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「イン・ザ・ハイツ」(2021)

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トニー賞4冠、グラミー賞ミュージカルアルバム賞受賞の2005年初演ブロードウェイ・ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の映画化作品。

ワシントンハイツに住む若い移民者たちが、人権や貧困、差別などの逆境に立ち向かいながら、夢を追う姿を圧倒的パフォーマンスで描くというミュージカル作品。

 原作:リン=マニュエル・ミランダ、監督:「クレイジー・リッチ!」(2018)のジョン・M・チュウ脚本:キアラ・アレグリア・ヒューディーズ、撮影:アリス・ブルックス美術:ネルソン・コーツ、衣装:ミッチェル・トラバーズ、編集:マイロン・カースタイン、作詞:リン=マニュエル・ミランダ、作曲:リン=マニュエル・ミランダ、振付:クリストファー・スコット。

出演者:アンソニー・ラモス、メリッサ・バレラ、レスリー・グレイス、コーリー・ホーキンズ、オルガ・メレディス、ジミー・スミッツ、グレゴリー・ディアス4世、ダフネ・ル:ビン=ヴェガ、ステファニー・ベアトリス、ダーシャ・ポランコ、リン=マニュエル・ミランダ、マテオ・ゴメス、他。

あらすじ:

ドミニカからの移民ウスナビ(アンソニー・ラモス)は従兄弟のソニー(グレゴリー・ディアス4世)とともにNYマンハッタンのワシントンハイツ地区で親から受け継いだコンビニを営んでいる。ウスナビというのはUS Navy(アメリカ海軍)から着けたというのが面白い。(笑)

そこには日々、同地区の人々がやって来て買い物と会話を楽しんでいく。

熱波が警告される日、最初に店にやってきたのは街のおばあちゃんとして慕われているアブエラ(オルガ・メレディス)、家賃が高くなったと言い、コンデンスミルクに宝くじを買った。次に来たのはタクシー会社経営のケビン・ロザリオ(ジミー・スミッツ)、バンと牛乳に宝くじを買った。この街から唯一大学(スタンフォード)に入った娘ニーナ(レスリー・グレイス)が帰ってくると話す。

美容院経営のダニエラ(ダフネ・ルービン=ベガ)、美容師のカルラ(ステファニー・ベアトリス)、クカ(ダーシャ・ポランコ)がやってきて「暑い!熱い!」と宝くじを買った。この三人は踊りの名人で笑は全部持っていく。

ソニーが遅刻してやって「生活費が高くつく、この暑さ!停電になったら困る」とぼやく。

ロザリオのところの社員ペニー(コーリー・ホーキンズ)がボスのためだと新聞と砂糖を買った。「お前にはスキルがないから大変だろう!」と揶揄する。

そこに美容室で働いているバネッサ(メリッサ・バレラ)が「金が貯まったから引っ越しする!」と入ってきた。ウスナビは「さよなら」と挨拶。これを見たペニーが「お前はバカか!」と一喝した。(笑)ウスナビはバネッサに好意を持っていたが、今ではここの暮らしに先が見出せないとソニーと一緒に「父親の故郷ドミニカに戻ってバーをやりたい」と考えていたから・・。

ウスナビが外に出て街を見ると、この街の人たちが物価や家賃が上がり明日は見えないが、宝くじを買うのもそのひとつで、小さな夢を追っていた(市民の踊り)。

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大停電の3日前

ウスナビ、ニーナ、バネッサが夢について悩んでいた。

ウスナビはドミニカに帰っていたという弁護士のアレハンドル(マテオ・ゴメス)から「故郷はハリケーンでやられた。本気で帰る気はあるのか?」と問われ、「必ず故郷に帰る」と決意を述べた。ソニーを誘うが、彼は「ここが居場所だ」といい返事をしない。ウスナビはアブエラに相談すると「ソニーも一緒に!」という

ニーナが街に戻ってきた!街は大騒ぎだ!

ニーナは父の会社に立ち寄りペニーに挨拶して、父が不在なのでアブエラを訪ねた。ペニーはニーナに好意を持っていただけに残念そうだった。アブエラに「大学はむなしい!」と相談すると、アブエラは「子細なことでいいから、私たちの尊厳を示しなさい」と励ました。

ニーナは「ここが自分の居場所だ!」と思うが、街の人に期待されていただけに大学を辞めることに躊躇もある。父に会ってカフェで「学費が滞るから」とその理由を話すと、「金は心配するな」と辞めることに反対された。

ダニエル美容院。ダニエルが「先祖は奴隷船を生き延び、タイノ族の虐殺に生き延び植民地支配にも生きた。なんでD列車ごときに生きられないの?ここに留まって街に貢献する」と息巻いているところにニーナがやってきた。(笑)

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ニーナーは皆に大歓迎された。しかし、大学を止めると話すと皆がびっくりして、「退学か妊娠ではない?」と疑われた。(笑)

バネッサはファッションデザイナーになりたいと、ファッションカレッジを受験するが、準備した資金も足らず親のサインもないと固い証明書が必要と入学を断られた。バネッサはウスナビの店にやってきて「ダンスクラブに一緒に行く」と約束し、「決してファッションへの道は諦めない!」と伝えた。

暑い日だった。ウスナビたちがプールに行こうと店を閉めて出かけようとしたところに、「宝くじの当たり券が出た!9万6千ドル」という知らせが入った。プールではこの知らせにみんなが夢を描き、大盛り上がりとなった。

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ウスナビは「街に出てバーを開く。店はソニーに譲り、残りはアブエラにやる」。

バネッサは「街に出てデザイナーになる」。ソニーは「人権のための抗議活動を行う」。ペニーは「実業家になりタイガーウッドをキャディーにしてゴルフをする」。

当選番号が発表されたが誰も現れなかった。ウスナビは「皆が夢を持てた。夢の実現には働くしかない」と思ったという。至言!

大停電1日前

ペニーとニーナ。ペニーはアフリカ系黒人でここでは孤独、これがニーナの孤独と結びついて、ふたりはお互いを労りあうようになっていた。

アブエラがアレハンドロを訪ね宝くじの当たり券を渡すが、アレハンドロは「持っておけ!」と受け取らなかった!

ウスナビはソニーの父親を訪ねソニーのドミニカ行きを説得するよう依頼するが、受け入れてもらえない。アレハンドロを訪ねると「父親の店は手に入った」と言われ、「いよいよ帰るぞ!」とウスナビは覚悟した。

大停電の日

ウスナビたちはアブエラのアパートに集まってパーティー、故郷の料理や歌を楽しんだ。ケビンが「ニーナ、店を撃ったから大学に行ける」と披露すると皆が喜びの乾杯!しかしニーナは「金の問題ではない、友人のネックレスが無くなって疑われ、人種差別の問題よ」と怒って出て行った。

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パーティーが終ってダンス会場に向かった。美しいバネッサは男たちに大もてで「踊ってくれ!」と引張りダコ。ウスナビが悔しがる。(笑)そこにとんでもない女性が現れて踊りに誘われた!(笑)辛い世相のなかにあってもこのド派手なパーティー中南米の人たちには敵わない。(笑)

ウスナビがやっとバネッサと、そしてペニーがニーナと踊れるようになったところで停電!!

真っ暗な中でバディの相手を探す。見つからない。花火を上げろ!の声。会場は大混乱。美しい花火が上がった、

皆は暑い!暑い!と言いながらアブエラのアパートに戻ってきた。ところがアブエラの様子がおかしい!彼女は移民としてここに来たころの苦しかった生活を思い出し、去るべきか残るべきかを考えるなかで、「忍耐と信仰よ」と言葉を残して息を引き取った。アブエラの死が報じられると、街中の人々が灯りをもって弔意に駆けつけた。

大停電から3日後

ウスナビはバネッサに国に帰ることを傳えた。バネッサは悲しんだ!

ニーナは父ケビンから母と一緒にNYに出てきたころの苦労話を聞かされた。そしてソニーと一緒に“移民者集会”に参加した。ソニーが「一生懸命働いて、ルールさえ守っていればいいと思ってあくせく働くうちに故郷を忘れる。ニーナの話を聞いていて恥ずかしくなった」と漏らす。ニーナはこの言葉に衝撃を受けた!

家に戻ったニーナは「大学は出口ではなく入口!ここに戻る!」とケビンに話すと「お前は俺を追い越した!ニューヨーク・リコだ!」と喜んだ。

暑い!暑い!と停電にうちひしがれた街の人たち。ダニエラら3人が「この体たらく!ラテンだろうが!地元のカーニバルよ!母国旗を上げろ!」と踊りを促す。街中が踊りだす!街に灯りが戻ってきた。

大停電から30日後

ニーナが大学に戻る日。エニーとニーナは別れを惜しんで踊った。まるで周囲が見えないほどに愛しく思うふたりだった。このカメラワークが面白い!

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ウスナビはここにいるのか今日が最期の日と部屋を訪ねると、アブエラの小物入れがあり、その中に宝くじの当たり券が入っていた。これが最期と訪ねてきたバネッサは「街に残って欲しい!」と訴えた。

ウスナビはアレハンドロに会い「宝くじを現金にしてくれ!」というと「勝算は低いぞ!」という。ソニーに永住権は5年も10年も先だと同行を勧めたが、受けなかった。

バネッサはウスナビと別れての帰り、いつも建物の壁にドミニカの風物をペイント描きする男に会った。彼が捨てたペイントがついた布の模様に閃いた!

バネッサはウスナビをアトリエに招き、自分のデザインで作ったドレスを見せた。ウスナビは「帰るのをやめた。この金で頼む!俺は残る!」と声を出した。

「ウスナビが残るぞ」の声が一気に広がり、街中が踊りに包まれる・・・。

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感想:

見どころはダンスと歌主人公ウスナビがラップで歌い出して、もうほとんどノンストップの歌とダンス。歌とダンスの中にドラマがあるというミュージカル作品。他に例をみないでしょう!

しかし、年寄りにはこの尺(143分)は疲れました!(笑)

それでいて若者たちが先の見えない社会の中で夢を見つけるという社会派ドラマ。今の世界に求められる普遍的なテーマ、「小さな夢」「尊厳を大切に」「忍耐と信仰」など心にしみるセリフに励まされます。

夢のため、如何に民族としてのアイデンティテが大切かを教えてくれます。ニーナは大学に残る、バネッサは故郷の風物から採った着想でデザイナーに。これなくして移民者の生きる道はない。海外に出ていくとき「柔道だけは身につけておけ!」と言いたい。

長い忍耐は辛いが、実は力を貯めている、力をつけている時期なんだ。それだけに苦しければ苦しいだけ、夢がかなった時の喜びは大きい。

舞台とは違ってスケール感がある映像にダンス。ぜひスクリーンで観るべき作品であったなと!

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