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「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021)現在に訴えかけるストーリー!すばらしかった!

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スティーブン・スピルバーグ監督が、1961年にも映画化された名作ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」を再び映画化。なぜスピルバーグがリメイクするのか?これが観たかった!!

2月8日にアカデミー賞の監督、音楽等7部門にノミネートされています。最終決定は3月27日(日本時間28日)。

原作:アーサー・ローレンツ監督:スティーブン・スピルバーグ脚本:トニー・クシュナー撮影:ヤヌス・カミンスキー美術:アダム・ストックハウゼン、衣装デザイン:ポール・タゼウェル編集:マイケル・カーン サラ・ブロシャー、オリジナル振付:ジェローム・ロビンス、振付:ジャスティン・ペック、指揮:グスターボ・ドゥダメル作詞:ティーブン・ソンドハイム、音楽:レナード・バーンスタイン音楽総指揮:マット・サリバン。

キャスト:アンセル・エルゴート(トニー)、レイチェル・ゼグラ(マリア)、アリアナ・デボーズ(アニータ)、デビッド・アルバレス(ベルナルド)、ジョシュ・アンドレス(チノ)、マイク・ファイスト(リフ)、コリー・ストール(シュランク警部補)、リタ・モレノ(バレンティーナ)。レイチェル・ゼグラーは約3万人のオーディションの中から選ばれたとのこと。61年版でアニタ役を演じたリタ・モレノが出演です!

あらすじ:

1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。(映画COMから転用)

感想:

本作、61版ストーリーのプロットとほぼ同じだ!しかしスピルバーグ監督が描くと“舞台”から“街”に飛び出した!物語の広がり、スケール感が違う。何よりもストーリーに深みがあり、監督の今の世界に対するメッセージになっている!

スピルバーグ監督はプライベート・ライアン」(1998)で、ノルマンディー上陸作戦という過酷な戦場のなかでたったひとりの二等兵を探し出すという美しい人間愛を描き、戦争のバカバカしさを訴えた。本作も同じだ!2つの移民少年グループの激しい抗争の中で禁断の愛を描き抗争のバカバカしさを描くという「プライベート・ライアン」物語です。そこには“異なる立場を越えて、私たちは手を取り合えるのか?”という普遍的なメッセージが込められています。

61年版のラストシーンジェッツとシャークスのメンバーが共にトニーの遺体を救急車に運び、「もう二度とこんな馬鹿はしない!」とそれぞれが分かれていったが、その後の現実はどうなったか?

この物語は、リメイクではなくいまだに成し遂げられないその後の現実、今のアメリカ社会の底辺にある暴力、差別、偏見に対する、“続きの物語”という位置づけになっています。もう一度、あの61年の決意を思い起こし、「前に進もう!」という作品。

このため、61年版に一部変更が加えられ、映画としてのリアルさとメッセージ性を高めています。

冒頭で、古いビルの解体が始まり街が再建に向かうという時代の移り変り。ドックが亡くなりその妻バレンティーナ(リタ・モレノ)が運営、特に前回でアニータ訳のリタ・モレノが演じることで、物語の連続性を示唆している。トニーは1年前に障害事件で刑務所に、出所してドックの店で働き、自分の生き方を模索している。ベルナルドはボクサー上がりでプエルトリコ人であることに拘る古いタイプの男。リフもベルナル同様にポーランド移民に拘る男。そしてチノは大人しそうな男でシャークス団に属しないで、経理の仕事についている一般人。というようにキャラクターに少し深みをつけることで、物語にリアリティを与え、大きなメッセージに繋がっています。

各シーンを追いながら、続きの物語を観ていきます。

 冒頭、新参のプエルトリコアメリカ人の少年非行グループ「シャークス」が、「ジェッツ」となわばりを巡って対立しているシーン。

「ジェッツ」の団員であるベイビー・ジョンが、敵対する「シャークス」のメンバーに暴行されるシーンで、耳に釘が刺さって血を流しており、警察署に連行され、クラブキ巡査から詰問され「嫌がらせでやられた」と回答。ジェンダーへの嫌がらせで傷害事件という、61年版ではない抗争の生々しさが描かれている。

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ダンスパーティーのシーン

衣装合わせのマリア。もう胸の開きではなく赤ベルトのアクセントで選ぶ、聡明で大学進学をも目指すという女性。時代遅れの兄・ベルナルドにもはっきり意見が言える。同居しているアニータもベルナルドの女性蔑視ともいえる姿勢には強く反発する強い女性。社会改革は女性によって成されるのかもしれませんね!

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ダンスシーンがほぼ61年作に同じ!前作に対するスピルバーグ監督の敬意がよく表れています! 一発触発で喧嘩になりかねない緊迫感、アニータ役のアリアナ・デボーズの圧巻の踊り、ヤヌス・カミンスキーによる躍動する映像!すばらしいダンスシーンでした。

決闘の話し合いが会場のトイレで行われ、トニー主導で決めらたことは、強く暴力禁止を訴えている。が、結果はトニーがナイフでベルナルドを刺した。何故こうなった?

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マリアとトニーは会場で目があって、場外でマリアから想いを伝えるところに新鮮さがあります。男性主導の映画のように見えて、実は女性主導で進むところに大きなメッセージだと思います。

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トニーとマリアが再会する夜の階段シーン。

トニーが「トゥナイト」を歌いながら“水溜まり”のある貧民街を徘徊し、再会を果たす。この水溜まりでプエルトリコ移民の苦しさが分かるという映像でした。この作品では貧困もテーマでしっかり画像で捉えられています。

マリアの部屋には外壁の階段をよじ登らねばならず、マリアにたどり着くには大変な苦労で、愛の深さを感じるシーンに出来上がっていました!ふたりで謳う「トゥナイト」は見事でした。

アメリカ」を歌うシーン。61年版ではアニタとベルナルドがなぜアメリカにやってきたかと論争し、プエルトリコに錦を飾りたがるべナルドに、アニタたちプエルトリコ女性が歌うアメリカ賛歌でした。本作ではアニタたち女性が街に繰り出しあらゆる人種を含む住人たちと一緒に踊り、 “アメリカン・ドリーム"を歌い上げる。なんでアメリカにやってきた。肌の色や貧困、偏見を乗り越えた自由を表現している。アニータの情熱的な踊りで一層このことが協調されます。

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トニーとマリアが結婚を誓うシーン。会って1日で結婚の誓。(笑)61年版と違って、地下鉄で教会に出向いての誓。寒々としたニューヨークの地下鉄を見て、犯罪を作っているようなもの、と驚きました。教会で結婚の誓とともにマリアはトニーに決闘を止めることを強く求めた。トニーは犯罪者であることを告白し、犯罪者は社会に受けいれえられないが、マリアに会えた喜びを伝えた。

リフが拳銃を入手した経緯と拳銃を使うことに反対するシーンが追加されている。リフは親父さんの伝手で悪組織から拳銃を手にした。

見せ場の決闘シーン

塩の倉庫。初っ端、トニーがべルナルドに近づき「マリアに会ったとき、ちゃんと挨拶しなかった」とを侘び、決闘を止めるよう求めたが、これにベルナルドが「お前は有色女をひっかけるか!」と挑発した。この言葉にトニーがベルナルドを殴り、これで一気に両グループが衝突し武器がエスカレートしていった。結果は同じでも61年版とは全く異なる展開。ベルナルドの吐いたヘイトスピーチが暴力の引き金になったミュージカル映画であることを忘れるほどの迫力のある決闘シーンだった。

トニーがベルナルドを殺傷したことを知ったバレンティー

ひとりドックの写真を見ながら、白人とプレルトリコ人が結婚し、ふたつのメンバーの面倒を見てきたバレンティーナが「居場所はどこかにあるはず!許し合える場所がある。いつの日か?」と歌う新設シーン。彼女の無念さが伝わり、これは作品のテーマですが、リタ・モレノが前作でアニータ役であったことが重なり、泣けます!

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決闘後マリアの部屋に現れたトニーが逃げ出すシーン

マリアは兄を刺したトニーであっても彼の愛を信じた。そこにアニータがやってきて「ベルナルドを殺した男よ」と詰る。

マリアが「男を愛した女性なら分かってもらえる」と必死にアニータに訴えるシーン。ふたりが涙の中で歌い上げる姿は、歌も上手かった!この作品の中で一番のシーンだと思います。アニータは「街を出た方がいい」とマリアに勧め、マリアの使いでドックの店に急いだ。

ドックの店でアアニータがジェッツに暴行されるシーン

ジェッツは仲間の女性を外に出し、アニタに挑みかかる。はっきりとレイプであることを見せる。これを止めに入ったのがバレンティーナ。血相を変えて、「私はアメリカ人ではない、プレルトリコだ!」と男どもを罵った!強く女性暴力廃止を訴えるシーンだった。

ラストシーントニーがチノに撃たれ、マリアが倒れたトニーを抱くシーン。

マリアは拾った拳銃でチノ、両グループのメンバーを撃とうとしたは撃てなかった。怒りでは決して問題は解決しない!

61年版と異なって、トニーの遺体を両グループ全員で担ぎ上げ、(おそらく)ドックの店に急いだ。その後をマリアとアニータ、さらにこれを見届けるバレンティーナが拳銃を拾いチノの手を引き続いた。そこに警察の姿はなかった。

まだまだたくさんの見どころ、探してみようと思います。みなさん、すばらしい演技でした!やはりアニータ役のアリアナ・デボーズが飛びぬけていた。レイチェル・ゼグラの目の美しさ、リタ・モレノの存在感がすごかった!

エンターテイメント史に残る数々の名曲とダイナミックなダンスは、時代を超えて、胸に響きます!!

3月27日(日本時間28日)のアカデミー賞受賞式を楽しみにしています!

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