより大切なものがある!

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クリント・イーストウッドの監督・製作・主演作品!監督レビュー50周年記念、俳優を辞めると一度は宣言したグラン・トリノから10年目。

落ちぶれたカーボーイと少年の旅を通して語られる人生は?喜びや悲しみを背負いなお人生を歩き続けるという、「妻を失い、失意の中で少年に出会って自分の人生を探る」という「グラン・トリノ」にどこか似ているが、コピーは「クリント・イーストウッドの集大成かつ新境地!」だという。ここが付け目と、辞めて欲しくないが、今度はどうなのか?と駆けつけました。(笑)

老境に入ってこの心境、「グラン・トリノ」とは全く違った、心の安住地を見つけたようです。

監督・製作・主演:クリント・イーストウッド原作:N・リチャード・ナッシュ、脚本:ニック・シェンク N・リチャード・ナッシュ、撮影:ベン・デイビス美術:ロン・リース、衣装:デボラ・ホッパー、編集:ジョエル・コックス音楽:マーク・マンシーナ

出演者:クリント・イーストウッドエドゥアルド・ミネット、ナタリア・トラベン、ドワイト・ヨーカム、フェルナンダ・ウレホラ、他。

あらすじ

1980年、アメリカ、テキサス。ロデオ界のスターだったマイク(クリント・イーストウッド)は落馬事故以来、数々の試練を乗り越えながら、孤独な独り暮らしをおくっていた。

そんなある日、元雇い主ハワード(ドワイト・ヨーカム)から、別れた妻レタ(フェルナンダ・ウレホラ)に引き取られている十代の息子ラフォ(エドゥアルド・ミネット)をメキシコから連れ戻してくれと依頼される。

犯罪スレスレの誘拐の仕事。それでも、ハワードに恩義があるマイクは引き受けた。

男遊びに夢中な母に愛想をつかし、闘鶏用のニワトリ(マッチョ)とストリートで生きていたラフォはマイクとともに米国境への旅を始める。

そんな彼らに迫るメキシコ警察や、ラフォの母レタ(フェルナンダ・ウレホラ)が放った追手アウレリオ(ホランダ・ガルシア=ロハス)。先に進むべきか、留まるべきか?

今、マイクは少年とともに、人生の岐路に立たされる―― 。逃亡の果てに二人が見つけた生きる道とは・・。(HPから引用)

感想:

40年前にこの役を打診されたイーストウッドは「歳が若過ぎる」と断り、ロバート・ミチャムを推薦したという。この話もおもしろいが、もしこの役を受けるようだと後の名作はできていなかったと思われ、今、91歳で演じるのは運命であったかもしれません!それほどにどんぴしゃな役、演技でした。

敵に追われる旅が、イーストウッドフィルモグラフィーをなぞるように、これまでの作品とは違ってゆったり流れ、この描かれ方そのものが監督の体臭がしみ込んだようなすばらしい作品になっています。

物語は1979年、レーガンが大統領に選出された年、マイクはハワードのロデオ牧場に、カントリーミュージックを聞きながら、車を運転して、急ぐ。この姿、どこかで観ましたね!「いつ引き抜かれるかと心配だったが、今では何の価値もない」と解雇になった。

昔の栄光の日々を思いだしながら、酒に浸る毎日。そこにハワードから別れた妻レタに引き取られメキシコにいる13歳の息子ラフォを取り返して欲しいという頼みが入った。「息子はカーボーイに憧れているから、君が行ってくれ!」という。はじめは断ったが、「ハワードには恩がある」とこの役割を引き受けた。枯れたイーストウッドの姿が重なってきます。

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91歳のマイク、バンでメキシコ国境を、前方を走るギャルのあとを追って「連れだ!」と検問所を通過。(笑)夜には、星空を見ながらゴロ寝!

クラブでレタに会ったが、「野生モンスターでここにはいない」という。マイクは闘鶏場でラフォを見つけたが、警官に踏み込まれて、行方不明。大声で「ラフォ、出て来い!親父さんの親友だ!」と叫ぶと「カーボーイか?」と現れた。みんなこんなイーストウッドの無頼姿に憧れていたんだ!

食堂で「ロデオやっていた」とテキサス行を説得しているところに、警察が踏み込んできた。ラフォが逃げ出した。

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「レタのところだ」と彼女の豪邸を訪ねると、レタは「寝ていかない?」と誘う。とんでもない女だった。「ラフォは私の子。アワードは逃げたの、親の権利なない。メキシコから出ていけ!」と激しく連れ出すことに抵抗した。そこにやってきたひも男アウレリオに追われて車に戻ってくると、車の中にラフォがいた。

マイクは、一旦ラフィの連戻しを諦めていたが、機転が利くし、「国境まで連れていってくれ!父親に会いたい!」というので考え直した。ラフォが「マッチョの意味を知っているか?マッチョ(鶏)は闘鶏に強い!」という。

夜、ラフォは野営するマイクに自分のストリート生活を重ね、これまで誰にも話せなかった母親との葛藤を打ち明けた。母は男を連れ込み「叔父さんと呼べ」と言い、断ると裸にして殴られたという。「アメリカでは盗みはやめろ!」と教えた。人として一番大切なことは「正直であれ!盗むな!騙すな!」です。

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途中でアウレリオに遭遇すると、闘鶏マッチョの活躍で彼から逃れることができた。(笑)ところがマイクが腹を下して糞をしているときに車を盗まれた!(笑) アメリカ風の衣類では見つかるとメキシコ風に着替え、ラフォにも買ってやる。ふたりは車を盗み返すという荒業を使った(笑)

こうしてふたりは少しずつ親子のようになっていくところが微笑ましい。

ふたりは保安警察に追われ、マルタ(7が営む酒場食堂に飛び込んだ。ラフォが正直に事情を話したことマルタは優しく匿ってくれる。すっかり安心してマイクは寝入った。

マルタと別れて車で走ると、渋滞に出くわした。警官の尋問が厳しく行われていた。「しばらくこの街で様子を見よう」と、マルタのいる街に引き返し教会で寝た。その夜、ラフォが「神を信じるか?」と聞きから、「人は皆神の子だ」と答えると「子供がいるか?」と聞いてくる。マイクは「子供を交通事故で失ってから酒に溺れ、救ってくれたのがお前の父だ!恩返しをしている、お前がいる!」と話した。マイクにはラフォが自分の子供に重なっていた!

朝、出発しようとして、そこにマルタが食事を運んでくれた。出発しようとしたが油漏れで修理に時間がかかる。しばらくマルタに世話になることにした。

マイクは牧場を探し、かってのロデオを技を披露して、ラフォが生きていけるよう徹底的に乗馬を叩き込むことにした。

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イーストウッドの乗馬は「許されざる者」(1992)以来だというから、これは懐かしい!スタッフが喜んだでしょう。ロデオはスタントでした!

マイクはハワードに状況報告した。ハワードが「資産投資を妻のレタに半分もっていかれる。だから早く戻せ!帰ったらまた元に戻す!」と言って来た。マイクは「おれを騙したな」と思ったが、「分かった」と返事した。ラフォには「父はお前のことばかり心配している」と話し、乗馬に熱中させることにした。従来のイーストウッド映画ならこうはならない!大騒ぎでしょう!

ラフォは「自由なアメリカに行く!」と決心した。マイクは車の修理に掛かった。

マルタは娘を1年前に亡くし、孫3人を引き取って生活していた。ふたりはまだ幼い。そのひとりが聾者だった。マイクがその娘の手話を読み取って、水を持ってきてやる。これにラフォが「なぜ分かるの?」と関心を示した。「長い人生で身についた」と話すが、きっと厳しい生活があったことを忍ばせます。

白馬にラフォを乗せようとすると、この馬が暴れる!マイクはこれに時間をかけて、撫でて鎮める!ラフォが「なぜだ!」と聞く。「お前と一緒に懐いた!」と話す。近所の人が病んだ動物を診て欲しいとやってくる。マイクは馬を通して、人生を学んでいたということが分かる演出でした。

自分で料理を作ってマルタの家族に食べてもらう。子供たちに話を聞かせる、マルタとダンスを楽しみキスするなど、マイクの優しさがマルタの家族との交友にも現れ、こうして疑似家族が出来上がっていった。ラフォもこんなマイクに好意をもって眺めていた。この家族をマイクはこれからどうするつもりか?

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「動物を診るには免許がいる」と保安官がマイクを追い始める。アウレリオがまた現れた。マイクはこの街を出ることにした。

国境に向けて砂漠の中を走る。警察とアウレリオが追ってきた。急ハンドルでこれを交わし、脇道を走る。車を道端に止めて、「お前は父親の金集のための担保になっている」と話して聞かせた。ラフォは「父もあんたも信じられない!」と怒りをあらわにした。

そこに警察がやってきて麻薬運搬の容疑で車を調べる。「運び屋」(2018)のアール・ストーンだった。(笑)

車にあったライターを取り上げ、シートを切り裂いて調べる。それでも「三流警官のバカが!」とつぶやきながら耐えた。ラフォの機転で「父が危篤だ!」と先を急ぎたい態度を見せ、マイクが金を握らせ、この場を収めた。

先を急ぐ。ラフォが「あんたは強かった。でも今は何にもない!昔は大した男だった!」という。これにマイクが「何にも変わらんよ!マッチョというのは過剰評価されている。人生にはこれより大切なものがある!でももう遅い!お前の志は偉い!自分で見て決めろ!」とラフォに国境を超えるかどうかを決めさせた。「俺は前に進む!」とラフォ。そこにアウレリオの車が突っ込んできた。

マイクとラフォは車外に吹っ飛んだ。アウレリオが襲ってきたが、マッチョが攻撃する。ラフォが拳銃を拾ったが、アウレリオを撃たなかった。アウレリオの車で逃げ、国境検問所にやってきた。向こうにアワードの姿が見えた!

ラフォはマッチョをマイクに渡し、「ありがとう」と去って行った。マイクは「俺の居場所は分かるな!困ったら電話しろ!」と車を反転し、マルタの元に急いだ。

まとめ:

ラストシーンに驚きました。これまでの作品に、こんなラストシーンがあったかと。腕力もアウレリオを一発殴っただけ。脚本は「グラン・トリノ」と「運び屋」の脚本を書いたニッタ:シェンク。イーストウッドとシェンクはN・リチャード・ナッシュの原稿のラストを逆にしたという。なるほど、イーストウッド91歳にして、この役を演じた理由だった。力より、愛と希望への思いが強くなったということではないでしょうか!

さて、本作はイーストウッドの新境地作だと言われますが、引き続き演じるかどうか?

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